第七話「お母さん」
それは、平凡な豚とお母さんが駆け落ちして、三男が生まれたすぐ後くらいのことです。
「フフ〜♪」
お母さんは、鼻歌を歌いながら料理を作っていました。
「フフ〜♪」
お母さんは、できあがったシチューを、お皿に盛り付けました。そしてテーブルまでシチューを運ぶと、エプロンのポケットから小さな小瓶を取り出しました。中に入っているのは、白い粉の様なものです。
「フフフ……」
お母さんはビンの中の|青酸カリ《アーモンド臭のする粉末》を、お父さんのシチューに振りかけました。持ってきた予備のスプーンでかき混ぜると、たちまち|青酸カリ《アーモンド臭のする粉末》は見えなくなりました。
一通り混ぜたところで、お母さんはふと気付きました。
――そう言やぁ、バカにかけてある保険って、自然災害で逝くのが一番高いんだっけ?
お母さんは、お父さんのシチューを持って外に出ると、皿ごと湖に放り捨てました。
――ここは自然災害なんて少ないし、どう殺ろうかねぇ……
そんなことを考えながら、お母さんは家の方へと戻って行きました。
翌日、湖にはたくさんの魚が浮いていましたとさ(めでたし、めでたし? いえ、違います!)
◇ ◇ ◇
数ヶ月すると、(都合の良いことに)近くの休火山の活動が活発になりました。
家事の合間にぼんやりとそれを眺めていたお母さんは、とある事を思い付きました。
お母さんは早速街へ出かけると、ニトログリセリンや導線、スイッチなど、それらを格安で手に入れました。
お母さんは、バカに気付かれないように(と、いってもバカなので、気付くものも気付きませんが)注意しながら、ダイナマイトと爆破装置を作り上げました。
その夜、帰ってきたお父さんに、お母さんは言いました。
「次の日曜に、山に行きたいんだけどぉ」
それに対してバカは、大喜びで即答すると、今日行くわけでもないのに準備を始めました。
彼の命もあと数日。
◇ ◇ ◇
―数日後―
遂に日曜日がやってきました。
その日の朝早くに、お母さんは音も無く、|例のブツ《ダイナマイトと爆破装置》を持って家を出ました。
普通なら一時間はかかるところを、お母さんは五分で登りました。そして、過去に身に付けた経験を活かして、火口の近くにはダイナマイトを、人目につかない所に爆破装置を、それぞれ仕掛けました。勿論、導線には土をかけて、絶対に見付けられないようにしました。
そしてお母さんは、また素早く家に戻ると、何食わぬ顔で朝食を準備し始めました。
しばらくして、バカが起きてきました。
二人はその後すぐに家を出て、二時間後には目的地に着きました。(お母さんなら約十分)
お母さんは、辺りに目撃者がいるのを確認すると、
「トイレに行ってくるわ」
と、バカに言いました。
そうしてお母さんは急いで爆破装置の所に行くと、バカが火口に近付くのを待ちました。しかし――
バカはなかなか近付きません。
――あんのバカがぁ――!!
お母さんは、仕方なく戻るとこう言いました。
「どうしましょう、大切な結婚指輪を、火口に落としてしまったの」
指輪の無い左手をバカに見せましたが、勿論、落としてなどいません。結婚指輪は、とっくの昔に換金してしまったのですから。
バカがそれを確認して、取ろうとして火口の近くの地面に降りようとするのを見て、お母さんはすかさず言いました。
「ごめんなさい、またトイレ」
お母さんは爆破装置の前に行くと、スイッチに手をかけて、周囲をよく確認しました。そこにいた数匹の豚が、バカが火口に降りていくのを見ていました。
そして、お母さんは心の中で高らかに叫びました。
――死ねっ!!
思い切りスイッチを降ろすと、直後にダイナマイトが爆発して、その衝撃で火山の方も噴火しました。
勿論、バカも木っ端微塵☆!
噴火は数時間で収まりました。
お母さんは、爆破装置と導線(その他諸々)を火口に投げ入れて、証拠隠滅も謀りました。ここに、完全犯罪が成立したのです。
この噴火は側にいた観光客二人も巻き込んで(二人とも死亡)、勿論バカは即死なわけでして、けれども、数日のうちに話題に上がることもなくなりました。
その時の事を、お母さんはこう語りました。曰く、「失敗した」と。
警察には疑われませんでしたが(それはいつものこと)、あの事が事故扱いされてしまったことを、お母さんは悔やんでいるのでした。
「あーあ、あの時バカがとっとと火口に近付いてればなぁ」
タバコ(と言う名の別の物)を吹かしながら、お母さんはあの時の事を思い出して、こう漏らしました。しかし、顔はそれ程残念そうではありませんでした。
―めでたし、めでたし(?)―
こんな稚拙で滅茶苦茶なお話を、ここまで読んでいただきありがとうございます。
この「四匹の子豚」は、小学生の時に書いた、おそらく一番初めの物語です。
投稿の際に、どうにか直そうと試みたのですが、何も考えずに書いたもので、そもそもの成り立ちからしておかしいという根本的な問題から、随所に介入して突っ込みを入れていた「通行人A」なる人物を削除しただけでの投稿となりました。
今考えると、もらい物のWindows95でよくこんな長い文章を書いたものだと思います。起動の遅さとフリーズ率の高さ、画面の見にくさは今の比ではなかったので……。
有名童話のパロディはいくつか書いていますが、原点であるこのお話の通り、どれもブラックユーモア路線に走っています。自分で言うのもなんですが、一体どんな小学生だったんでしょう。
まだまだ未熟ですが、これからもより面白い物語が書けるよう精進していきますので、時々覘きに来ていただけると幸いです。