第十三話 さあご主人様、貴女様のための血肉の宴です( by ピットブル )
やはり、そう簡単には物事は進んでくださいませんでした。
—―――さて突然ではありますが。
深夜の円卓会議です。
夜半に【ルマニア解放戦線】進撃のニュースが入ったからです。
狙いは各国の王都と、この離宮です。
中央の丸い小さいテーブル。
底に座るのは私と、新王三人。
その周囲を補佐たちが大きな丸テーブルで囲みます。
他国の使者も、補佐達に交じって相談し合います。
皆それぞれに持ち込んだ礼服や私服に着替え、厳戒態勢の中、会議は続いています。
ちなみに私は軍服に、赤い首輪(外すタイミングがなく……)です。
【ルマニア解放戦線】の狙いは新王三人の殺害。
もちろん私も捕らえて、犬人たちを支配下に置こうと画策されているようです。
そのために。
調印式のために兵を多く連れてこなかった離宮にこそ、相手は一番多くの兵を割いているようです。
迫りくる敵の兵力は総勢三万人。
しかもそのうち二百人が、飛行能力のある竜人で構成されています。
竜人の専業軍人の人口を一万人と計算すると、相当な数です。
【ルマニア解放戦線】は本来、自分たちでは動かない連中です。
各地で仕事に困った難民たちを甘い言葉で誘惑し、テロの先兵とする汚いやり方を繰り返し、自前の兵力を増やしておりました。
ケンネルでは今夜の出来事が初めてでしたが、すでに旧帝国内ではあちこちでテロが起きています。
だからレオンハルト様と上層部は雇用を創出してきたのです。
このような悲劇が生まれぬよう。
今回調印式に招待していた、初期の難民たちの代表が発言します。
「移民先も仕事も用意してくださったケンネルには感謝いたします。しかし、私たちはあくまで祖国に帰りたいのです。一時滞在するだけで、これだけの迷惑を掛けてしまう仲間がいることを恥じております。申し訳ありません。ただどうか、無事に国が落ち着いてくださることを祈っております」
今夜の犯人である若者は、たまたま国境の向こう側に避難していた、高学歴の難民でした。
工事現場の「自分に相応しくない仕事を用意された」と不満を持ち、それだけで甘言に乗ってしまったそうです。
テロリストの方が、まだ高尚な仕事に見えるからと。
自意識の強さは、真・純人教にも似ています。
むしろ彼のような若者こそが、戦争屋や宗教屋の餌食になっているのでしょう。
旧帝国領を真の意味で落ち着かせ、彼らを早期に故郷に戻さねばなりません。
三国が独立したと言っても、他の人種の元自治領はまだはっきりと境界線が決まっていないのです。
しかし今回は。
国外に逃れていた者たちではなく。
内部にて表面では恭順を示していた者たち。
彼らが、調印式で王たちが国を離れている隙を狙って立ち上がったのです。
三人の王は実に苦い顔をして、伝令犬の報告を聞いています。
「ただいま、解放戦線は国境に跨る犬棄山の近辺に迫っています。難民キャンプを通過し、この離宮に辿り着くにはあと数時間かと思われます」
「どうして今まで報告が上がらなかった?」
ダリウス様の怒りを含んだ声に、グレイハウンドの皆さまがしっぽを内に丸めて報告します。
『この近辺のグレイハウンド一族と第五部隊が、全員昏倒させられているのが発見されました』
『なぜか国境付近を取り仕切る辺境騎士団たちが、軒並み戦闘不能に!』
『作成中だった地下道も、閉鎖された地下道もなぜか全て発見され、進撃に利用されています!』
予想以上のスピードで、こちらに向かってきています。
「やつらめ! 独立戦争の時は協力を申し出ておきながら!」
タイパン女王が金髪を振り乱して激怒しています。
力任せにテーブルを叩くと、板が凹みました。
リンドブルム王が腕を組み、静かに分析します。
「あの時はケンネルの戦力を見て、兵力温存のために協力を申し出た、と考えた方がいいな。今こそが帝国再建のチャンスとでも思っているのだろう。
そしてゴールデンレトリバー卿。もちろんそちらの内部にも、怪しいものがいるようだがな」
「……そうですね」
苦々しくレオンハルト様が答えます。
リンドブルム王は「王都は何とかなるだろう。それだけの兵力を残してきたのだ。最後に我らが生き残り、逃げ切れば良い。それで勝ちだ」と結論づけました。
「……リンドブルム王。領土を一部こちらに思い切って分けてくださったことといい。本当に物事にこだわらないのね。そもそもケンネルの干渉がなければ、帝国も無事だったかもしれないのに」
「こだわり過ぎれば馬鹿を見る。タイパン女王。我が兄の死に様を振り返れば、誰しも分かることなのだが」
一方で、鰐人のカイマン王は気弱です。
「王妃よ、ワシどうしよう……」
「ここで鰐人の胆力を見せずにどうするのです!」
オロオロとするカイマン王に、マハンパ王妃が思い切り背中を叩きます。
すると勢いよく王が縁にぶつかり、テーブルにひびが入りました。
—――――悲惨なテーブルの様子をマゾ様の頭に置き換えて想像しつつ、すぐにテーブルを鋼鉄製に替えました。
私は立ち上がり、この場で宣言いたしました。
「この離宮もそうですが、難民キャンプが危ないです。ここで迎え撃つのではなく、難民キャンプの前に陣をはり、避難民をルートの外れに誘導します」
「それ危険だ! ここを守る兵を大量に置くべきだろう! 難民キャンプはせいぜい食料を焼くか、難民を肉壁にするのが宜しいかと」
「むしろ難民の女子供を抱え込ませて相手の足を遅くし、食料を減らせないのか。多少はケンネルで養っているのだろう? 恩を着せるべき時じゃないのか」
「やめてください! なんてことを」
ごく当たり前のように忠告する高官の方々。
難民代表の方が悲鳴を上げています。
私はふつふつと、心の奥底から怒りが込み上げてきました。
「彼らは皆ケンネルへの帰属を拒み、祖国に帰りたいと訴えている者たちです。私の保護民であり、同時にまだ貴方たちの民なのですよ。口減らしをしたつもりでも、そこに「いる」のです。自覚なさい!」
私の失跡にひるむ彼らに、畳みかけるように怒鳴りました。
「そして戦うのは私たちです。私の大事な犬たちです! これから私の犬に血を流させようというのですから、あなた方も相応の覚悟を私に見せなさい!」
返答はありません。
三王――――特にリンドブルム王は、私をじっと見つめていました。
混乱する円卓の間。
ダリウス様があちこちに指示を始めました。
出発準備を待つ間、私は更に詳細な情報をレオンハルト様と共有します。
三王は、それぞれの高官と相談しながら、王都の状況を確認しています。
犬人の皆さんもトランシーバーを取り出したり、伝令犬に伝えたりと大わらわです。
—――――いえ、ただ一人。
全く焦っていない方がいます。
アフガンハウンド卿だけが、目を閉じてじっとしています。
私は彼の元に歩み寄り、訊ねました。
「アフガンハウンド卿。どこまでが貴方たちの仕業なのです?」
「陛下!」
マルス様が、すかさず私の前に入ります。
薄茶色の瞳を微かに開き、私をじっと見つめるアフガンハウンド卿。
「陛下は……私の弟を助けてくださるとおっしゃった」
「そうですが。だから明日「だから準備を着々と進めていたのです」」
何をおっしゃる、と私が続けようとした時に、再び伝令犬が飛び込んできました。
『ルマニア解放戦線の軍隊が、犬棄山を下りた野犬の群れにより、全滅いたしました!
現場は大変な混乱に陥っています!』
少しの間を置き—————。
途端に円卓の間が、大騒ぎになりました。
犬棄山の野犬たちが山を下りた————―。
かつて誰も経験をしたことのない事態です。
そして予想以上に凄まじい戦闘力を見せつけられた各国は恐れ戦きました。
私は扉に向かって歩き出します。
「被害が増えぬよう、私が参ります」
「三万の軍を半壊に追いやった化け物ですよ!?」
背中にかかる各国の使者たちの声。
私は全て跳ねのけます。
「野犬を止められるのは私だけなのです。女王が迎えに行かずにどうします! 皆さん、出発しますよ!」
「はい!」
「やってみせましょうぞ!」
「は!」
「喜んで!」
「準備は出来ているな? 出立だ!」
ダリウス様が立ち上がり、その場に居た隊長たちに号令を送ります。
第一部隊の和犬の皆様。
第二部隊のグレイ・フォン・マスティフ様にジェントルマン・フォン・ピットブル様。
第四部隊のラスカル・フォン・マラミュート様にキース・フォン・ハスキー様。
第八部隊のジョゼ・フォン・セントバーナード様に、ついさっき帰属されたベル・ピレニーズ様。
彼らは全員離宮の玄関に勢ぞろいをして待っていました。
ここにいない第三部隊は未だ任務から帰っておらず(一体どんな仕事を……)、第五、第七部隊の主力はまだ大導師たちの旅に付き合っています。
そして第六部隊は—————たった今呼び戻しました。
「お呼びでしょうか」
スラリとした肢体と夜会服を華麗に着こなした第六部隊隊長、マゾ・フォン・ボルゾイ様が膝をついて現れました。
私は命じます。
「女の不始末は付けなくとも良いです。諦めました。
———―その代わり、まもなく体温を察知して来る鰐人王妃と蛇人女王を、完全にケンネルの味方に引き入れなさい。手段は問いません。後で聞きもしません」
「了解いたしました」
彼はのんびりと、廊下の奥へと歩いて去っていきました。
何度も戦車を奪われる実績のある第四部隊隊員には、パートナーを付けて差し上げました。
第二部隊のピットブルたちです。
戦車はとても狭いので、元々小柄な方専用に作られています。
故に二人乗りは機動力が落ちてしまいます。
しかし、彼らがいればうっかり敵に奪われることはありません。
なによりもピットブルなら食べ物でも釣られませんしね。
その指示を出した時。
ラスカル様とキース様の顔色は随分と悪くなられておりました。
もう知りません。
ならばこれ以上戦車を取られないようにしてください。
私は狂犬騎士団の皆に合図を送ります。
微笑んだマルス様が、真っ先に私にマントを被せます
「リーゼロッテ号をここへ!」
離宮の玄関にキリキリキリキリとついたのは、誰よりも大きな戦車。
ハッチを開けていただき、えっちらおっちら、お尻を押してもらって乗り込みます。
『陛下、いえご主人様! 私たちも連れて行ってください!』
『これでも元は第二部隊! ご主人様のお役に立ちたいのです!』
『どうぞ我らの牙と爪も使ってください!』
ボクサー卿とドーベルマン卿と、ロットワイラー卿です。
彼らは必死に私に訴えます。
私は微笑んで、固まる彼らに訊ねました。
「良い子にしていますか?」
犬棄山は、黒い大地と化していました。
月の光が輪郭を浮かび上がらせていますが、私や犬人には色が良く見えません。
「いや、真っ赤ですよ」
私を追って飛んで来たリンドブルム王が教えてくださります。
マルス様が「そうとうきつい血臭だ。だけど珍しいね。随分と殺し方がスマートだ。首を一撃だよ」と観察している、一方。
私に見えるのは、既に解放戦線の軍ではなく。
動かぬ躯らしき輪郭たち。
そして。
山裾に広がるたくさんの野犬たち。
予想以上の数です。
千、二千……いえそれ以上。
犬棄山は巨大な山ですが、数千の犬人を養えるほどの山だとは認識しておりませんでした。
彼らは軍隊である我々を警戒し、威嚇をしながら睨み続けています。
「あれは兄さんだ!」
「親父!」
「従妹たちがいるぞ!」
犬人たちが動揺しています。
自分たちの家族や親族、友人たちがそこに生きて存在しているのですから。
「お母さん!」
「バカ、やめろ!」
兵士の一人が飛び出し野犬に向かっていきますが、噛み付かれて倒されます。
慌てて数人の仲間によって、引きずり出され逃げ帰ってきました。
ベル様が説明します。
『野犬になっていると、知り合いが認識できなくなるのです。そして誰も彼も序列争いのライバルとして認識し、絶え間ない訓練を延々に続けるのです。私も……戻ったはずなのに、山を見ているだけで何かメラメラと』
「ベル!」
『はっ! すみません隊長! それだけ恐ろしいものがあの山にはあるのです』
私は顎に手をやりました。
「序列争いということは、リーダーがいるのですか?」
『はい、確かここ数か月の間に勝ち抜いてきたリーダーで、彼の訓練により、私たちの戦闘力が素晴らしく上がっていったことを覚えています』
何か嫌な予感がします。
「ちなみにそれは、筋肉隆々の中型犬ではありませんか?」
『なぜそれを!』
ベル様が驚くと、私は生ぬるい視線をマルス様と交わしました。
ダリウス様と和犬の皆様が天を仰ぎ、グレイ様が目を輝かせ、ジョゼ様がすっかり呆れ。
背中に「ボクらは良い子です」の張り紙を貼った三人は、感心しています。
そしてジェントルマン様一人が、牙を剥いて唸っておりました。
『やあ、ご主人様。お久しぶりですね』
山から下りて来た、血まみれの犬。
その口から発される聞きなれた低音。
「バーバリアン様。やはり貴方でしたか……」
『良い月夜ですよ。真っ赤な、真っ赤な、良い月だ』
—――――彼は私に侵略を止められた後、故郷で暇を持て余したそうです。
しかしどうしても戦いたい。
どうにかして、血で血を洗う世界に飛び込みたい。
しばらく武者修行に出て、あちこちで喧嘩を売りつつ旅をしていたとか。
そこに現れたのがアフガンハウンド卿。
ボサボサの長髪を簡易に束ねて、ふらりと現れたそうです。
『良い所がありますよ』
『軍務卿。軍に入れというならお断りだが? 私は自由の利かない団体は嫌いだ』
『いいえ? むしろ存分に戦えるような巨大な敵に出会えます。それこそピットブルの命を掛けねばならぬような』
『ほう』
そこで紹介されたのが犬棄山です。
かの野犬の中で、序列一位になって野犬を統制出来る立場になって欲しいと。
『野犬と言ってもなあ。私は勝てるが? 勝った後どうする。面白くもない』
『その後ですよ。犬棄山の下には、素晴らしい敵がおります』
『下……?』
『私がそれを起こして差し上げますので、野犬の力を集めて倒してほしい。他にもたくさんの戦いの機会を用意して差し上げましょう』
『まあいいが……お前は変わっているな』
『ピットブル卿ほどではないですよ』
そうして、この山を根城に、日々己に向かってくる野犬たちを鍛えていたとか。
『まあ、野犬といっても王族がいればいつかは目覚めますので。
陛下がダムを巡業したことで犬棄山に香りが届き、こいつらはそこの白犬のように下り始めたのです。たいていの奴は闘争心が消えず、すぐに戻ってきましたがね』
なんと。
野犬が山を下りたのは私の匂いのせいですか!
これならばもっと早く犬棄山に行けば良かったと、反省いたしました。
「感謝はいたしましょう。貴方が私の指示を滅多に聞かないことは理解しております。ただ理由をお聞かせください。なぜ、ここでルマニア解放戦線の軍隊を壊滅させたのです」
『向こうの奴に聞いてくださいよ。私は殺してよい敵だという合図をもらって、女王陛下に敵の命を捧げたまで』
彼が顎をしゃくる先には、アフガンハウンド卿。
彼の方は、兵士に囲まれながら、血を吸った大地を見つめていました。
起こすには生贄が必要なのです。
そう、彼は答えました。
「私は、弟の希望を満たしてあげたかったのです。強さを求めて犬棄山で死んだ弟のために。《あれ》を倒し、野犬の呪縛を逃れ、満足して天国に行ってほしいと」
すると、周囲にガリガリガリと地面を削る音がし、土が盛り上がりました。
現れたのは掘削機。
ハッチを開けて、「安全第一・ご飯は大事」と書かれた黄色いヘルメットをかぶった赤毛の男性が出てきます。
あれは会場でも見かけた、第四部隊のホット・ドッグ・ダックスフンド様!
キース様が「おい、ダックスフンドじゃないか。なんでそんなところを勝手に掘っている」と駆け寄ります。
「ふわー! 何言っているのですか、副隊長! ぼかあ、ちゃんと軍務卿が許可取ったって聞きましたよ! ちゃんと犬棄山の下をまんべんなく掘っておきましたよ! 途中何か大きな空洞があって怖くなって逃げましたけどね! で、これって何か意味あるのですか?」
のんびりとヘルメットで風を仰ぐ部下に、キース様は怒ります。
「騎士団は許可なんて与えていない! そもそも何を掘り当てたのだ!」
「え? え? そうなのですか? だって軍務卿アイドル犬シールをくれましたよー!?」
「釣られるな!」
「ええー? 副隊長もクリスティーナちゃん好きな癖にー」
「黙れ! 今はそんな時では」
その時です。
ぐらり。
地面が揺れました。
「何ですか!?」
「何だ?」
私たちが戸惑っている中、地面の揺れが続きます。
「地震にしては……随分と震源が近いな」
リンドブルム王が足元を確認している一方で。
アフガンハウンド卿が、今までになく生き生きと笑顔を浮かべています。
「ようやく、目を覚ましましたね—————シロカブトが」
地面が割れ、黒い大きな腕が現れます。
いえ、よく見ると白いところもある—————?
大きな陥没が起き、腕の周囲の穴が大きくなっていきます。
山のすそ野を大きくえぐり取るほどの穴。
やがて、のそりと大きな怪物が地面から這い出てきました。
ジョゼ様が悲鳴を上げます。
「あのフォルムはヒグマー! いえ、ヒグマーの亜種……!?」
『あ、あ、あ、あれです。あれこそが野犬の時に何度も夢見た私たちの天敵です! あれを倒したくて我々は戦い続けてきたのです』
震えるベル様が前足で指し示す横で、ジョゼ様が混乱しています。
「あの模様、神話に出て来たシロカブト……!? まさか、うそ」
『いいな! 実に素晴らしい! 素晴らしいぞ、アフガンハウンド! 陛下に素晴らしい獲物を捧げて見せよう!』
バーバリアン様が興奮しています。
同時に血まみれの野犬たちが、遠吠えを上げ始めました。
近くでグレイ様たちが「やろうぞ!」と大興奮し、ジェントルマン様が「兄上……今まですみません。たった今兄上を見直しました。これからは仲良くしたいです」とアットホームな発言をしています!
兄弟で仲直りをするのなら、もっと血なまぐさくない方法を選んでください!
後ろでは、ダリウス様が全軍に展開を命じています。
マルス様が、とっさに私を腕の中に抱き、距離を取るために走り出しました。
一緒に逃げるリンドブルム王が、
「そちらでは確かシロカブトというのか。確かにあの模様。竜人の文献にも出て来ていた。神話の時代に現れた、世の全てを飲み込む貪欲な怪物。まさか、実在したとはな―――――」
と、驚愕しています。
そして竜人の間で伝わっている、かの怪物の名を呟いたのです。
「―――――パンダ」
と。




