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3:初めてのピクニック その2

「えーっと、どこで食べようか? つっても、どこに何があるのか知らねーんだけど」

「ジェイくん、イケナイことしたいのー?」

「ぃえっ!?」


 ファミの静かな問いに変な声が出てしまった。


「ジェイトはリリーさんみたいな大人がいいんだね?」

「へいっ!?」


 セイルのズバッと核心を突く問いに声が裏返る。


「イケナイことって気持ちいいのかな~」

「この世のものとは思えぬ快楽ならいつでも提供してやろう。その後、精神がどうなろうと責任は持てぬが」

「いや、それは全力で遠慮します」

「そこまでいかなくても、鞭やロウソクで責めるのなら得意だが」

「勇者はそっちの気があるのか!?」

「魔族の拷問用だけど」

「キサマ、ワレの眷属をそんな技で拷問しておったのか!」

「でも、喜びやがって逆効果だったけどな」

「ジェイトにもお仕置きした方がいいかな?」

「俺は何も悪いことしてないだろ!」


 魔王と勇者まで割り込んできて、もはやなんの話かわからない。何もしてないのになんで責められなきゃいけないんだか。


「お! あそこの店がにぎわってるぞ! きっと旨いんだ。行こう」

「あからさまに話題を変えた」

「でも、ファミ、お腹すいたの~」

「誰かのせいでお昼食べ損ねたし」

「セイルちゃんひどい! ファミじゃないの! 悪いのはバミちゃんなの!」

「一食抜けたくらいでなぜそこまで非難されねばならんのだ? ワレなど何も食わずに1年過ごしたことがあったというのに」

「今日の儲けが5分の1以下になったんだよ!」


 罪の意識の欠片もない魔王に一喝し、なんとなくジト目で責められているような雰囲気を振り払おうと、酒場に歩き出した。


     ◇


 酒場は通りにまで客があふれるくらい盛況だった。

 こりゃ入れないかなと思ったら、中はそれほどでもない。騒ぐ客を外に追い出したってところだろうか。

 とにかく何か食べないとやってられない。俺たちは空いているテーブルに座った。

 すぐに女将がやってくる。


「おや、若いパーティだね。ご注文は?」

「腹が減ってるんで、お薦めですぐに出てくる物を頼むよ」

「そうだねぇ。今なら鶏の香草焼きとか、豆と根菜の煮込みとか――」

「ファミねぇ、お肉!」

「だそうだから、急いで鶏を3つと、煮込み。あとパンね」

「はいよ! 鶏豆パン3でよろしく!」


 威勢のいい声を上げ、女将は厨房に戻っていった。

 と、ひときわでかい声が響き渡った。


「おう、魔王なんざぁ、俺たちにかかりゃ瞬殺よ! 瞬殺!」


 奥のテーブル席に陣取ったパーティだった。剣士、盾兵、弓兵、魔術師、僧侶と理想的な5人組。身につけた武器や防具はかなり使い込まれてるけど、手入れも行き届いていそうで、なかなか強そうだ。


「魔王討伐隊か……」

「ファミも魔王討伐するー!」

「自分が言ってること理解してないだろ?」

「してるよー。ファミ、魔王だから、ファミを倒すんだよね?」

「倒されてもいいのか?」

「えっとー、困るー」

「あの程度の連中に倒されるわけないだろ」

「勇者に言われても嬉しくはないが、そのとおりだな」

「まあ、でも、ファミのことじゃないだろうな。ちょっと待ってろよ」


 そう言いおいて、俺は冒険者のテーブルに近づいた。


「すみませーん。魔王討伐のパーティですか?」

「なんだ、おまえ? 知らねーのか? 全員Aランカーの《炎の鷹》といやぁちょいと有名だぜ」


 リーダー格のおっさんが笑って答えた。いかつい顔ほど怖くはなさそうだ。


「おまえらも冒険者か? ランクはなんだ? Cくらいなら荷物持ちに使ってやってもいいぜ?」

「今日登録したばっかりで」

「最下位のFかよ! 一昨日きやがれ!」

「いや、パーティに入りたいとかじゃなくて、魔王の情報教えてくれませんか?」

「ギルドに行きゃいいだろ」

「あいにく、もう閉まってますから。俺ら朝には出発するんでそれまでに状況を知っておきたいなーなんて思いまして。弱小パーティが知らずに邪魔するなんてのはやりたくないですし」

「ふん、足を引っ張らないってのは殊勝な心構えだな。ようし、教えてやる」

「ありがとうございます!」


 そんなわけで、魔王軍というのがどこら辺にいて、どの規模の人間側の兵力が配置されているか丁寧に説明してくれた。やはり顔より親切だ。

 礼の代わりにエールをおごって、戻る。


「あの連中、ワレの軍勢であれば最初の戦闘で瞬殺されるレベルじゃな」

「まったく……。たかが1000年でレベルが落ちたものだな」


 隣のテーブルで魔王と勇者が嘆いているとはつゆ知らず、魔王討伐パーティはただ酒に乾杯している。


「それでー、ジェイくん、どうするのー?」

「今の魔王っていうのを見たいな」

「ファミも見たーい!」

「おまえは池をのぞき込んだら見られるだろ」

「ひどーい! ファミの顔、怖くないもん!」

「……そういう意味じゃない」

「魔王の顔って怖いのか、ゼフ?」

「可愛くはなかったな。というか、顔がどれなのかわからなかった」

「おヒゲに埋まってるの?」

「いや、触手だらけでどれが顔だか」

「え……」

「クネクネしてる?」

「まあな。クネクネというかぐちょぐちょというか……」

「ぐちょぐちょなんだ~」

「あー、ファミは昔っから虫とか蛇とか好きだったもんな」

「そーだよー。かわいいから、みんなにあげたのに逃げるんだよー。ひどくないかなぁ?」

「う、うん……」


 実をいえば、俺もプレゼントと称して大顎ムカデを綺麗な箱に入れて渡された時は絶交宣言なのかと思ったけどな。


「で、本題だ。ここを避けていけば魔王軍と出会うのは回避出来るってことだ」

「ん? 回避じゃと? 言葉使いを間違っておるぞ」

「間違ってないだろ?」

「魔王軍さんに会いに行くの間違いだよねー」

「ちょっと待て! ファミまで好戦的なことを言い出したぞ」

「えー? だって、魔王さんに会いに行くって話だったよねー?」

「いつの間にそうなったんだ?」

「そうなるだろうな。オレの存在理由からすれば」

「魔王を倒すこと以外に存在理由ないのか?」

「ない!」

「本物はここにいるのに?」

「たとえどんな魔王だろうがオレは倒す!」

「……そうか。頑張ってくれ」

「もちろん、キサマも行くのだ!」

「ジェイくんも行くよね?」

「勝手にしてくれ……」

「わーい、ジェイくんと一緒に魔王退治だー」

「今度こそ俺の初めての――」

「ピクニックじゃねーの!」


 つーか、魔王が魔王退治ってどうなんだ、これ?


2章おわりっ!

さあ、ストック分が少なくなってきたぞ。

結構焦るな、これ。

過去の2作は8割方書き終わってからアップし始めたので余裕があったんですが、

今回はスタートダッシュ分しか書いてないので、次週以降は余裕がなくなってきます。

コロナ禍に負けずに頑張りましょう!

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