【第1話】雨曝し
【注意】
・こちらの作品は上海アリス幻樂団様の『東方Project』を原作とした二次創作小説です。
・東方Projectのキャラが登場しますが、その設定やキャライメージについては作者の独自解釈が含まれており、原作にないものが多く含まれます。ご注意下さい。
・誤字や脱字がありましたら、作者にお伝え頂けると嬉しいです。報告を受け次第訂正するようにしております。
『私は忘れないよ。』
独り、雨の降る街を歩きながら呟く。
私は忘れ傘の付喪神、多々良小傘。
私には誰にも教えていない、もちろん誰も知る由のない、忘れることの出来ない過去がある。
どれほど昔のことだったか。詳しくは思い出せない程昔のことである。
私はただの傘だった。
と言っても、現在使われているような機能の良い物でもないし、カラフルでもオシャレでもない、そして強くもない傘だった。
所謂『唐傘』というものであった。
自慢ではないが、私は長いこと、主人を雨風から護った。両手を使っても数え切れないくらいの年月、彼を護り続けた。
しかし、忘れもしないあの日、酷い雨風に襲われたあの日。
あの日もいつもと同じように、主人を雨風から護ろうと、必死だった。しかし、その雨風に対抗するには私は余りに脆かった。
強い雨風を受け、骨は捻じ曲がり、破けて、それはそれは見るに堪えない酷い有様であった。
それでも私は主人を護り続けた。護り続けた、というのは語弊がある。護り続けようと頑張り抜いた。こちらの方が正しいだろうか。
しかし主人はそんな私を、途中彼が雨宿りに立ち寄った茶屋の店先に置き去りにしてしまった。
彼はこれまで、私を置き忘れたことはなかった。
それに、彼が茶屋から出てきた時も雨風は激しい状態だった。むしろより一層、勢いを増していた。
だから、私が忘れ去られたというわけではないのだろう。
私は棄てられたのだ。
その後辺り一帯は、近隣河川の堤防の決壊の影響を受け、浸水してしまった。
今で言う『台風』がその時正に猛威を奮っていたのである。
私は溢れ出た川の流れのままに流されて行った。
ボロボロの私には、もう行く宛などなかった。
だからもう、どうにでもなれとさえ思った。
…しかしハッと気がついた時には、今の姿になっていた。私は付喪神として甦ったのであった。
【作者の一言】
前回の小説が完結してからそれほど時間は経っておりませんが、新作の制作を始めました。
…というよりかは1話出さないとモチベが上がらないので作ったやつをとりあえず出しました。
そんなに長く時間が経たないうちに完結させるように頑張ります。
今回のお話ですが、テーマは『忘却』となっております。
第1話は多々良小傘の過去についてでした。2話以降、物語が動き出しますのでお楽しみに。