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わたし魔王の生まれ変わりなの、と幼馴染みは言った。  作者: 神代創
6章 村人Aは王都を満喫する
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3:悪事の準備 その1

「次はどうするの、ジェイくん?」


 ファミが露店で買った棒状のキャンディをなめながら訊いた。

 そう。式典は4日後。つまり、丸3日時間がある。

 式典でローネを殺す方法をどうするか、まだぼんやりしか考えていない。もらったお金もあるから冒険者として仕事をする必要もとりあえずはない。おかげでのんびりしているわけだが……。


「美味しいね、セイルちゃん」

「もう少し刺激的な味がいい」


 そんなこと言いながら、セイルも無心になってなめている。というか、さっきから左右からペロッチュパッとイケない妄想ばかりがはかどる音が聞こえてくる。若い娘がそんな舌使いでキャンディをなめるのは危険だろ。


「お嬢さん方、お暇でしたらご一緒に散策致しませんか?」


 ほら来た。服装や身につけている物から見て、貴族か大商人の勘違い系坊ちゃんってところか。年齢は俺よりちょっと上? 取り巻きに腕自慢の護衛3人つき。


「お暇じゃないよー? ジェイくんとイチャイチャするので忙しいの!」

「そういうことだから、向こうに行って」


 セイルがパクッとキャンディを口にくわえると、あっちに行けと坊ちゃんに首を振った。

 いやだから、なんで挑発する?


「へ……? さ、さすがに平民の女は仕草までイヤらしいな」

「なに? 興奮してる?」


 セイルは無表情なまま、キャンディを口に入れたり出したりし始める。だからなんで挑発するんだ? 貴族の坊ちゃんが顔を真っ赤にしてるじゃないか。


「こっ興奮などするか! 平民の女になど! 私が興奮するのは第1王女ロンゾン・ル・ロンド=レンディアン様だけだっ!」

「だったらぁ、ファミに声かけなくてもいいよねー」


 ファミがもっともなことを言う。言いながらこれ見よがしに舌を伸ばしてキャンディを下から上へなめ上げる。こらこらどこでそんな技を覚えたんだって。

 それと、さらっとローネに興奮とか抜かしてたな、この坊ちゃん。趣味はいいけど、聞き捨てならんなぁ。


「ジェイト、ここは空気が悪い」

「うん、眺めも悪くなっちゃったねー」

「じゃあ、次に行こうか」


 俺が立ち上がると、前に壁が立ちはだかった。坊ちゃんの護衛だ。その背後から坊ちゃんが声を上げる。


「貴様、アイオーン家を愚弄して無事で済むと思うなよ!」

「今の脅し?」

「ただの警告だ」

「はあ、ご親切に。でも、脅すにしても、股間パンパンにしてると迫力もなくなるよ?」


 親切に指摘してやると、坊ちゃんはバッと両手で股間を隠す。その間に俺たちは護衛の男たちをすり抜けるように歩き出していた。

 と、足が何かに引っかかった。

 やべっと思う間もなく、つんのめって顔面から地面に激突……しなかった。セイルが腕で支えてくれたのだ。さすが勇者の反射神経。

 坊ちゃんが俺の様子を見て鼻で笑う。


「女に助けてもらうくせにイキがってるじゃないか」

「そうだな。ふたりにはいつも助けてもらってるよ。仲が良いんでね」

「予言してやる。その女ふたりは僕の下に助けを乞いに来るだろう!」

「いや、それはないよな。うん」


 力強く否定すると、そのまま歩き去る。

 背後から襲いかかってくるかと思ったが、飛んでくるのはレベルの低い罵り声ばかりなので無視する。


「で、あの貴族の坊ちゃんは何者なんだ?」

「えーっと、ファミのファン?」

「あんなファン欲しいか?」

「ジェイくんだけでいいよー」

「俺はファンじゃないぞ?」

「えー? 違うのー? ファミのこと好きでしょ?」

「じゃあ訊くが、おまえ、俺のファンか?」

「ファミはジェイくんのものだしー。あ、ジェイくんはファミのものか!」

「ジェイトはボクのだよ」

「えーと、つまり、ジェイくんはファミとセイルちゃんの『もの』だからファンじゃないんだね!」

「俺は人間じゃないと魔王と勇者の転生者に言われてるのか? なんか理不尽だな」


 相変わらず脱線する話を元に戻そうとしたら、キャンディを買った露店の主人が手招きしていた。


「あんたたち、大丈夫かい?」

「なにが?」

「さっきの貴族だよ」

「ああ、アイーン家とかいうヤツか」

「アイオーン。ジェイト記憶力なさ過ぎ」

「興味ないからなぁ。いや、特に問題はないけど。むかついたけどね」

「あいつ、あんたの足を引っかけて、あんたが突っかかっていったら、それを逆手にとって因縁つける気だったんだよ。よく我慢したね」

「あんな連中はどこにでもいるからな。気にするだけ無駄だろ」

「あんた、その年で達観してるねえ」

「まあ、色々あったんで」

「アイオーン家は王室にも連なる大貴族で、さっきの坊主は王位継承権もあるんだよ」

「へー」

「もっとも順位で言えば20番だか23番だからしいから万が一にもありえないけどね」

「みんな死ねば王様になれるんだねー」

「物騒なこと言うお嬢さんだね」


 ファミの無邪気の一言に苦笑いすると、主人はさらに声を潜めて付け加える。


「まあ、父親は次の宰相を狙ってる野心家だって言うし、ろくでもないこと考えてるかもしれないけどね」

「あー、政治のドロドロはイヤだなぁ」

「おまけに王女様を金で娶るとかしたらしくて」

「ローネ、いや、第1王女を?」

「そうそう。だから、今回の婚姻が決まって荒れてるのさ」


 ああ、外交目的だけかと思ったら、金で買われるよりはマシと思ったのかもしれないな、国王が。


「ところで、なんで教えてくれたんだ?」

「いや、お嬢さんが美味しそうになめてくれてるんで、売り上げがいつもより多くてね」

「ファミ、役に立った?」

「もちろんだよ」


 主人が笑うと、ファミもえへへ~と嬉しそう。

 礼を言って別れると、さっそく魔王にささやく。


「魔王、さっきの貴族も調べられる?」

「貴様、魔王を便利道具と勘違いしておるのではなかろうな」

「実際便利だし」

「何を考えておる」

「さっきの貴族にも頑張ってもらおうかってね」

「なるほど。面白いではないか」


 なんとなく当日のイメージが固まってきて、思わず笑みが浮かんだ。


「ジェイくんが悪いこと考えてる~」

「うん、ジェイトは悪人面だ」

「失礼な。こんな善人はどこにもいないぞ」

「善人をアピールする善人は善人じゃない」

「悪人だ悪人だー」

「魔王に悪人呼ばわりされる覚えはないぞ」


 まったく失礼な幼馴染みだ。


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