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3:初めてのピクニック その1

「薬草13束でどうしてこんなに時間かかったの、ジェイトくん? お姉さん、最低100束って言ったよね?」


 リリーが心底から不思議そうな顔で訊いた。怒りとか呆れじゃなくて、本当に不思議に思っているのがわかる。そんな声だ。

 すでに陽は落ち、ギルドの向かい側にある酒場では飲んだくれどもが気勢を上げている。

 あの後、石像のようになってピクニックピクニックと繰り返しているセイルではなくて勇者をなだめ、なんとか生き残りの薬草を集めたせいで、遅くなったのだ。


「どうしてかな? なんか、生えてなかったんですよね……」


 正確には生えていた。過去形。


「生えてなかった?」

「なんかねー、焼け野原になってて……あはは」


 実際、あの辺りは焼け野原になって麦畑も一部被害を被っている。それを隠すのは不自然だろうと思ったわけだ。いずれ誰かが見つけるだろうし、麦畑の農家も被害を訴えるだろうし。


「焼け野原?」

「そう。焼き畑農業でもしたんですかね~」

「まさか……もう、魔王軍が……」


 深刻な顔でつぶやくリリーさんは受付嬢というより、戦士って印象がある。これはこれでありだ。凛々しい。


「魔王軍じゃないと思うよ。軍では……」

「雷でも落ちたのかも」


 セイルが真剣な顔で言うと、リリーさんは少し考えてうなずいた。


「そうね。いきなりそんな近くに魔王軍が現れるわけはないわよね。ごめんなさいね。なんか初めてなのに苦労させちゃったみたいね」

「いや、オレらの不手際ですよ。な?」

「……そうですぅ」

「確かに……」

「でしょ?」


 ファミとセイルの疲れ切った様子を示すと、リリーさんも納得してくれる。


「そう……みたいね。とにかく、今日はゆっくり寝て。あ、宿は?」

「もっと早く戻るつもりだったから、まだ決めてなかった」

「じゃあ、ギルドの三階にギルド員用の部屋があるから、使ってくれていいわ」

「ホント!? 助かる!」

「ただし、イケナイことしちゃダメだからね」

「イケナイこと?」

「ジェイトくんも男の子でしょ? でも、他のお客さんの邪魔になるからね。もし、したくなったら、お姉さんが相手してあげるから……」


 リリーさんの表情がいきなり強ばった。ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。

 背中に突き刺さってくるふたりの殺意がもの凄い。振り返るのが怖いので、そのままの姿勢で早口で言うのが精一杯。


「どっ、どこかでご飯食べてから戻って来ます!」

「あ、ああ……。そうね。気をつけて行ってきて。というか、気をつけなさいね」


 リリーさんは引きつった顔で、俺に健闘を祈るといわんばかりに力強くうなずいた。何を見たのか訊くのも怖い。

 ぎこちなく歩き出した背後から、リリーさんのつぶやきが聞こえてきた。


「このあたしが小娘たちに気圧されるなんてね……。ジェイトくん、苦労しそうねぇ」


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