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たぶん、外れていない  作者: kinpo


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第9話

年末の街は、白い。

雪じゃない。

照明と吐く息だ。


駅前の掲示板を見る。

紙が一枚、斜めだ。

貼り直した跡がある。


なるほど。

急いだな。


俺はコーヒーを買う。

熱すぎる。

舌をやる。


判断が一手早かった。

冷ますべきだった。


女は少し離れて立っている。

近すぎない。

でも遠くもない。


「何か分かりました?」


「分かりそうな気はする」


「いつもですね」


自販機の前をどく。

後ろの人に、軽くぶつかる。

謝る。

相手は無反応。


敵意でも好意でもない。

年末だ。


通りを渡る。

信号は青。

でも渡り終わる前に赤になる。


予測は合っていた。

時間配分だけが甘い。


女は、赤になる前に渡りきっている。

歩幅が違う。


ビルの影。

監視カメラ。

向きが一度だけ変わっている。


ここだ。


俺は一歩踏み出す。

靴底が濡れている。

昼の水たまりだ。


滑るほどじゃない。

ただ、気になる。


「事件ですか」


「事件だった」


「もう終わった?」


「終わったと思われている」


女は、頷く。

理解は早い。


路地。

ゴミ袋が二つ。

一つだけ新しい。


開けない。

匂いで分かる。


推理は正しい。

現象だけなら。


「誰がやったか、分かります?」


「分からない」


正確には、

分かる要素は揃っている。


動機。

時間。

配置。


全部、見えている。


だから、外す。


屋台の前を通る。

湯気が目に入る。


腹が鳴る。

小さく。


今じゃない。


女が、足を止める。

メニューを見る。


「食べます?」


「後で」


「さっきも言ってました」


「さっきは、さっきだ」


屋台の床。

油がはねている。


踏まない位置を選ぶ。

選びすぎて、遠回り。


効率が落ちる。

安全は上がる。


「回りくどいですね」


「近道は、だいたい高くつく」


これは経験則。

事件とは関係ない。


携帯が鳴る。

切ってなかった。


無音にする。

遅い。


通知は、天気予報。

雪は降らない。


外れだ。


女が、こちらを見る。

一瞬だけ。


「さっきの場所」


「何だ」


「カメラ、もう一つありました」


俺は立ち止まる。

確認する。


あった。

見落としてた。


冴えてるのに、抜ける。

いつものことだ。


「でも、意味は薄い」


「どうして?」


「映らない角度だ」


女は、少し考える。

それから、笑わない。


「核心、近いですね」


「近い感じはある」


感じだけだ。

確信じゃない。


風が強くなる。

コートのボタンを留め忘れていた。


今さら留める。

一つずれる。


直さない。


歩く。

足音が二つ。

同じリズム。


「もし、ですよ」


女が言う。


「もし、関係者が、ずっと近くにいたら?」


いい質問だ。

二段目の深読みが始まる。


「生活圏が重なってるだけだ」


「偶然?」


「年末だ」


三つとも、正しい。

だから、外れる。


女は、それ以上言わない。

賢い。


街は、騒がしい。

でも、何も起きていない顔をしている。


俺の推理も、

この関係も。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》

手袋の片方が、いつの間にかない。

探さない。

寒さは、判断を鈍らせない程度だ。

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