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【毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第九章

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第086話 『ハジメマシテをもう一度』②

 追体験とはいっても映像と音声で正確に再現しただけであり、その瞬間にカインとクリスティアナ殿下がどう感じ、なにを考えていたのかまではわからないからだ。


「なんの話だ?」


「仰っていることがよくわからないのですが……」


 だが2人のこの様子からすれば、自分が殺されたことに気づいてすらいない。

 さすがにカインは俺の「戻った」ではなく「再構築した」という言い回しに反応していたが、「苦しんでいない」という言葉の意味を優先するのは当然か。


 2人にしてみれば、順調に進んでいた魔王討伐の旅路が終盤に差し掛かったところで安全と信じている場所で寝たら、訳が分からないままに8年前に記憶を持ったまま戻されたといった所だと思われる。


 それだけ王家の『呪い』と魔導塔の『術式封印』は強力だったのだろう。


 いかな剣聖王女と賢者とはいえ、すべての力を封じられた上で大砲による一斉射撃に晒されたら、なにが起きたかも理解できないままに即死するしかなかったということだ。


「な?」


 演技ではない2人の反応を受けて、俺よりもそれを心配していただろうアドルに振る。

 そのアドルは深いため息とともに、本気で心の底から安堵の表情を浮かべていた。俺に寄りかかっていなければ、その場にへたり込んでしまっていたかもしれない。


「それが知れただけでも、僕はクナドにもう一生頭が上がらないよ。死んでも死にきれないと思っていたんだ。でも死ぬときは、もうどうしようもなく死ぬものなんだね」


 不意打ちでクソ重い台詞セリフを吐くな。


 だけどそうなんだよ、どれだけ強い想いでも力に変えられなければそれは「残念」で終わる。まあどうやらその「残念」がこの世界の根幹に大きくかかわっているのだが、それは今話すべき内容でもない。スフィアになにが起こったのかを確かめる過程で、魔王の最後を知れた俺は運がよかったのだ。


 せめてそうとでも考えないとやっていられないともいう。


 とにかくまあ、アドルならそう考えるよな。

 自分はあんな凄惨な目に遭っておきながら、仲間たちがそうでなかったことにまず安堵できるのはたいしたものだと思うよ、ほんとに。


 あの状況で、アドルに他の3人がなにをされたのかを詳しく知る手段などあるはずもない。


 なにをされたかを正確に目にした俺でさえ不安だったのだ。アドルの立場なら自分が晒された以上の悪意に仲間たちは晒されていたかもしれない、その時自分は暢気に寝ていたのかもしれない、という不安は死ぬ瞬間まで拭い去ることなどできなかったはずだ。


 特にあの反乱騎士団の連中の下種ゲスさときたら、思い出しただけでも殺意がみなぎる。

 カインには申し訳ないけど、お互い女性陣に対してより過剰に要らん心配をしてしまうのは勘弁して欲しいところだよな。


 もしもそうだったら、記憶の継続には俺も二の足を踏まずにはいられなかっただろう。

 いや別の理由で、スフィアは継承してしまった記憶ゆえに苦しんでいるのだろうけど。


「現勇者、将来の王様にそこまで貸しを作れたのなら、俺もやった甲斐があったよ」


 まあアドルは貸しを積み上げられた方がずっとマシだろうからそう言っておく。アドルみたいな真面目な奴には「気にするな」よりも、こういう言い方の方がよほど納得してくれるものなのだ。そのあたりはさすがに長い付き合いなので、外さない自信がある。


「王様にはなり損ねた間抜けだけどね」


 俺の言葉に、アドルが肩を竦めて苦笑いを浮かながらそう言う。

 こういう軽い自虐が言えるようなら、多分もう大丈夫だと思う。


 俺と違ってあの死の瞬間から今に繋がっているのに、この胆力は本当にたいしたものだと思う。勇者としての5年間を過ごしたことによって、王都で英雄ごっこに興じていただけの俺なんかよりよほど大人になっているのだろう、アドルは。


「今回はうまくやればいいさ」


 少々負けた気がするので、八つ当たり気味にそう言って胸のあたりを拳で突く。

 だけど立ち直るのがはやいのは助かる、8年間もの時間があるとはいえ極力有効活用していきたいからな。


「説明してくれるんだよね?」


「ああ」


 切り替えて真面目な表情でそういうアドルに、俺も居住まいを正して真面目に頷く。

 

 勇者パーティーがなぜ殺されなければならなかったのか。

 それはどうやって実行されたのか。

 その結果、世界はどうなってしまったのか。


 アドルもある程度はわかっているのだろうが、死にゆく中で得た断片的な情報よりも、はじめから結末まですべてを知っている俺が説明するのが一番いいだろう。


 それらすべてをつまびらかにした上で、まずは最初に俺たちにとっての幸福な結末ハッピーエンドとはどんなものかを定義付けなければいけない。その向こう側で、どんな風に生きていくのかも含めてだ。


 当たり前のように敵は魔族だけに限らず、同じ人の中にもいる。

 愚かにも俺たちはそんな当たり前のことすら失念して、人類を救う英雄という立場に酔いしれていたからこそ、これ以上ないくらいにたかころびしたのだ。


 だから今度こそ追及するべきは、顔も知らない誰も彼もの幸せなんかじゃない。


 まずは俺たちが幸せになれることを確保した上でなら、結果としてその副次効果で世界が救われるのはまるで構わない。なにも下種が含まれているからといって、俺たちも魔族のように人類すべてを根切りにしようなどとは思わない。


 だが言い方を変えれば、俺たちの幸せを確保するためなのであれば、別に人類を敵に回したってかまわないのだ。魔族ごと滅ぼすのはもちろん、魔族と手を組むのだって選択肢の一つに過ぎない。


 この周ではまだなにもやっていないからどうのこうのと、クソ甘いことを言うつもりもない。状況が整えばやらかすことがすでにわかっている連中に遠慮する気などまったくない。


 まあできるだけ、1人でも多くの人が俺たちにとっての「いいひと」でいられる状況を作り上げようとも思ってはいる。


 俺たちの失敗は直接手を下したヴァレリア帝国騎士団の跳ねっ返りどもはもちろん、あらゆる組織の非主流派どもを俺たちにとって「わるいひと」にさせてしまったことと、それにまったく気づけていなかったことだ。


 それは俺たちが魔族の方ばかりを向いていて、負の感情をたぎらせていたそいつらときちんと向き合ってこなかったからそうなった。


 自業自得だといわれてしまえば、返す言葉もない。


 だからこそ、今回はきっちり向き合ってやる。

 連中が俺たちにとって「いいひと」でいることしか選べないように。そうしていることが一番マシだと――得なのだと思い知らせてやる。


 これからの8年間で、それはもう懇切こんせつ丁寧ていねいに。


『ハジメマシテをもう一度』③

1/17 18:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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