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第12話_スマホ越しの指揮者

 優月は病院から外出禁止を言い渡されていた。

  だが、彼女はスマホを片手に笑っている。

 「オンラインで練習、できるよね?」

  画面の向こうで春奈が即座に頷いた。

 「はい。私が音取りを録音して、みんなに送ります」

  志穂もお弁当を差し出しながら笑う。

 「お腹空かせちゃダメだからね!」

  光希はスマホをスタンドに立てて言った。

 「優月、お前が指揮者だ。全部頼んだぞ」

 「うん!」

  リハーサルが始まると、病室のベッドに座る優月がタクト代わりのペンを振った。

  回線が少し遅れて声がずれるたび、みんな笑ってしまう。

 「テンポずれてる!」

 「でも何か楽しいな」

  志穂が笑い転げ、拓矢も珍しく照れ笑いを浮かべた。

  そんな中、優月の目は真剣だった。

 「光希、もう少しだけ声を前に出して!」

 「お、おう」

  オンライン越しでも、その指導は確かだった。

  その様子を見て、光希の胸は熱くなる。

 (……絶対に優月をこの舞台に連れていく)



 練習後、スマホの画面越しに優月が微笑んだ。

 「みんな、ありがとう……。私、ここにいても仲間でいられるんだね」

  その言葉に志穂は涙を拭い、春奈は小さく頷いた。

 「優月さんがいるから、私たちも頑張れるんです」

  光希はスマホを持ち上げ、画面の向こうの彼女を真っ直ぐに見た。

 「なあ優月。お前の指揮があれば絶対に勝てる。だから――絶対に一緒に歌うぞ」

  優月の目が潤み、かすかな声で「うん」と返った。

  病室と音楽室。

  離れていても心は一つだった。

  その夜、光希は布団の中でスマホを見つめ、強く誓った。

 (絶対に優月をステージに立たせる……この約束だけは、絶対に守る)

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