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たぶん、外れていない  作者: kinpo


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第6話

年末の街は、判断を鈍らせる。

理由は単純だ。

人が多すぎる。


改札前で立ち止まった。

ICカードが反応しない。

残高はある。


一度、財布から出して確認する。

問題ない。

もう一度タッチする。


通れる。


「多分、俺が間違ってる」


こういう小さな引っかかりが、今日は多い。


彼女は少し離れたところで待っていた。

急がない。

急ぐ理由がないからだ。


「刑事さんって、今日も忙しいんですね」


「忙しいふりはしてる。理由は後づけでいい」


改札を抜けた瞬間、

呼び込みの声が一斉に耳に入る。


出血大サービス。

最終セール。

今年最後。


全部、信用できない言葉だ。


「人、多いですね」


また正確な観測。


「年末は、街が推理を放棄する」


「推理?」


「人が多いと、だいたい事故は偶然扱いされる」


彼女は少し考える。

考えるふりかもしれない。


「それ、事件にも言えます?」


「説明すると長くなる。しなくても結果は同じ」


屋台の前で足を止める。

焼きそば。

匂いが強い。


買うか迷って、やめる。

その瞬間、腹が鳴る。


前回は買って、

麺が伸びていた。


今回はやめた。

でも空腹は解決しない。


彼女が缶コーヒーを買う。

ブラック。


「飲まないんですか」


「期待してないわけじゃない。ただ、回収する気がない」


意味は通じない。

でも会話は続く。


横断歩道。

青になる。


向こう側に、昨日の路地と似た影。

似ているだけだ。

同じではない。


「昨日の事件、どうなったんですか」


「判断は保留にする。諦めるのとは違う」


「疑ってる人は?」


一瞬だけ、彼女を見る。


「一回考えた。十分だった」


彼女は笑わない。

でも、否定もしない。


街頭テレビが、

年末特番を流している。


過去の事件。

未解決。

総集編。


編集が上手すぎる。


「こういうの、好きですか」


「好きじゃない。でも、見る」


「どうして?」


「分かってる顔をしてないと、進まないから」


沈黙。

それが自然に続く。


彼女が先に歩き出す。

歩幅は合っている。


偶然だ。


「刑事さん」


「ん?」


「来年も、こんな感じですか」


少し考える。


「良くはならない。でも、悪化もしない気がする」


彼女は、ほんの少しだけ笑った。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》

年末の街は、

結論を急がない。

だから、今日も帰り道を間違える。


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