第101話 『Re: Boy Meets Girl......s』⑩
その場合スフィアはおそらくは神様だと思われるアレの力を完全に取り込んだとも言える訳だし、俺も奇跡の力で巨大化してもらえば超巨神カップルの誕生だ。
さぞや魔王討伐も、くそったれな人間社会の支配も円滑に進むことになるだろう。
2人で『魔大陸』を掴んで海に叩き落すのもいかにも神話っぽくて面白そうだ、
だから別に悪い話じゃない。
「わかりました。それでは私も今のクナド様の変身――『吸血鬼』についてお聞きしてもよろしいですか?」
俺の真剣なお願いにひとしきり笑った後、スフィアはやっとアドルたちと同じ疑問について俺に聞いてきた。
そりゃまあ5年ぶりに再会したら、俺がいきなりこんな姿になっていたら詳しい話を聞きたくなるのは当然だ。まだスフィアが魔王討伐の暁には俺の彼女になってくれるという約束が生きているのであればなおのことだろう。
俺がなんのために吸血鬼になったかは理解できても、そも吸血鬼とはなんぞやを知っておかなければ、共に暮らすなんてとてもできないもんな。
俺がスフィアに引かないからと言って、スフィアもそうだとは限らないんだよなあ……
いや、ここまで来て今更『吸血鬼』であることだとか、過去の世界を再構築するために元の世界を使ったことに対して心配している訳じゃない。
「もちろん……だけどその前に言っておかなければならないことがあるんだけど、スフィアは遠慮せずに本音を言ってくれていいからな?」
「え?」
だが今から伝えるまだ誰にも言っていない新事実について、スフィアがどう思うかについて俺はなにも言えないのだ。
「ええと今の俺、つまり『吸血鬼』とは誰かの血を定期的に摂取――要は吸わなければ生きられない化け物なんだ。血を吸う鬼だから吸血鬼。それに加えて日中はかなり弱体化される。まあその分陽が沈めば無敵といっても過言ではないんだけどね」
まずは吸血鬼の権能や日中の弱体化、その他もろもろよりも先に一番大事なことを伝えておかなければならない。
それはなにかといえば、今の俺はしばらく――具体的には一週間に一度、血を飲まなければあっさりと死ぬという事実だ。
量はごく少量で構わないし、飢餓感はあるにせよ人が変わってしまう程でもない。
夜になれば能力は問題なく使える、といか技や能力、魔法の行使については左眼をはじめとした魔導器官で外在魔力を使用するので吸血の有無は関係ない。
要は吸血鬼という化け物が存在し続けるためだけに、定期的な吸血が必要になるのだ。
文字通り血を吸うイコール寿命を吸うことなのだと思う。
つまりは誰か一人に吸血対象を限定した場合、相手の寿命を半分にすることになる。
「頻度は一週間に一度くらい。対象は別に誰でも構わない……んだけど」
「クナド様と同じだけ生きられるのなら私はなにも問題ないですよ?」
さすがスフィア、その問題はさも当然とばかりすっ飛ばしてくれた。
「ありがとう。だけど寿命を分けてもらうだけじゃなくてだな……」
「は、はい」
スフアだってもう中の人は20歳を超えた大人なのだ、俺の言わんとしていることくらいはわかってくれているだろう。吸血という行為が、互いに印をつけた行為と符合していることで妙な空気になってしまうのもよくわかる。
スフィアだけを吸血対象にすることをお願いするだけだったら、こうやってお互い照れるくらいで済んだんだがそうは問屋が卸してくれないんだ。
「俺が血を吸った相手には『贄の烙印』が刻まれ、俺のものとなる。これはなんというかいろんな意味においてそうで……うんまあ、ありていに言えば俺の言うことをなんでも聞くようになるし、俺がそう望めば吸血鬼――眷属にすることも可能になるんだ」
ただ一週間に一度、献血にも満たない量を吸わせてもらうだけならよかった。
それが多分に性的な要素も内包するとはいえ、俺が求めてスフィアが許可するという点においては、それこそそういう行為と同様というだけだ。
共に生きるという意味においては、寿命を奪い奪われるということも少なくとも俺とスフィアにおいては問題にならない。
だが吸血には、血――寿命を失う以上のデメリットが当然存在している。
本来であれば俺――吸血鬼にとってはメリットなのだが、だからこそそれを黙って血を吸わせてもらうわけにもいくまい。
「まあでもデメリットばかりではなくて吸血鬼の加護を受けられるようになるし、どれだけ離れていても俺には相手がどこにいるのかわかるし、念話も可能になる」
あわてて辛うじてメリットと言えることも並べ立てる。
だがこんなものは奇跡を行使できるスフィアにとっては無意味だし、居場所の把握と念話に至ってはプライベートが侵害されるデメリットにしかならない。
弱者に対してであれば吸血鬼の加護がメリットだと強弁することができる。
だが前の周の俺ならいざ知らず、奇跡で完封できる程度になってしまった今の俺の加護などスフィアには価値がないのだ。
「つまり私がクナド様のご飯になるんですね?」
だが思いのほかスフィアはご機嫌である。
きちんとデメリットを説明したつもりなのだが、こんな風に冗談めかして笑っている時のスフィアは本当に機嫌がいいのだ。
「言い方よ」
「だって」
呆れたような俺の様子にも、まるで普通の女の子の様にこのころころ笑っているあたり、俺の専用血液供給源になることを当然のように受け入れてくれている。
素直に嬉しいが、俺が隠さずに伝えたデメリットなどなんとも思わず、俺がスフィアだけを吸血対象に考えていることを喜んでくれているのであれば少々拙い。
「まあ完全に自由意思が失われるわけじゃないし、スフィアなら吸血鬼の支配にも十分抵抗できると思う。俺としても誰彼構わず吸血対象にしたいと思ってはいない。だからスフィアが承諾してくれるのはとても助かる」
だがとりあえず俺は笑って感謝の言葉を伝えた。だが嬉しさのあまり、俺は慎重に進めるべき内容を勇み足で俎上に載せてしまったらしい。
なぜならば今の俺の言葉で、スフィアが纏っている空気がいきなり変化したからだ。
この物理的にはなに一つ変化していないはずなのに、明確に空気を変えられるのは女子専用の技か能力、あるいは魔法なのだろうか? 確かクリスティアナ殿下も同様の対アドル専用領域展開の遣い手だったと記憶している。
『Re: Boy Meets Girl......s』⑪
2/4 17:00以降に投稿予定です。
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