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世界中にこの歌を。  作者: 月浦 風
Ⅰ章 出発
3/9


「お待たせっ」


自転車で慌てて駆けつけると、そこには遠くからでも美形と分かる、目鼻立ちがくっきりとした祐斗がベンチに腰掛けていた。


「いや、呼び出したの俺の方だしね」少し微笑んだその姿は本当に絵に描いたようだった。

「あ、これ。

言ってたノート」


水色の表紙のそれは、凜の趣味で書いていた歌詞帳で、なぜこれを裕斗が必要としているのか、凛にはよく分からなかった。


「ありがとう。

ちょっと見せてね」


裕斗はペラペラとノートを捲っていき、あるページで手を止めた。


「永遠なんて言葉

口には出してみるけれど

私にはまだ分からない______」

「っ!!」


凜が恥ずかしくて目も開けられないでいると、祐斗は声に出すことを止めた。


「あっ、ごめん!!

嫌だった?」

「あ、いや、恥ずかしくて……」

「そう?

これ、良いと思うけど」


またノートに目を落とした祐斗を見て、凜は一番気になっていた事を聞いた。


「どうしてこれを?」


すると祐斗はゆっくりと顔を上げて、何かに気付いたような顔をした。


「ごめん、言ってなかったか。

喉乾いたしさ、スタバ行こう。

奢るしね」

「えっ?

あ、うん……」


あたしで良いの?


そんな考えてが頭よぎるも、凜は素早くそれを振り払った。


駅の近くにあるこの世界的に有名なコーヒーショップは、まだ割と空いていて、凜はカフェラテを、祐斗はアイスコーヒーをそれぞれ注文した。


「それでさっきの事だけど……」

「うん。

実はさ、俺、曲を作ってるんだ」

「曲!?」

「ああ。

作るのが好きで。

小さい頃から割と最近までピアノとか色々習ってたし、独学だけどなんとかなってる。

何曲かは出来たんだけど、木山さんみたいな良い歌詞も思いつかないし。

で、さっきあの歌詞帳をチラッと見て、素直にすごいな、って思って。

そんで、出来た歌を歌ってもらえたら良いな、って。

だから加藤に番号教えてもらって、今にいたるということです」


成る程、麻里ちゃんが犯人か……


何て呑気に考えるも。


「えっ!?

ちょっと待って。

あたしが?

歌うの苦手だし、大体楽譜もろくに読めないし、無理だよ」

「今まで何もやってなかったの!?

てっきり……」

「あ、ギターなら少しだけ…」

「ギター出来るの!?」


急に裕斗の声のトーンが上がり、凛は思わずたじろいだ。


「え、うん。

お父さんがやってたのを小さい頃から見てたら自然に……

すごい昔のことだけど」

「見ただけで出来たの!?

そっか……」

「いや、今はどうか分かんないけど。

それに、歌うのはホントに苦手で……」

「それはない。

保証するから」

「え?」

「ま、いいや。

今から俺んち来ない?

ギター弾かせたげるし」

「えっ!?

い……家?」

「うん。

そうだけど」


祐斗がこういう話には超が付くほど鈍感だという事に気付くのは、まだ少し先の話。



「おじゃましまーす」

「あ、今誰も居ないし気にせず入って」

「そうなんだ。

……すごっ」


外から見た時もすごかったが、中へ入ると、そこはもはや凜の想像を遥かに超えていた。

超豪邸で、玄関は人が10人は入れそうな位の広さで、床は一面大理石。

裕斗に続いて、人が一人寝られそうなほどの幅のある廊下を進んでいくと、幾つかの防音仕様の扉が現れた。

裕斗はそのうちのひとつのドアを開け、中へ入っていく。

凛も続いて入ると、思わず立ち止まってしまった。


そこは凛にとって、今までの生活とはかけ離れた、全く違う場所だった。











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