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四匹の子豚  作者: 柊 サラ
4/7

第四話「オオカミ」

 それは、オオカミが四男に売られる前の話――


 オオカミには、五匹の子供がいました。

 そこそこな奥さんもいて、その日暮の生活でしたが、始めのうちはとても仲の良い夫婦でした。

 しかし、最近は仲が悪く、毎日けんかばかりしていました。

「とーちゃーん、腹減ったよぉ〜」

「何か食べたいぃ〜」

「寒いよぅ〜」

「家建ててよー」

「ねぇー、とーちゃーん!」

 いつものようにしつこく子供達にせがまれて、オオカミは、食べ物を探しに行きました。


―数時間後―

「はぁぁぁ〜……」

 オオカミは暗くなるまで探しましたが、結局何も獲物が見付からずに、大きな溜め息を付きながら帰って来ました。

 ……と、数時間前までそこに居たはずの家族はおらず、一枚の置手紙だけがありました。


『子供達と実家に帰ります。勝手にして下さい。       ……さようなら。

        ○月×日 子供達と共に、 オオカミの妻』

たったそれだけ書かれた手紙と一緒に、半分が記入済みの離婚届が入っていました。

 オオカミは、通算五十六回目の失恋をしました。


―その夜―

「ウイィーック」

 元々、アルコールは全く駄目なオオカミでしたが、失恋したショックで、ヤケ酒をしました。

「なんで……ヒック……オレが……ヒック……――」

 オオカミは、明け方までお酒を飲み続けました。


   ◇ ◇ ◇


―翌日―

 オオカミは、二日酔いの中、湖まで食料を探しに行きました。

「ウイーッく、腹減ったなぁ…………ん?」

 湖畔を歩いていると、四つの家を見付けました。

「旨そうだ」

 オオカミは、中に居る子豚の匂いを嗅ぎ付けました。

 藁と木の家に放火して、子豚を二匹食べました。

――うぅぅ……旨いっ!!!

 実に数年ぶりの御馳走は、ガリガリに痩せたオオカミにとって、最上級の食べ物に感じられました。

 ここまで来ると、残りの子豚で憂さ晴らしをしようと考えました。

「うーん」

 次の家はレンガの家だったので、オオカミは真剣に考えました。

 もう少しで名案が浮かびそうになった時でした。

「――何をしているんだ!」

 オオカミは、通りかかった警察(サツ)に見付かって、追われる破目になりました。

「くそぉっ!」

 オオカミは、取り合えず逃げました。


「ハァ……ハァ……」

――何てしつこいんだ……

 始めはすぐに諦めると思っていた警察(サツ)は、しつこくオオカミを追いかけました。

――何とかにげないと………ん?

 オオカミは、大きな河を見付けました。

――よしっ!!


 ―――ざっぱぁん!!


 オオカミは、河に飛び込みました。

「うぅ……」

 警察(サツ)はカナヅチだったため、オオカミを見失いました。


 ―――ざばぁん


 数キロメートル泳ぐと、オオカミは河から上がって休みました。


  ◇◇ ◇


―数ヵ月後―

 体力を回復させたオオカミは、レンガの家の前で張り込みました。

 憂さ晴らしをしたいが為に、待つこと数分。油断して出てきた子豚に、オオカミは襲いかかりました。

「ぐはぁっ……」

 その子豚を生ハムにして、オオカミは売り飛ばしました。久々の現金収入で、四男を諦めてこれを持ってもう一度奥さんに頼み込めば、あんなことにはならなかったでしょう。

 しかしオオカミは、調子に乗って四男を売ろうとしました。

「アーッハッハァー!」

 オオカミが上機嫌な高笑いと共に、意気揚々と湖畔に向かう途中のことでした。

「あっ! お前は!」

 再び警察(サツ)に見付かってしまい、オオカミは逃亡生活を送ることになりました。


「しつこいヤツめぇ……」

 警察(サツ)から逃げ隠れするうちに、数ヶ月が経ちました。

「うぅ……ぅぅ……」

 ほとんど死にそうになっているオオカミは、最後の力を振り絞って、湖中央の四男の家に向かって、泳ぎだしました。

――殺してやる……

 と、奥さんに対する不満か、警察(サツ)に対する恨みかを勘違いして、そう念じながら。この時、オオカミは完全に正気を失っていました。ここで正気を取り戻していたなら、あんなことにはならなかったでしょう。


 そして、オオカミは四男の創った罠に掛かって、その幸薄な一生を終えました。


 …………その後、オオカミは成仏せずに、今も幽霊としてこの世を彷徨っているのでした。



  ―めでたし、めでたし(?)―

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