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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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90/102

90.いろいろ発覚

オクティと一緒に改めて庭の畑を見に行った。

苺は元気に増えて新しい実も膨らみ始めてるし。順調で嬉しい。


アズキの木もチョーコの胸くらいまで伸びて、この先もうちょっと木自体は伸びそうな雰囲気だけど、枝には早くも鞘っぽいものがあちこちに見え始めてる。


……花も咲いてないのにいきなり実とか豆の鞘が出来始めるんだよねぇ。多分虫が存在しないから、そこは調整が入ってるんだろうな。

そういえばオレンジもそうだった。苺もあの白い花は咲かずにいきなり緑の小さな実が膨らんでいく。

花は花って作物として完全に別枠で存在していて、枯れるまで花のまま。

魔獣の核を撒いて育つ木や水草からは妖精が自然発生するし……改めて考えても色々と不思議。


アズキは熟したら鞘ごと地面へ落ちるけど、放っておいても乾くだけ。種は浅くでもいいから種を土に埋めて最初だけ水をあげないと発芽しないので、勝手には増えない。

でも、一旦植えてしまえば水も肥料もやらなくても光合成だけで育っていくし。収穫は毎日落ちた鞘を集めて乾燥させて豆を取り出すだけでいい。畑としての管理はすごくやりやすそう!


逆にホウレンソウ、こちらは種を埋めなくても土さえあれば勝手に生えまくる。

もう実が弾けて紙袋の中に溜まってたので集めてみたら、1株から8粒入った実が5つも取れたので3株から一気に120粒。


なお。肥料も水もたっぷり与えて育てればなんと3日で収穫可能、1週間で種が弾ける。

水しかやらなくても1週間で収穫、弾けるまでは3週間。

ちなみに水を一切与えない状態にするとかなり固めのスジっぽく苦い品質で美味しくはないけど。一応6週くらいまでは食べられる。そして14週つまり3ヶ月半で弾けちゃう。


土さえあれば勝手に生えてこのスピードで種を弾かせる植物の増殖率40倍って、ホントに気を付けないと手に負えなくなりそう……


まぁここで自宅用に少量育てるだけなら管理出来るから良いけどね。種を採る用に1つ、試食用に3つで4粒だけ植え直した。


……その時。

撒きながら種を触っていて何となく見えてしまった情報が気になったので改めて読み直す。


なんだかマキビシみたいな踏むと痛そうな形をした硬い殻に入ったこの種。

レガリアの国軍が使っている、()()()()の薬剤ですって?!


薬効があるのは種の中にある白い部分。これを食べたり粉にして飲むと本人の魔力を消費して、一時的に体力や筋力を増大する、つまり身体強化が使える。しかも多く摂取すれば魔力消費量が増えるのに比例して筋力も上がる。


問題になるのが、恐怖心を抑え酩酊感に近いアッパー状態になる薬効と、弱いけれど中毒性もあること。

禁断症状が弱いだけで、内容的に依存症には凄く陥りやすい。

恐怖を抑えて筋力を大幅に増す薬……うん、戦場で軍人に配るのなら凄い優秀なものだよね。


ただ中毒性だけじゃない危険もあって。まず飲んだ本人の魔力量が少ないと強制消費に耐えられずに魔力枯渇になり最悪死んだりする。逆に魔力が強い人はただ沢山飲めばいいのかというと、普通の人間の場合は2粒くらいが限界。3粒以上は身体の組織の方が追い付かなくて腕が裂けたりといった事故もあり、レガリア国軍では2粒以上の使用に耐えられるよう、普段から身体を慣らす強化訓練を行っているらしい。


元々は、天人を崇める儀式用の作物として使われていただけだったけど。

国に存在と効果を知られてから、レガリアでは国家事業として、表向きは収穫した無害な葉を高額で輸出するため厳重な管理で栽培。裏では種を正規軍にのみ極秘で配る薬剤として中身のみすり潰して乾燥させた粉を製造。


薬は普段の軍事訓練で身体を慣らすために少量ずつ使っている他、各自の限界量を『切り札』として持たせているらしい。


有益な薬効としては、身体強化の習得や強化を目指すトレーニングには凄い効果がある。実際レガリアの国軍の兵士は1人残らず身体強化を高レベルで習得済だし、自前の身体強化だけで戦うのなら身体の組織の強度や魔力量は無理せず戦えるので事故の心配はない。

が、実際は中毒性薬物……


これは国への報告悩む。でもレガリアの調査が進めば多分どこかでバレる……

うんうん悩んでいるとオクティが後ろから抱き着いてきて、ひそひそ話してくる。


「チョーコ、存在とか注意点は共有しておかないか?」

「国家機密らしいから、帝国に持ち込まれはしないかもしれないけど……」


「1粒でも種が流出したら、1週間で40倍に増えちゃうんだろ?強力な身体強化を簡単に覚える薬剤なんて、欲しい人は欲しいだろうし。魔眼持ちが種の実物を見れば一発だ。レガリアにも栽培を止めさせるくらいのことが出来ないなら、いつか誰かの目に触れると思うよ」


……困った時のメイドさん!


お風呂も着替えも済ませ、メイドさんたちも倉庫へ行ったり、洞窟へ行ったり、宰相家やら何やら巡り終え。早速お揃いの黒のブローチを付けて食堂へ集まってきてくれたところで、ご相談。


ホウレンソウの方に問題が。葉だけ育てて食べてる分には良いんだけど、種はレガリアの国軍で極秘に使われているものでもある。流出したら事故も依存性もある薬だと説明。


皆、難しい顔で考えたあと、上に報告しましょうと口を揃えた。

使用量を守って正しく使うという前提であれば、メイドさんたちもその切り札の薬は欲しいと思うくらい魅力的。絶対いつかどこかで秘密は漏れるというオクティと同意見。


発見される前に存在を上層部に教えて、悪用させない、された場合の速やかな処理が出来る法体制と管理方法について、キッチリ決めてしまうべきだと。


本当はレガリアでの栽培も禁止にして、転送盤でしか行けない凍土の僻地とかで育てられれば秘密の管理は簡単だと思うけれど。

レガリア国がホウレンソウを手放さない場合に、国内で使うだけなら自治権の範囲に含むとして。持ち出しについて、勿論種は論外だけど、粉にした薬剤も国外には持ち出さないとか、ホウレンソウの葉野菜としての輸出時に()()()までしっかりするようにとか通告するべきという。


……うん、新鮮なものだと栽培出来ちゃったからね。一度アイテムボックスに入れればいいんだけど、ホウレンソウは特別な草として高額で少数しかやり取りしないから、わざわざ天人さんを荷運びで雇わずに産地直送新鮮転送盤発送!になっちゃうんだよね。その結果がこんなところに。


メイドさんたちはお試しでも使わないと約束してくれたので。

明日にでも各所報告や交渉や実証のため、現物があれば魔眼持ちに見せられるので説明が早いと、実際に1粒分ずつ既に粉にしたものを預けて報告へ行ってもらい。庭に植えた分も育ったら収穫して、種とまとめて不死族に見せることになった。


***


「ふぇぇ、なんかややこしい話が多かった気がする」

「お疲れさま。ニナ達がいろいろと頼りになって良かったよね?」

「うん。でもオクティも凄いよ?時計の話だって、私は答えが合ってることしかわからないけど、オクティは自力で見て理解してたじゃない?」


「そう?俺は言われた通り見てみただけだけど、チョーコに凄いって思って貰えるのは嬉しいな」

「うん本当、私がここで出会えたのがオクティで良かったよぉ」

「なら、もっと優秀でチョーコを狙うやつに乗り換えられないように、この先も頑張らなきゃな」

「乗り換えないよ?!」


「俺が覆されない有利ってさ、正直『先に出会った』ってことだけだなって思ったんだ。正直、昼の不死族の医者とか、役に立つ優秀なやつがゴロゴロ出てくるようになって。俺の魔力量も全属性も覆されてきて、それでも俺より良い男がいるわけないって思えるほど自信家じゃないよ。……危機感とか緊張感は忘れないようにしないとな」

「うっ、そんなこと言ったら、私も不死族のお姉さんたちとかに本気で張り合われたら勝てる気しないよ?今は私以外エスの加護がある人は見たことないけど、この先出てこないとは限らないし……オクティのことはちゃんと好きだし、エスにも誓ってて、この先乗り換える気はないってことしか言えない」


「俺も、チョーコしか要らないし、チョーコが俺の事を1番好きってずっと思っててくれるだけでいい。……この先、子供が出来たら子供を最優先で大事にするのはいいけど。大事とか優先じゃなくて、子供の方が好きっていうのは嫌だ。俺と同じくらいまでにして」

「あ、オクティだけが全てにおいて1番じゃなきゃ嫌とは言わない?たまに奥さん好きすぎて子供に嫉妬して問題になるって話あるから、産んだ後で子供優先にされるのは絶対嫌って言われたらどうしようかなとは、ちょっとだけ思ってた」


「優先するのと好きは別だよ。例え知らない家の子だって、泣いてて親が近くに見当たらなかったら、デートの途中でもまず助けるだろ?

ただ自分の子供は、エスに子供も愛するって誓ってるし、そのうえチョーコと似てるところもいっぱいあれば、同じくらい好きにはなるかも?とは思うから。俺も『俺と同じくらい好き』までなら許せるかなって思う。

大きくなってから、恋愛的な意味でチョーコが好きって言い出したら我が子でも燃やすかもしれないけどね……」

「本当に大人になってからはともかく、ちっちゃいうちの『将来ママと結婚する』まで燃やそうとしないでね?暴力の前にまず話し合いだって教えるんだから」


「……そうだな、話し合いだな。まぁ、俺はそういう感じだから、チョーコの好きの1番が俺であってくれたらいい」

「うん、私が……旦那様として好き、なのはオクティだけっていうのは言えるから。子供は子供としてオクティと同じくらい好きでいいなら、安心」


「俺はまだ暫く2人きりで過ごしたい気持ちもあるけど、チョーコが子供欲しいんだったら、ちゃんと作ろうか」

「えっ。自然に出来た時はそのまま生むつもりだったけど。そんな、作るとか作らないとか調整出来るの?」

「うん。視ればタイミングが分かるから出来るよ。相性が合わな過ぎると流れちゃうけど、チョーコと俺なら問題ないはずだし」

「そ、そういう感じなんだ……」


――情報によるとこの世界、女性の生理は汚れが勝手に数分で消えてしまうから、周期のリズムが掴みにくいうえ腹部の魔力が大きく高まるタイミングというふわっとしたもので、ちょっとした体調の変化ですぐズレる。

宰相さんの分家で侍従教育の施設を作って大量に秘書さんやメイドさんたちを育てる事業が出来るのは、魔眼持ちの家系が中心になり効率的に子供が作れる環境なのが理由の1つなんだそう。


ついでに読むと、妊娠期間は8ヶ月程度で小さく生まれて凄い早く育つ感じで、むこうの世界と違ってお産は平民の家でも自力で生めてしまうほど軽い。職業としての産婆や助産師さんはいないけど、近所の助け合いで済む。貴族は魔眼持ちで状態を見られる人を呼んでタイミングがいつ頃かとか無事に出来たか、ちゃんと育ってるかなど見て貰ったりするくらいで、お産自体はメイドさんなどに手伝ってもらうのが普通みたい。


魔力は皆生まれつき持ってるものの、イメージを伴わないただの魔力は放出しただけでは何も起こらず、言葉を覚えてハッキリ具体的なイメージを固められるようになる1歳くらいまで魔法は使えないので、生まれてすぐ周りに火や水をばらまいて大騒動なんてことは起こらない。

以前は生後半年もしたら乳離れして普通よりもっと細かくして水に溶いた木の粉を食べさせていたけど、最近は葛湯を飲ませるように変わったそう。

……あぁ生の木の粉、生まれた頃から食べてれば、そりゃまぁ違和感ない食生活だったんだね。


大体乳離れするまでが半年程度、1歳くらいで魔法を使い始めた頃からが一番手がかかる。5歳くらいでほぼ自立……んっ?自立?


子供は小さいうちは家から出さずに育てる習慣は平民でも一般的だけど、5歳くらいで見た目も10歳くらいまで一気に成長する。そのくらいになれば平民は外に出るのが普通で。荷物運びとか、ごみを燃やす、木を育てる場所に魔獣の核を砕いたものを撒いてくるとか簡単な仕事は始めるし、商人や職人などの弟子入りを希望する場合もそのくらいから弟子入りが始まる。


貴族はそこからさらにマナーや品評会に呼ばれても恥ずかしくない本格的な歌や絵や手紙を書くための文字、将来の目指す仕事によっては計算や魔法に剣術の勉強をみっちり。色々と身に着いてから社交で人と会わせるのでなかなか家から出して貰えないけど、貴族は人生長いしあまり焦らないらしい。


平民は5歳から弟子入りしたり見習いとして働き始めるって、そりゃぁ15になればもう成人扱いされるわけだわ。――そうか、基本的にここの世界の人間って危険環境で旅暮らしだから、野生動物ほどではないけど、凄い速さで独り立ちするのね。


「ふうん、チョーコのいたところよりお産が軽くて妊娠期間も短いんだ?負担は少なそうで良かった。安心して産めそうだな」

「あ、うん。私は1人っ子だったから兄弟には憧れてたことあるし、もし産むんだったら何人か欲しいなとは思ってたから、そこは私もちょっと安心したかも」

「成長具合は随分違うみたいだから、子育てはちゃんとメイド達に頼らせて貰おうな?そもそも俺たち、子育てについては何も知らないしね」

「うん。それはもう頼らせて貰いたいけど……甘えっぱなしだと、ダメ人間になっちゃいそう」


「皆がいないと生きてけないってなったら、チョーコが1人で消えたりしないだろうし、俺としては好都合だけどね」

「ふふっ。たしかに将来オクティと大喧嘩して家出しても、メイドさんの誰かは一緒に付いてきて貰わないとダメって、もうなってるかも」


「それならちゃんとメイド同士で連絡は取って、無事ってことだけは分かるか。……うぅ、やっぱり無理だ、チョーコに会いたくない来ないでって言われるのを想像しただけでつらい」

「そんな、私の方から離れようとするなんて。それこそオクティから他に好きな人が出来ちゃったとか言われない限りは無いと思うけど?あぁでも、そういうことになったら、メイドさんも連れてかないで1人で出ていく……かも」


「っ!あの、さ。チョーコは消えるって決めたら本当に消えそうで……それ、本当に怖い、頼むからやめてくれ。

もしこの先、俺の浮気の噂を聞いたとか誰かと会ってるのを見たとか、周りじゃなくてちゃんと俺に確かめて?俺が別のやつを選ぶなんて、誓ってない不死族が新しく現れて洗脳されたとかでもない限りありえないから。

……もし俺がそんなことを言い出したら、炎の印で俺を燃やしてくれ」


「ん。――分かった。オクティが私と別れようって言い出した時は、確認のために炎の印で確かめる、ね」

「あぁ、チョーコ、ありがとう」

ぎゅうっと抱きしめられて、抱きしめ返す。

くっついてごろごろしてるうちに――いつの間にか眠りに落ちていた。


***


大型ダンジョンはクリアし終わったし、次はどこへ行こう?日の出すぐから着替えて降りて、畑の世話を済ませて朝食。


朝食に出てきたものはどう見てもホットケーキ!と言える完璧なビジュアル。

綺麗な焼き目の付いた平たくふわっふわに柔らかく膨らんだ厚めの平たいケーキにバターとメープルシロップがたっぷり。生地はほんのり黒砂糖風味でそこまでは甘くないが柔らかく、やや塩も入って上に掛かっているものと合わせて甘じょっぱい。


んふー。と朝から幸せなため息が漏れる。

「ホットケーキおいしーっ!」

「うどん粉のパンは丸パン、小麦粉のパンは平パンと呼ばれてますけれど。ホットケーキという名前はなんだか可愛らしいですわね?」


新しく見つかった2つの空白の土地と、小さな村しかなかったところには、それぞれ国1つ分になる広大な小麦畑と養鶏場、そしてオレンジの果樹園が作られているらしい。

集められる数に限りがあるうどん粉と違って、土地さえ確保できれば量産できる薄力小麦と卵。そこに風の粉と水と黒砂糖や少々の塩を入れて作る、ホットケーキのようなフワフワ平パンは安く庶民向けにして。

丸パンは牛乳やバターたっぷり加えて白砂糖も入れて、貴族用に売り出していこうという動きがあるそうだ。


また潤沢に出回る予定の鶏肉は勿論、羽毛や麦わらも安く使える新素材としてけっこう注目されているらしくて、どんなものに使えそうかと職人たちが研究中。


オレンジは天人との交易の主力商品なのでまだ貴族向けだけど、生産が増えていけば庶民にも広がっていく予定。


うんうん、ジワジワ食が充実してきたかも。このホットケーキが広く庶民向けに……

いやもちろんミナの腕補正はすごい大きいんだろうし、牛乳の入ってない生地とはいえ上からメープルとバターがたっぷり乗ってるから、実際に売られる平民用の平パンより段違いに美味しい仕上がりとはいえ。

これが庶民でも日常的に安く食べられるようになるのかと感慨深い。


新しい素材を探して使いやすいものが見つかればもっと色々なものが出回るように……よーし、今日もまた新しいダンジョン探しに行っちゃおうかなぁ!

と、思っていたら、お約束はないけれど商会から客人がと警備の人が呼びかける声がして、ルナが外へ走っていった。


「ん、誰だろ」

「来てるのは副会長の2人っぽいぞ?」


そう時間を掛けずに戻ったルナの話によると。昨日連れて行ったユガからの話をちゃんと裏取りしたら、複数の貴族家が『高い魔力を持つ奴隷』として皇帝の庶子を積極的に引き取って奴隷のように使い倒しているかもしれないという疑いが浮上してきたそう。

特にスザンナが、知ってしまった以上は放置したくないので、それぞれの家に連絡を取ってキッチリ調べて、もし酷使されているのなら待遇改善を要求するか商会で引き取って欲しいと主張。


ロイドさんは、高魔力の水属性の人員はどれだけいても困らないので引き取ることは良いのだけど。商会としてそのように他の貴族を糾弾するような動きをして良いのかオーナーの判断を仰ぐ必要があるということで副会長の2人がすぐに来たという。


「ルナ、皇帝の庶子って全部でどれくらいいるか一旦全部調べて貰ったり、待遇が悪い状態で働いてたら全員引き抜きって出来るの?」

「出来るか出来ないかで言えば出来ますけどぉ……皇帝のおイタは即位してから急に始まって、以来ずっとだそうですから、もうかれこれ30年以上。今回発覚した部分だけでなく全部調べるとなるとそれなりにお時間かかると思いますぅ。それからチョーコ様が気にしそうなところを加味するなら、皇帝の庶子に限定するか、似たような境遇の孤児全て対象にするかですわね?」


「多少時間がかかっても良いと思う。庶子の子たちは働き口が幾らでもあるらしいから、待遇がそれなりにちゃんとしてる人以外は全員スカウトして引き抜きたいって本人に話を持ち掛けてもらっていい?もし他に待遇の悪い環境で働いてる人を見つけたら、転職先の紹介と、あまりに状況が酷ければ保護も出来る?」


「はい頑張りますぅ!保護もするということでしたら。凍土の地上にある商会員用の居住区がまだまだ空いておりますしぃ、あちらにお引越しを誘導して宜しいかしら?」

「うん。その方向でお願い。――バロックさんとスザンナさんには商会側は動かないで、こちらが動いて誘導した人の受け入れだけお願いしますって伝えてくれる?」


「承知いたしましたわぁ。――あ、チョーコ様♪施設の監査のメンバーにも声を掛けてみますので、施設への報酬として録音石を5箱ほど譲りたいんですけれどぉ」

「ん?うん。持ってる分は全部メイドさんたちの好きに使っていいよ、箱持って来てくれたら出すね」


「んふふ、ありがとうございますぅ♪」

何故かルンルンとした足取りでルナが去っていく。


そんなに面白い仕事?と不思議そうな顔で後姿を見送っていると、マナがちょっと説明していいのかな、とオクティを見る。

「あぁ、そういう困ってる人の弱みにつけ込むような家は、従者への扱いも悪い所が多いからさ。仲の良かった先輩の就職先だったりして、恨みのある家が幾つかあるんだって」

「報復かぁ……まぁ孤児の子を雇うんじゃなくて奴隷にしてるような家なら、ちょっとくらい懲りて貰うことになっても良い、よね?」


「不当な搾取をしている貴族を反省させるだけなんだから、良いんじゃないか?」

「帝国民を奴隷として働かせるのは給与未払いや場合によっては傷害罪です。わたくし達は条件に同意して働いているとなっておりますからよほどのことがなければ訴えるのは難しいのですけど。今回のケースならまとめて訴えて罰金を搾り取るくらいは出来ますわね、うふふ♪」

「そっか。それなら施設の人たちと協力して一緒に動いて貰ってね。んー、今日はまた新しいダンジョンに行っちゃおうかと思ってたけど、家にいた方がいいのかなぁ?」


「流石に今日中に終わるような話ではございませんよ。夜お戻りになってから本日分のご報告をします」

「そう?じゃあ行っちゃおうかな。オクティも大丈夫?」

「勿論。行きたいところへ着いていくよ」


***


牛の村に行くと。リィコさんがちょっと離れた空から凄いスピードで突っ込んできて上空で急停止した。

「チョーコ!オクティ!おはようー。今日はどこのダンジョンへ行くのっ?!」

一緒に行く気満々というか、完全にそのつもりで朝から待ってましたと目を見なくても伝わってくる。


「お、おはよう。リィコさん朝からずっと待ってたんですか?今日来るかどうかも分からないのに」

「来なかったら今日は行かない気分なんだなって思うだけよ?それでどこ行くの?今度こそ新しい甘いものがある所がいいわ!」

「食べものがあるかどうかは見てみないとわからないっていうか……リィコさんが気になってるところがあるなら、今日はそこに行ってみますか?」


「気になる……あ!そうそう。ちょっと気になる所があったのよ、来てみて!」

「うわわっ?!」

ぐいっとチョーコの手を引いた途端に身体が浮き上がるので、左手でオクティを掴んで一緒に飛ぶ。

力が上がったせいなのか勢いが凄い。


「ちょっ、ちょっと落ち着いて下さいっ?!力が上がったばっかりですよ!」

「分かったわよう。――あとチョーコ!そろそろ敬語やめなさいよ、私たちもうお友達でしょう?」

ちゃんと風の壁で周りを保護したのか、周囲の空気は落ち着いたけど、進む速さというか流れ去る景色のスピードはかなりの勢いだと思う。

「えーっと……あ、うん。わかったリィコ。お友達としてよろしくね?」

思えば確かにそれなりによく会ってるかも。


「よろしくねぇ。あっ、ほらあそこ!」

喋りながら紫の花の聖域を通ってぐんぐん飛んで行った先。指さしたのは背の低い山というか広大な平たい丘というか、全体的に緑と土で出来ていて……見た限りは穴っぽいものも裂け目もない?かなり広いけれど、上から見たらただの草原。

んー、強いて言えば、地面が草原で登る所もないのに魔獣がモモンガタイプのやつばっかりびっしりいるなぁというくらいが違和感?


「あら……?確かに昨日の夕方にここを通った時は穴があって、そこからあの飛ぶ魔獣が大量に出てたと思ったんだけど、ないわね」

オクティも見回すが、穴は見当たらないみたい。

「穴って、どのあたりにあったんだ?」

「丁度丘の真ん中の辺りだと思うの」


指さしながらリィコが飛んでいき、ざわめきだした魔獣をまとめて吹き散らしながら真ん中に近付くと。そこそこ大きくて綺麗に四角い、茶色の岩が地面に埋まっているところがあった。


「……これはダンジョンのてっぺんだ。ダンジョン自体は建物ごと埋まってて、定期的にここに穴が開いて溜まったやつが強制的に吐き出されるタイプなんだと思う」

「ダンジョンが埋まってるの?!えぇなにそれ面白そう、掘り出してみるねっ?!」

あ、と思う間もなく地面にぐわっと竜巻が生まれ、石の周囲の土が大型のレンガみたいな石材ごと掘り起こされて浮き上がる。


「うわわっ、もっと軽く!優しくで!」

「軽くしたつもりなんだけど……あ、ちょっと石が何個か取れちゃった、戻しとこっ。えいっ」

「待てそこじゃない!……わかった、俺が戻すから浮かべておいてくれ」

「いいの?じゃあよろしくね?」


浮かんだものが一旦ピタッと全て止まり。オクティが石レンガだけ選り分けて順番通りに嵌め戻し、土は一旦下ろして貰う。


「――さっき見えた感じだと、入口は真ん中じゃなくてこの辺りのはずだ」

丘の端の方へ移動して、オクティがざっくり土を掘り込み始めると。あ、そこなの?と、リィコが再び竜巻を出して土だけ剥ぐように丘の一部を巻き取り吹き飛ばした。

今回はちゃんと優しく狙いを調整したみたいで、綺麗に土が剥ぎ取られて石の壁だけが見事に露出している。……3階分くらいの深さまでごっそりと。


「わ……ほんとだぁ!よくわかるわねぇ、すごーい!」

土を引き剥がした穴の中には、確かにダンジョンの入り口らしき石組の穴。リィコは遠慮なくそこへ飛んで行こうとする。

「リィコ、何があるか分からないから気を付けてねっ?!」

「はーいっ!」


――若干の心配を抱えつつ、着いていくことになった。

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