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死んだ彼女と生きている僕。  作者: 牛蒡野時雨煮、
3/3


 二人乗りバイクを走らせ数分、僕たちがよく来た河原に到着した。

「懐かしいね、ここも」

 舗装された道を通り、近くにバイクを止める僕に微笑みかける彼女。僕はそうだねと呟き返す事しかできない。

 辺りを見渡せば花火をしに来た親子とその友達数人一組と、肩を寄せ合う若い男女。

 ああ、僕たちもあんな風に良くここで話したなぁと思っていると、彼女の方も同じ事を思っていたらしくあの二人、私たちみたいだねと笑った。

「……じゃあ、始めようか」

「あ、ちょっとまって」

 そう言うと彼女は僕の視界を塞ぎ、やわらかな感触を僕の唇に残す。

「これでよし。じゃあどうぞ!」

 よしってなんだよ、と苦笑しつつ僕は息を吸って、吐いて、ギターを弾き始めた。

 突然一人歌いだした僕を、花火の親子が、寄り添う男女が驚いてこちらを見る。

 最初こそは静かに聴いていたが、僕の様子を見て気味悪がったのだろう。ちらちらと僕の方を見てはそそくさと退散して行った。


 僕は形振り構わず歌って叫んで泣いた。

 自分以外、周りに誰も居なくなっても。

 ただただ真っ直ぐ前を見て、歌って叫んで笑った。




 夏の終わりの話。


 

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