4.その後
1日1シーン、夜20時ごろ掲載です。
本作はドリンクバーを栄養源に制作されております。
ガストのポテト大盛りに、マヨとケチャップは必要ないと思います。
4.その後
「驚きました…………ゴキブリ並みの生命力ですね、はっきり言ってキモいです」
「んぐっ、んぐっ、んぐっ、んぐっっ……ぷはぁぁっっ!!」
新しい朝がやってきた。ベッドでそのまま失神していた僕は、翌朝丸裸にシーツ一枚という有様で目覚めることになった。
彼女は生存している僕に驚き、冷蔵庫から飲み物を持ってきてくれた。
「「生理食塩水と……スポーツドリンク…………どっちが好み……?」」
1L分のそのペットボトルを僕は全て飲み干し、ようやくクラクラとしながらも一息をつく。身体は…………今は男だ。そもそもあれは、血液を奪われた僕が陥った……幻覚だったのだろうか……?
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………う、うぅ……はぁ……はぁ……はぁ…………生きてるって、大事……」
首もとが少しだけチクリとする。触れてみると傷はふさがっているようだ。でも不思議と気分は晴れやかで、何か重たいものが自分から消えたような気がする。何か、良くない何かが。
「あれ…………何で俺、裸…………?」
「……………………生気の方もいただきました。具体的には…………あえて割愛します」
「えっ?! 一体僕なにをされたのっ?! うわんっ、ケダモノぉぉーっ!!」
露出していた胸元を隠し、水分を得てやっと回転してきた思考は衣服を探した。見つけたそれを着込む。
「しかし…………諏訪部くんは貴重な存在ですね…………ゴキブリのくせに」
「さすがにゴキブリ扱いはその…………勘弁して欲しいです……」
「……………………」
僕は制服を着込み立ち上がった。一体何をされたのか、身体中が軽い筋肉痛だった。
「……」
その僕の正面に彼女は立つ。そして、無感情に僕をのぞき込む。
(おわっ?!)
油断するとまた血を吸われるかもしれないと、さすがに僕は警戒した。
「……………………」
彼女の意図はそれとは違うようだ。でも油断はダメだ。これ以上は1mLでも致死量過ぎる。
「…………ください……」
その僕へ、彼女は気恥ずかしそうに瞳をそらし、ボソボソと何かを言った。上手く聞き取れない。
「え、なに?」
「…………っ」
頬がまた赤く染まる。彼女は……結構赤面症だ。
「お…………お……お友達…………お友達になってください…………」
やがてすねたように、一度も僕へは視線を合わせずそう言った。
「あと…………週に二度ほど…………生気と血液を吸わせてください…………ゴキブリ野郎でも我慢します」
これでもかと素直じゃない。けど、気持ちはこれ以上なく伝わってくる。
「いいよ」
「……っ!! ほ、ほんとう…………っ?!!」
彼女の願いを受け入れることにした。だって僕は、彼女に一目惚れしてしまった。だから、逆らえるはずない。嬉しい。吸血されるのは複雑だったけど。
「うん、でも代わりに…………お願いがある」
「………………何」
交換条件に、彼女はその顔色を変えて、寡黙な反応を見せた。正直じゃない子だとひしひしと感じる。
「これからは僕以外の血を吸わないで」
「……!」
真剣に彼女を見つめて、僕はそのお願いを口にした。彼女は意外なその言葉に、瞳を大きくして聞いてくれる。
「だって…………キミに一目惚れなんだ…………そのロゼカラーの髪、鈴のような声…………全てが僕の理想なんだ! だからこれから、僕以外の血を吸わないで欲しい、生気も、それが条件だ……っ」
朱夏は驚いていた。僕の予想を遙かに越えて、何か別のものを見るかのように、人の顔をのぞき込んでいた。そして朱夏は答えてくれた。
「後悔しない…………?」
「しない」
「……………………」
彼女が何を思い、何に驚き、考えているのかはわからない。でも確かなのは……。
「……わかった…………これからは……諏訪部くん以外の血は吸わない…………」
彼女は僕の願いを喜んでくれていた。朱夏は恥じらいうつむきながら、しおらしい声で何度も小さく首をうなづかせた。
(…………どうして…………私を怖がらないの……? 怖くないの…………? 本当の姿褒められたの…………はじめて…………諏訪部……諏訪部政…………ゴキブリみたいな……変な人…………やっぱり変態だ…………)
それが……僕こと諏訪部政と、吸血鬼の朱夏の出会いだった。そしてここから、僕らは全ての嘘と出会ってゆくことになる。この世界を包み込む大嘘と、僕が僕自身をあざむいてきたちっぽけな嘘と、それ以外の全ての嘘に。
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本作はスカイラーク・ガストで、主にピザでも食いながら制作されています。
マヨコーンピザの壮絶的なカロリーをご想像ください。




