第008話 『5人目のメンバー』②
AからFまで存在する冒険者級は、その中でも細かくレベル分けされている。
『見習い』とみなされるF級は冒険者等級1から10。
F級10等級となった冒険者が昇格任務を達成すればE級になれる。
『新人』とみなされるE級は冒険者等級11から30。
E級30等級となった冒険者が昇格任務を達成すればD級になれる。
D級までは冒険者を志すに足る力を持った者――アルメリア中央王国でいえば王立学院冒険者学科卒業生ならば、まず一年以内に到達できる。逆にできない者は不運に見舞われて死んでいるか、生き残れてはいても冒険者をあきらめて引退するかになるだろう。
D級への昇格任務は冒険者ギルド指定の中型の魔物討伐となっており、E級30等級になるまで経験を積んでなおそれを倒せない者、あるいはパーティーが、D級の依頼、任務を達成できるわけはないからだ。
またE級までの依頼、任務は特に報酬が高いというわけでもなく、国と冒険者ギルドから新人期間――一年の装備、治療、食事宿泊の各種補助が出ている間――にD級になれなければ、その能力を活かしてもっと楽に稼げる仕事がいくらでもある。
E級にとどまったままで冒険者を続ける旨味などなにもない以上、冒険者を諦めて他の仕事を探すことになるのは当然のことだろう。
そしてD級からは魔物討伐系の依頼、任務も受けられるようになり、いよいよ冒険者らしさが出てくるようになる。D級でやっと一人前の冒険者だとみなされるようになる、といってもいいだろう。
当然報酬面においても、ここかららしい額――若者が冒険者を夢見るに足るものになってくる。特に依頼者からの報酬はまちまちだが、それに加えて冒険者ギルドから支払われる追加報酬は等級に従って同じ依頼、任務であっても上昇するのだ。
要は等級が上がれば上がるほど、冒険者ギルドが中抜きする額が減るといった方がわかりやすいだろう。冒険者ギルドとしても依頼失敗が続くよりも、多少実入りが減ってもより高等級の冒険者にさくっと達成してもらった方が有難いのだ。
商人で言うところの、薄利多売というやつである。
そのD級は冒険者等級31から50までであり、D級50等級となった冒険者は冒険者ギルドが認める推薦によってC級への昇格が認められる。
要はD級50等級に至るまでに達成してきた依頼、任務の受益者からの、その冒険者がC級に相応しいという推薦状次第ということである。
これに苦労するような冒険者は基本的におらず、どちらかといえば素行面で冒険者に相応しくない者を篩にかけるための仕組みといえる。
それなりに褒められたものではない素行の者であっても、かつて依頼で救われた受益者たちは喜んで推薦状を提出してくれる。よって証拠をつかまれていないだけの犯罪者レベルでもなければ、基本的にはすんなりとC級になれるのだ。
特に任務などを通して国からの推薦状があれば、それ一枚で済む話でしかない。
実際、ほぼ王都巡回任務だけでC級になったクナドは、国からの推薦状によって承認されている。
ほとんどの冒険者にとってD級とC級は、地道に冒険者等級を上げる期間だとも言えるだろう。とはいえその期間が冒険者人生そのものを指す者が大多数だ。大部分の冒険者の終着点はC級100等級であり、そこへ辿り着くために冒険者としての生涯を費やす者がほとんどなのである。
ちなみにこのC級昇格条件は冒険者ギルドの黎明期には機能していたのであろうが、千年の時を経て成熟した現在の冒険者ギルドでは、深刻な問題児に対する処置フローは別で確立済みである。
冒険者ギルドの総本部と各国本部は密な連携が取れており、当然各国本部はその国の中枢と良好な関係を築き上げている。
ゆえに目に余る愚か者は、いつの間にかいなくなるのだ。
表向きには公式記録にもきちんと残される形で、依頼ないしは任務において未帰還者となるということだ。未帰還者の多くはその詳細がわからないものなのだが、そういう場合においてのみわざとだとしか思えないほど、詳細な記録が発表される。
あまりにも非の打ちどころがなく疑う余地もない未帰還――いや死亡報告に対して、今では多くの者が不良冒険者を始末する専門家たちの存在を半ば以上確信しているという。
結果として冒険者は豪快で粗野ではあれど、無法者――法に従わない者はいない。
いなくなる。
それは高位になればなるほど顕著であり、B級ともなれば必要に応じて支配階級にも通用する礼儀をしれっとこなせるほどになる。というかそうなれなければB級として通用しないというべきか。
そのB級はC級の冒険者が単独、パーティーを問わず大型魔物を討伐すればなれるという、至極シンプルなルールとなっている。冒険者等級は100を上限として設定されているが、B級への昇格には基本的に影響を与えない。
ちなみにほとんどない事例だが、パーティー内にD級以下が含まれていた場合、素行問題さえなければ冒険者ギルドの承認によってC100にはなれるものの、再び大型魔物を仲間とともに倒さなければB級にはなれない。
それも魔物支配領域奥部や迷宮深階層を主戦場とするパーティーであればそう難しいことではなく、要は大型魔物――竜種や幻獣種――を狩れる、狩れるパーティーに戦力とみなされるのであれば、一足飛びにB級になることも不可能ではないということだ。
極端な話、F級1等級の冒険者であっても単独で大型魔物を2体倒せばデビュー初日であってもB級になれる。
その上のA級は目指してどうこうなる域ではなく、基本的に国家を救うレベルの功績がなければまず認定されることはない。よって昇格の規定などは明確に設けられておらず、国家や冒険者ギルドが人間社会への貢献著しいと認めた冒険者に対する、勲章のような扱いだと言っていいだろう。
要は現実的な冒険者の最高位がC級100等級であり、B以降は数値で表現される等級は消失し、達成した依頼や任務によってその格を測られるようになるというわけだ。
つまり今クナドに声をかけていたB級冒険者たちは、その国家への貢献度とそれに見合う収入において、アルメリア中央王国の場合男爵、子爵級の貴族に勝るとも劣らないほどの社会的地位にあるのである。
冒険者等級で言えば全員が100以上なのだ、その能力と収入が低いわけがない。
そんな国や冒険者ギルドからの高難易度案件を遂行可能な彼らとて、やはりこの五年間、大陸中の魔物支配領域や迷宮を破竹の勢いで攻略している勇者やその仲間たちは別格なのだろう。
その冒険ギルドに登録すればA級を確実視されている勇者たちが、とうとうすべての魔物支配領域と迷宮の攻略を完遂し、先頃最終目的地である大陸北部の軍事大国、ヴァレリア帝国の帝都ルーウェンブルグに到着したとの報が大陸中に伝えられていた。
いよいよ魔導塔を経て魔大陸へと攻め入り、次は千年前と同じように魔王討伐の報が届けられることを大陸中の誰もが確信し、今日にもそれが届くかと期待が膨れ上がっている状況なのだ。
次話『五人目の仲間』③
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