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勇者たちの功罪  作者: Sin Guilty
第十章

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第100話 『Re: Boy Meets Girl......s』⑨

「幻覚だと思っていました。5年前とはまるで違った姿になっておられましたし、手を伸ばしても振り払われましたから」


「あー」


 ちょっと、いやすごく嬉しくて照れ臭いのは、『吸血鬼』化していても俺を俺だとすぐに認識してくれたからか。


 ただあの状況をそんな風に記憶しているということは、スフィアはほとんど夢を見ているようなものだったことは間違いないな。


「それでショックを受けて意識が覚醒するとほぼ同時に、世界が終わりました」


「ごめん、俺はあれを完全にスフィアの残滓だと誤解していた」


 ただスフィアの主観的にはそうだったのであれば、今少し俺が会話を試みていればまともな意思疎通も可能だったかもしれないってことか。いやだからこそ、スフィアは人として今の世界に再構築されたのだと言えるのかもしれない。


 もしもあの状況をスフィア自身がはっきりと認識していたとしたら、あの姿のままで再構築されていたということもあり得る。俺も最後に自認していた『吸血鬼』として再構築されていたわけだし、人外になり果ててしまった者は8年前の自分を上書きしてしまうのだと考えた方がしっくりくる。


 まあアドルやクリスティアナ殿下、カインが姿だけは8年前のままで、能力だけは死ぬ直前のままというのもよくわからん話ではある。


 いや、やっぱり俺の望んだ「俺たちだけが記憶を持ったまま、過去の世界を再構築する」という条件から言えばアドルたちの在り方が正しい気がする。なぜか人かそれ以外かで、俺の能力の適用範囲がずれているとみた方がまだしも正解に近いのではなかろうか。


 能力を行使した当の本人がこの曖昧さなのだ、よくもまあ上手くいったものだと今更ながらに胸を撫で下ろす思いである。


「あのぅ……私はどうなっていたのですか?」


 俺の様子から自分の認識と現実にズレがあることを確信したスフィアが、不安げにそう問うてきた。


 まあここは隠しても仕方がないので、正直に伝えた方がいいだろう。


 俺が過去の世界を再構築できる状態になってから逢いに行った、なれの果てだと思っていたスフィアはまずとんでもなく巨大だった。そのくせその美しさはほぼそのままで、身に着けていたのも見慣れた聖女服。


 まるで天使のように頭上に浮かんでいる天輪や背に浮かぶ光の翼も人の時のまま――ではなく、色だけが漆黒と真紅、純白が明滅する不穏な様相に変じていた。


 だがそのあまりの巨大さ――大陸北部と他の地域を分かつアラストル山脈の最高峰よりも高く、雲海を突き抜けるほど――が寸分違わぬ人のカタチをしていることが、あれほど不気味に映るとは思わなかった。


 瞳と天輪、背翼こそ不穏ではあれども、その顔の造作も躰のバランスも美しさを極めたようなスフィアそのままだったにも拘わらず。


 いや、あれは巨大さそのものというよりも、彼我のサイズ乖離からくる異質感というか異物感というか……同じシルエットなら大多数と誤差の範疇に収まっていてくれていないと、逆に強烈な相容れなさを本能的に感じてしまうのかもしれないな。


 要は本能では偽物だと認識してしまっているのに、自分のよく知る人と寸分違わぬ姿をしていることに対する嫌悪感。あるいは逆に、本能では本物だと認識しているのに、あまりにもあり得ないサイズであることに対する忌避感か。


「……もう一度そうなるかもしれない私に、よく引かずにいられますね。本当のことを言ってくださってもいいのですよ?」


 わりと明け透けに説明したので、スフィアはちょっとびっくりしている。


 そりゃ自分の姿のままで手を伸ばしたと記憶していたのに、山脈を超える巨人になって手を伸ばせば弾かれもしますよね、などと言いながら遠い目をしている。


 うん、実際は手を伸ばしたのではなくて明確な攻撃だったしね。


 いや自分が人外になってしまっていたショックはわかるが、俺なんて現在進行形で『吸血鬼』なんだぞ? そりゃこっちの世界には概念そのものがないからぴんときにくいかもしれないが、そりゃもうあっちでは「俺は人間をやめるぞ!」の代表格みたいなものだったのだ、『吸血鬼』という怪物は。


「いやあれもスフィア本人だったのなら、俺も巨大化する手もあったかなって……」


 だからそんなことが理由で、俺がスフィアを厭う心配なんてしなくてもいい。


 少なくとも今の時点ではよっぽどスフィアの方が真っ当な人間に見えるし、たとえあの姿になるにしても制御できているのであれば、宇宙超人(ウル〇ラマン)の変身のようなものだ。なんなら俺的にはカッコいいまであるし、できるなら俺もやりたい。


 くそ、前周の能力ならできたのだが、今の『吸血鬼』ではさすがに無理だ。


 でもまあ俺が感じた不気味さなんてそんな程度のものだし、スフィアとしての意識がしっかり戻って会話でもしていれば、間違いなくそんなものは消し飛んでいただろう。


 そもそも同じ尺度スケールになってしまえば不気味さなどわくはずもない。


 俺たち以外が小さすぎるというだけ――とはいかんか、山脈級の巨体をなに喰って維持するんだって話にもなってくる訳だし。それでもスフィアの意識が戻ってアドルたちを蘇生でき、変身を解いて人間サイズになれるのであればそれもアリだったかもしれないな。


 まあ今更悔いてもあの世界で巨神カップルとして生きていくことはもう叶わないのだ、再構築したこの世界で前向きに生きていこうじゃないか。


「もう……」


 俺の能天気な発言に、さすがにスフィアも本気で呆れたような表情を浮かべている。


 だが隠すことなく状況を伝えた上で、俺がこんな調子なのでスフィアも自分がとんでもないものに変じていたことを気にしても仕方がないとは思ってくれたらしい。


 ちょっと本気で呆れているっぽい様子なのは気になるが、落ち込んでいられるよりもよほどマシだ。


「俺の話を聞いた上でも、身体に変化はない?」


「はい、少なくとも今のところは。後ほど王都郊外で実験してみましょうか?」


「俺もある程度なら身体巨大化もできるし、幻覚でならかなりの大きさを見せることもできるけど、あのサイズはさすがに無理だなあ……」


 念のために聞いたことに冗談で返せるのだからもう大丈夫だろう。

 いや実際できてしまったら、王都どころかアルメリア中央王国中が大騒ぎになってしまうだろうけど。


「もしもできたら、俺もスフィアの奇跡で変身させてくれよ?」


 まあ万が一にもできてしまったら、その時はその時である。


『Re: Boy Meets Girl......s』⑩

2/3 17:00以降に投稿予定です。


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2月上旬まで毎日投稿予定です。

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