表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四匹の子豚  作者: 柊 サラ
3/7

第三話「四男」

*これは、四男の、今から少し昔の物語です。


それは、四男が生後二日の時でした。既にお父さんは居らず、お母さんは、女手一つで四兄弟達を育てていました。

「バーカ、バーカ」

 お母さんが食事を作っていると、後ろから声が聞こえた様な気がしました。振り向いたお母さんは、驚きのあまり声が出せませんでした。

 なんと、喋ったのは、まだ生まれて間もない四男だったのです。


   ◇ ◇ ◇


 そんな事があってから、一ヵ月後のことです。

「やーい、ノロマ! デーブ!」

 四男は、兄弟や近所の子豚達にイジメられていました。

 その頃の四男は、オオカミを殺っ(売り飛ばし)た時の性格と正反対の性格で、とてもおとなしくて内気な子豚だったのです。その為、いつもストレスを溜めていました。

 そして、今日。そのストレスがピークに達しようとしていました。

「――何とか言えよ! この凡豚!!」

 ――ブチッ……

 実の兄である長男の一言に、四男は遂にキレました。

「うるさいんだよ――とっとと逝け!」

 四男は、おもむろに藁人形を取り出すと、呆気に取られている長男から抜いた毛を入れて、心臓の辺りに力一杯五寸釘を打ち込みました。

「うっ――」

 とたん、長男は、胸を押さえ込んでうずくまりました。

 幸い、四男が呪いにハマってまだ日が浅かった為、長男は三日ほど寝込んだだけで済みましたが、あと四日遅ければ、完璧な藁人形が完成していて、彼の命は無かったでしょう。

 お母さんは、(面白がっていたので)四男に

「駄目よ〜」

と、優しく怒っただけでした。


 四男の噂は、あっと言う間に広がりました。

「こんにちは」

 三日後、きちんとした身なりの豚が訪ねて来ました。

「何か用ですかぁ?」

 お母さんは、いかにも面倒くさそうに返事をしました。

「噂は伺いました。今日は、その事件(こと)でお願いがありまして――」

 そんな態度は気にも留めず、豚は書類を取り出してお母さんに渡しました。

「……魔術研究会ぃ? 何それ」

 お母さんは、ますます胡散臭そうに豚を見返しました。四男は横で聞いていましたが、取り合えず黙っていました。

 その視線をさらりと流して、豚はお母さんに言いました。

「早速ですが、息子さんを、是非、うちの会にと思いまして。――勿論、謝礼はお出ししますから」

 是非、の部分を強調して言う豚の、『謝礼』の一言に、お母さんはピクリと反応しました。

――もしかして……

 四男の脳裏に、確信に近い不安が掠めました。

「是非! お願いしますぅ!!」

 詰め寄るようにそう言ったお母さんの目は、既に¥マークに変わっていました。

「それは良かった」

 豚は、満足そうに何度も頷いていました。

 四男は、目の前で謝礼を受け取るお母さんを見ながら、ただ呆然としていました。

「――それでは、帰るとします。四男さん、行きましょう」

 ようやく我に返った四男は、慌ててお母さんに訴えました。

「や、ヤダよ! 行きたくないよ!」

 振り向いたお母さんは、睨みを効かせて脅したっぷりに言い放ちました。

「問答無用! 行きなさい!!」

「ひィ――」

 四男は、渋々豚に付いて行きました。


   ◇ ◇ ◇


 『魔術研究会』に来て三日。

 四男は、

――ここに来たのも仕方がない

と、思うようになりました。


 更に四日。初めは優しかった会の(大人)達は、日に日に厳しくなってきました。

「四男! とっとと掃除しろっ!!」

 毎日、毎日。四男は魔術をやらせてもらえず、掃除などの雑用をやらされました。

――こいつら……ぶっ殺す!


 恨みが溜まりに溜まったある日、遂に、四男は行動に出ました。

――死ねばいいんだ、呪い殺してやる、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝け、逝――……

 四男は、一晩中恨みの念を飛ばして、まだ力が未熟だったために殺すことは出来ませんでしたが、『魔術研究会』の(大人)達全員の正気を失わさせました。

 四男は、その日のうちにお金を盗み出して、二日後、家に帰り着きました。


   ◇ ◇ ◇


 その後、四男はそのお金を、新たな趣味の発明に使いました。


 ちなみに、四男の性格は、この時から捻くれたのでした。それから、四男の発明には、『魔術研究会』での体験(経験)が大いに役立っているのでした。



  ―めでたし、めでたし(?)―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ