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勇者たちの功罪  作者: Sin Guilty
第十章

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第098話 『Re: Boy Meets Girl......s』⑦

「そ、それは」


 これで「信じすぎでは?」とか真顔で言われたらかっこ悪いなんてもんじゃなかったが、やっとスフィアがいつものような動揺を見せてくれたので胸を撫で下ろした。


「それとも俺の思い上がりだったか?」


「そんなことはありません!」


 余裕ができたので意地の悪いきき方をすると、打てば響くようなスフィアらしい反応を返してくれる。


 所詮俺にはスフィアを慰めるなんてことはできないのだ。

 個人的にはそんなことができるのはよほどその対象よりも余裕がある奴だけだと思う。


 せいぜい俺にできるのは、あらゆる手段を使ってスフィアを元気にすること程度。

 たとえそれが空元気であってもだ。


 ああよかった。こんな感じこそがいかにも俺たちっぽい。

 実は人生において、それっぽい、らしくある、というのは重要だと思うんだ俺は。


 そこを軽視し、ぽくない在り方をよしとして、らしくもないことばかりしていると無理が少しずつ重なっていってやがて必ず破綻する。そんな終わり方を指して不幸な結末バッドエンドと呼ぶのだろうと思う、おそらくは。


 もう二度と俺たちはそんなことにはならない。


 そのために過去を再構築することを選んだし、そのために世界を犠牲にすることもまるで厭わなかったのだ。スフィアがヴァレリア帝国を消し飛ばした程度で腰が引けるなら、最初からこんな選択などしちゃいないのだ、俺は。


 スフィアが自分の咎としてそれを抱え続けることまで止める気はないが、少なくとも俺たち――アドル、クリスティアナ殿下、カインをあわせた5人は共犯者なのだ。お互いに要らん遠慮をする必要なんかない。

 

「だったら俺がスフィアに引いてなんていないことも信じられるだろ? どっちかというと俺の方こそ、これからしようとしていることに引かれないかが心配だよ」


 そうなのだ、過去になった未来の話などより、よほどこれから過去にしていく未来の方が心配なんだよ俺は。


 前周ならいざ知らず、あの結末を一度経験した俺がらしく立ち回るということは、多くの者にとってはかなり容赦ないものになるのは間違いない。この周ではまだなにもしていない相手であっても、条件が整えばやらかすことを知っている相手に優しくする自信もなければ、必要も感じていないからだ。


 相手にとっては理不尽極まりないだろうし、そんな俺の所業を見る者たちにもどんびかれる可能性は否定できない。


 でも間違いなく俺は、「今回のこの人はまだなにもしていません」とか言われたら切れる自信がある。そんなことを言えるのは、そいつがかつてやらかしたことに自分も自分の大事な人も関わっていない奴だけだと思うからだ。

 

 まあ条件さえ整えばやらかす奴は、逆に言えば条件を崩してやればやらかさない。

 やらかせないといった方がより正解に近いだろう。


 だからこそ、先手必勝で殺して回ろうとまでは考えていない。

 そいつらが俺たちに手を出せないような状況を構築するために、手段を択ばないというだけだ。俺たちに対していい人でいるしかないような環境を、がっつり整えてくれる。

 

「……私が今から聖教会にしようとしていることよりもですか?」


 だが調子を取り戻したスフィアは、とびきりの笑顔を浮かべてそんなことを言う。

 

「……それはちょっと自信がないかな」


 スフィアは聖教会、クリスティアナ殿下は王家、カインは魔導塔。


 自分たちを確殺できる魔道具を平然と保持し、それをおくびにも出さなかった主流派たちなど、本質的には陰謀を実行した非主流派となにも変わらないのだろう。


 俺やアドルも当然そうだが、自分が所属しある程度は信頼していた組織に対して、より苛烈な対応になるのは当然のことだとは思う。そう考えれば、俺やアドルがそれぞれの組織に対して感じている怒りなど、彼らのそれには確かに遠く及ばないのも当然なのだ。


 裏切りとは、そうされるまでの関係の深さに応じて反応が変わるのだろう。

 それが絶望であれ、悲嘆であれ――あるいは怒りであっても。


「ひどいです」


 いやスフィア、それそんな笑顔で言う台詞じゃないだろ。


 これは俺とアドルこそがブレーキ役を担わなければ、先手必勝とばかりに組織ごと壊滅させてしまいかねなくて怖い。


 というかこの問題については、クリスティアナ殿下もカインもスフィアと同じような気がしてきたな。いやアドルも怪しい。自分の死よりも王家――家族の手によってクリスティアナ殿下が殺されたことに激怒しているのは間違いない。


 孤児院育ちの俺たちは、家族ってものに過度な期待を抱いてしまうからなあ……


 それも王家ほど裕福であれば、なおのこと理想的な家族関係であって欲しいと望んでしまう。だからこその軋轢あつれきなど、そもそも家族を知らない俺たちにはピンとこない。知らないからこそ、頭の中で理想だけが肥大化しているのだという自覚はあるにはあるのだが。


 だからといって感情を制御できるという訳ではないのだ。


「まあそのあたりは全員で話し合って決めようぜ。最低でも相手の奥の手を無力化するまでは、慎重に動く必要があるしな」


 だからこそ、せっかくのすべてを知って過去に戻っている状態という優位点アドバンテージを活かさないわけにはいかない。なんといってももうやりなおしはできないし、現時点ではまだ相手に聖女、王女、賢者を無力化する切り札を持たれたままなのだ。


 まずはそれを完全に無力化するまで、怒りに任せた力圧しはお勧めできない。


「わかりました」


 少なくとも表面上はいつもの感じに戻ったスフィアも、そのあたりのことは十分に理解してくれているらしい。


 いくらなんでもそりゃそうか。

 殺された本人なのだ、その原因を完全に無効化できたことを確信できるまで慎重に行こうという意見に異を唱えるわけがない。


「それよりスフィアがどんな感じで覚えているかを聞いてもいい?」


 少なくとも王城の貴賓室のような張り詰めた感じは無くなったスフィアに、あえてアドルたちに説明していなかった部分の答え合わせを提案する。


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