2:王女の依頼 その2
「で、ローネは王族の身分を捨てたいって事か?」
「そうだ」
「王族だと、庶民よりいい物を食ってるだろ」
「宮殿にはほとんど帰らんし、出征中は兵士と同じ物を食べている」
「いい着物……は着てないか」
「鎧と下履きくらいだな」
「住んでるのは……」
「ほぼ天幕で折り畳みのベッドだ」
「金はもらってるんだろ? 何に使ってるんだ?」
「剣と鎧の手入れの他はたまに部下の食事に振る舞っているくらいか」
「仕事は……」
「王国と民を守るために、年の半分は戦っている」
「おまえ……働き過ぎだ。休んでいいぞ」
「うむ。私もそう思うようになった。その上、命を狙われている」
「メリットないな! それどころか返して欲しいくらいだな」
イメージしていた王族とは違うし、待遇が酷いのは分かった。
「で、具体的にどうするつもりなんだ?」
「実は5日後、婚姻の儀式があるのだ」
「誰の?」
「私のだ」
「誰と?」
「隣国の第2王子だ。年は40。私が2人目の妃になる」
「ちょっと待て。第1王女なのに、そんな相手でいいのか?」
「国の財政難を救うためだ。隣国は貿易が盛んでかなり潤っているからな」
「はー、これだけ利用しといて、金のために娘も差し出すのか。で、王のお気に入りの第2王女が後を継ぐと」
「そういうことだ」
「ちょっとは怒った方がいいんじゃないか?」
「だから、これが初めての反抗だ」
ローネが小さく笑ったのを見て、俺は心を決めた。
「よし、わかった。協力しよう。いいよな?」
「面倒なことに首を突っ込むな」
ファミが魔王の声で心底面倒そうに言う。
「こう考えろ。初代勇者の子孫に嫌がらせをしてやるんだ」
「なるほどのぅ……。ふむ、それは確かに面白い趣向かもしれん」
魔王派途端に乗り気になった。元々退屈で仕方がないんだから、焚きつけてやればやる気になるだろうと踏んでいたが、思ったよりもチョロい。
「任せておくがよい。面白い趣向を用意してやる」
魔王はファミの顔で似合わない邪悪そうな笑みを浮かべ、ふいっと元のファミのふにゃっとした顔に戻った。
「で、ローネはそれでいいのか? 王族の身分はもったいなくないのか?」
「もったいないと思うか? 邪険にされて暗殺されそうになって見殺しされそうになって。それでも王国を守るためなら我慢もしたよ。でも、今回は思った以上に堪えた。部下を危険な目に合わせてまで追い込みたいのかとな」
「そうか」
「それにその後どうするかという目的も見つけたしな」
「へえ、人生設計が出来たならよかったな」
「ああ。ただ、障害がちょっと大きそうだがな。その方がやり甲斐がある」
「やり甲斐があるのはいいな。目処が立ったら教えてくれていいか」
「もちろん、真っ先に教えよう」
ローネは笑みを浮かべて俺の肩にもたれかかった。
「むう!」
「むう!」
珍しくファミとセイルが同じ声を上げてくっついてきた。
「なんなんだ、おまえら?」
「ジェイくんのふにゃちん!」
「ジェイトは鋭いのに鈍い」
なんなんだかわからん。
と、その時、馬車の屋根にいたニャオウが窓の隙間から顔をのぞかした。
「なんか前から来るにゃ」
次の瞬間、ドンッと馬車が揺れた。




