2:討伐軍へ その1
「わかりました、ダンニャ様」
ニャオウは結局、俺のことは旦那様と呼ぶことにしたらしい。
「ところで、ダンニャ様と魔王様と勇者殿はこれからどちらのどなたを血祭りに?」
「いや、魔王討伐軍に参加しに行く途中だ」
「なるほど。魔王を討伐に……それって吾輩のことですかにゃ!?」
「そうなんだよ。困ったな」
俺はニャオウをじっと見た。
「ニャオウをふん縛って討伐軍の土産に持っていくのも手なんだけど」
「え~! ニャオウちゃんをふん縛るのは可愛そーだよー」
「そうだな。血を絞り尽くしてその血で異界の魔物を召喚するのもおもしろいぞ」
「ままま魔王様、それだけはご勘弁を!」
ひとりで相反することを平然と言うファミに、ニャオウは平伏して許しを請う。
さて、どうするかと考える。
一応、村から討伐軍に一人派遣しなきゃいけないわけで、あそこにいた討伐軍に顔を出す必要がある。
が、ファミとセイルは顔を見られてしまったからなぁ。しかも、あの噂だ。バレると面倒極まりない。俺は甲冑フル装備だったから顔は見られてないから問題ないだろうが。
「仕方ないな。とりあえず、俺だけ討伐軍に行ってくるから、おまえらは」
「えー、ファミも行くー」
「ボクも行く」
「いや、おまえら顔見られてるだろ」
「だいじょーぶだよ~。そんなにバッチリ見られてないからー」
「ボクも一瞬だけだったから無問題」
「美女ふたりって噂ははっきり見られてないからか。納得だな」
「そんなことないよー。ファミだから美女」
「ボクも美女」
「じゃあ、しっかり見られてるって主張したいんだな」
「……ジェイくん意地悪だ」
「ジェイトは意地が悪い」
「というわけで、おまえらは留守番な」
「ジェイくん、ひとりで大丈夫?」
「俺はいつもひとりでおまえらの面倒を見てきたんだよ。じゃあ、ちょっと行ってくるわ」
と、ファミとセイルに手を振って歩き出したところで思い出す。
「この甲冑のままじゃマズかった。バレるところだった。セイル、脱がしてくれ」
「それは脱げぬぞ?」
ファミの魔王声に嫌な予感がする。
「一旦契約すれば死ぬまで脱げん」
「おい」
「え~、ダメだよー。こんな硬くて大きいとファミ困っちゃうよー」
「顔を赤くして言うことじゃない! で、どういうことだ、魔王!?」
「嘘だ。便利機能がある」
「なんだよ、ビックリさせんな。で、どうやりゃいいんだ?」
「『裸が好き!』と叫ぶのだ」
「は?」
「身につける時は『装着!』と叫べ」
「いや、待て! 着る時と脱ぐ時でなんでそんなに違うんだよ!」
「初代勇者はそうやっておったぞ。文句なら初代勇者に言うがよいわ」
「くっ……」
なんか、口にしたら負けな気がするが、言わないわけにもいかない。屈辱と共に叫ぶ。
「は……裸が好きっ!」
叫んだ途端、甲冑はガシャンガシャンと派手な音を立てて全身からはがれ、消えてしまった。幸い、元の服は着たままだった。本当に裸になったらシャレにならない。
「凄い凄ーい!」
「これ、毎回言うのかよ。いったいどういう仕組みなんだよ」
「簡単な異次元収納魔法だ。まあ、人間にとっては失われた神聖魔法かもしれんがな」
「初代勇者、どこから手に入れたんだよ」
「カッコイイ、ジェイト」
セイルが興奮した面持ちで俺を見る。
そういや、セイルの趣味は俺にはよくわからんかったのだと今さらながら思い出したのだった。




