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【毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第八章

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第077話 『世界再構築』①

 アステア大陸汎人類共通暦1103年、盛光期七の日。

 

 その名が示す通り大陸中央部に位置するアルメリア中央王国、王都アーヴェイン。

 同国のこよみではアルメリア暦1997年、夏待月(初夏)七の日。


 この日まで。


 人類は大陸上空に太古の昔から浮遊している大地、通称、『魔大陸』に発生した魔族ディヴィニアン――魔王を頂点とした、人類の敵性存在である魔導生物たち――の脅威に晒されながらも、なんとか国家体制を維持し、人類による大陸の支配を維持できていた。


 また汎人類同盟としてまがりなりにも足並みを揃え、上位存在である魔族による大陸侵攻をかろうじて食いとめることもできていた。


 だがそれも5年前、アルメリア暦1992年に王都から勇者アドル、剣聖クリスティアナ、賢者カイン、聖女スフィア――所謂いわゆる、勇者パーティーが魔王討伐の旅に打って出たからこそである。


 それまで天空にある『魔大陸』にたどり着く手段を未だ持ちえない人類は、魔族による一方的な侵攻に対して防衛に徹することしかできていなかった。

 その間に魔族は魔大陸から投下された巨大魔石を中心に魔物支配領域テリトリーを拡大し、各地に迷宮ダンジョンを発生させて、人類の支配領域を削り続けていたのだ。


 そんな状況がおよそ百年近く続き、そのままではそう遠くない未来――まさに今頃は、人類は魔族によって滅ぼされていたことも十分に考えられるほどの窮地きゅうちおちいっていたのである。


 だが魔王は千年前にも一度発生していたにもかかわらず、人類は滅ばなかった。


 なぜならば魔王に呼応するようにして、人類側には勇者が生まれていたからだ。


 剣技を得意とした初代勇者は、伝説に記されている強力な仲間たちと力を合わせてアステア大陸を侵略していた魔族たちを一掃し、ついには『魔大陸』へもたどり着いて魔王を討伐してのけた。


 その勇者は千年前に存在していたすべての国家から感謝と忠誠を捧げられ、大陸中央に新たな国をおこすことになる。

 最初に魔王に滅ぼされた大国の第一王女を妻にめとり、取り戻した広大な国土に興された国はアルメリア中央王国と名付けられ、千年後の今も三大強国の一つに数えられている。


 また勇者とともに魔王を倒した魔法遣い、聖女、格闘家ら3人の仲間たちも、それぞれが現在まで続く組織の、あるいは中興ちゅうこうとなった。


 魔法遣いは同じ魔法遣いたちを束ねる組織、『魔導塔バベル』を結成。

 聖女は当時から世界的宗教であった『聖教会サクィラ』の象徴となり、その結果、魔王討伐に貢献できなかった他の宗教は大陸からほぼ駆逐されることになった。

 勇者の親友でもあった格闘家は『冒険者ギルド』を設立し、魔王が討伐されてもなお厳しい世界で、懸命に生きる者たちの困りごとを取り除く組織を率いた。


 それから約千年の時が経過し、幾つものひずみを抱えながらも繁栄はんえい謳歌おうかしていた人類社会に対して、再び『魔大陸』で魔王が生まれたのだ。そして千年前には果たせなかった魔族たちの悲願――人類の絶滅を目指して、営々《えいえい》と侵略を開始、いや再開したのである。


 となれば当然、人類側に勇者が生まれることは必然だったのだろう。


 今代の勇者もまた、『勇者の国』と呼ばれるアルメリア中央王国に生まれた。


 だがそれは先代勇者の血を継ぐアルメリア王家からではなく、孤児院で育てられていた出自不明の少年――アドルが勇者として認定されたのだ。


 アルメリア中央王国の祖もそうであったように、勇者は血統に縛られない。

 まさに神に選ばれて祝福されたかの如く、ある日突然、勇者と呼ばれるに足る力に目覚めることになるのだ。


 奇跡を統べる『聖教会』と、魔法の神髄しんずいを追求する『魔導塔』。


 超常の力を行使可能な二大組織が同時に見出した今代の勇者アドルは、その称号に恥じぬ能力の持ち主だった。勇者の血を継いでいることを王家の正当性の根幹に置いているアルメリア王家ですら、アドルこそが今代の勇者だと認めざるを得ないほどに。


 当たり前の話ではあるが、このまま魔王に人類が滅ぼされてしまえば、王家の正当性もへったくれもなくなってしまう。


 であればかつてアルメリア中央王国のいしずえとなった国がそうしたように、魔王を討伐して救世主となった勇者を王にいただき、平和となった世界に君臨すればいい。


 幸いにして似た年頃の王女は3人もいるし、まだ千年前に勇者が生まれた時ほど人類側が追い詰められているわけでもない。うまくすれば勇者を王配に迎えて、アルメリア中央王国を存続させることも十分に可能だという思惑も、王家がアドルを勇者として認めることの背中を押したことは間違いないだろう。


 それに加えて数代ぶりに、王家にも勇者の力を継ぐ者が生まれていたことも大きい。

 勇者アドルと同じ年齢である第一王女クリスティアナは先代勇者を想起させる力を発現させており、『剣聖』として勇者パーティーの一員となることはまず間違いなかったのだ。


 魔王を討伐した勇者と、その偉業を剣で支えた先代勇者の血を引く剣聖の結婚。


 それは民衆受けもよいだろうし、千年ぶりに人類を救った英雄を王に戴く国となれるのであれば、そうなるために必要となるありとあらゆる協力を惜しむはずもない。王家としてみれば生死を共にする魔王討伐の旅の中で、うまく勇者と恋仲になってくれることを期待し、そうなるべくクリスティアナをけしかけることは当然のことだったのだ。


 当然そういう思惑を持つのが王家だけのはずもない。


『魔導塔』は賢者カイン。

 『聖教会』は聖女スフィア。


 それぞれの組織が幼少時より英才教育を施した、自分たちの組織を代表する逸材。

 彼と彼女を勇者を支える仲間として推薦し、平和となった後の世界での影響力を確保することに余念がなかった。


 実際にこれは千年前の勇者の仲間であった聖女と賢者が、現在の魔導塔、聖教会の権威を築き上げた祖となっているので、勇者が生まれたからには当然の仕儀しぎでもあった。


 かくして勇者アドル、剣聖王女クリスティアナ、賢者カイン、聖女スフィアの4人は、同時に王立学院に入学することとなった。対魔族の戦闘知識を身に付けるとともに、3年間の学生生活を通して仲間としての意識を芽生えさせ、まさに満を持して魔王討伐に旅立ったのだ。


 魔族による侵攻に直面しながらも勇者育成を悠長に3年間も続けられたのは、ひとえに大陸北方の軍事大国、ヴァレリア帝国が人類の防壁になってくれていたからに他ならない。


 基本的に人類には手出しできない天空にある魔大陸が20年に一度、1年に渡って低高度に留まる位置の一つが、ヴァレリア帝国帝都ルーウェンブルグである。


 そのルーヴェンブルグには、雲海にまで届くほどの魔導塔が存在している。


 地の底まで届くのが迷宮だとすれば、空の彼方にまで至るのが魔導塔だといえよう。

 ちなみに魔法遣いたちを束ねる組織である『魔導塔バベル』はその名の通り、大陸に三か所存在する巨大な魔導塔、その基部を本拠地としている。


『世界再構築』②

1/8 17:00以降に投稿予定です。


あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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