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【毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第八章

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第081話 『世界再構築』⑤ 

「さて、これで必要な情報はすべて揃った。後はうまくいくことを祈るだけだが……」


 一晩のうちに聖教会、王家、魔導塔が秘匿してきた情報をすべて収集し終えた俺は今、この5年間暮らしていた自分の部屋ではなく、王立学院の『勇者の館』にいる。


 これから俺がしようとしていることは、みんなで過ごしたこの場所でこそ相応しいと思ったからだ。

 

 ウィリアムズ司教枢機卿から『魔王の槍』の情報を得た後、俺は王城では正妃の長男である第一王子シャンカール、魔導塔では旧派と呼ばれる古代魔法信奉者たちの頭目タシンを殺し、王家の『呪い』、魔導塔の『封印術式』についての必要な情報をすべて得た。


 以前はわりと親しくしていたはずの司教枢機卿も第一王子も、これまで顔も名前も知らなかった旧派の頭目とやらも、殺して吸収するに際してなんの違いも感じなかった。


 利害だけで繋がっていた関係なのだ、それも当然なのかもしれない。


 その一方で、利害だけじゃないと他ならぬ自分自身がそう思っていた関係って、いったいなんなのなのだろうなとも思った。こんな状況になっていなければ、こんなことを真面目に考えることもなかっただろう。


 俺は俺のことを好きに見えて、実際によくしてくれているからこそ、その相手のことを好きなだけなのかもしれない。好きになるには、そうなるに足るだけの前提条件があるのが当然のことだとも思っているし。


 それともアドルたちであれば、たとえ酷いことをされても好きなままでいられるのだろうか? もしくは可愛さ余って憎さ百倍になるのか。


 ならばその違いはどこで生まれるのだろう。


 少なくとも今俺はたった4人と世界を天秤にかけて、4人の方を選ぼうとしているのは間違いない。しかも大した葛藤もなくだ。


 とはいえ運悪く同衾していた修道女たちや第一王子の婚約者殿にはさすがに少々心が痛んだが、見逃して騒がれても面倒だったしまあ仕方がない。


 別に無理もせずそう思えてしまう時点で、俺はすでに大概壊れているのだろう。

 まあこれからしようとしていることを考えれば、壊れているくらいでなければそもそも思いつきもしないのかもしれないけれど。


 とにかく殺すべき者と、たまたまその傍にいただけの者を容赦なく殺したおかげで事は露見せず、王都はまだ何事もなかったかのように寝静まっている。


 夜明けまであと約2時間。

 

 ちなみにいくら壊れかけ、あるいはもうぶっ壊れてしまっているにせよ、俺はなにも独り言を口にしたというわけではない。


「はい」


「ですわね」


 この部屋には俺の賛同者――クレアとシャルロット王女殿下とともにいる。


 深夜に未婚の女性2人と密会など、本来の俺なら絶対にしない。

 クレアならまだしもシャルロット殿下は第三王女様だし、『三位一体トリニティ』のリーダーとしての立ち位置で考えても、妙な噂になりかねないことはこの5年間極力避けていた。


 なぜならば最前線で命を懸けてくれている友人たちに、要らん心配を掛けたくなかったからだ。クレアのお兄ちゃんであるアドルも、シャルロット殿下のお姉様であるクリスティアナ殿下も、大事な妹が俺とおかしな関係になっているらしいなどという噂が耳に入ったら、おちおち魔王討伐に集中もしていられなくなるだろう。


 まあその理由も嘘ではないのだが、クレアとシャルロット殿下以外の女性とも極力接点を持たないようにしていたのは、スフィアがいたからであることも否定はしない。別に怒らせたら怖いとか、肩にとんでもない印をつけられているからというわけではなく(もちろんそれもあるが)、ただ自分がそうしたかっただけなのだ。


 だがもう、そんなことを言っていられる状況ではなくなってしまった。

 今の空気だって、冗談でも色恋沙汰なんかが入り込める余地なんてない。


 俺が大事な友人たちとスフィアを失ったように、クレアは兄であるアドルを、シャルロット殿下は姉であるクリスティアナ殿下を失っているからだ。


 この5年間、ともに『三位一体』として王都を護り、勇者パーティーの凱旋がいせんを待ち望んでいた仲間たちには、俺が知り得た情報をすべて共有するべきだと思ったのだ。その上で俺がまさに今からしようとしていることに賛同するか、否定して止めようとするのかを自分で決めて欲しかった。


 俺は自分で思っていたよりもずっと薄情者だったらしく、アドル、カイン、クリスティアナ殿下、スフィアの4人を除けば、あとはこの2人くらいしか「わかってほしい」と思える相手はいなかったのだ。


 そんなクレアとシャルロット殿下ですら、敵対することを選択したら平然と排除するのが俺という人間なのだ。こんな人間にこんな力を与えてしまったのは、やっぱり間違いだと今でもそう思う。だがそんな俺だからこそ、どうあれ得た力を我欲のために行使することを躊躇ちゅうちょすることはない。


 幸いにしてクレアもシャルロット殿下もわかってくれた。


 というよりも自ら進んで俺のやろうとしていることに賛同し、協力すると申し出てくれてさえいる。だからこそ今俺がなにをしてきたかも知っていながら、この時間に怯えもせずに一緒にいてくれている。


 ありがたい話だ。

 だからこそ俺も、他のすべてを切り捨てる決断を楽にできたのかもしれない。


 ヴァレリア帝国が消滅したと聞いた俺がしたことは単純だ。


 まずなにが起こったのかを、俺の能力を使って確認した。

 北の軍事大国であるヴァレリア帝国がその領土どころか、上空にあったはずの『魔大陸』ごと一夜で消し飛んだのだ。汎人類連盟による真っ当な調査報告を待っていては、年単位の時間がかかることは明白だったからだ。


 なによりも俺の能力が、過去の出来事を再生することができるかどうかを実際に試す必要があったのだ。かつて時間を遡ろうとして、あまりにも膨大な寿命消費量で諦めたことはあるが、実際に過去に干渉できるかどうかを試したことはなかった。


 結論から言えば、俺は数年分の寿命と引き換えに、あの夜になにがあったかをすべて知ることができた。つまり俺の能力が、対価さえ支払えば過去に干渉できるものだということが証明されたのだ。


 干渉度合いから言えば低いのかもしれないが、すでに過ぎ去ってしまった過去を、まるでその場にいたかのように再現できるのは過去に干渉可能だからこそだろう。


 おかげで多大な精神的ダメージをこうむる羽目にはなったが。


 聖教会の『魔王の槍』に展開した奇跡ごと貫かれ、即死した聖女スフィア

 王家の『呪い』を発動され、成す術もなく絶命した剣聖王女(クリスティアナ殿下)。

 魔導塔の『術式封印』に魔法を封じられ、なにもできずに大砲に消し飛ばされた賢者カイン


 そして最後まで抵抗しながらも、数の力でなぶり殺された勇者アドル


 克明にみんなが殺される様子を目の当たりにし、それがどれほどくだらない理由で行われたかを知った俺は気が狂いそうになった。だが即座にそんな現実逃避をしている場合ではないと自分の感情を捻じ伏せた。


 今はもう、俺しかいないのだ。


 いつまでたっても弟子気分の抜けない頼りになる勇者も、その勇者と共にいる限りはあらゆる攻撃を防ぎきれる剣聖王女も、時間さえ稼げばいかなる敵でも粉砕してくれる賢者も、あらゆる失敗を経験に変えてやり直しをさせてくれる聖女も死んでしまった。


 ――殺されてしまった。


 だったら俺がどうにかするしかない。

 どうにかするって、なにをどうしようっていうんだよ⁉ と直後の俺は内心で俺自身に喚き散らしていた。


『世界再構築』⑥

1/12 18:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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