8.獣人村との出会い
「ん?」
声を出して、オクティが街とは全然違う方に顔を向けた。
「さっきからあそこ光ってるなって思ってたんだけど、やっぱりあれって何かあるの?」
「あれは普通の木材を燃やして焚火してる光だと思う。それよりさっき、そこより少しだけ右にずれた辺りで風の攻撃魔法を誰かが使ってた。戦ってる」
「焚火があるなら人が居るってことだよね、森の魔獣に襲われてるかもしれないってこと?気になるなら行ってみよう」
あの光っている辺りのちょっと右、上空に『テレポート』
下の方から「こっちくんなでありますぅぅ(ギャウウウウガルルルルル)!!」と「「「肉!肉!(ギャッ!ギャッ!)」」」とやかましい叫び声がした。
オクティがその声の方に高度を下げて見える位置に移動する。
木に枝や葉っぱがないから上空から様子は見やすい。木を背にしている明るめの茶色っぽい獣人を囲んで、大きいのも小さいのも交えた8人ほどのゴブリン集団がよだれを垂らしながら騒いでいる。
今にも飛び掛かりそうではあるのだが、獣人の前に既に2人ほど小さめのゴブリンが倒れているのが原因なのか、警戒しているように少し距離を保ったままだ。
獣人の声はかなり流暢だが、ゴブリンの声は「肉!」しか言葉になってない。
ゴブリンがとうとうしびれを切らし、大きめの1人が棒切れを掴んで前に飛び出したが、獣人が放った風の刃に斬られて倒れた。
大きいのが一撃で倒されると後ろに続こうとしていた勢いがまたぴたりと止まる。だが獣人の方から続けて仕掛けようとはしないので、全員を倒すほどの魔力はないようだ。
ゴブリンは大きいのを倒すほど強いということは理解したようで突撃の足は止めているものの、まだまだ肉への執着が強い。
「あの獣人、そろそろ魔力切れだ。加勢するか?」
「魔法を使えてるし、タイチョーさんの一族っぽいよ、助けよう!風よ!ゴブリンだけを切り裂けっ!」
叫ぶと同時にゴブリンの群れが一斉にその場でバラバラになる。飛び散る血しぶきと、転がる8体分の……急いで目をそらした。
ぞわぁっと背中が寒くなる。今が夜で月明かり程度の明るさだから、はっきり見えなくって助かった。
ダンジョンで倒した魔獣はどれも、切ったら煙を詰めた風船みたいにボフッて消えてなくなってたからゲームみたいな感覚で居られたのに。
さっきのアンデッドたちの不気味さがまた脳裏に思い出されるし。見ないようにしてても、バラバラのものが視界の端に散らばってるのは分かる。
なるべくそちらを見ないようにしてると、ぎゅっと抱きしめながら大丈夫かと聞いてきた。
大丈夫、獣人の傍に行きたいとオクティに頼む。
地面には降りるが、腕の中からは放してくれない。恥ずかしいけど実際今降ろされたら腰抜けて立てないかも。
そのまま腕に嵌めたタイチョーさんのミサンガを見えるように腕を前に出しながら獣人に話しかける。この子のシルエットはタイチョーさんより小柄で柴犬っぽい。尻尾の丸まり具合もピンとした耳も、緊張してぐっと背中を伸ばし胸を張る姿勢まで柴犬っぽい。
「えっと、こんばんは、大丈夫?」
「しゃ、しゃべったぁぁぁああ!!」
既視感。
「うん、ちょっと散歩してたら戦ってる人が居るって気付いて、見に来たんだ。ほらこれ、あなたもタイチョーさんの知り合いだよね?」
「タイチョー?っは!それはまさにタイチョーの匂いでありますっ!助太刀感謝でありますっ!」
シュバッと効果音が付きそうな勢いで突進してきてミサンガをフンフン嗅ぎ始めるので、オクティが思わずちょっと後ろへ下がりかけたが留まってくれた。
「ううん、間に合ってよかったよ。仲間が怪我したら、タイチョーさんが悲しむもんね」
「はいっ!オイラ、さっきのでもう魔力が無くなる寸前であります!一旦これを村に運ぶついでに見回りの交代を頼んで休むでありますよ」
近くで見ると柴犬にしてはかなり精悍な顔つきの子なんだけど。
テレパシーで聞こえる口調がこれだから力が抜ける。
お世話になりましたであります、と言いながら早速ゴブリンたちの死体を集め始める。
暗くてよく見えないながら……こんな状態なのに血生臭い匂いが全然しなくて不思議だな?と思って脳内検索したら、血は流れが止まったまましばらく経つと瘴気化を始めて周囲に溶けていってしまうそうだ。
まだ生きた魔力を含んでいる肉の中では瘴気化するまで数時間くらいはかかるが、外に流れ出したものは数分もたないらしい。
まとめて運びたいのか、どんどん積み上げて一山にする。しかし大きい塊の上に積み上げて一番下を引きずって運ぼうにも、流石に10体分をソリも使わず引くのは難しい、重いし崩れるし。仕方なく1人を肩に担ぎ、もう1つ大きいのを抱え、それ以上持てなくて途方に暮れたようにしょんぼりする耳と尻尾。
暫く見ていると、立ち竦んでいた柴犬さんがバッと振り返った。
「うぅ、人間殿!」
「私はチョーコっていうの、どうしたの?」
「チョーコ殿でありますか!オイラはフクタイチョーであります!」
「えっと。タイチョーとかフクタイチョーって、自分の名前はないの?」
「?……オイラの名前がフクタイチョーでありますよ?」
「あ、人間とは名前の付け方が違うのかも。ごめん、よろしくねフクタイチョー」
「はっ!よろしくであります!してチョーコ殿、これらを全部村へ運びたいでありますが、オイラにはこれ以上持てないであります。どうやって全部持てばいいでありますか!」
「えーっと、これ全部一気に村まで持ち運ぶのはフクタイチョー1人じゃ無理かな。一度村に戻って運ぶ人を呼んでもう一度来るか、私たちが手伝って持ち帰れば良いと思う」
「ここを離れている間に、肉に釣られて次のゴブリンが来るかもしれないであります!手伝ってくれるでありますか?!これを持ち帰ったら、おなかいっぱい『焼肉』をごちそうするでありますよ!」
「はっ、焼肉?!食べさせてくれるのっ?!って、まさかこれの肉じゃないよね?ゴブリン食べるのはちょっと、いや、かなり遠慮したい、かなぁ……」
「ゴブリン肉が好みでないなら、ニワトリも居るであります!焼き鳥はどうでありますか?」
「や、焼き鳥?!食べたい!ニワトリなら食べたいっ!」
「妖精の肉を……焼いて食べる?」
「あ、うん。私の国では普通に妖精のお肉は焼いて食べてたんだよ。ニワトリが同じものかはわからないけど、試しに食べさせて貰って美味しかったらオクティも食べてみたら?」
「わかった。えーと、それを全部まとめて運べばいいんだよな」
オクティが地面に残ったゴブリンの死体を風でひゅるっとまとめて巻き上げ、運んでいく。
「ウォーン!チョーコ殿のツガイはものすごい魔法を使うでありますな!」
「ツガイじゃなくて、オクティっていう名前だよ」
「オクティ殿?でもチョーコ殿のツガイでありますよね?」
「えぇっと、だからまだツガイってわけじゃなくって……」
「人間は求愛中だとツガイと呼ばないでありますか?オイラたち、そんな細かいことは気にしないので問題ないであります!」
ぶほっと言葉に詰まるのを聞いて、オクティが何の話だというので説明すると、つまり彼らは個人じゃなくて立場や関係性が重要ってことだろ?だったらそう呼ばせとけばいいんじゃないか?大体、名前で呼ばれたって俺は反応できないんだし呼び方なんて気にしないぞ。
まぁ、それはそうか。
「チョーコに求愛中って認識は間違ってないしな?」
「!!!」
不意打ちで耳元にイイ声で囁かれ、顔を両手で覆っている間に着いてしまったらしい、フクタイチョーが呼ぶ声で我に返った。
切った木や岩などを使った塀に囲われている、村と呼ぶにはこじんまりとした、ちょっと大きな学校くらいの敷地。丸太を使ったしっかりした柵や、岩と丸太を使った洞窟のような形の家も幾つか見えるし、確かに動物の範疇には収まらない高い知能を持った一族なのだとよくわかる。
中央に一つだけ焚火がたかれているほかに灯りはないけど、獣人は夜でも見えるようなので困らないのだろう。
危険な森の中だからか、夜でも昼でも交代制でそれなりの人数が起きているらしく、寝静まってる感じはしない。興味深そうにこちらを見てくる獣人たちに向けて、フクタイチョーが大きな声で、タイチョーの友達のチョーコとそのツガイだと紹介してくれて、すぐにソンチョーの元へ挨拶に行くことになった。
一番奥にある家の穴から出て来たソンチョーさんは、どうやら既にタイチョーからチョーコの髪のミサンガが1本届けられていたらしく、匂いを確認してすぐ歓迎してくれる。焼き鳥を食べて泊まっていくことを勧められた。ソンチョーは尻尾が短くぽちゃっとしたコーギーだったが、体毛がかなり鮮やかに赤い。見ての通り火属性だそうだ。
ニワトリを飼っている囲いも見せて貰うと、ちょっと想像とは違った。色合いこそチャボとかと同じ濃いめの茶色だが……でっかい。ダチョウとか七面鳥ってこんな大きさじゃなかったかな?でもトサカのあるなしはニワトリの雄雌っぽいし、無造作に何個か床に転がる卵も幅が2倍はあるから8個分くらいの卵焼きが作れそうだけど見た目は近い。
鳴き声が同じかは気になるけど、ニワトリたちは夜は寝てるみたいで、静かなものだ。
慣れた様子で一人の獣人が囲いの中にひょいと飛び込むと、一羽で眠っているトサカが付いているのを選び、文字通り目にも止まらない速度で首を掴んで折った。
指の関節を鳴らすような音がしただけで、それ以外はなにも聞こえず、他のニワトリたちは気付いた様子もない。
そのまま担いで広場の方へ持っていった。
やはりちょっと背中がひゅっとするけど、肉を食べるってこういうことだ。
日本に居た頃はすぐに調理できるところまで処理済みの肉しか見たことがなかったけど、同じことは行われていたって頭では知ってる。
ちょっと心配なのは、ゴブリン10人分をこれから食べるぞってときに、このダチョウサイズの鳥を追加しちゃって、余らないかってこと。
ソンチョーさんに、わざわざニワトリを絞めて貰ったけど、余ってしまって無駄になったら申し訳ないと思ってることを言うと、肉はしっかり血抜きをして、今食べきれなかった分も焼くだけ焼いておけば数日はもつから、心配いらないという。
ちょこっと頭の中の資料を読んで確認したが、生肉は最初に血から瘴気化が始まるので、しっかり血抜きをしていれば、すぐに瘴気化は始まらないこと。そして焼くことには浄化効果があるため、血抜きしきれずに多少瘴気に当てられた程度であれば、焼けば人間にも無害で食べられるらしい。
肉食種族は体質的に多少ならば瘴気化した部分を食べてもおなかを壊さないので、血抜きしただけの生肉を数日おいて食べたって問題ないそうだ。
そうでない種族は新鮮でしっかり血抜きをした肉を選び、ウェルダンまで焼いたものだけを食べるのが安全。内臓は綺麗に血抜きするのが難しいので食べられるけどなるべく避けた方がよい。
そして幾ら血抜きをしてあるからといって長く置き過ぎれば肉自体も分解を始めてしまうので、熟成肉を作ろうとしてはいけない。
死体はアンデッドになる世界と聞いて怖かったけど、ちゃんと処理すれば人間だって肉を食べて問題ないと分かったし。
残しても無駄にならないのなら是非ごちそうになりますと、ここ数日耐えた木の粉生活のおかげで食べ物への期待によだれが垂れそうになるのを我慢しながら、広場の火の方へ案内される。
ゴブリンたちの解体してる所は見るのが怖かったので近付かないで待っていると、フクタイチョーが数人連れて走ってきて、皆が集まっているのとは別の、火の消えた焚火の所に案内してくれてから、火を移したり、近くに2人が座る石を持ってきたりと甲斐甲斐しく準備をしてくれた。
これを焼くっす!と言って、既に頭と足を落として血抜きして羽をむしり終わった丸鳥に太めの棒をザクーッとワイルドに貫通させてあるものを見せてきた。
内臓も取ってないんじゃないか?と思ったけど、彼らは内臓まで残さず頂くのだろうし問題ないだろう。
焚火の両側に上を凹ませた丸太を二つ並べたので何をするかと思ったら、焚火の上に棒を横に渡すかたちで、火の上に肉がギリギリ触れるくらいにどーんと肉を設置。
漫画やゲームで骨付きの巨大な肉とか、牛や豚を丸焼きするみたいな光景なんだけど。
どうやって食べるのかと聞いたら、時々くるくる回しながら焼いて、表面が焼けてきたら一度火からおろして、表面の焼けた所に皆で齧りついて回し食い。
そして焼けたところを食べ終わったらまた火にかけて表面をこんがり焼いて――とやるらしい。
わいるど。
確かに焼き網とかがないんだから、切って並べては焼けないもんね。
そして平たい石の上に白い粉が盛られたものを2人に渡しながら、焼けたところにこの塩をかけて食べるのが美味いっす、と言った。
塩?!と、受け取って指先でちょっとだけ味見したら、本当に塩だった。
あるんだ塩!あとで塩の入手法を教えて欲しい!と頼むと、ソンチョーに頼んでくれるという。
オクティがなんだそれ、と塩をまじまじと見たところによれば、ごくわずかに魔力を吸う性質があるそうで、食べ過ぎると喉が渇いたりするし、大量に飲んだら死ぬらしいけど。脳内情報によると塩だけスプーンでバクバク食べるような真似をしなければ害はないとあるので大丈夫そうだ。
フクタイチョーはゴブリン焼きの方に参加するらしい。
普段の焼肉の時は集まれる人に全員集まって、全員で一緒に回し食いするけど、今回はチョーコが倒したゴブリン肉を全部獣人の村人にプレゼントして、代わりに村から焼き鳥を2人にごちそうするってことになるので、オクティとチョーコの二人だけで先に食べたいところを食べたいだけ食べていい。残ったらオイラ達が残りを食べるので呼んでほしいといって去って行った。
獣人たちと皆で回し食いは流石にちょっと遠慮したかったので、その気遣いがとてもありがたい。
鳥の皮が焼ける香ばしい匂いや垂れる油が否応なく期待を煽ってきて堪らない。
広場に最初からあった焚火のほうでも、ゴブリン焼肉が始まっているらしい。
向こうから漂ってくる匂いが、あまりにも豚肉だったのにはちょっと衝撃を受けたけど。流石にゴブリンを味見する勇気はないし、火に照らされてバラバラ死体が良く見えるのも怖いので、そちらを見るのも止めておいた。
こんがりしてきた巨大なニワトリをどうやってくるくる回せばいいのか戸惑っていると、オクティが器用に魔法でゆっくり回転させてくれる。上に回って来た、おいしそうに焼き目のついた部分を見ながら、切り取る用のナイフとかがあればいいんだけどと言ったら
この辺の焼けた所だけ切り取ればいいのか?と風で器用に鳥の表面の焼けた所を切り取って、塩の皿の端に乗せてくれたので、手で摘まんで塩にチョンと付けて先に一口。
「んーーーっ!!!」
巨大だけど決して大味なんてことはない。しっかりした噛み応えと旨味が広がって、言葉もなくジタバタしながら感動する。
オクティもまねて、塩をちょっとだけ付けて食べた。
よほど衝撃だったのだろう。え、うま……と呟いて暫く呆然と動かなくなる。
チョーコも風で切り取れば良いんだと覚えたので、塊の上の方にある焼けた所を探してはここからここまでの焼けている部分だけ切る風の刃よ、と細かく指定して慎重に一口ずつ切っては、アチアチ言いながら指で摘まみ取って食べること2回ほど。
まだ動かない彼に気付いて大丈夫?という声にはっと我に返ったオクティが再び動き出して、肉を回したり焼けた部分を切り取ってチョーコの分も皿まで持って来てくれたり自分も食べたりし始めた。
皮ばっかりじゃなく、ちゃんと中の肉も焼けるように位置をこまめに調整し、焼け具合も良く見てくれている。鍋奉行ならぬ焼肉奉行だ。
調理道具があって普通に料理するんだったら私もやれるんだけどなーと思いつつ、甘えてしまう。
久しぶりの鶏肉をほおばる度に幸せいっぱいで、毎回ため息が漏れた。
そうだよ、こういうのが食事だよぉぉ。別にめちゃくちゃグルメってわけじゃないと思ってるけど、木の粉と水しか食べないなんてありえない。他にも何かあるかもしれないし、色々探したいなぁ。
オクティも、そうか。粉だけが食事と聞いて絶望した様子だったのは、チョーコはこういうものを食べてきていたからなんだな、としみじみと呟いていた。
粉を飲むだけの生活をしてきたせいか胃袋が小さいようで、なるべく脂っぽい皮を避けてもこぶし大くらいの量を食べたらもう胸が苦しくなってしまった。
少し焼いた肉をアイテムボックスに入れて持ち帰らせて貰うか迷ったけど、流石にお皿もなしで肉だけどーんと入れるのはちょっと。それに、この世界にちゃんと肉として食べられる鳥がいるって分かったんだから、自分で捕まえてきて、塩の入手方法も教えて貰って自分で作ればいいよね。と思う。
フクタイチョーを呼んでお礼を言って、人間は凄く小食なんだなとびっくりされながら、塩の入手方法を教えて貰いに、またソンチョーさんの家の方へ会いに行った。
ソンチョーさん曰く、塩の入手法は落ちもの獣人だったご先祖から、この一族に伝わる魔法なのだという。
私たちが勝手にまねしていいのかと聞くと、言葉が通じる他の種族がいなかったから教えなかっただけで、秘密でも何でもない。むしろ塩の存在と、入手法をこの一族が知っているという噂だけが広まってしまえば、塩を狙って奴隷にしようと企む者が現れるだろうと。
確かにそれはそうだと。やり方を教えて貰う。
塩の取り方の説明は、説明した人の言い回しを口伝でそのまま言い伝えてるらしく、とても分かりづらかったのだけど、脳内情報の助けを借りながら理解したところ。無属性魔法である『抽出』という魔法で、それをなんと地面に向けて使ったら出来た。
オクティはソンチョーさんがやっているところを見てすぐに理解して使えたし、チョーコも試してみたら一発で出来たので習得は難しくないっぽい。
そして、脳内情報で『抽出』について詳しく見たら、いつも食べてる木の粉から抽出すると黒砂糖、そこから更に白砂糖が取れると判明。砂糖を食べると魔力が回復し、そして精製を繰り返すほど効果が強い、ただ食べ過ぎれば過剰回復による魔力酔いや嘔吐や下痢を引き起こすので食べ過ぎ注意とのこと。
お礼になるか分からないけど、オクティが持ってる白い粉を貰って作った黒砂糖をソンチョーに見せて、もし誰かが魔力切れを起こしたらこれを少しだけ舐めさせるといいみたい。と木の粉から塩と同じ方法で取れることを教えておくことにした。
この一族は火や風などの属性を持つものが何人もいるが、やはり獣人なので魔力量はとても少なく、無理をして倒れたり魔力枯渇で亡くなったりする問題があったので助かるとありがたがられた。
焼き鳥が気に入っていたようだから、食べたくなったらまた来なさいと言われて心の中で拝む。
木の粉はあのニワトリたちの餌用にいっぱいあると言うので困らないだろう。
早速、さっき魔力がもうないから見回りを交代すると言っていたフクタイチョーに食べさせてみたら、最大値が少ないだけにひとなめで足りて、焼肉食べたらもう一回見回りにいくと騒いでいた。
ご飯も食べて眠くなってきたなと思ったところで、ソンチョーが泊まって良い場所として洞窟のような家の1つに案内してくれる。
木と平らな大きな石を組み合わせているだけで、床は土のままだし扉もないが。ダンジョン慣れしているオクティは森に寝泊まりするのにゴブリンや魔獣がいきなり襲撃してくる危険がないだけで安心できるといい、早速泊まる準備をしてくれた。
入口を閉めて寝心地の良いマットレスを敷いて、おなか一杯で幸せな気分で一緒に横になる。
「私、この世界で生きるなら、美味しいものを探して世界中を旅してみたい」
もう元の世界には戻れないっぽいし、ここで生きるしかないとは思っていたけど。絶望的な食事事情だけはなんとかしたかった。改善する糸口が掴めたことで、希望が見えた。
「俺も、色んな味の食べ物があるって知ったし、旨かった。チョーコが行くならどこにでも行くよ」
「世界中を2人だけで探すのは時間がかかり過ぎると思うから、もっと協力してくれる人たちをみつけたいけどね」
「まぁ協力してくれるやつはおいおい見つけていくとして、明日、街へ戻る前に少しこの辺りを探索してから帰らないか?」
「行きたい!この村にも転移の印を付けさせて貰うし、明日どこかにいい場所を見つけたらそこにもつけておくの。そしたら街に帰っても、自宅にも印をつけておけば、直接テレポートで出入りできるようになるよね」
「そうしよう。一旦は帰って冒険者組合に顔を出さなきゃいけないけど、2人で何度でも、美味しいものを探しに行こうな」
食に希望が見えた、獣人村との出会いだった。




