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勇者たちの功罪  作者: Sin Guilty
第十章

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第102話 『Re: Boy Meets Girl......s』⑪

「もちろんですクナド様。ですけれど、今は吸血鬼であるクナド様がご自身の権能についてお詳しいのは当然として、どうして吸血した相手が完全に自由意思を失うわけではないと断言できるのですか?」


 ――あ。


「それにクナド様が吸血鬼に変じられてから、クナド様の主観時間では何日経過しているかをお聞きしても?」


 憂いを払拭したスフィアはとても美しい。


 今目の前で頬に手を当て少し首を傾げてたおやかに微笑んでいるのは、俺の中のイメージよりも3年若い、出逢ったばかりの頃のスフィアだ。


 成長した姿をもう知っている俺からすれば幼くすら感じるが、その美しさにはほんの僅かの揺らぎもない。直接対峙している俺以外であれば、まさに聖女そのものよと見惚れるのが当然の微笑みであることを誰も否定できないだろう。


 なのにどうしてこうも鼓動が高まるのか。


 これは断じて恋慕とか劣情によるものではない。

 とはいえ恐怖が原因だとするのも正確ではないだろう。


「……約10日程です」


 我知らず口調が丁寧に、あたかも上司に自分がやらかしたミスを報告する際のような硬さを帯びている。


 ああそうか。


 これは自分がしでかしたことは認めながらも、ではどうすることが「一番冴えたやり方」であったのかを自分の中に持っていない、いやどう考えてもこれしかない手段を採ったにもかかわらず、結果として当然迷惑をかけることになった時の心情に近い。


 申し訳ないという気持ちはもちろんあれど、だったらどうすればよかったのかを教えてくれよという、けして口には出せない本音も同時に存在するあれだ。


「つまりすでに少なくとも一度は吸血されておられるわけですよね?」


 静かな声でスフィアが重ねて問うてくる。

 たった一言の失言で、ここまで見抜かれてしまっていることがもう怖い。


「はいそうなります」


 もはや精神的には直立不動の俺である。

 許されるのであれば、実際にそうした方がいっそ気が楽かもしれない。


「私以外の誰かの血を吸ったのですね」


「はい」


 とどのつまりはそれなのだ。


 吸血に伴うメリットもデメリットも、スフィアは受け入れてくれていた。

 冗談めかして、自分が俺の「ごはん」になることを嬉しそうにさえしてくれていた。


「説明してくださるのですよね?」


 だがそれが自分以外にもいるとなったら、当然こうなる。

 

 怖い笑顔というものが存在しているのは知識としては知っていたが、恥ずかしながら直面するのは人生初である。


 なんだっけ、「笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である」だったっけ? 絶対違うと笑っていたけど、実はそうなのかもしれないな。


 それがまあ、美の象徴といっても過言ではない整ったかんばせに浮かんでいるとなれば、嫌な汗を流しながらも「美形ってこんな空気を纏っていても美形なんだな」などという、当然でありながらもどこか妙な感心もしてしまう。


 せめてもの救いは、さすがにそれなりの付き合いのおかげでスフィアがそれにはきちんと理由があると思ってくれていることだ。


 当然事細かに説明は致しますし、本職といたしましても不本意とまではいわぬまでもやむを得ぬ仕儀であったと認識しており、もって寛大な御判断をいただきたいところであります。


「え、ええと、過去の世界――つまりは今を再構築するための寿命を集めるために俺は『吸血鬼』になったわけだけど、もちろん1人ずつ血を吸ってまわったわけじゃない。大規模術式によって世界中の生命を一気に吸収したんだ」


 余計な言い訳を差し挟まず、端的に事実のみを報告する。


 この部分に感情は必要ないし、嘘は言うまでもなく曖昧さや意図的な誤導ミスリードも論外である。それに謝罪なり説明なりが時に怒りを喚起してしまうのは、そこに本来必要のない言い訳を混ぜ込んでしまうからだと俺は思っている。


「その術式を起動するのに、強い魔力を有した生贄が2人、どうしても必要だった」


 ここも淡々と事実のみを――


「クレアちゃんと、シャルロット殿下ですね?」


「はい。『吸血鬼』の眷属――要は同じ吸血鬼にして、術式の核を担ってもらった」


 さすがにわかるよな、これは。


 スフィアは王立学院の3年間でクレアとは頻繁に会っていたし、第三王女であるシャルロット殿下とは公式の夜会などで何度もお会いしている。俺が勇者パーティーに参加せず、王都に残ることが決定した際にはすでに『三位一体トリニティ』の計画は進んでいたしな。


 まだ幼かったクレアから敵認定されながら、自分を普通の女のライバルとして扱う勇者の妹にして魔導塔期待の新人のことをスフィアはかなり可愛がっていたと記憶している。シャルロット殿下についても、自分のことを聖女としてよりも「世界で一番怖くて綺麗な女性」として接してくるのを面白がっていた記憶がある。


 だが俺はそんな2人に「ごはん」役を担ってもらっただけではなく、その命を大規模術式の種火に使うという非道を働いているのだ。


 同意を得た上のことはもちろんだし、5年間一緒に王都を護ってきた『三位一体』の仲間だからこそ、そんなことを頼めたのは間違いない。


 当然、魔導塔から適当な魔法使いをさらってきて、強制的に火種にするのは簡単だと思われるだろう。どうせ生き返るんだから、誰でも一緒だろうと強弁することもできる。


 だがスフィアに対して申し訳ないという気持ちもあるが、何度やりなおしたって俺はクレアとシャルロット殿下にその役をお願いすること変わらない。魔力の強さだけで言うなら候補などいくらでもいるだろうけど、俺がなんのために世界を滅ぼすかを知った上で、溜息一つで協力してくれるのはこの2人だけなのだ。


 そうじゃなければ、あの術式は起動しないのだ。


「その御2人も記憶を継続しているのですね?」


「……ああ。ただ、それだけじゃなくてな」


 俺が今のこの世界――まだやり直しがきく過去の世界を再構築するにあたって、記憶を継承することを望んだ対象は自分を除いて6人だけだ。


『Re: Boy Meets Girl......s』⑫

2/5 17:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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