第十一話 私の小さなご主人様。ずっと愛しておりますよ ( by ゴールデンレトリバー )
舞踏会—————。
煌びやかな彼の場所は、ある者にとっては社交の場。ある者にとっては密談の場。ある者にとっては出会いの場。
またある者にとっては————絶好の狩り場。
星の瞬き始めた夜。
昼間の熱気がようやく落ち着き、涼しい風が流れ始めています。
広い会場には、華やかに着飾った老若男女がたくさんいらしておりました。
柱や天井の隅々まで繊細な装飾が施されており、ここは昔の離宮を急ぎ修理したものであるとは、とても思えないほど。
次々とテーブルには料理が並べられていきますが、手を付ける余裕のある人は、果たしていらっしゃるのでしょうか。
なぜならば。
今日は先日旧帝国領に誕生した三ヵ国の、不可侵条約調印式の前日。
場所はこの離宮。
旧帝国領————現ドラゴニア王国との国境付近にある「ケンネル王国の」国内です。
それはつまり。
ケンネル王国が旧帝国の調停者として、今後多大な影響力を与えるという宣言でもあるのです。
臨時で開催された「ケンネル王国主催の」舞踏会に、大陸中の国々の使者がこぞって参上したのは、致し方のないことでしょう。
特に旧帝国領の関係者。そして旧帝国に国境が接していた国々の関係者は、固唾を飲んで私と新王たちを見守っています。
「リーゼロッテ陛下。この度は私の願いを聞き届けて下さり、誠にありがとうございます」
「フーコー陛下。こちらこそ、北方の国が平和に落ち着くのならば—————」
「慈善ではありませんがね」
宰相であるレオンハルト様が釘を刺したのは、リンドブルム王。
前・ハイヌウェレ公爵です。
ダリウス様とレオンハルト様を連れて会場に現れた私の前に、まず挨拶に来られたのが彼でした。
何かにつけて嫌みを言ってきた頃とはずいぶんと雰囲気が違います。落ち着き、威厳があると申しますか。
以前は宝石や金糸を多く縫い込んだ、重く派手な服を着ておりました。
しかし今は、シックな黒と銀の盛装をすっきりと着こなしております。
「それにしてもお美しいですな。大使としてお会いしていた時よりも、ずっと綺麗になられた。その純白のドレスも、吸い込まれそうに菫色の瞳にたいそう似合っています」
「ありがとうございます」
白地の光沢のある生地に紫と銀のラインを引いたドレスを着て、髪を高く結い上げた私の姿に、彼は目を眇めます。
彼は軽く頭を下げて私の手を取り、甲にそっとキスをされました。
そして立ち上がると私を見下ろして皮肉げに笑います。
「本当に貴女の犬たちは優秀ですね。見事に帝国は瓦解し、ケンネルがこの大陸で一番の強国となった。もちろん感謝は致しておりますよ? 兄に飼い殺されるよりは、ずっと自由だ。しかし……」
茶色の瞳が、私の真意を問います。
「どうですか、お気分は。手の中に二つ目の大陸を収めた気持ちは」
聞き耳を立てていた周囲から、しん、と音がかき消されました。
「…………」
私は何も言わず、静かに彼を見つめました。
そして指を上げて合図をいたします。
すると両側に控えてくださったレオンハルト様とダリウス様が、私にリード差し出してきました。
いつの間にか彼らの首輪に嵌まったわんわんリード。
私は白い輪を受け取り、ぐいっと引っ張らせていただきました。
喜んで私の両側にぴったりとくっつき、跪く二人。
私はそのビジュアルに一瞬「うっ」となりましたが、堪えます。
(私は女優です私は女優です私は女優です私は女優です)
そう心の中で唱えながら彼らの髪をなで、耳の後ろを掻いて差し上げ、うっとりとする彼らの赤い首輪をなぞり。
にっこりと、微笑んで差し上げました。
「ええ、この子たちはとても優秀ですからね。飼い主としてとても誇らしいですよ。たくさん褒めて差し上げました」
どこかで誰かが恐怖で倒れた音がしましたが、構いません。
「ご主人様」
今回の功労者第二部隊長のグレイ様、副隊長のジェントルマン様が現れて私にそっと白い輪を差し出します。私は鷹揚に頷き引っ張り、座らせました。
彼らの首輪もそっとなぞり、頭の横を流れるように撫でて差し上げました。
「ご主人様」「ご主人様ー」「ご主人様……」
次から次へと現れ集まる、首輪を付けた「人の姿の」わんこたち。
特に第一部隊と第二部隊の身目麗しい猛者たちが、他の部隊のもの達を押しのけて私にすり寄ります。
私は喜んで髪を撫で、モフり、耳たぶを揉み込んで差し上げました。
更にはもたもたする第四部隊を蹴飛ばして割り入り、私にモフられ、うっとりと座り込むロットワイラー卿に、ボクサー卿に、ドーベルマン卿。
和犬の三人も、うっとりと柱に寄りかかっております。
新大陸から来るはずだったマメタ様は、遅れているようです。あの方はいつも間が悪いですね。
ジョゼ様は「私は後でやってもらいますので」と医療の第八部隊に指示を出し、力が抜けて動けなくなったわんこたちを無理やり犬の姿にさせ、足で転がし担架に入れては会場の隣部屋に放り込んでいきます。
幸せになり過ぎて私の足に抱き着こうとしたわんこもいましたが、マルス様が蹴飛ばして転がし、第八部隊に渡します。
集まる客たちは度肝を抜かれていました。
一方で旧ユマニスト領————新たにケンネル王国領・ユマニティを統治する純人貴族たちは呆れながらも、杯をあげます。
純人教徒の彼らですが、穏健派は単純に利に敏いだけ。
利(富)と理(信仰)を天秤に掛ければ、あっさりと利に流れてくださいました。
この国の犬人が、純人教徒を駄犬教徒と見なし、鷹揚に構えるようになったのも大きいです。
かつて多くの国々と宗教戦争を繰り広げてきた人々は、今が一番平和だと口を揃えて言います。
誰も、好きで喧嘩をしたいわけではないのです。
一通りの「首輪をした人間の」わんこをモフり終わり、リンドブルム王が百メートルほどドン引きしてくださった頃。
私は気が付きました。
今回の立役者マゾ・フォン・ボルゾイ様と、影の立役者である軍務卿、マスード・フォン・アフガンハウンド様がいないことに。
マゾ様の不在は分かります。
リンドブルム王の後ろで、血眼になってマゾ様を探す二人の高貴な女性がおりますので。
彼は帰国し『失敗しました』と報告してきました。
今回は私の見下すような(?)命令に喜び、クロコダイル王国の王妃と、蛇女王に対して『うっかり自分から別れを持ちかけてしまった』というのです。
『普段は何もしなくても勝手に女性が勘違いして、勝手に熱を上げて、勝手に理由を付けて諦め、勝手に身を引き、勝手にその後も味方になってくれるのです』
だというのに、勢い余って自分から仕掛けてしまったために、想いが暴走しストーカーになってしまったそうです。
『ご主人様が成功したら踏んでくださると言うから』
『言っておりません』
『だから珍しく失敗なんてしてしまいましたよ。その足が私を誘うから』
『誘っておりません』
とりあえず彼は高貴な女性二人の名誉のために、隠れていただいております。
二人とも熱感知が得意なので下手なところには逃げられません。
特殊なある場所で、ずっとゴロゴロして過ごすそうです。
—――――そしてもう一人。
こちらも飄々としていて、いまいち人に真意を読ませない方です。
(王族の匂いは好きでも、王族が好きではないアフガンハウンド一族が誰も寄ってこないのは分かります。しかし、アフガンハウンド卿自身はどちらに……あ、居ました)
彼の姿を会場の片隅で発見しました。
片手に料理の皿を持って、第四部隊の穴掘り犬、ホット・ドック・ダックスフンド様に何か声を掛けています。ポケットを探って何かを差し上げた様子。
……相変わらず、何を考えておられるのか。
彼は長い髪にもちゃんと櫛を入れ、つやつやサラサラの栗毛になっていました。
(ちゃんと小奇麗にしていると、マゾ様と張るくらいお美しいのに。本当に勿体ないですね)
私は残りのわんこの髪を大切にモフりながら、遠く去っていくアフガンハウンド卿の背中を見送ったのでした。
マルス様に外の護衛頼み、女王の休憩室にレオンハルト様とダリウス様を連れて入ります。
全員入って、扉が閉まると……。
私は前のめりに倒れました。
慌ててレオンハルト様が受け止めてくださいます。
「リーゼ様! よく頑張られました!」
「疲れました……」
シトラスのいい香りのするレオンハルトの体に抱かれて、深くため息をつきます。
そう。心も、体も、すっかり摩耗いたしました。
私は今日の光景を、しばらく悪夢で見そうです。
「本当にこれで、各国はケンネルを認めてくださるのでしょうか」
「ええ、もちろんですとも」
長く入院され、すっかり元気になった麗人宰相は、にこりと麗しい笑みを浮かべます。
「リンドブルム王と堂々と語り合う姿。王族がたった一人でも見事に犬人を統括してみせる姿。そして何よりも氷のような微笑で、各国の男性陣を震え上がらせるその姿に、気の弱い国々は伏せ拝み、張り合う国はなくなるでしょう」
「……わざと氷の様になるわけではありませんし、そもそも皆様犬の姿になってくださってもいいではないですか!」
あれは精神に恐ろしいダメージを与えます!
私の抗議に、私を前から抱きしめたままのレオンハルト様は、ひたすら匂いを嗅ぎながらお答えになります。
「ああ、これが本当のエデン。私は香しい貴女の世界に飛び込んで暮らしていきたい」
「飛び込まないでください。ですから、先ほどの答えは? なぜ人のままなのです」
ふふ、と笑うレオンハルト様。
「狂犬の連中が『毛皮をモフってもらえて幸せだから、人の姿でもモフってもらいたい』と言い出したからですよ。ねえダリウス」
「実に気持ちが良かった」
何と恐ろしい!
私はすっかりくたびれ果ててしまいました。
黄金色の犬を枕にして、横になることしかできなかったのです。
ご機嫌な超大型犬の硬い毛も撫でながら、ここにたどり着くまでの日々を、思い返しておりました。
◇◇◇◇
最初はレオンハルト様が、床上げをなされたところから始まりました。
病室に迎えに来た私を見て、抱き着いて抱き上げて振り回してくださいます。
すっかり目を回してしまった私を見て、ダリウス様が殴って止めました。
平衡感覚を取り戻した私は、「ごめんなさい」とツギハギだらけとなった『ぱっちわーくれおん君』をお返しします。
「こんなぬいぐるみでしたっけ」と首ひねるレオンハルト様がぎゅっとそれを握ると、ぎゅうぎゅうに詰め過ぎた綿が押し出されて。
目の部分が吹っ飛びました。
思わず悲鳴を上げたレオンハルト様にひたすら平謝りし、事情を説明したのです。
—―――――すると、予想外のことが起きました。
彼は目を見開きこちらを見、つーっと透明な涙を流し始めました。
『そんなにショックだったのですか!? ごめんなさいレオンハルト様、本当にごめんなさい』
『いいえ。ぬいぐるみはどうでもいいのです。
これは貴女様の覚悟に感銘を受けたのと、覚悟をさせてしまった私の、不甲斐なさの表れです』
レオンハルト様はベッドに腰を掛け、私を横に座らせました。
そして、懺悔するように私に教えてくださったのです。
『私は家庭犬を、この世で最高の犬だと思っております』
この世で最高の犬とは何か?
愛玩犬か?
狩猟犬か?
警備犬か?
それとも、闘犬か?
歴代宰相を務めてきたゴールデンレトリバー一族が大切にしてきた家訓。
【飼い主に最高に幸せな住処を提供する家庭犬こそが、最高の犬人なのである】
しかし、と続ける彼の美貌に影が差します。
『内政を主に行う我が一族は、王族に最高の国内環境を提供することに存在意義を求めてきました。ですが、私はこうして倒れ役立たず。更には誰よりも察しなければならない女王のお気持ちを、全く理解できていなかった』
孤独を抱えて来た少女。
人の親友の代わりを務めてきた、唯一の愛犬。
—————周囲の嫉妬。
『本来ならば、リーダー犬であるダリウスが犬たちの意思を統一し、ご主人様が何も疑問も持たずに心地よく生活をしていただけるよう、家庭犬である私が国を整えるはずなのに……会議室でバド・ラック・ハイデガーの言葉を聞いた時から、目が覚める思いでした』
私は長年ずっとご主人様を求めていました。
そして、ようやくお世話できる存在が出来ただけで、天にも昇る気持ちでした。
だから忘れてしまったのです。
小さな女王が、王族にはなり切れない、むしろ純人に近いという事実を。
犬と人とを分けて考えられない、純粋な子供の思考を持っているということを。
『そして躾を頼むといいながら、自分はただ愛情の押し付けをしていただけだった』
懺悔をされる彼の近くで、ダリウス様はただじっと親友の言葉を聞いております。
俯く彼。隣の腕をそっと触り、私は伝えます。
『いいえ。私は子供のままでいるつもりはありません。何も疑問を持たずに暮らすなど、考えたことすらありません。ただ、躾とは何かを考えたのです』
犬の個性はそれぞれ。
犬の身体特徴も、運動能力も、知性もそれぞれ。
性格、性癖、みんなそれぞれ。
『この国は大きな群れです。そして個性は皆バラバラです。すべてに均一な躾などそもそも無理なのです—————いいえ、そうではありません。私は躾という言葉に惑わされていました』
自分が寂しさでダシバに依存していたことを認めて、思ったのです。
『躾とは、犬を変えることではなく。飼い主自身が自立し、変わるということなのだと』
私は見つめてくる薄茶の瞳をじっと見上げました。
そしてそっと手を挙げて、彼の肩を過ぎた金髪を撫でて伝えたのです。
ダリウス様と、白い犬になってじっと見ているマルス様は何も言いません。
何も言わずに、ただ私たちを見守ってくださいました。
『私には頑張ると繰り返しながらも、肝心の覚悟が足りませんでした。寂しさを乗り越える覚悟です。寂しさは毒です。人の心も犬の心も蝕む毒です。寂しさから犬を飼っては、いけないのです』
そして、怖く見える口元を動かさず、なんとか眉だけ下げて必死に優しい顔に見えるように努力したのです。
『ですが、今度こそ。国民を広く幸せにしたいと思います。もちろんダシバにも、素敵な居場所を作って差し上げるつもりです。でも、まずは—————黄金犬のレオンハルト様。貴方からです』
私は彼の頭をそっと抱き寄せ、胸に抱きました。
そして優しく囁いたのです。
『いつだって貴方に感謝しております。私のために仕事をしてくださる姿も好きです。……でも、政治だって一緒に考えていきたいですし、こうして甘えても欲しいのです。
私は確かに十歳の女の子にすぎませんが、こうして貴方を抱きしめる両腕を持っております。だから————』
『リーゼ様! 愛しています! ずっと貴方を愛し続けます! 私の全てで!』
ぎゅうっと私の腕ごと抱きしめてくる麗人。
細いようで、しっかりと筋肉のついた両腕はとても力強く—————いた。いたたたた。いたたたたたたた。
『痛いのですよー!!』
『ちょっレオンハルトさん!?』
『レオンハルト! この馬鹿野郎!』
しばらく私の両腕からは、あざが消えませんでした。
暑い日々が続く最中なのに長袖の私。
それを見る都度。レオンハルト様のしっぽは、股に入り込んでおりました。
そしてやる気に満ち溢れたレオンハルト様が、一気に行動を開始したのです。
難民キャンプの設営が完了させ、あくまで旧帝国領に帰りたい民と、新天地を求める民を選別。
リーゼロッテ大陸(だから仮名だと……そろそろ諦めてきました)への住民の引っ越しを進めました。
むしろケンネルに暮らしたいという難民には、キャンプ地に職安を設営して対応。
滞在が長期化しそうな難民にも、職安を案内しました。
駄犬教の教えが広がり、ヒュマニティの住民ともようやく程よい距離が取れるようになりました。
また、帝国内戦————今は三国独立戦争と言い直しております—————で大活躍をしたケンネル派遣部隊(第二部隊+ピットブル私設部隊)の印象を利用し、三国の調印式をケンネルで行うという手はずを整えました。
『大陸中の国々に、ケンネルに下手に盾突くこうなるということを示してやりましょう』
もう私は反対致しません。最初の一発は大切なのだと、理解できたからです。
……しかし、やっぱり張り切り過ぎるわんこは失敗します。
程よく止めるのが、飼い主としての責務なのでしょう。
最後には同時並行で帝国の国境付近の離宮を修理し、今回の準備が整ったのです。
すべてが順調のように見えますが、もちろん不安な要素はあります。
まず一つ。
難民はまもなく第二派がやってくるということ。
いわゆる戦火を逃れてきた人々ではなく、利権の問題で三国の独立に最後まで反抗していた人々―――――独立派に負けた旧帝国貴族たちとその軍隊。そして関係者や家族たちです。
彼らは他国を拠点にまだ再起を図ろうと動いています。
帝国でも高い地位にいた彼らは、世界にあらゆる伝手を持っており、資金には困っていません。
もちろんリーゼロッテ大陸(もう諦めます……)に移民なんていたしません。
むしろ、他国に根を生やしてネットワークを作り、人種主義の若者を焚きつけてはテロを行わせ、荒くれ者に資金提供をして、治安を悪化させようとしています。
政治の混乱を画策しているのです。
彼らはその活動により、いくら無辜の民が死のうが関係ありません。
「自分は正しい」というプライドを満たし、旧帝国の利権を得たいだけなのですから。
まるで【真・純人教】のような彼らは、自らを【ルマニア大陸解放戦線】と名乗っています。
三国王から旧帝国領を解放すると述べていますが、本当に解放したいのは己の欲だけです。
実際に難民の若者を洗脳し、利用しようとする彼らの活動を防いでいるのは、情報戦が得意の第七部隊。
隊長のヨーチ様が駄犬教の旅に出ているので、代わりに副隊長のウィスパー・ウィペット様が指揮を執ります。
この問題はなりよりも。
難民は差別と貧困から逃げたくて、甘い洗脳の囁きに嵌まるのです。
怪しい難民活動家を名乗る連中が湧いて出てくる昨今。
レオンハルト様たち文官が、そのような事態には決してさせません。
地下道に作りあげられた大物流網が今、勢いよく国の経済を活発化させています。
そしてもう一つの問題は、野犬です。
今まで目撃例の話ばかりが出ておりましたが、今夜。
私は初めて、本物の野犬と出会うことになったのです。
◇◇◇◇
ようやく復活し、舞踏会で踊る順番を復習しようと、レオンハルト様の手をもってクルクル回っていると。
伝令の兵士が慌ててやってきました。
「かの【ルマニア大陸解放戦線】の幹部を名乗られる方が、リーゼロッテ様とよしみを結ぶべく『野犬』を捉えて連れて来たと申しております!」
「なんだと?」
ダリウス様が思わず立ち上がります。
両手を握り合った私とレオンハルト様は、思わず見つめ合ったのです。




