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運命の日~夜明けの輝星~  作者: 上総海椰
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3-2 魔帝との取引

さかのぼること半日前。

クーナは硬直しそれを見守っていた。

目前にいるのは第三魔王クファトス=ルゥ唯一無二にして最強の魔王。

人類を滅亡寸前まで追い込んだという魔王。

その真偽を確かめようとヴィヴィに視線を向けるもヴィヴィの表情は厳しいままだ。

その厳しい表情がそれが真実だとクーナに示した。

口を開いたのは意外にもクファトス王からだった。

「さて、フィア。いつから私の素性に気づいていた」

クファトスはその目を光らせる。

クーナは眼光だけで身がすくんだ。魔力ではない。それは分厚く大きな圧倒的な別の何か。

こうして一緒の空間にいるだけで、自分たちとは違う何か別の巨大な生物の檻の中に放り込まれたような気になる。

「ミイドリイクで幻獣王ローファと出会った時。オルカさんと同じ感じがしました」

フィアは怯むことなくクファトスの声に応じる。

クファトスはオルカの方を見て苦笑する。

(オルカですって?)

クーナはクファトスの背後にいる黒服の男に視線を向ける。

幻獣王最強と言われた『黒竜王』オルカ。

伝承によればその力は幻獣王一の力を持つのだという。

また伝承によれば常にクファトス王の傍にいたという。

『黒竜王』は他の幻獣王とは異なる別次元に生息する幻獣王とされる。

その存在は第二次魔王戦争以後観測されたことはなく、長らく伝説の存在とされてきた。

まさか幻獣王がこんな近くにいたことなど誰が想像しようか。

「見事だ。ローファとオルカの封印には特殊な術式が施されている。

それはほぼ同一の系統のものだ。なにぶん幻獣王の強大な魔力を封印する術式は限られてくる。

まさか、その結界の術式を感覚で見破るとはな。さすがサフェリナの子と言ったところか」

表情を動かさずにクファトスは淡々と答える。

「…ここに来たのは望みはヴァロの救出か」

「はい。『パオベイアの機兵』、さらに幻獣王ツアーレンまで動いています。

私の力ではポルファノアの打倒はおろか。ヴァロを奴の手から救出することは叶いません」

フィアは淡々と事実を告げる。

もし魔王ポルファノアと同時に幻獣王ツアーレンを相手にすることになればヴァロの救出はおろか勝機すらない。

この状況は絶望的とさえいえる。

「わかっているのか?力を世に示すということは二つの道しか選べなくなるということだぞ。

そこまでしてたった一人の人間にこだわる理由がどこにある?」

クファトスはフィアに問う。

フィアは深呼吸してゆっくりと口を開く。

「私は…あの人がこの世で生きてさえいてくれればそれでいい。

望むのならばどんなことでもします。

望みとあらばどんな罰でも受けます。

必要ならばこの命でも差し上げます。

だから、クファトス王、どうかヴァロを、ヴァロを…助ける力を私におかしください」

フィアは深く頭を下げる。

「フィア…」

少女の言葉に偽りはない。彼女の真摯な訴えはクーナ達聞く者の心に響いた。

「…サフェリナの子だな」

クファトスの顔に一瞬だけ表情が崩れる。

それはまるで我が子を見るような慈愛に満ちた表情。

だがそれも一瞬、すぐにまた元の表情に戻る。

「残念ながら私はフィアの力にはなれない」

「そんな」

フィアはクファトスの顔を見つめる。

「私にもやらなければならないことがある。そのためにこの五百年ずっと待っていた。

今動くとなればそれらはすべて台無しになる」

何度も何度も転生を繰り返しながら。

ヴィヴィは執念にも似たその男の本質をかいま見た気がした。

「…」

「まだ知るべき時ではない。だがいずれは知ることになると答えておこう」

「それは人間界の支配?」

ヴィヴィは鋭い目でクファトスを睨む。

「それならば四百年前にすでに終わらせていたよ」

クファトスは当然のようにそれを口にする。

ぞくりと冷たいものがクーナの背筋を伝う。ヴィヴィも同じだろう。

この男はそれができるのだ。断じて誇張や出まかせではない。

目の前にいるのはかつて七体の幻獣王を従えた王の中の王。

人間を滅ぼすことだけではない、この星すらも滅ぼすだけの力がある。

「…だが私に気づいた褒美は与えないといかんな」

クファトスの言葉にフィアは顔を上げる。

クファトスは左の裏にいる黒服の男の方を振り向く。

「オルカ、私のかわいい孫に協力してやってくれるか?」

男の表情は全く読み取れない。

「…いいでしょう」

黒服の男は小さく頷き進み出る。

幻獣王フィリンギのような威圧するような圧迫感は感じられない。

そこにあるのはただの闇。真っ黒で果てしなく永遠と続く暗い穴。

直視してはならない。囚われてしまうから。

ヴィヴィは体の芯から震えを覚えた。

「クファトス王、感謝します」

フィアは深く頭を下げた。

「どうやらもう一人やってきたようだ」

クファトスは視線を背後の出入り口に向けた。

そこにはとんがり帽子をかぶり、ひょうきんに手を振る一人の男がいた。

「やあ、フィアちゃん」

いつもと変わらない表情でその男は語りかける。

「ドーラさん」

懐かしくそして暖かな声にフィアは振り向いた。

そこにいるのは極北の地にいるはずの一人の男。

第四魔王ドーラルイ、その人だ。

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