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10人のおじいちゃんとベルートにゃん  作者: 双鶴


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プロローグ「最後の夢を見つけた日」

東京の下町に、ひとつの工場があった。

旋盤の音が響き、鉄の匂いが漂うその場所は、かつて精密部品メーカーとして名を馳せた工場主・佐藤源一が築き上げたものだ。航空機や鉄道車両に使われる部品を納め、業界を驚かせた男は「下町の発明王」と呼ばれた。だが会社を譲り、第一線を退いた後も、彼の心には「技術を絶やしてはならない」という執念が残っていた。


源一は道楽で工場を維持した。シルバー人材センターを通じて集めた技術者を雇い、研究や試作を続けさせた。航空機設計の田村正義、鉄道制御の小林徹、自動車整備の山本清志、金属加工の中村信吾、電子回路の藤井隆、材料工学の渡辺浩二、ソフトウェアの石田誠、船舶工学の松井健、旋盤職人の大野勝――9人のベテラン技術者が集まり、源一を含めて「消えゆく技術」を護ってきた。


彼らは現役を退いた後も「まだ腕は錆びていない」という誇りを胸に、工場で技術を磨き続けてきた。昼は旋盤の音が響き、溶接の火花は絶えず、夜は図面を囲んで議論が続いた。そこには「仕事」というより「技術を守るための道楽」があった。


しかし、時は流れる。源一は70歳を迎え、技術者たちも62歳から76歳。後継者はなく、未来へ技術を繋ぐ道は閉ざされていた。工場はまだ稼働できる。機械も現役だ。だが「これ以上は続けられない」と源一は静かに事業閉鎖を決意した。


その夜、工場の片隅で源一は仲間を集めて語った。

「俺たちはもう工場を畳む。だが、ただ終わるのではなく、最後に何かを成し遂げたい」


沈黙が落ちた。長年共に過ごした9人の顔を見渡すと、誰もが同じ思いを抱いているのがわかった。技術を守り続けてきた誇りを、ただ静かに閉じるだけでは終わらせたくない。


田村正義(76歳、元航空機設計技師)が口を開いた。

「俺たちの腕はまだ錆びちゃいない。最後に何かを作ろうじゃないか」


小林徹(74歳、元鉄道制御技術者)は図面を撫でながら呟いた。

「ただ閉じるなんて、もったいない。俺たちの知識を形に残せれば……」


だが、何を作るべきかは誰にも見えていなかった。航空機か、鉄道か、自動車か。議論は夜更けまで続いたが、答えは出ない。


その日々は、模索の連続だった。

「俺たちが一緒に過ごした時間を、何かの形にしたい」

源一の言葉に、9人は静かに頷いた。


そんなある日、源一は孫の部屋で見慣れた玩具を見つけた。仮面戦士ドライビーの「ベルートにゃん」と「べルードライビー」。孫が夢中で遊んでいた姿を思い出しながら、源一はふと呟いた。


「これを、本気で作ってみたらどうだろうな……」


最初は笑い話だった。だが、やがて技術者たちは真剣に考え始める。

「変身は無理だ。でも、べルートにゃんならAIで再現できる」

「べルードライビーは電動車両で挑戦できる」


その瞬間、沈んでいた空気が変わった。目の奥に再び光が宿る。

田村正義が口を開いた。

「夢のためなら、恥も外聞もない。大学にだって頭を下げよう」


小林徹は震える手で図面を撫でながら言った。

「まだ俺の知識は役に立つ。最後にもう一度、制御を組ませてくれ」


9人は頷いた。工場主を含めた「10人のおじいちゃん」の挑戦が、ここに始まった。


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補足:仮面戦士ドライビーとその象徴


ここで登場した「ベルートにゃん」と「べルードライビー」について、簡単に説明しておこう。


• 仮面戦士ドライビー

2014年から2015年に放送された特撮シリーズ。従来の仮面戦士がバイクを操るのに対し、ドライビーは自動車を駆る異色の戦士として描かれた。主人公・苫来内乃介が「コマンドカー」と呼ばれる小型マシンを使い、機械生命体ロイモードと戦う物語である。

• ベルートにゃん

科学者クリムゾン・スタインハルトの意識が宿った会話する変身ベルト。正式名称は「ドライビーベルト」。主人公の相棒として助言を与え、戦闘時には冷静な分析を行う。ユーモアと厳しさを併せ持ち、シリーズを象徴する存在。

• ベルードライビー

仮面戦士ドライビー専用のスーパーカー。特殊タイヤや武装を展開し、状況に応じて三段変形する。シリーズ初の四輪車戦士を象徴するマシンであり、ベルートにゃんの意思で遠隔操作も可能。


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