第六話「お父さん」
それは昔……じゃないな、結構最近のこと――
「それでは、こちらの内容でよろしいでしょうか?」
お母さんは当時バツ一で、既に長男と次男は生まれており、お腹には三男がいました。
「はい、それで。」
保険の契約を終えて帰ろうとしていたお母さんに、隣で契約していた人の契約書が見えました。
――こ、これは……!
そこに記入されていた、死亡時に降りる保険金の額、「伏字円」。その桁違いな金額に、お母さんの目は一瞬にして¥マークに……。
お母さんはそっと外に出ると、豚が出てくるまで隠れて待ちました。そして、その後をこっそり尾行して家を突き止めました。
豚が入っていった家は、有名な貴族の家でした。
――ふふふふ……
自分の家へと戻るお母さんの顔には、勝ち誇った笑みが浮かんでいました。
◇ ◇ ◇
―数日後、とあるお祭り会場―
「何をするんですか!」
お母さんは、暴力団に絡まれていました。勿論、普段のお母さんなら、ものの三秒であの世逝きです。
しかしこの日、お母さんは陰謀のために、わざと暴力団に喧嘩を売ったのでした。
それは、昨日のこと。
“……ガ……ガガ……「明日」……ガ……「――祭り」……「行――」……ガガ………”
お母さんは、この間尾行ついでに仕掛けてきた盗聴器の音に、耳を傾けていました。
「明日の祭りね、……と、言うことは、○×公園の……」
……と、言うわけで今日、こうなっているのでした。
「な……何を……やっている……ん、だぁ……」
絡まれている(フリ)お母さんに、かなりビクついた豚が声をかけました。
「あぁ?!」
無論、こんな豚が、暴力団に敵うはずもなく……
バキッ――(事情により、省略いたします)――
豚が倒れた所で、お母さんは睡眠薬を染み込ませてあるハンカチを取り出すと、それを嗅がせて、豚に本性がバレないようにしました。そして、暴力団を一瞬で冥界逝きにしました(勿論、死体処理も完璧です)。
数時間後、豚は、ベンチの上で目を覚ましました。
「……? ……いててて……」
お母さんは、それを見計らって声をかけました。
「大丈夫ですかぁ?」
「え? ……あ、はい。」
豚は、事情が飲み込めないまま、返事をしました。
……これが、二人の最初の出会いでした。
◇ ◇ ◇
この後、二人は駆け落ちし、四男が生まれて今に至っているのです。
……え? 「何故二人が結婚したか」って? それは、お母さんの数々の策略のたまものです。
一部を語るなら、例えば………お腹にいる三男をお父さんの子だと言ったのは、出会って三日のことだし……。それがお父さんに駆け落ちを決意させたことも事実です。それからえっと……
四男の生まれる二十日前に、お父さんは不審な事故死を遂げました。
……それにはお母さんが関与しているのですが……
――あまりに生々しいので、後々明らかにしていきましょう。……多分。
注:あくまで予定(は未定であって、決定ではない)です。
―めでたし、めでたし(?)―