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【毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第八章

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第082話 『世界再構築』⑥

 ヴァレリア帝国一帯が『魔大陸』どころか魔王ともども消滅した理由となったスフィアの成れの果てを、世界のためとうそぶいて泣きながら俺が倒すのか? 大事な友人たちや恋人になることを約束していた想い人を殺した連中を、1人残らず見つけ出して血祭にあげるのか? それともめそめそと世の無常をはかなみながら、じっと最後の時を待つのか?


 どれも違う。


 俺が俺の能力を持っていなかったのなら、そのどれかでもよかったかもしれない。

 スフィアに世界を滅ぼさせるわけにはいかないと、それこそ悲劇の主人公みたいな自分に酔えたら一番楽だったのかもしれない。


 だが俺にはまだできることがある。

 

 俺の能力が過去に干渉することも可能だと証明できた今、やるべきことなどひとつしかない。


 過去に戻ってすべてをやり直す。


 だがなんの仕込みもなく戻ったところで、できることなどたかが知れている。


 最低でも俺の記憶は継続していなければ意味がないし、可能であればアドル、クリスティアナ殿下、カイン、スフィアもその方が望ましい。いや守ろうとしていた相手に殺された記憶と、スフィアに至っては今の状態になった記憶を持っていることがいいことかどうかは悩ましいところではあるのだが。


 加えて俺が完全に無力になってしまうこともできれば避けたい。


 どんな形で過去に戻れるのかは発動するまでわからない以上、そのために力を使い果たして戻ったと同時に寿命が尽きて死ぬ、あるいは今日までは生きられるにしても無力になっていては意味がない。


 だがそれらの問題以前に、なによりも俺の寿命がまるで足りなかった。


 かつてたった1日戻るだけでも十数年分が必要だとわかって諦めたのだ。

 アドルたちが殺された7日前に戻るだけでもほとんど使い切ってしまうだろうし、そんな分岐点に戻ってもできることなどそう多くはない、というよりも無いに等しい。


 俺としては万全な準備を進めるのであれば最低でも8年前、俺たちが王立学院入学を前にして初めて出逢ったタイミングまでは戻りたい。


 荒唐無稽こうとうむけい曖昧あいまいな望みでも、それに値する寿命さえ差し出せば実現できてしまうのが俺の能力のとんでもないところだ。だがそれは裏を返せば、自分の寿命を超えた願いは絶対に叶えられないということでもある。


 実際、協力してくれるクレアとシャルロット殿下を含めて7人全員が記憶を継続し、俺が今の能力を持ったまま8年前に戻ろうと思ったら、なんと数万年の寿命が必要だとわかって、こんな状況なのに思わず笑った。人間ってのはどんな状況でも笑えてしまうあたりが、度し難くて強くて哀しいと思う。


 試しに俺の能力の継続を除外しても数値に変化はなかったため、過去に戻れば今の俺の能力が失われることはどうやら避けられないらしい。

 どういう仕組みなのかはわからんが。


 とにかく俺が今の俺のままでは話にならない。

 だからまず、その前提を覆すことにした。


 寿命が足りないというのであれば、それをいくらでも伸ばせる能力をまず得ることにしたのだ。つまりはこっちの世界ではその概念さえ存在していない『吸血鬼』――人の血(命)を吸うことによって、永遠を生きられる化け物になるのだ。


 それこそ三つの願いを叶えてくれる魔人に対して、一つ目の願いを「今後俺の願いを全て叶えるようになってくれ」にするかのような不正行為チートである。


 実はこの能力を得たとほぼ同時に、そういう抜け穴を突くような使い方をいろいろ考えていた。だがまずはできるだけ真っ当に使って孤児院を立て直すことに集中しているうちにアドルと仲良くなったおかげで、非人道的な手段は無意識に排除していたのだ。


 だがその詭弁を押し通すようなやり方は、本来の俺の寿命ほぼすべてと引き換えに実現可能だった。


 躊躇ためらうことなくそれを実行した瞬間から、俺は他者の命を奪わねば一月ひとつきも生きられない化け物に変じた。当然吸血鬼として日中の行動を制限され、夜にしか全力を出せなくなるという弊害も生じた。


 あと存在そのものを創りかえられるのはものすごく痛かった。

 おかげで赤毛がすっかり白髪になってしまったほどだ。


 もう二度と経験したくない。

 今の俺はそこらの温い拷問など、ちょっと歯を食いしばれば耐えられる自信がある。


 ただ俺の記憶の中にあった一番強烈な吸血鬼像をベースとして能力付与が行われたらしいことは行幸だった。おかげで俺は日中でも日陰であれば活動可能で日が落ちれば無敵、満月の夜であれば神とすらも伍せるほどの能力を手に入れた。


 俺が今夜、聖教会教皇庁、王城、魔導塔という、この世界において最高クラスの警備を布かれている中枢施設を苦もなく蹴散らせたのはその恩恵である。


 とはいえそれはあくまでもありがたい誤算に過ぎず、主目的は数万年分もの寿命を手に入れることだ。つまり大量の他人の血をすすって、その寿命を奪うことにある。


 俺が今夜、人を殺すことに躊躇しなかった理由はそこにある。


 どうあれ世界中の人間の命を奪うのだから、今更葛藤を演じたところで意味などない。

 感情に任せてただ殺すのではなく、きちんと寿命を奪って殺す。それを徹底してさえいれば、あとは順番の話でしかない。そしてその順番も誤差程度でしかないのだ。

 

 なぜならば俺とこの世界は、急ぐ必要に迫られているからだ。


 『吸血鬼』が人の血を吸って己が寿命を延ばす化け物である以上、餌となるべき人間が減っては困るのはお約束だろう。だからこそ吸血鬼を扱った創作の世界でも、人は滅びを免れているのだ。


 つまりはヴァレリア帝国と『魔大陸』を魔王ごとけし飛ばしたアレ――スフィアの成れの果てが世界を滅ぼす前に、俺が世界中の人間の命を吸収する必要がある。

 別にアレに勝つ必要はない、必要な寿命さえ集まれば、アレがまだ生まれていない時間に戻るのだから。


 要はどっちがより多くを殺せるかのスピード勝負というわけだ。


 だから俺はすでに先日、アルメリア中央王国の隣国エメリア公国を滅ぼした。


 小国一国を完全に滅ぼすのでさえ丸一晩掛かったのだ、大陸中の国家を一つ一つ潰していっていては、半分以上を取りこぼすことになりかねない。そうなれば俺が最低ラインとしている時間まで、必要な条件を満たした上で戻すことができなくなってしまう。


 それだけはダメだ。


 だからこそ、じわじわと黒の領域は拡大しているもののまだまともに動き出していない今のうちに、すべての決着をつける必要があるのだ。一度ひとたびアレが動き出してしまえば、あっという間に世界を滅ぼせるだけの力を有しているのだから。


 ちなみに戦ってアレに勝つためには、億年単位の寿命が必要になるらしい。


 今この瞬間、世界中の生きとし生けるものすべての寿命を集めてもまるで足りない。要は神様と呼ばれるナニカを本気でほふろうと思ったら、吸血鬼として永遠に近い時を生きつつ、生命体を増やして寿命を奪って貯め続ける必要があるということらしい。


 確かに俺がスフィアに勝つのなら、最低限それくらいは必要なのかもしれない。


『世界再構築』⑦

1/13 18:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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