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【毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第十章

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第095話 『Re: Boy Meets Girl......s』④

 そう思えば魔王を倒すことなどより、アドルに思惑通り自分を好きになってもらうことの方がよっぽど難易度が高いとクリスティアナは思うのだ。だからこそ、今のこの奇跡のような関係を大切にしたいとも。


「いいいえまったく違いません。違いませんとも」


 当然アドルはクリスティアナ以外から好意を向けられてもそれなりに嬉しいなどと、本当のことを認める発言などできるはずもない。あわてて相手が誰なのかが一番重要であることを全面的に肯定している。


 アドルとクリスティアナのそんなやりとりを見せられたカインは、溜息をつくことしかできない。


 アドルとクリスティアナは互いに立場に絡んだいろんな思惑はあるにせよ、それらすべてを吞み込んだ上で本気で好きあっているように見える。相当にひねくれている自覚がある自分から見てもそうなのだ、そこを疑うつもりなど今更ありはしない。


 だが本気で好きあった結果が今のアドルのようになってしまうのであれば、自分はまだアドルにとってのクリスティアナ、クナドにとってのスフィアのような存在がいなくてよかったと本気で思ってしまったのだ。


 その一方で嘘偽りなく今の自分カインが「みっともない」と思ってしまうような態度を、この世で一番自分が幸せだと言わんばかりの表情で出来ることに憧れなくもない。


 少なくともそう思わせてくれる男女のカタチが、身近にいてくれることは幸福なことなのだろうとも思う。だがそれと同時に、心の底からの本音として、敬意すら持ってこの一言を口にせずにはいられない。


「クナドもアドルも、いろいろと大変なことだな」


 と。


 ◇◆◇◆◇


 スフィアを連れて王城を出たのはいいが、昼日中に外を歩くことになるのを完全に失念していた。

 日陰にいてもクソだるいのに日光の下をほっつき歩くとは、『吸血鬼』としてはなかなか迂闊かつ致命的な行動だといえるだろう。


 まあ『日の下を歩けるデイライトウォーカー』である時点で、俺が『吸血鬼』として相当に強力な個体であることも確かなのだが。


 とりあえず、吸血鬼になった時に仕立てた外連味たっぷりの長外套ロングコートは日光遮断用の頭巾フードも完備なので、とてもとてもだるいことを除けばとくに問題はない。


 自身の見た目の痛々しさについては考慮しないこととする。


 とはいえ日中に敢えて顔を隠しているとしか見えないこんな怪しい男(俺)と、今の時点でもすでに王都では有名人である聖女様スフィアが一緒に歩いていれば目立つことこの上ない。いくらなんでも今のスフィアに認識不全を強いる奇跡を起こすことを期待するのが酷なのはわかるが、さすが王都というべきか、平日の昼間でもそれなりに人の往来があるのだ。


 まあ目指す場所が貴族居住区だったおかげで、見られたのはお貴族様とその関係者ばかりである。スフィアが素直についてきてくれていることから、俺のことを「姿を見られたくない高位貴族」だとでも思われたものか、絡んでくるやつは誰もいなかった。


 それはそれで、聖女様スフィアの立場に悪い影響を与えることになるのは間違いない。


 顔を隠した高位貴族と聖女様が2人で貴族居住区にいたなんて、格好の醜聞スキャンダル噂話ゴシップネタになる。こればかりは貴賤きせん貧富ひんぷ老若ろうにゃく男女なんにょの区別なく、人とは下世話な話を好む者が多いのだ。俺だってそうなのだから、他人にだけ偉そうなことは言えないのだが。


 まあそのあたりは、後でクリスティアナ殿下に緘口令かんこうれいいてもらえばいいだろう。


 さすがに王立学院に入学する前から、卒業前日のような騒ぎになるのは避けたい。

 王立学院の3年間で「勇者パーティーの親友」の立場を確立していてもあの騒ぎだったのだ、今の無名極まる上に中二病丸出しの格好をしている俺では暴動が起きかねない。


 前の周でも入学早々、勇者のおまけでクリスティアナ殿下と親しげにしていたという理由で、三年生の上位貴族の先輩に呼び出しを喰らったからなあ……


 まあしかし貴族ってのはやっぱりとんでもねえなと思いながらお屋敷ばかりの超高級住宅街を進んでいくと、そりゃその貴族たちの親玉なんだからこうもなるかという豪邸が現れた。


 街区一つ丸ごと敷地って、さすがに王族の私邸は桁が違う。


 そんな高級物件をポンとくれるんだから、クリスティアナ殿下っていつもはあんな感じだけどやっぱり超大国の第一王女様なんだよな。師匠とか呼ばれて感覚がおかしくなっていることは、やはりきちんと自覚しておくべきなのだと思う。


 で、そんな御屋敷のやたら豪奢な正門の前まで来ると、自動的にそれが開いた。


「お初にお目にかかります旦那様。私奴わたくしめの名を名乗る栄誉をたまわってもよろしいでしょうか?」


 門から本邸の扉まで整備された舗装路の左右に侍従と侍女がずらりと並んで頭を下げており、その中央でザ・執事としか言いようのない初老の紳士が低頭してそう問うてきた。


 名乗らなくてもわかる、間違いなくこの人の名前はセバス。


「初めまして。俺はクナドといいます。勇者アドルの幼馴染で、勇者パーティーのメンバー候補、というよりも王家のこの扱いでわかってもらえると思いますが、確定メンバーの一人です。もっと気楽にしてもらってもいいですよ、というよりそうしてください。必要であれば命令と受け取ってもらっても構いません」


 どうやらこれはクリスティアナ殿下の私邸として配されていた人員を、総とっかえしているっぽいな。有難い話だが畏まられ過ぎてもやりにくいので、初手でこういっておくべきだと判断した。


 辺境の孤児院育ちが、遠慮だけではなく行き過ぎた堅苦しさを嫌うことなど、プロであれば即座に理解してくれるはずだからだ。王家直属の人たちであれば、俺の情報も完全に頭に入っているのは間違いないだろうし。


 しかし俺とスフィアが到着するまでに全員入れ替えた上で待ちの体制を構築できるとは、王家専属ともなるとやっぱり半端ないな。


「承知いたしましたクナド様。私はファン・セバスティアン・フィリップと申します。お気軽にセバスとお呼びください。今後クナド様のものとなったこの屋敷の一切を取り仕切る家令ハウス・スチュワートを王家より申し付かっております。なんなりとご命令くださいますよう。まずはしばらく屋敷を無人にすればよろしいでしょうか?」


 ほらね、やっぱりセバス。


 いやこれは冗談とかこの手の人はセバスであらねばならないとかいった話しではなく、以前にクリスティアナ殿下から『最高の侍従の称号』として『セバスティアン』の名が継承されていると聞いていたからだ。たぶんだからミドルネームなのだろう。


 しかし王家最高の侍従を俺専属にするって、思い切ったなクリスティアナ殿下も。


 だがまあこの世界の真実を知っている唯一の王族であれば、この程度の投資を俺にすることはそこまでたいそうなことではないのかもしれない。庶民感覚では追いつかないが、たぶんクリスティアナ殿下としては最低限必要な対応を取ったに過ぎないのだろう。


 もう俺は同じことはできないとはいえ、クリスティアナ殿下にはその真偽を確かめる術はない。それでいて、今の世界が過去に戻っていることだけは間違いない事実なのだと記憶があるがゆえに確信できる。


『Re: Boy Meets Girl......s』⑤

1/27 17:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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