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ドラゴンなんってどこにでもいるでしょ? 昨日まではうちの前を飛んでると言ったらカラスかスズメくらいのはずなのですが……

趣味で書いている程度です。更新もそんなに多くないと思いますので本当に暇で他に何もすることがない時に読んでください


 突然ですが、質問です。

 あなたは周りに合わせる人間ですか?

 私こと、星見月火憐ほしみつきかれんの答えはイエスです。

 周りのみんながドラマの話をしていたら次の放送から見始めて話についていけるようにするし、好きな音楽アーティストもみんながよく聴くものから選んで聞いています。

 そんな生活、煩わしいと思う人もいるかもしれませんがこれが私でこんな私が好きだったりしています。だって、溶け込めないよりは溶け込めた方がいいじゃないですか? それに、これも1つの能力だと思いますし。

 そんな私ですが、最近、少し困っています。最近と言うより、今ですが。まずは今の状況から説明しましょうか。


 「はぁ。どうしたものか」


 本屋の中である本を目の前に立ち尽くしている少女、それが私。


 「まだ、悩んでるの?」


 隣の彼女は高校に入ってからできた友達です。


 「だってさー。ドラマだったらテレビの前で座ってればすむけど、小説となるとちょっとなー」

 「なら止めればいいでしょ」

 「だって、それじゃあ話についていけないんだもん」


 先ほどの質問はこれが原因。

 最近学校はおろか、巷ですらこの小説がとてつもなく流行っているのです。休み時間になるたびこれの話で女子も男子も持ちきり。それなのに私はまだ読んでいないのです。


 「ほんと面倒くさいのね。なら、読めばいいでしょ」

 「うー。だってこんなに活字で埋まってるんだよ? 読めるわけないじゃん」


 小説の一冊を手に取ってペラペラとページをめくってみると活字だらけ。


 訂正しましょう。読んでいないのではないのです。読めないのです。活字ってたくさん並ぶとこう、なんか目がキラキラしません? あれがものすごく嫌いです。英語とか国語の時間はもうほんとうに困ったものです。


 「読めないのは火憐が苦手なだけでしょ」

 「そうだけど、悪いのは私じゃない、この作品の方だよ。ここのところずっとテレビでも紹介されるくらい人気なのにドラマ化もだめ、アニメ化もだめで漫画にすらしてくれないんだよ? なら、小説しかないでしょ!」

 「なら、買いなさいよ。ずっとここで立たされてるのも疲れるのよ。わざわざここまで付き合わされたこっちの身にもなってよね」

 「うー。ごめんなさい」


 そう。大変申し訳ないことにこの状況になってから既に30分は経過しているのです。さて、どうしたものか。


 「で、買うの? 買わないの? そろそろ決めな」

 「うー。どうしよう。買ったのに読めないってなったらお金の無駄だし、でもチャレンジもせずに諦めたくないよー」

 「はぁ。わかったわよ。なら、私が買ってあげるから先読んで返してね」

 「え? いや、いいよ。なんか悪いし」

 「これは親切じゃない。ここで時間を空費するくらいならお金を払ってでも打開したいってだけ」

 「ぐっ。こ、言葉が鋭いなぁ」


 まぁ、なにはともあれそうしてくれるならそうしていただくに越したことはないわけでそうすることにしました。


 そして、本屋さんを出ての別れ際。


 「1冊は今日中に読んで明日の朝に返してね」

 「明日、日曜だよ?」

 「関係ない」


 彼女もこの小説を読みたかったのですか。


 でも、この小説は結構長い小説で全部で10巻。既に完結してるからありがたいですけど、でも1巻、1巻が結構厚い。それを後半日もせずに読み切れと? いくらなんでも無理です。


 「え? さ、流石にそれは」

 「でも、こうでもしないと読まないでしょ?」

 「そ、そうですね……」


 お金は払わなくて良かったものの、10冊分の重さを背負うわ、読み終える時間制限ができるわでそんなにいい提案ではなかったかも知れません。


 「それじゃあ、気を付けて。最近失踪事件が増えてるみたいだから」

 「うん。大丈夫だよ。じゃあねー」


 大きく手を振って沈む夕日を背に駆けていく無邪気な少女。を再現したかったんですが、カバンが重くて走れません。仕方なく、普通に手を振って歩き出すのでした。



 それから家に着いた私は彼女との約束を果たすべく、活字に立ち向かいました。いつもは耐え難い何かに阻まれ目がチカチカするのですが、この小説はなぜかそれがあまり強くなかったのですらすらと読めました。


 内容はファンタジーラブコメ。最強の主人公(男)が数人のヒロインの願いを叶えるべく、いくつかの難題に立ち向かっていくライトノベルのような物語。私的にはそんなに好きな部類ではないし、特に面白いとも思わないのですがこれも話題に事欠かないため。仕方ありません。


 特に面白いわけでも好きなわけでもないのですがなぜか読むのがやめられず、ついには3冊まで読み切ってしまいました。




 翌朝、昨日の本屋で待ち合わせ。


 彼女は一冊しか読み終わらないと思っていたのでしょうが私は三冊持って行き見せつけました。

 ちょっとだけドヤ? ってしてみます。でも。


 「頑張ったのね。まぁ、三冊だけだけど」


 だけと言われました。そりゃあ、小説を読むのが趣味の彼女ほど早くは読めませんが。


 「でも、一冊しか渡されないと思ってたものだからよかったわ。残りもなるべく早めにね」

 「うん。任せといて。じゃ、残り読みに帰るね」


 そう啖呵を切ってどこまでも青い空をバックに走り出すのでした。



 それから家に帰るとずっと小説を読み老けました。ですが読めば読むほど面白みがなくなっていきます。ワンパターンの展開だし。それでもちゃんと10巻まで読破したのですからほめてほしいです。


 最後の一冊を閉じて明日学校へもっていくため鞄にしまいます。ふと空を見ると朝焼けがとても綺麗です。


 やってしまった。もう寝る時間などほとんどない。


 でも、寝ないよりはマシなので颯爽と布団にもぐるのでした。



 1時間後。


 一人暮らしなら寝坊したと言い張りゆっくりと寝れるのでしょうが一人暮らしではない私はすぐに親の魔の手が襲い掛かります。ドアを強く開け放ち、大声とともに布団を引きはがしにかかる。これが家のやり方。どんなに頑張っても私の非力な力では母という怪物には勝てません。勝算がない戦いはしたくないのでやむ終えず起こされたら起きます。


 そして、いつも通り眠い眼をこすりながら朝の準備を始めます。


 しかし、今日はほとんど寝てないのでかなり眠いです。おそらくほとんどの授業は睡眠時間になってしまうでしょう。でも、構いません。私は休み時間のために学校に行くのですから。


 「今朝入った最新ニュースをお届けします。昨日、またしても失踪者が出ました。年齢は——」


 ふとテレビに目を向けるとまた失踪者が取り上げられています。最近そういうニュースが多くて両親から口うるさく気を付けるように言われてしまいます。早く解決されるといいなぁー。


 そんなことを思いながらぎりぎりまで時間を使いゆったりと朝食を済ませます。まだぼけーっとしてる私とは対照的に中学生の弟が行ってきますの声をあげて家を出って行った。弟は私と違い本当にしっかりとしている。


 私もそろそろ家を出る時間だ。

 しょうがない。学校へ行くとしましょうか。


 「行ってきます」

 「行ってらっしゃい。気を付けるんだよ」


 未だに頭がはっきりとしません。それでも行かなければならないので玄関のドアを開けます。


 すると目の前に広がるは果てしない薄緑と紫色の空。空中には島が浮いていて、そこから滝のように水が流れ落ちるのがとても幻想的です。また、ドラゴンが火を噴きながら、月らしいものが4つ見える空を飛んでいます。


 私は無言でドアを強く締めました。


 「どうしたの? 忘れ物?」

 「え? い、いや、違くてその、ドラゴンが……」

 「いまさら何言ってんのさ。ドラゴンなんてどこにでもいるでしょ? いいから早く行ってきなさい」


 え? いや、ちょ、ちょっと待って。少しだけでいいから待って。昨日まではうちの前を飛んでいると言ったらカラスかスズメくらいのはずなのですが……


 「う、嘘でしょ?」


 目をこすりほっぺたを強くつまんでみる。痛い。確かに夢じゃないみたい。再びドアを開く。


 やっぱりさっきと何も変わらない光景です。

 このまま立ち尽くしてもどうにもならないので思い切って家の外に出ました。


 「あ、あれ? 家ってこんなところに建ってたっけ?」


 宙に浮いている島の上にポツンと建っている一軒の家。

 隣の家も向かいの家もなくなっていてあるのは見渡す限りの空。その浮遊島の下は草原が広がっていて寝そべったら気持ちよさそう。でも、よく考えたらまず降りられないよね。


 「さて、これからどうしますか」


 なんかつい最近にもこんなこと言ってたっけ。


 「おい、そこのお前」


 何もできずに立ち尽くしていると知らない男の人に声をかけられました。


 「見ない顔だな。つい最近ここに来たクリエイターだな?」

 「くりえいたー?」

 「その様子なら間違いないようだな。ようやく最後の一人がそろったな」

 「えっと、何のことですか?」

 「あとで嫌でもわかるよ。とりあえずついて来い」

 「こ、これってもしかしてナンパってやつですか? な、なんで私なんですか」

 「はぁ。もういい無理やり連れていく」


 有無を言わせず私の手を取り進む彼の手はすごく優しく私の手を握っていた。 

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