第十三話 わんわん、きゅーん、わん!( by ダシバ )
―———思い出したのは少し昔。
近所の公園で他家の犬たちに、毎日ぼろ負けしていた頃のダシバです。
一吠えされれば、降参。
威嚇されれば、降参。
睨まれれば、降参。
ありとあらゆる降参を駆使し、お腹を見せすぎてご近所には「お腹に顔がある犬」と笑われたほど。
困った私は、一緒に公園を散歩をしていた父に相談します。
ですが柔和な父は、苦笑をして逆にダシバを褒めるのです。
「全ての犬に自信を与えられるのだから、ダシバはすごいよね」
確かにダシバに勝った犬たちは、どんな弱い犬でも皆誇らしげにお家に帰っていきます。
そして、当の本犬は彼らの飼い主さんに、謝罪と感謝のおやつをもらって喜んでいます。
「でも犬ならば、より自分が優れていることを誇り、勇敢に戦い勝って、飼い主に褒められたいのでは? あのシェーパードはダシバのお腹に前足を置いて、誇らしげに飼い主さんを見ていますよ?」
あまりにあまりなその様子に、とても腹立たしくなっていると、また父は言うのです。
「プライドがない方が良いことだってあるんだよ」と。
◇◇◇◇
(「飼い主の役に立つ犬」としての理想に燃える犬人さんたちから見れば、プライド0のダメシバは確かに腹立たしいですよね……)
私は半球の窓を少し開けて、双眼鏡でダシバの様子を見ています。
彼は大導師の足元にじゃれつき、次のおやつをくれとねだっていました。
強請られた大導師は、身振り手振りで「これが最後の一本」と犬人用サラミを取り出します。
(ああ、これ以上ダシバをおデブにしないでください!)
焦ります。
なんという拷問でしょう。
今までずっとダシバの命の心配をしてまいりましたが、今はダシバの生活習慣病を気にしています!
「……なんというか。大導師と周辺がおかしいですね」
狂信者の大軍とケンネル王国五百余人のにらみ合いは、小一時間ほど続いております。
旧ユマニスト王城や、宗教施設、ケンネル王国の中でも多くの信者たちがテロ活動を同時多発的に始めました。
忙しいダリウス様に代わって私に付き添ってくださるのは、第一部隊の副団長の一人、ヨシムネ・フォン・キシュウ様。
彼は涼やかな顔をして戦車内でトランシーバーを駆使し、周囲と連絡を取り合っています。
一通りの連絡が終わって、私の持つ双眼鏡を預かってくださります。
黒髪の短髪に切れ長の瞳。聞くところによると、彼は第一部隊の中でも一、二を争うほど若い女性に人気なのだとか。
職務と王族を愛していても決して盲目にならず、周りに気が使える。更に物腰の低いハンサムというところがポイントが高いそうです。
そう、プードル夫人が言っておりました。
「先方は、あくまで着の身着のままで集まった素人が殆どですから。兵糧攻めは簡単でしょう。むしろ子犬隊でしこたま打ち込んだ方がいいと思うのですが……その際に捕らえれた先遣隊も巻き込まれる可能性がありますね」
「できれば一人も殺されて欲しくありません」
「確かに我々の任務は人質の奪還です。しかし、相手はテロリスト。双方、誰一人無事に終わらせるというわけにはいきませんよ」
「そうですよね。しかも、向こうからしたら私たちは侵略者ですものね……」
ヨシムネ様は切れ長の目を細めて、私を諭してきます。
「リーゼロッテ様。ユマニスト王国は傲慢が過ぎました。いつかはこうなる運命だったのです。我が国が動かなくとも、いつかは帝国あたりに併呑されたでしょう。過激な純人教徒との決着も、いつかは付けねばならなかったのです。後ろを見てもしょうがありません。歴史は動きました。今はあの大導師をどうするか、です」
「はい……」
今後、私は女王として、このような状況に度々見舞われるのでしょう。
レオンハルト様は「今回の件は全て上層部で勝手に決定いたしました。なのでリーゼロッテ様の責任ではありません。いつでも我々に死刑を申し渡してくださっていいんですよ。一部は喜んでしまいますが」とおっしゃりましたが、全く解決にはならない気がします。
結局、私が立派な判断力のある大人にならなければ、国のためにはならない。
そういうことなのだと思います。
(ああ、早く大人になりたい。そして新しい我が家となったこの国の皆さんや、お義兄様やダシバと安心して暮らしたいのです)
物思いにふけっていると、ヨシムネ様はトランシーバーからの追加情報を聞いて「おかしいですね」と、首を傾げました。
「どうしたのですか?」
「彼らは戦争段階に入ると、兵士・一般人関係なく、『不純なものは死ね』『我ら純粋なるもの以外この世界から消えろ』『不純交際男女め裏山爆発しろ』など口々にシュプレヒコールを始めるのですが、早朝から全く反応がありません」
「ずっと静かですよね」
「ええ。捕虜になっている先遣隊たちも、特に被害を受けている様子がありません。
何よりも駄犬です。あの駄犬がじゃれついても、大導師は厭っている様子がありません。マメに世話をしているようにも見えます」
むしろ、狂信者たちは。
大導師の足下で、お腹いっぱいになって寝ようとしたら腹が苦しくて仰向けで寝始めたダシバに対し、なにやら……憧憬のような視線を送っています。
これは一体。
私はふと、今なら可能かもしれないと思いました。
直感とは、果たして根拠のないものです。
ですがたった十歳の私でも、生きてきた経験の中で何かが「いける」判断することは多々あります。
特にダシバのダメな感じを見つめる人々の視線……駄犬嫌いの犬人さんたちが決してダメシバに向けない視線に、見覚えのあるものを感じたのです。
私と同じダメな犬を愛する飼い主たちの、目です。
私は、お願いをしました。
「私は大導師と、手紙で対話をしたいのです」
「それは……この状況下では厳しいかもしれませんよ。むしろあの状態で話し合いができるかどうか」
「やってみなければ分かりません。お願いします、使者を立てていただけませんか? もちろん、私の拙い文章により相手に誤解を与えてはいません。内容はダリウス様にも確認していただいてからでいいのです」
「……分かりました」
そうしてダリウス様の許可をもらい、親書をグレイハウンドの皆さんに託し。無事に返事を頂けるように祈り続けました。
親書にはこう書いてあります。
『ユマニストの王は去りました。今この国には純人教の指導者であるゴルトン様と、この国の女王となる私の、対立だけが残っております。
信仰というものは互いに犯しがたいものです。
ですが、貴方が一人の人として、私という一人の人と対話するつもりがございましたら、書簡にてどうありたいのか考えをお聞かせください。また、どうかそちらにおられます犬人たちと愛犬ダシバの身の安全を保障してくださるよう、お願いいたします。貴方にとっての信徒と同じ、大切な方たちなのです』
しばらくして……私の祈りは届きました!
大導師は、私に返事をくださったのです。
そこにあったのは……ずいぶんと哲学的な書き方と、ダシバのことばかりでした。
『犬人の国の次期女王よ。其方に訊ねる。ダシバという犬人は、其方にとってなんなのだ?』
私は返事を書きます。
『家族です。愛する私の犬です。ちなみに犬人ではありません。犬です』
先方から返事が返ってきました。
『この犬人はなぜ話ができず、姿も変えず、力も弱い?』
こう答えました。
『ただの犬だからです』
(あれ。そういえばこの大陸には、犬人はいてもただの犬はいませんでしたね?)
もしかして、普通の犬を知らないのかもと思いながら返事を書き、大導師の返事を待ちます。
『人の食卓のソーセージに飛びついて銜えて逃げていったこともある。プライド高き犬人にはあり得ぬ行為。なぜかれはこのような愚かな行為をするのだ』
これにはひたすら謝罪文を書きました。
内容にダリウス様が眉を顰めましたが、そこは犬飼いのマナーです。
『飼い主として謝ります。ソーセージ代だけは賠償します。後で叱りますからお許しください。でも、行動の理由はただの食いしん坊な子だからです。彼は本能に正直なのです。私はそんな彼を愛犬として大切にしているのです』
大導師との親書のやり取りは、何往復にもなりました。
かの方の質問は、みんなダシバのことばかりです。
国や宗教、集まった狂信者たちのことはいいのでしょうか。
グレイハウンドの皆様が流石にへばり始めてきた頃。
親書の中で、大導師が変化球を投げてきました。
『其方は本当に、ダシバ・ダ・シバを愛しているのだな。ケンネル王国の犬人が皆このようでも、其方は許せるのか』
『この国すべての犬人は私の犬です。やんちゃでも、わがままでも、甘えん坊でも。愛犬を見捨てられる飼い主がおりましょうか。躾は責任を持ってやり続けますので、どうか私を信じていただけませんでしょうか』
ここで、グレイハウンドさんたちが頑張って往復した親書は切れました。
―———刻々と、時間が過ぎていきます。
ピットブルの皆さんは、全く戦線を切れないことに焦れ、イライラを募らせています。
仕方なくリーゼロッテ号の裏に簡易テントを張り、私は昼食を食べることにしました。
携帯食料として提供された『ぐんぐん背が伸びるシリーズ』の栄養缶詰を、ヨシムネ様がキコキコとアンティークな缶切り綺麗に開け、お洒落な模様の紙の深皿に入れ直して、スプーンを添えてスマートに出してくださります。こういうところがモテるのでしょうね、
真正面の椅子に座り、『ケンネルドギーマン』にスプーンを差し込んでそのまま食べているバーバリアン様は、始終不機嫌な顔をされております。
ケンネル王国とユマニスト王城に詰めていた部隊が、大分こちらに集まってきたからです。
「このままでは我々の出番がないではないか」
「元々これは騎士団の仕事だ。血気にはやって余計な死人を出してれるなよ」
「ふん」
ダリウス様が、お気に入りの大缶『ケンネル愛犬元気スーパー』を缶切りでキコキコと切りながら窘めます。
彼が特に好きなものはバウ肉のしぐれ煮味だそうです。
犬人の体質の問題で、これらの缶詰にタマネギとネギなどは絶対に入っておりません。
そして、太陽が傾きかけた頃。
大導師からの使者が、やってきました。
黒い導師服を着た使者は、グレイハウンドさんたちを通じて、ダリウス様に親書を届けます。
「親書は二通! 大導師ゴルトンと、ダシバ様の!」
「何だと?」
ダリウス様が受け取ったダシバの手紙開き、固まります。
数秒間の沈黙の後、手紙をひっくり返し、またひっくり返しました。
そしもう一つのゴルトンの手紙を開き、思いきり眉を潜めます。
「どうしたのですか?」
「……駄犬が」
「ダシバがどうしたのですか!? 何かされてしまったのですか!?」
私が慌てて駆け寄り、ダリウス様の軍服の裾を引っ張ります。
彼は眉間を親指と人差し指で揉み、深く深呼吸をしました。
―———そして、とんでもないことを告げたのです。
「駄犬が大金星をあげました。大導師は我々に降伏するそうです」
ダシバの手紙を開くと、そこにはわんこの足型。
ところどころによだれがついて、いささか汚いです。
「これは……?」
「単なる足形のようです。もう一つの手紙をお読みください」
私は大導師ゴルトンの親書を、開いて読みました。
『ダシバ殿は素晴らしい犬人だ。
全く人に変化せず、言葉も話せず、ただご飯を要求するだけ。なんとも畜生過ぎるその姿に感銘を受けた。この犬人こそ、純粋なる犬道を突き進む者である。
われらは純粋なる者を尊ぶ。
人であることを尊び、人にある喜怒哀楽を肯定する。
「理性ある人」であると実感できることは何でも行う。
そして……この犬は純粋なる畜生として正に理想。「本能のままの犬」である。
獣の姿と人の姿を併せ持つ変身人種どもは、我らの教義を全く理解していないが、この者とは分かり合えるであろう』
私は困惑したまま顔を上げて、ダリウス様を見ます。
彼に「最後までお読みください」と促され、なんとか読みます。
『貴女がこの犬を愛していると聞き、我は次期女王を見直させてもらった。
ただ悪戯に変身人種全てを否定するのではなく、この犬人を通じて、平和的な誼を築きたい』
純粋なる畜生。
それはそうです。ただの犬ですから。
彼は本当に、犬人でない犬を知らなかった様子。
ケンネル王国の戦車によって、初めてもたらされた「ただの犬」。
それは純人教が理想とする「純粋」の体現。
ダメすぎるそれは、理想の姿。
純粋なる犬。
ただの犬。
『かの方を【畜生様】とお呼びし、我らが統治下に置かれる際の、象徴としたい』
そう、要求してきました。
私は思わず返事に書き込みました。
『平和の象徴とされるのは大歓迎です。ですが、畜生はやめてあげてください』
『では、【犬畜生】で』
『それもちょっと……せめて名前呼びでお願いします』
『では【ダシバ様】で』
『最初からそれでお願いします』
そうして、純粋なるただの犬、我が愛するダメシバは————。
変身するすべを持たない人間たちが作った、ひたすら「純粋」を尊ぶ宗教を、思わぬ方向に改心させてしまったのです。
日が大分傾き始めると、先遣隊たちは解放され、聖なる丘に集まった狂信者たちもバーバリアン様や狂犬騎士団に次々と投降していきました。
予想した通り、彼らは食料をあまり持っておりませんでした。
全員で総力戦を行い、殉教するつもりだったらしいです。なんと恐ろしい。
この件についてはダリウス様が、後からやってきた第四部隊の糧食を分け与えて対応したそうです。
そして。
地獄絵図を回避した私は、無事に大導師と平和的な会談をすることになったのです。
場所は聖なる丘近くの草原。
子犬隊がずらりと並び、会談用に用意された机と椅子を囲んでいます。
私は、ちょこんと椅子に座り、ダリウス様とバーバリアン様に挟まれています。
そこに、降伏をした大導師ゴルトンが数人と弟子と共に、ダシバを連れてやってきました。
ダシバはのんびり「遊んできました~」という表情で、ゴルトンに抱えられております。
「ダシバ!」
「リーゼロッテ様! まだ立ってはいけません」
かの方は間近で見ると、不思議な雰囲気のある方でした。
遠目には強いオーラを持ち、大きく見えていたのですが、実際は華奢で小柄です。
秀麗なその顔を長い髪で片方隠し、何も映していないような大きな黒い瞳。
男性だと思っておりましたが、少し高めの声が、女性のようにも聞こえます。
ゴルトンはダシバを弟子に預けます。
そして席につき、軽く挨拶をされたのです。
「初めまして、犬狂いの飼い主よ」
「初めまして。人狂いの大導師様」
私たちはにっこりと微笑みあいます。
が、私の表情筋は上手く動かず無表情のまま。ですが彼は別に気にしないようです。
「手紙ではもっと年上かと思ったが……予想以上に若いな」
「良く言動と外見が見合わないと言われます。お気になさらず」
「しかも、流石にケンネル王国、ビューデガーの王族だ。噂にたがわぬ美しさよ」
「褒めていただきありがとうございます。できれば外見だけではなく、これからの話合いの内容を評価していただければと思います」
純人教を信じる者たちと、他の者との間には広くて深い溝があります。
それは長年の誤解と恐怖、そして猜疑心と暴力によって作られてきました。
血に染まった歴史は、そう簡単に人の心を癒しません。
実際に、私には彼らが全く理解できません。
先方もそうでしょう。
ですが、互いにぶつからないよう工夫できるすべがあるならば。
努力して作り上げていかねばならないのです。
「我らは変身人種への嫌悪感をぬぐうことはできぬ。だから、基本は人間のみで生活し、犬人とより深く交流するのは断らせてもらう。指導者もしかりだ」
「分かりました。ここからが話し合いのスタートですね。自治の範囲については宰相を交えて話し合いを始めましょう」
彼は、私に信教の自由を求めます。
こちらとしても、暴力に走ったり他の宗派の方と揉めたりしなければ構いません。
ただ、国の枠組みとして、どこまで協議と折り合いをつけてくださるか。
そこはアプソ大司祭様や、レオンハルト様。多くの文官の方の仕事になります。
ゴルトンはうむ、と頷き、弟子たちに話し合いの内容を記させています。
国と宗教の話し合いはここまでとし、ダシバの話に移りました。
さて、ダシバです!
彼はわふわふと私の元に走ってきます。
また人様の家でご飯をたんまりと食べてお腹が重そうです。
そして、犬人の皆さんの殺気を感じるとコロリと転がり、「降参、降参」とお腹を晒しました。
その姿に、結局戦えなかったバーバリアン様が切れます。
「ダシバ!」
降参ポーズのまま、ダシバがおしっこを漏らしました。
大導師は微笑ましそうに笑いました。
「あはは。仕方がないですね。なにせダシバ様は畜生様ですから」
良かったですね、ダシバ。畜生ですよ。
—————これはとても素晴らしい褒め言葉だったのですね。
でもせめて。
「駄犬様」くらいでお願いしましょうね。
大導師ゴルトンは当初、誘拐してきたダシバを「随分とまぬけな顔をした犬人だな」と思ったらしいです。次期女王の愛犬というから、さぞかし生意気でプライドの高い犬人を想像していたと。
ですが、ダシバはここでもマイペースにダメシバを発揮しました。
何度もご飯を食い散らかす。散歩を面倒くさがる。お股を開いて腹這い寝。人の持っているお菓子を分けてもらうためならそのまま匍匐前進。大導師の服をよだれで汚す。若い女性信者に寄って行ってブラシを要求する。ネズミを見つけて逃げる。
そして、何を言ってもやっても、降参、降参、降参。
————次の瞬間には、何に降参してしたのかも忘れます。
ゴルドンは衝撃を受けました。
「なんて畜生な」と。
そしてあまりにも純粋な「犬」に感銘を受け、ケンネル王国————つまり飼い主の私の見直したのです。
その後、全信徒総テロを計画していた彼は考えを見直し、平和に共存するすべを考え始めたと……。
ダメシバ……。
そうして、純人教の大導師はケンネル王国の支配を受け入れました。
ダシバのことは「平和の象徴ダシバ様」と崇め奉り、他の宗教のものとも上手くやって行こうと日々努力をしています。
大導師ゴルトンはちょくちょく私に、いえダシバに面会を求め、日々おやつを献上しています。
国で用意するダシバ用のおやつよりもよっぽど高級なものです。
宗教って儲かるのですね。
ダシバを通じればなんとか会話になると分かったアプソ大司祭も、ゴルトンと意思疎通を図り、互いの住み分けをできるようになりました。
一方で狂犬騎士団とバーバリアン様は非常に複雑です。
駄犬に女王だけでなく、更に強力な庇護者が現れたのですから。
最近DOSD(駄犬恐ろしい症候群)の患者が急増したと、第八部隊がぼやいています。
義兄は彼らの渋い顔を見るたびに、腹を抱えて笑っておりました。
————そもそもなぜ、犬人達がユマニスト王国の侵攻時期を早めたのか。
それを聞く機会はなかなか取れず、日は過ぎていきました。
そうしていつの間にか、私の戴冠式の日が近づいてきていたのです。




