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2:襲撃された村 その1

「ジェイくん、誰か大声で歌ってるよ?」

「あれは悲鳴だって」

「しかもひとりじゃない」


 悲鳴は集落の方から絶え間なく聞こえていた。それだけじゃない。材木が破壊される音、なにかが燃えるパチパチと爆ぜる音。どう考えても戦闘的な何かが起きている感じがする。


「行くぞ!」

「はーい!」

「わかった」


 ファミとセイルの声に戻って、ふたりは素直についてきた。さっきまでのが、出来の悪い冗談みたいだな。


 山道を下って村の入り口まで来ると、状況が少しだけわかった。

 攻撃されているらしい。相手は武器を持ってるが、どう見ても人間じゃない。


「スケルトンではないか」と魔王の声をしたファミ。

「魔王の部下かなんかか?」


 問いに答えたのはセイルいや勇者。


「一番下っ端だ。よく切り倒した。ゾンビだと腐ってやがるから剣が汚れるし、飛沫がかかるから好みじゃないんだが、スケルトンは爽快だぞ。よく乾いた骨だといい音がするんだ」

「聞いてねーし」


 勇者がどう考えても不要な小ネタを開陳する。


「役に立つぞ」

「どういう状況でだよ!? 少なくとも今じゃないよな」

「そうだな。ダンジョンの奥底で囲まれた時だな」

「今じゃねー。ここは地上だっっての!」

「ちなみにダンジョンじゃないと音が響かなくてね」

「んなこと訊いてねーから」

「おもしろいのになぁ。もうカキンコキンといい響きがして、ストレスが消えてくんだぜ。誰もいないダンジョンが寂しくないし――」


 ぶつぶつ言い続ける勇者を無視して村に近づいていくと、火事になっている家がわかった。中心広場から少し離れた3軒の家の左端。


「燃えてるの、ファミの家だ……」

「ああーっ! ひどいですー!」

「おい、魔王。スケルトンってのは魔族だろ。責任取ってなんとか――」

「許せぬな」

「あ?」

「下級魔族の分際でワレの住処を燃やすとは!」

「ファミの家が住処ってわかってるのか。ってか、気に入ってたのか?」


 確かファミの部屋って女の子ーって感じのかわいい人形とか小物で埋まってた気がするんだけど。


「許せんっ! あの部屋を!」

「なんで勇者がファミの部屋を知ってるんだ? まさかのぞきか?」

「セイルの記憶がある。のぞきなどでは断じてないぞ!」

「ああ、そういうことね」

「2階の窓からのぞいたわけではないぞ」

「……怪しいな」

「怪しくなどない! さあ、連中が来たぞ!」

「いや、言動がもう怪しいだろ。正直に吐け!」


 スケルトンが数匹向かってくるのを見たセイルは俺の糾弾など聞く耳持たずと木の棒を拾う。


「そんなもんでどうするんだよ?」


 心配して訊くが、セイルはそのまま突っ込んでいく。

 長剣を振り上げてかかってきたスケルトン。攻撃を余裕でかわし、セイルは木の棒をスケルトンの腕に叩き降ろした。

 ボキッと鈍い音がしてスケルトンの腕が折れる。


「今のは死んで間もないな。生乾きだ。音が悪い」


 魔王の不要な解説なんか聞く気もないと、セイルは落とした長剣を拾い上げる。と、いきなり歓声を上げた。


「ジェイト、本物の剣だよ! ほら!」


 正真正銘セイルの声だ。こんなに目を輝かせながら、弾んだ声を上げるのは初めて見た。

 その剣、さっきまでスケルトンが持ってたんだよななんて野暮な突っ込みはしない。セイルが欲しがってたのは俺もよく知ってる。俺よりも剣とか防具に興味持ってたし。ひょっとすると、それも勇者の生まれ変わりだったせいだろうか。


「まだ2匹来るぞ!」

「大丈夫」


 セイルは長剣を振るってスケルトンの攻撃を受け流し、今度は二の腕を切り落とした。

 ピキーンと甲高い乾いた音が響く。


「今のは?」と魔王に訊く。

「200年くらいたってるな。もう少しでレベルアップしたな」

「レベルアップ?」

「スケルトンウォリアーになる」

「なると?」

「色が変わる」

「あ? それだけ?」

「魔力量が増えるゆえ、そのオーラが外に出て赤っぽくなるのだ。スケルトンメイジにまで進化すれば青っぽくなるし、スケルトンジェネラルになると――」

「……もういい」

「いや、よくはないぞ。ワレの家を燃やした連中に罰を与えねばな」


 ファミがダミ声で恐ろしいことを言う。が、しょせんファミだ。ダミ声も舌足らずで迫力なし。

 その間にセイルは2匹のスケルトンを倒していた。


「この体は結構いいな」


 セイルが自分の腕を軽く回して満足そうな顔をする。ついでに左腕で二の腕から胸の辺りをなで回す。


「……そんなにさわらないで」

「いいだろ、俺の体なんだから」

「ボクの体だ。……それにジェイトの前で胸を揉む……なぁ……はぅぅん……」


 セイル、いや勇者が長剣を振りながら体を確認するようにあちこちペタペタとさわり、セイルが身もだえしながら悲鳴を上げている。はた目で見てると、自分の体を愛撫している女の子だ。


「セイルちゃん、女の子だけど、いつも鍛えてるもんねー」

「そうじゃない。俺の好みだ」

「へ? 男のあんたが女の体になってるのに気にならないのか?」

「いや? 俺は――いやああああああーっ!」


 セイルこと勇者がいきなり奇声を発した。

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