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やさしい冬のお話

作者: 咲野 音葉

冬はきらい。


寒いのはにがてだし、ユキって冷たいし転ぶといたいし


それに冬は、ぼくから


ぼくからはなちゃんをとったんだ。




毎日、ぼくは窓の外をみる。そしていつも思うんだ『あーあ、今日もユキがふってる。』おふとんからでたくない。ゆかは氷みたいにつめたいし、おふとんの外はもう冬なんだ。


でもママにおこられるのはイヤだからそーっとぼくは冬のところへいく。毎日毎日、この時間がすごくキライ。


はやく、はやく冬なんておわればいいのに。

そうしたら春がきて…きっとはなちゃんだって


『かえって…くるんだ、きっと、』


きっと、きっとかえってくるんだ。はやく見つけてあげるんだ。



外はすごく寒いからあたたかくしなさいってママがくれたマフラーをつけてぼうしもかぶって、ふとったネコみたいに大きくなったぼくは今日もはなちゃんをさがしに外へでた。


冬なんかだいきらいだけどそれよりはなちゃんがだいすきだから。だからユキだってへっちゃらなんだ!


ゆっくりゆっくりとからだをまるめてあるく…気がつくと目のまえに女の子がたっていた。


「ねぇあそぼうよ。」


まっしろな手をこちらに出しながら女の子はぼくにはなしかけてきた。


『イヤだ。』


ぼくがこたえると女の子はふしぎそうに首をかたむけた。


「なんで?」


『ぼくは冬がキライなんだ。』


「…どうして?」


『だって冬はさむいしユキはつめたいし、転んだらいたいし…』


そこまで言って女の子の顔をみてぼくは、はっ、とした。女の子がとてもかなしそうな顔をしたからだ。


「…ユキはいやじゃないよ、とってもキレイなんだよ。」


『でも冷たいしかたいよ。』


「でもふわふわしているし雪だるまだってつくれるわ!」


女の子はかなしそうな顔からいきなりしんけんな顔をした。このこはユキがだいすきなのかな


『ぼくは春のほうがすきだな。』


「…わたし、春ってキライ。」


『なんで?』


「だって春はおひさまがあついし…ユキだってとけちゃうわ。」


『おひさまはとってもやさしいし、ユキだってとけてお花もさくんだよ。』


「…っ、だってそれじゃあ…」


と、女の子はなにかをいいかけてやっぱりいい、といった。


「それより、なんであなたはそんなに冬がキライなの?ユキがつめたいから?」


『それもあるけど、冬は…冬はぼくからはなちゃんをとったんだよ。』


「はなちゃん?」


『そう、はなちゃん。』


「はなちゃんってなあに?」


『ぼくのたいせつなもの。』


「冬はそんなたいせつなものとったりしないわ。」


『でもとられたんだ。』


「そんなのうそよ。」


『うそじゃないよ。でも春が、春がくればきっとはなちゃんはかえってくる。』


「なんで冬がはなちゃんをとったっておもうの?」


『冬がきたとき、はなちゃんはおきなくなっちゃったんだ。きっとぼくとおなじで寒くておきれなくなっちゃったんだ。』


「はなちゃんは…春になったってかえってこないよ。」


『そんなことない!あったかくなったらきっとはなちゃんだって…』


なんでこのこはウソをつくんだろう。なんでそんないじわるいうんだろう。


ぼくはこの女の子がなにを言っているのかわからなかった。けど、女の子はきっぱりといった。


「かえってこない、ぜったいに。」


その言葉をきいて、ぼくはかけだした。

にげたんだ。このまっしろい女の子から。



『はあっ、はぁっ』


たくさん走ったからすごくつかれた。いきをするとのどが冷たくていたくなる。やっぱりイヤなんだ。冬なんか。


つかれてすわると、目からぽろっとなみだがこぼれた。


『はなちゃん…はなちゃん!』


なんでみんなおなじことを言うんだろう。ママもはなちゃんはお星さまになるんだって、ゆっくりねかしてあげなさいって。あの女の子とおなじことを言うんだ。

はやくおこしてあげないと。お星さまなんかになろうとしているはなちゃんをとめてあげないと。


『うっ…ううぅっ』


なみだがとまらなかった。ぽろぽろぽろぽろぼくの目からあふれてきた。


なんでだろう。なんでなんだろう。


とまらない、なみだがとまらない。


『…え』


そんなぼくのまえにふわふわとしたユキがおちてきた。


そのユキのさきにいたのは…


『はなちゃん?!』


はなちゃんだ、楽しそうにユキであそんでいるはなちゃんだ


やっぱりあのこの言ったことはウソだったんだ!!はなちゃんはいたんだ!!


ぼくはうれしくなってはなちゃんのところへいこうとした


けど


『…あれ、ぼく?』


ぼくだ。はなちゃんのちかくで楽しそうにユキであそんでいるぼくがいた。


あれは…むかし、ユキをはじめてみたとき、うれしくなってはなちゃんと外にでたときのぼくだ。


「おぼえてる?」


いつからいたんだろう、さっきのまっしろな女の子がぼくのとなりにいた。


『おぼえてるよ。だってあれは昔のぼくだもん。』


「…まだ、ユキはきらい?」


『あのときはだいすきだったよ。いまは、すこしスキじゃなくなったけど。』


それでも、おもいだした。ユキは、ぼくもはなちゃんもだいすきだったんだ。ふわふわで冷たくって雪だるまもつくれて。


ユキはとってもやさしくて、はなちゃんをつれていくわるいものじゃないんだって、おもいだした。


『…ごめんね』


「なにが?」


『ユキのこと…わるくいっちゃって。』


「…きらいじゃない?」


『きらいじゃない、きらいじゃないよ。』


ぼくはちゃんと女の子の目をみていった。


すると、おんなのこはうれしそうにわらった。


「よかった!!」


『…はなちゃんは、』


「…。」


『冬がきらいじゃないんだよね?』


「きっとね。」


『うん、そうだよね。』


ぼくはたぶん、ママの言うこともこの子の言うことも、ウソじゃないってわかっていたんだ。


でも


『ごめんねはなちゃん。ぼく、さびしかったんだ。』


あの時のぼくと楽しそうにユキであそんでるはなちゃんにはなしかけた。


『ぼくがずっとそんなこと言ってたら、はなちゃんもっとかなしくなっちゃうね。ごめんね。』


きこえているか、わからないけど。

泣かないようにいわなくちゃ。


『いままで、ありがとう。』


ふわっと、いままでみていたものがウソだったように。はなちゃんはユキのようにきえてしまった。


『…きれいだね。』


「そうだね。」


『きっとね、春もね冬にはきらわれてると思うんだ。』


「うん。」


『でもぼくね、きらいだったけど冬のユキはきれいだし、さむいけどマフラーつけたらあったかいから…スキなところもみつけられたよ。』


「…冬の?」


『うん。』


「そっかあ。」


『きみは、まだ春がきらい?』


「きらい…だけどそうでもないかも、たしかにお花もさくし、さびしいけどあなたがスキなものなら、わたしもスキになれそう!」


『さびしいの?』


「うん、だってもうそろそろお別れしなきゃいけないから。」


『どうして?』


「春がくるから。」


『ぼくとあそびたいんじゃなかったの?』


「うん、でももうムリみたい…ざんねんだなぁ。」


…じゃあ


『じゃあまたユキがふったら、その時はあそぼう!ぼくもきっとユキがだいすきになってるはずだから。』


「うん!ありがとう!!」


『え』


女の子がわらった瞬間、目のまえにたしかにいたあの子のところにはふわっとユキがおちてきただけだった。


『…名前きくのわすれちゃったなぁ。』


でもまぁいいか、きっとあの子はまた来るんだ、ユキがふったら外に出て、その時はあの子に名前をきこう。


冬はやっぱり寒いけど今はなんだかまた冬がきてユキがふるのが少し楽しみになっていた。


そんなぼくのうしろので少しはやくさいたお花の上に、やわらかいユキがふわっとのった。

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