第一話「四匹の子豚」
これはグリム童話「三匹の子豚」のパロディです。
テンションについていけない方や、読んでいて合わないと感じた方は、それ以上読まないことをおすすめします。
とある所に四匹の子豚がいました。
ある日、お母さんが、子豚達に言いました。
「お前達も、もうそこそこ大きくなったんだから、自分で家を造ってそこに住みなっ! 嫌とは言わせないよ!」
子豚達は、お母さんに脅されて、渋々出て行きました。
長男は、ものの数時間で、近く(お母さんの家から五〇メートル離れている)に藁の家を建てました。
次男は、数日で、少し遠く(と言っても二〇〇メートル程ですが……)に木の家を建てました。
三男は、数ヶ月かかって、レンガの家を建てました。
さあ、四男はと言うと………………。
コイツは、相当な面倒臭がりでした。超B型人格です。
しかし、B型と言えば、気に入った事には熱中するタイプ。コイツは、家造りなどが趣味でした。
近くの湖に浮かぶ小さな小島に、せっせと木材を運んで、次男よりも頑丈な木の家を一ヶ月程で建てました。
◇ ◇ ◇
―一年後―
四匹は、とりあえず平和に暮らしていました。
……が、この日、とんでもない事件が起こるのでした。
お腹をすかせたオオカミが、姿を現したのです。
「ウィーっく、腹減ったなぁ……」
オオカミは酔っていました。
「なんか肉ないかなぁ……ん?」
オオカミは、四匹が建てた四つの家を見つけました。
「――旨そうだ」
先程の酔いどれはどこへやら、オオカミは、意気揚々に一番手頃な藁の家に放火しました。
中にいた長男はそんな放火に気付く様子もなく、そして気付いた時には手遅れで、そのまま焼け死んでしまいました。
オオカミは、こんがりと焼けた長男を、美味しそうにペロッっと平らげました。
「ゲプッ」
大きなゲップをして、次にオオカミは木の家へと向かって行きました。同じように放火され、木の家はあっと言う間に燃えていきました。
次男は、どこから持ち出したのか、バターと醤油を塗られて、オオカミに食べられてしまいました。
お腹もそこそこに満たされたオオカミは、次にレンガの家へと向かいました。
「うーん」
ここで、オオカミは困りました。
「レンガの家かぁ……」
レンガの家は、火を付けてもあまり燃えません。
数分後、考え込んでいたオオカミは、偶然通りかかった警察に見付かって、「放火及び殺豚の刑」で追われる破目になりました。
◇ ◇ ◇
―数週間後―
やっと警察を振り切ったオオカミが、再び現れました。
「ハ……ハァ……ハァ……」
息を切らして、オオカミは、レンガの家の近くで張り込みました。すぐに、すっかり油断した三男が、
「にへらぁ〜」
と、出てきました。
そこを、オオカミはすかさず手刀で首の後ろを殴り、気絶をさせると、水に沈めて溺死させました。
さほどお腹の空いていなかったオオカミは、三男を生ハムにして売りさばきました。
続いて、オオカミは四男の家へと向かいました。……が、また警察に見付かって、再び逃亡する破目になりました。
◇ ◇ ◇
―数ヵ月後―
オオカミは戻ってきました。
湖の畔に立ったオオカミは、四男を殺して高く売るために、四男の家に向かって泳ぎ始めました。
しかし、渡り始めた直後。
「イテッ!!」
足に激痛を感じて、オオカミは大きく叫びました。
「ッテェー、何だよ!」
見ると、足に、釣り針がものの見事にザックリと、突き刺さっていました。
引き抜いた針を忌々し気に投げ捨てて、オオカミは、再び泳ぎ出しました。
数メートルもいかないうちに、今度はお腹を締め付けられる感じがしました。見ると、縄が幾重にもなって食い込みながら締め付けていました。
仕方なく縄を外し、思い切り息を吸い込むと、オオカミは水中に潜水しました。すると……
「ッ!!」
オオカミは目を疑いました。
水中には本来、何もないはずです。が、しかし、この湖はそこら中が罠だらけです。
――これは……何なんだ……。
あまりの出来事に、オオカミはしばらく呆気にとられて、ただ、呆然としていました。
実は、この罠は、全て四男が創ったものでした。超B型人格の四男は、罠を創るのも趣味の一つでした。家を建ててから、もう一年以上経っています。その間、四男は毎日罠を創り続けていたのでした。
その数、実に二〇〇〇個以上。
オオカミは、それでも泳ぎ続けました。
そして、遂に、オオカミ最期の時が来ました。
「ぐあぁ!」
オオカミは、四男の仕掛けた魚用ネットに掛かってしまいました。
――ぐ……ぐるじ……ぃ……
息が出来ずに、オオカミは溺れ死にました。
―数十分後―
四男は、いつものように網の様子を見に来ました。
「お……大漁だ」
四男は、オオカミの掛かった網を引き上げると、ドサリと地面に置きました。
「オオカミかぁ……高く売れそうだな」
取れた魚は干物にされ、四男を高く売ろうとしたオオカミは、その場でさばかれ、翌日、市場で高く売られましたとさ。(裏ルートを使ったので警察にはばれなかったようですよ。)
◇ ◇ ◇
ちなみに、四男がその後どうしたかと言うと、オオカミが思いの外高く売れたので、儲けたお金で趣味の一つである商売をし、死ぬまでに十億の大金を稼いだそうです。
そして、結構長生きしたみたいですよ。
更にちなみに、四男は、他の兄弟達がオオカミに殺られた時、こう……思っていたんですよ。
――(バカな)兄さん達がいなくなって好都合 だ。そのオオカミを捕まえて、高く売ってやろう……。
どこまでも腹黒い、四男でありました。
―めでたし、めでたし(?)―