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花影にゆく  作者: 百瀬ゆかり
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0 セピア色の出会い

この度は『花影にゆく』をクリックして頂きありがとうございます。前作品である『朝凪が連れていく』も読んで頂けると嬉しいです。


主にTwitterの方で更新のお知らせをしたいと思いますので良かったら覗いて見てください。

それは記憶が色褪せるくらい、昔のこと。

家庭の事情で一時的に施設預かりになっていた僕は遠い親戚に預けられることになった。


父方の親戚、今思えばその親戚は父の弟。

叔父の家庭に引き取られることとなったのだ。

急に田舎に引っ越すことになって辛かろう、これからは叔父さん達が君の保護者になるから甘えてくれると嬉しいなと言っていたのも覚えている。


面倒とか思ってなかったのかと不安になった。

よく聞く話は親戚の子とはいえ厄介者扱いを受けやすいことは知っている。だから初めは期待なんて持たなかった。卒なくこなせば楽な関係、と。


引き取られて3日目の夜。

堪えきれないほどに怖い夢を見て、思わず絶叫してしまった。

その声を聞きつけて叔父と叔母が部屋に駆け込んできたことも覚えている。迷惑をかけてしまった、そう思っても声が出ない。涙と震えだけが身体を支配して、ごめんなさいとも紡げずに。


その時に1番驚いたのは、2人が強く抱きしめてくれたことだった。叔母がもう大丈夫、あなたは独りじゃないのよ。と言葉を掛けてくれたのだ。

なんで独りだと思ったのか。わからない。

幼いなりに記憶が曖昧なのだ。

でも、僕は強い悲しみと寂しさに覆われていたことに気づけた時には2人の腕の中でわんわんと泣いた。


その間、叔父と叔母が頭を撫でたり背中を摩ってくれた。両親以外の前で大声を上げて泣いてしまったことは恥ずかしかったけど2人の愛に触れた時は涙を浮かべてしまうくらい幼心でも嬉しかったのは覚えている。


長い時間をかけて、叔父と叔母と本当に家族になって外にも出られるようになった頃。叔母に連れられて商店街へ買い物へ向かった。その頃には叔母のことを母さんと呼ぶようになっていた。


『あら、奈緒子さんじゃないの』


精肉屋の前で合挽き肉を包んでもらっている間に叔母が誰かに呼び止められていた。今夜はハンバーグだと浮き足立っていると知らない女の人が笑みを浮かべてながらこっちへ歩み寄ってきた。


『あら、晴香さんじゃない!……そうだ悠二君、挨拶できるかな』


叔母に肩を持たれ、なんだろうと思うと。

その人の腕に布に包まれた何かを持っているのに気付いた。


『悠二です。ごあいさつおくれました!』


『まぁ、敬語が使えるなんで偉いわねぇ』


叔父と練習した言葉をそのまま言っただけなんだけどそれは正解のようだった。不意に目の高さが一緒になった時に大事そうに持っていたものを見せてくれた。


『私の子、佳乃って言うの。悠二君が仲良くしてくれたら嬉しいな』


大きな瞳がこちらを凝視した時は幼いなりに恐怖を覚えて叔母のスカートを掴んでしまう。叔母はまだ怖いのよねぇ〜と軽く流していた。


それが僕と彼女が出会った記憶。

彼女と出会ったことで、小さいながらも何か救われたような気がしたんだ。

過去作品の改稿+転載なので

偶数日の午前10:00更新にする予定です。


あくまで目安です。

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