表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/22

私の彼女は超絶可愛い

アイドルという存在は単に可愛らしいだけのお人形ではない。

整った容姿で可愛いらしく歌って踊るだけではアイドルを名乗れはしない。

不可侵のプロフィールを盾に幻想を保てたのはネットワークが拡がりきる前の話。二十四時間あらゆる方向から情報が発信される昨今で私達に求められるのは秘匿による神秘の偶像ではなく地に足を着けた等身大の魅力。

今のご時世、アイドルには自身の容姿というハードにどれだけプラスアルファとなるソフトを積載させるかという努力が常に求められる。

あるものは他の星からきたなどという見切り発車な設定でMCとの接点をつくり、またあるものは赤いヘルメットの球団好きをアピールし個性を演出する。

ナンバーワンになるためのオンリーワンに磨きをかけることで私達は少女からアイドルになるのだ。


だが、何事にも例外というものは存在するらしい。


日々輝きを深めようとアイドルが努力するなか、その立ち居振舞いだけをとっても強烈に目に焼き付く恒星のような存在も稀にいる。


「はじめまして。明日からグループに入る(みさき)美咲(みさき)です」


彼女はまさにその恒星のような存在だった。


まず目を惹くのはその艶やかな黒髪。こういうものをみどりの黒髪と表現するのだろう。腰まで流れるその輝きに思わず見惚れてしまう。

そして顔立ちに注目してみれば再びその存在感に圧倒される。

すっきりと通った鼻筋に薄く線を引いたようで有りながら艶かしい唇、何よりもその瞳に強烈な魅了がある。

黒い瞳、言葉にすればその一音だが幾重にも光が積み重なった万華鏡をみているような心持ちになる。大和撫子を極限まで美化すればおそらく彼女に近い存在になるのだろう。

そしてその清廉な容姿に真っ向から対立する身体つきがより彼女を注目させる。

つまり、その、彼女の胸だが、要するに、その、おっきいのだ。

巨乳なのだ、大和撫子みたいな顔をして爆乳と言ってもいいくらいの巨乳なのだ。

なにこのギャップ、清廉な容姿が逆にエロい。


「はじめまして、蒼井夕陽です。一応グループのリーダーをやらせてもらってるから困ったことがあったら相談してほしい」


そう口にして握手の為に手を差し出す。

握手に応えてくれた手の指は細くしなやかだった。


(すっごい。パーツまで綺麗‼)


今さらではあるが私はアイドルであってプロデューサーやスカウトではない。

磨けば光る金の卵を見つける観察眼や数千数万の行き交う人混みからアイドル足り得る人を探りだす能力なんて持っていない。

だからこそ断言出来る、彼女が特別だと。

見る目を持った人に見出だされる魅力なんて簡単に凌駕出来る圧倒的な才能。アイドルの誰もが焦がれるが後天的には絶対に身に付かないオンリーワン。




要するに『華がある』のだ。




なるほどねぇ、あの銭ゲバマネージャー♀が家賃まで負担して囲おうとするのも納得だわ

確実に華開くであろう金の卵なのは間違いない。むしろもっと良い待遇でなくて大丈夫なのかと思ってしまう。

え、っていうか私、この娘と百合百合しながらきゃっきゃうふふするの?!ヤバい、たぎる。仲良くなったらこのメロンを揉めたりするんだろうか?


「あの、蒼井さんさえ良ければグループのこととか色々と教えていただきたいんですが……」


「………あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してた。というか敬語いらないよ?同い年だよね?ウチは芸歴でどうとか細かいこと言わないし」


彼女の言葉で妄想の海にダイブしていた意識を戻す。

事務所の百合営業指令や彼女の存在感に少し混乱してしまったがもとより新メンバーのフォローは(リーダー)の仕事ではある。

今後のことも含めて彼女とは確かに今のうちに色々話しておくべきだろう。




彼女の荷物整理を手伝い終えた後、リビングでコーヒーを入れる。砂糖の数をきいたら彼女は三つと答えた。思いの外甘党らしい。


「すいません、荷物整理を手伝ってもらって」


「構わないわ、そもそも手伝う程の量でもなかったしね。年頃の女子の引っ越し荷物が段ボール三つって逆にどうなの?」


「あんまり物を持つのが好きではなかったんです。服も外出のときは大体制服でしたし」


「もう私達JDなんだからそんなこと言ってられないわよ。アイドルは着飾ってなんぼなんだから今度服買いにいこうか」


「そうですね。実はそういうの憧れてはいましたから、蒼井さん一緒に行ってくれますか?」


「ミサキが敬語やめてくれたらね」


そんな他愛ない言葉を交わしながらタイミングを見計らう。

グループで一緒に活動するにしても、プライベートで連れだって買い物をするにしても、まずはあの話をしなければどうにも距離感を定まらない。


「その、蒼井さんもマネージャーさんから話があったって聞きましたけど………私達って、あの、恋人として活動するんですよね?」


その思いは彼女も一緒だったのかある程度緊張が解れたころ、彼女から話を切り出して来てくれた。


「そうだね、百合営業。私は納得したけどミサキは大丈夫なの?振りとはいっても女同士で恋人やるのに抵抗とかないの?どうしたって恋愛事では不自由するし、そういうイメージ戦略とか嫌なら私からマネージャーに話しておくよ?」


「…………………………………大丈夫です、私の恋愛対象は女性だから」


「………………………ん?…え?」


今なんとおっしゃいました?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ