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運命の日~夜明けの輝星~  作者: 上総海椰
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4-3 白の機兵の最期

月面にその星を見てたたずむのは一人の男。

「始まったな」

その惑星を眼下に捉えかつて魔王だった男は再び『世界振』が始まったことを月面上から見ていた。

ドーラの放った『世界振』が放射状に世界全体に見えない波となり、世界の理を書き換えていく。


男はその様子を城壁の上から見下ろしていた。

魔法でつくられた嵐。

飛ぶことのできない動物は地に足をつけていなければその力を発揮することができない。

それは『パオベイアの機兵』とて例外ではない。

だがどんな秀でた魔法使いだとしてもこれほどの規模の魔法を維持するだけでも相当の魔力を消費する。

まして相手は『パオベイアの機兵』。

嵐の中とはいえ魔力を吸収し、自身の力に変換している。

既に『パオベイアの機兵』は目を赤く光らせている。

これは暴走状態に入ったことを示す。


魔力が尽きた時がお前たちの最後だ。

道化の男は夢想していた。

『パオベイアの機兵』がこの地を蹂躙する様を。


気が付けば背後の一人の魔法使いが何やら魔法式を展開し始めた。

怖ろしく高密度の魔法式である。

周囲は高密度の魔法式で包み、文字すら読むことのできないほどの魔法。

男は一瞬動揺を見せたが、すぐに平常心に戻る。

「たとえどんな魔法であろうとこの『パオベイアの機兵』には無意味ですよう」

男は勝ちを確信していた。

腕をミイドリイクで拾ってから彼は『パオベイアの機兵』に対しての研究を続けていた。

どんな過酷な環境においても、どんな状況に置かれてもその再生能力は衰えることはなかった。

その上暴走すればあらゆる物質、魔力を取り込み無限に増殖するという厄介極まりない存在。

話には聞いていたがその制御には細心の注意を払った。

その怖ろしいまでの再生能力で片腕からの再生を可能とした。

本来ならば数千年と言う時間を必要とするものをわずか二年で彼はそれを作り出した。

そして現在の白の機兵の兵団を作り上げたのだ。


不意に一体の白い機兵の腕がその胴体から離れる。

「一体何を…」

男は一瞬焦るがすぐに平常心を取り戻す。

どんな魔法でも『パオベイアの機兵』を完全破壊することなどできない。

たとえ破壊されたとしても予備の『パオベイアの機兵』なら研究所にいくらでもある。


理の連鎖破綻により、理の結晶であるパオベイアの機兵は塵に帰っていく。

『星の民』により作られた『パオベイアの機兵』を構成するのは理の塊。

物理的に壊すことは困難かも知れないが、一つの理を崩すだけでそれは自壊していく脆いもの。


道化の恰好をした男は城壁の上から『パオベイアの機兵』が塵となって消え失せるのを見ていた。

すぐさま研究所を遠視するがそこでも『パオベイアの機兵』は根こそぎ塵となった。

「馬鹿な…一体何が起きている」

その男は何が起きているのかすらわからない。

理解できない事象を目の当たりにし男はただその場に立っていることしかできない。


無敵のはずの白の機兵団がカタチを残さずこの世から姿を消した。。

『パオベイアの機兵』はこの星から文字通り排除されたのだ。


「ああ…私の計画が…」

男は膝を折り、手をつく。

男自身の計画が音を立てて崩れ去っていくのを感じていた。

そして何が起きたのかにようやく思い至る。


それは魔法などという生易しいものではない。

世界の理そのものを改ざんする危険極まりないものだ。


それは神の所業。

その気になれば種族を丸ごと宇宙から消し去ることも、世を照らす星すら消し去ることも可能。

だからこそ禁じ手の一つであり、文字通りそれを無作為に使えばこの世界から排除されかねない危険な行為である。

短期間に二度も使ったことが知られればこちらに注意が向く。

幾らこちらに意識を割くことができなくても、さすがに意図的にそれが引き起こされたモノだと気付くだろう。

そうすれば奴等がこの世界にやってくる。

それだけは絶対に避けなければならなかった。

どんな状況だとしても奴等は二度目は見逃さないはずだ。

理を変えるということはこの宇宙の存在そのものすら揺さぶる禁忌中の禁忌なのだから。


男は仮面をつけ、宙を浮く一人の男の姿を見据える。

こんな馬鹿げたことができるのは一人しか知らない。

「…先生…やはりあなたはお強い。だが…私はまだ終わらない。終わるわけにはいかない…」

ふらりとその男は立ち上がるとその場…その城から姿を消した。



「そろそろ始めるとしよう…」

クファトスはその『世界振』がその星を覆うのを見届けると足元に魔力を込める。

月面上にクファトスを中心として巨大な魔方陣が形成されていく。

「あるべき姿に」

そうクファトスが告げると月面上に描かれた魔方陣が光とともに発動する。


『世界振』が再び世界を駆け巡る。


『世界振』により書き換えられた世界が、再び『世界振』により書き直しされていく。

「…何?」

フィアは不意に空に浮かぶ月を見上げる。

今、ドーラの行った『世界振』と同じものを感じ取った。

この振動の発信源は頭上からだ。

今感じ取ったことだ違えることなどない。

「理が再び書き直されたのです」

オルカが淡々とその事実を口にする。

「それじゃ…」

フィアは砂となった『パオベイアの機兵』を見る。

だが『パオベイアの機兵』は再生しない。

「安心していいヨ。幾ら理がもとに戻ったとしても、一度壊れたものは戻らナイ」

『パオベイアの機兵』は『星の民』技術の粋を使って作られているため、ほんの少しの破片でも残っているのならば再生は可能。

徹底的に破壊したとしても歳月さえありさえすれば。

だが一度崩されたものは二度と戻ることはない。

「これでこの星の『パオベイアの機兵』は一掃されたと言うわけサ」

ドーラの声にフィアは胸をなでおろす。


理の変質させたものをさらに変質させて元に戻したということらしい。

まさに神すら恐れぬ大魔法。魔法と呼ぶにはあまりに途方もない何か。


「…それにしてもまさか再び書き換えるなんてネ」

そのことを理解するドーラは口元を釣り上げる。


「残る問題は一つ」

そう言ってドーラはカロン城の上空に視線を向ける。

幻獣王ツアーレン。

『天空王』の異名をもつ七対の幻獣王の一人。

彼はカロン城のはるか上空にて不気味に沈黙を続けていた。

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