第十九話 ……(訳:ご主人様、私も仕事をしてました。気付いてもらえませんが)( by グレートデン )
一応、私も女の子なので。
「素敵な花嫁さん」という将来の夢もありました。
青い海の青い空。
大人になった私は白い海岸のバージンロードを歩み、白いきれいなロングドレスを風に揺らします。
バージンロードの横には花びらとともに、たくさんの友人たちの笑顔。
カインお父様、アベルお父様。
二人のお父様に連れられて、その先のお婿さん(私、跡継ぎ娘ですので)の元に参ります。
現れたのは、礼服を格好良く着こなしたお婿さん。
顔はまぶしくて見えませんが、きっと私のような不器用な頑固者でもOKしてくれる、素敵な男性に違いありません。
ああ、彼が両手を広げて私の元へ走り寄り……!
「わん!」
ぶにゅ。
私の顔に激突したのは、デブシバでした。
思わず両手で掴むと、ずっしりと重い脂肪の塊。
「あなたの筋肉はどこへいったのですか?」と呟くと、『筋肉ならここに!』というたくさんのわんこの声がしました。
スカートの下を見ると、超大型、大型、中型、小型。たくさんのわんこ。
みんな赤い首輪を着けています。
いつの間にか私のドレスは銀色と紫の、ストンとした王族服に代わり、手足もすっかり十歳のそれに変わっておりました。
黒い超大型犬が私の右足にすり寄って、『ご主人様、愛しています』と囁きます。
次に黄金色の大型犬が『いつだってご主人様の為に在りたいのです』と、左足に寄り添います
小型の白い犬が、デブシバを追いやり腕に入ってきました。そして、『ご主人様、可愛がってね』と甘えます。
可愛い犬(オスだと気づいていない)になら叩かれても気にしないデブシバは、そのまま砂地にゴロリと転がりました。
背中を引っ張られて尻餅を付くと、黒い鼻先が宛てられます。
振り返るとアーモンドの目をした大型犬。しっぽに何かを結んでおり、『面白いもの作った。見て見てご主人様』と期待しています。
右腕には頬の垂れた大型犬が『褒めて欲しいですな』と頭をすり付けますし、左腕には『……』と、話さないけど袖をくわえてそっと甘える、まだら模様の超大型犬。
右の足先には、申し訳なさそうな胴長の小型犬が『すみませんすみません』と靴先を齧っています。
謝る割には止めません。
左の靴下には、必死に引っ張るスリムな中型犬。『脱ぎたてがいちばんですよね!』と、靴下の繊維がすっかり伸びてしまっています。
そして目の前には、もっふりとした茶・黒・白の大型犬。
『可愛いご主人様。大切にしますよ』と、頬を舐めてくださります。
すると、ぐいっと髪の毛が引っ張られました!
髪に噛みついているのは筋肉隆々の中型犬!
『しっかりと構ってもらいますよ』と偉そうです。
わんこにもみくちゃにされる私は、全く身動きが取れません。
「もう皆さん! 甘えてくださるのは嬉しいのですが、全然動けませんよ!」
わんわんわんわんわんわんわん。
首をかろうじて海に向けると、浜辺で見渡す限り犬、犬、犬。
海岸線に沿って、いえ、海の向こうからも泳いで渡ってきます。
たくさんの瞳が私を見つめ、『構って欲しい』『可愛がって欲しい』『大切にして欲しい』と気持ちを伝えてきます。
そして『ずっと手綱を握って欲しい』『一緒にいて欲しい』と、心の底から飼い主を求めて鳴いています。
身動きの取れないまま、私はちゃんと答えました。
「皆様全員、わたしのわんこですから! 女王を頑張りますから! これからも一緒にいましょうね!」
「「わん!」」
「ですから、一斉に飛びかからないでくださいー!」
興奮して走り来るわんこ軍団!
助走をつけてわんこたちが走り寄り、次々と私めがけてジャンプをします!
落下地点は私!
やめて! それは死んでしまいます! 潰れてしまいますー!
「愛が、愛が凶器なのですよー!」
『ご主人様、早く太れ。これでは物足りない』
「え」
ふと下を見ると。
私のお尻の下には高貴な大型犬が、敷かれておりました。
『………―ゼロッテ様! リーゼロッテ様!』
「はっ」
『ああ良かった。気が付かれましたね』
目の前には狭い天井。
そこには、大きな丸い出入り口が付いています。
私は一体……。
『島の爆発で飛んできた石に、当たってしまわれたのです!』
私はリーゼロッテ号の中で寝ていたようです。
目の前には、第八部隊長で救助犬のジョゼ様。
もっふりの体を枕にして、私の看病してくださったのです。
でも確かジョゼ様は……。
「皆様はどうなさったのですか!?」
『ちゃんとマルチーズ卿からトランシーバーで連絡をもらいまして。全員無事に逃げられましたよ。
棄教した連中もちゃんと捕らえて連れてきました。今は大導師を見せるとパニックを起こすので、地下に急遽作った牢屋に格納しています』
「ダシバは! ダシバはどうしました!? この下ですか!?」
私が起きあがって、取り付け型簡易ベッドの下をのぞき込みます。
しかし、愛犬の姿が見あたりません。
なぜかそこには、私に背中を向けたままのマルス様が、白い犬の姿で丸まっておりました。
毛皮には【ごめんないさい】と書かれた張り紙。
『……リーゼロッテ様。そこに駄犬はいません』
「どういうことですか!?」
『駄犬は風になりました』
ジョゼ様は瞑目しています。
まさか……!
「ダシバは石に当たったのですか? そして、そして、」
『いいえ死んではおりません。駄犬は大導師を盾にしてぴんぴんしています』
あの時。
島の爆発により飛来する岩石を防ぐために、マルス様が第四部隊から奪い取った「安全第一・ご飯が大事」のヘルメットを私に被せました。
そのままリーゼロッテ号に抱えて行こうとされた矢先に、ヘルメットに石が当たったのです。
犬人ならどうということもない衝撃。
ですが、私は脳震盪を起こしてしまいました。
マルス様は、まさかここまで私が弱いとは思っておらず、現在猛省されているそうです。
彼は私をリーゼロッテ号乗せて移動した後、なんと海に飛び込んで溺死しようとしたらしいのです!
ですが、ダリウス様に「護衛犬はお前だろう。責任を果たせ」と叱られて、ジョゼ様の到着を待っていたそうで……。
「マルス様は私を守ってくださったのです。これ以上ご自分を責めないでください」
『……』
白い毛玉からは、何も返事がありません。
『リーゼロッテ様。男は一人でいたい時もあるのです。心の整理が付くまであのままにしてやってください』
「はい……」
小さな丸い毛玉になられたマルス様。
私は、そっとしておくしかありませんでした。
ベッドに戻って、私はジョゼ様に訊ねます。
「お話は戻りますけど、ダシバが風になったというのはどういうことですか?」
『和犬の二人が、一瞬でデブ犬に戻った駄犬を見て怒りまして。今ランニングトレーニングをしているところです。途中、トサ卿も入れて三人の和犬に追いかけられて、風に煽られながらに必死に走っています』
なるほど、その意味で風になったと。
私は遠く「きゃーん!」と叫ぶ愛犬の声を微かに感じながら、少しでも健康的になって欲しいと願いました。
そして、私は今回の暴走者にして、功労者のことを聞きました。
「大導師は?」
『聖地で用事があるということで、すでにお帰りになられました。
ちなみに島の爆発の時には、駄犬がとっさに大導師の後ろに回って逃げたせいで、巨大な岩が頭に当たりました。
案の定頭が少し割れて血みどろでしたが 「ダシバ様を守れた」と元気そうでしたね。
テロリストの血に塗れたまま、駄犬を頭に載せて再び海を割って泳ぐ様といい、あれはもう化け物ですね。
—――――ちなみに、お手紙を預かっております』
大導師が寄越した白い封筒。
そこには、【真・純人教】は純人教ではなく、ただの犯罪者集団だというお墨付きと、ダシバの安全対策に関する注意。
そして、彼なりの励ましでした。
『異教徒である其方は理解しきれないだろうが、敬虔な純人教徒とっては、「鬱憤晴らし」はまったく理性的ではない。犯罪である。
今回のテロリストどもは、分派でもなんでもなかった。
純人教の名を借りた、ただの犯罪者集団である。
罪を免れるために宗教の名を借りるものは、滅びねばならぬ。
教義を学ぼうとしないものが、自己正当化の暴力に走るのだ。
学ばぬ者に明日はない。
故に、告解を行わせていただいたが、それでも犯罪をやめる気がないものに純人教を名乗ってもらっては困るので、存在を消させていただいた。
次期女王。
其方も上に立つものとして、迷っていてはどうにもならぬことがある。
私は信徒のためと判断できるならば、人をも殺す。
決断力を磨くことだな。
犬人は特に、王の考え一つで生き様が変わってしまう危うい性質を持つ。
まあ、頑張ることだ』
ちなみに……と、追伸がついていました。
『私はダシバ様のおかげで、異教徒は相手にしているだけ無駄だと悟った。
そんな暇があったらダシバ様の贅肉を拝む。
私のように素晴らしい出会いを求めて分派するのも構わぬ。
だが……純人教を名乗りながら、あれほど純粋なダシバ様を否定するなどありえぬ。
教義のゆがみは正さねばならぬ。懺悔させても治らぬならば―――滅すべし』
これが原理主義……。
ただ人を貶めて優越感が得たいだけの、勘違い差別復古主義とは意味が違います。最先端に宗教を極めた(こじらせた)その姿。
駄犬という不可侵的存在に触れたときのアレルギーは、世俗宗教の比ではありません。
更に追伸で、「今後は中央騎士団長とも、交渉をしてやってもいい」と付け足しておりました。
ダリウス様を?
私は顔を見上げてジョゼ様に訊ねます。
彼女は何とも言えない顔をしておりました。
「一体何が起きていたのですか?」
「それは……」
◇◇◇◇
島が爆発し、ダシバのせいで血みどろとなった大導師。彼は愛するものを守れた達成感で微笑んでおります。
それをただポカンと見上げるダシバ。
そこに近寄ってきたのは、なんとダリウス様でした。
後ろ足の片方を放り出して座り込んでいるデブシバを、ダリウス様は見下ろします。
そして一呼吸置き、このように話しかけたのです。
「ダシバ。私はお前が大嫌いだ。犬人たるもの駄犬はあり得ぬ。自分が過去、駄犬になりかけていただけに、余計に憎々しい。さらに駄犬が愛犬になるなんて許せない」
それでもリーゼ様が、駄犬を好きだというから。
一時期は、せめてダメ犬人になろうとした。
「だが、お前のようには駄犬には、最後までプライドが邪魔をして出来なかった」
結局、とダリウス様は続けます。
「私は駄犬でもなく、愛玩犬でもなく、心底職業犬だったということだ。私は心からリーダー犬と在りたいと思う。リーダー犬としてリーゼ様のお役に立ち、毎日撫でてもらいたいのだ」
ダリウス様は、かっちりとした軍服の胸元に手を入れました。
「お前は心底馬鹿だが、リーゼ様の愛を一身に受ける存在。私はリーダー犬。全ての犬を、私はきちんと守らなくてはならぬ。
……お前もその一人だ。帰るぞ、ダシバ。我らの家に」
ほれ、と取り出したのは、とっておきの高級骨。
途端にダシバは「わん!」と吠え、自分をかばって血みどろになった大導師を捨てて、ダリウス様の元に走ったそうです。
ダメシバ……。
その様子を見た血みどろの大導師は、「流石は畜生様、素敵な本能です」とむしろ喜んだと。
もう何も言えません。
「ウルフハウンド」
デブシバを脇に抱えたダリウス様に、大導師は初めてまともな視線を向け、声を掛けました。
漆黒の片目を、ダリウス様の水色の瞳が見返します。
「今まで、次期女王としか話す気はなかった。だが、ダシバ様を認めるお前も、一応会話をして良い「人」として認めてやろう」
大導師は、ダリウス様を初めて犬人の交渉相手として認めたのです。
これは純人教と犬人との関係で今まで無かったこと。
歴史的な快挙です。
ダリウス様がテロリスト撲滅のお礼を、と申し出ると彼は断りました。
そして、
「聖職者として当たり前の行動をしただけ。正しく真理を教え、道を誤った者には「告解」をさせた。それだけだ。
—――――次期女王に伝えろ。まもなく行われる戴冠式には、必ず出席すると」
と伝え、馬車に向かいました。
「私とて、平和を愛しているのだ」
そう言い残し。
自分の血と他人の血で染まった、赤と黒のコントラストが恐ろしい姿で、幹部たちと聖地へ戻って行ったのです。
◇◇◇◇
外をでると、青空は夕日に照らされ、赤く染まり始めておりました。
岸から大分離れた草原に、戦車を始めとする多くの乗り物。
その中心に兵士たちが、人の姿で集まっています。
ジャングルでの騒ぎや島の爆発で軍服がよれよれですが、これも勲章です。
私はリーゼロッテ号を出て、涼しい風に当たりながら、今回のミッションを頑張った皆様を労りました。
体のこと真っ先に心配されましたが、安心するよう宥めます。
「こうして私も無事ですし、今回の仕事は終わりました。
皆様、よく頑張られましたね。思わぬ出来事が続きましたが、結果が宜しければ全てよし、といたします」
「はい、女王様!」
「皆様には全員、良い子良い子をさせていただきます」
「!」
私も学びました。
最初から犬になっていただければ、「ご褒美」も精神的な抵抗がないことに気が付いたのです。
わふん。
次々になでなでされて、幸せに目を細めるわんこたちを、私は微笑ましく見守ります。
グレイ様もたっぷりの頬を揺らし、ジョゼ様もご機嫌になられます。
飛び入り参加となった穴掘り犬二人もうっとりとして、足元が覚束ないまま戻り、自分たちが掘った穴に落ちました。
一方で、第四部隊のトップ————。
勝手にダリウス様と爆破を共謀した第四部隊隊長である、マラミュートのラスカル様には、「らすかる」とかかれた白い輪でぐいっと引っ張り、叱っておきました。
穴掘り犬に話を聞くと、新しい発明の実験結果が欲しいから、爆破計画の細かいことは全く聞いていなかったそうです。
「だってせっかく作ったおもちゃの性能を早く知りたいし? 団長がご飯驕ってくれたし」と。
トランシーバーで確認しましたところ。
首輪から私の怒りを感じた白黒もっさりの大型犬が、突然『ご主人様ごめんなさい』と言ってゴミ箱を倒して上半身をつっこみ、スライディングマラミュート状態になったそうです。
調子に乗っているわんこには、反省が必要です。
ゴミ箱犬とは真逆に、反省しすぎて毛玉と化していたマルス様を、持ち上げて抱きしめてさしあげました。
失敗は失敗。でも、責めすぎても何も始まらないのです。
「これからもよろしくお願いしますね」
「くうん」
大きな黒い真珠のような瞳を私に向けて、白い犬は頬を舐めてくださいました。
ダリウス様は、和犬の緊急特訓でへばって白目を剥いて動かなくなったダシバの首をくわえ、私に渡してきます。
『リーゼ様。貴女様の愛犬です』
「ありがとうございます。ダリウス様はダシバを認めてくださるのですね」
『駄犬は永遠に認めませんが、私はリーダー犬。存在すること許すしかありません』
「それでもいいです。ありがとうございます。う、それにしても重い……で……す……ね…」
私はずっしり贅肉で重いダシバを両手で抱えようとして、失敗しました。
地面に落ちそうなデブシバを、鍛え上げられた両腕で拾ってくださったのは、副隊長の和犬の一人。
ヨシムネ・フォン・キシュウ様でした。
彼は爽やかに白い歯を煌めかせながら、素敵な提案をしてくださいます。
「女王様。これからも(我々の心の)健康のため、ダシバ様を(こちらの気が済むまで)運動させたく。ご許可をいただけますか?」
彼の後ろには、二人の和犬。
ハチ・フォン・アキタ様と、リョーマ・フォン・トサ様。
お二人も爽やかな笑みとともに、ダシバの健康を管理してくださると申し出てくださいます。
(誠実な和犬は信用ができます)
私は喜んで頷きました。
ダリウス様もうむとうなずき、三人の副隊長に向けて親指を立てます。
あれはどのような合図なのでしょうね?
テロリストの九割が投降し、殆どが棄教を宣言しています。
別にそこまでは求めていませんでしたが、よほど狂える大導師が怖かったのか。
そして、全員がDOSS(駄犬恐ろしい症候群)を発症してしまいました。
残りの一割はあの爆発に巻き込まれましたが、同情しません。
いつかは死刑になる輩を、同情しても仕方ありません。
私たちは、出来ることをしたのです。
ただ、生き残って逃げ切ったものもまだいるようで、ダリウス様が第三舞台を中心に捜索部隊結成して展開しています。
どうやら、海賊とも伝手があるそうで厄介です。
海のトラブルは第三部隊のアポロ・フォン・グレートデン様が得意とされているらしいのですが、未だにどんな仕事をされているのか、良く分かりません。
王宮に戻ってからは、他の隊長たちにもしっかりと良い子良い子をし……え?
マゾ様ですか?
踏みませんよ、ええ。
簡単には踏みません。ええ。
◇◇◇◇
世界の純人教徒の諸派には、大導師の言動を伝えることで、「ケンネル王国が不当に弾圧をしたわけではない。むしろあれは純人教を語る異教だ。相手にしてはならない」という空気を作り出しました。
そして恐ろしいことに大導師が「純粋なる犬を愛犬とするケンネル王国のトップ」というイメージを諸派にも浸透させてくださったのです。
純人教、恐ろしいスピードで駄犬が偶像と化しています。
結果としてこの国は、大陸でも屈指の、純人教徒とのもめ事がない国となりました。
もちろんケンネル王国側も、犬人の国民のために、余計な衝突を防ぐためのルールを作りました。
ダシバに対して、少しだけ妥協してくださったダリウス様が、アプソ大司祭やレオンハルト様とともに、過激な純人教徒との「付き合い指南」を作成されたのです。
0.彼らはもはや純人教徒ではない。駄犬教徒だと思え。
1.犬人は純人教徒の前で「ダシバ様」の話題に触れない。彼らは駄犬を崇めていて、犬人は駄犬を軽蔑しているからである。噛みあわない会話は、最初からしないに限る。
2.うっかり話題に触れてしまったら「ああ、あの駄犬ね」で聞き流す。
3.「君は犬人なのに純粋なる犬を目指さないのか」と聞かれたら、「人にはそれぞれの信条がある。ダシバ様のように」と言えば躱せる。人に理想を押し付ける人間は、まず自分が出来ていないのだから。
4.いちいち犬人を差別してくる純人教徒がいたら、「ダシバ様のようにもっと自分のことだけを考えて生きたらどうだ」と言えば静かになる。人と比較するのは、暇だからだ。
5.もしも彼らが犯罪をし、純人教的には許されると開き直ったら、「女王様とダシバ様と大導師にちくってやる」と言えば良い。実際に理性に基づいた犯罪など、存在しないと思った方が良い。
6.彼らにとって真実は、駄犬と大導師の告解だけである。
各家庭に配布した【駄犬教とのつき合い方ハンドブック】は好評を博し、配布後一週間で裁判所に持ち込まれる純人教徒とのもめ事が激減したそうです。
そうして。
ケンネル王国が長年苦労させられてきた巨大な宗教が、今ようやく次期女王の名の下に、管理出来るようになったのです。




