68.おとどけ天人便
商店街の話はチョーコ達がやるべきところは片付いたわけだし。
天人さんも待っているならすぐ行こうとオクティとメイドさんを連れて事務員さんの後ろについていこうとすると、組合長も届いたものの確認だけはするからと一緒に走ってきた。
2チームの冒険者の中で魔法使いは2人とも見覚えがある、誓い済みの人たち。一緒に居る、なんだかとてもやり切った顔をしている天人さんは、どちらも男性で比較的若い感じ。
「1と3のチームが帰って来たって?お疲れさん!」
カウンターの上には多分今回取って来たものらしい色々なものが一個ずつ並べられていたので、一緒にいつもの素材説明をしている防音室に移動。今回のチームと天人さんも、自分が取って来たアイテムが何だったのかくらいは知る権利があるけど、何か凄いものだったとかは秘密にしておいて貰う可能性もあると念を押して一緒に参加。
今回チョーコが注文して前払いしたのは1番チームの荷物だけなんだけれど。組合側の投資として商店街で使う資材の追加になるんじゃないかと考えてのチョイスでもあったので、他のチームの荷物も全てコンヴィニ商会でそのまま使って貰って良いそう。
組合に卸せるものは、いつも通り買い取ってくれるらしい。
個人的な貰いものじゃなくて商会の資産としてということなら、遠慮なく受け取ろうかな。
まず注文していたニガブドウ、これはもう使い方も分かっているのでよし。商会の在庫が今ないと聞いているので、一箱ほど納品。
そして次に、手に丁度握りやすいくらいの、野球ボールよりは小さいけどピンポン玉よりはだいぶ大きい。ものすごい蛍光色カラーで、ピンクとブルーとグリーンの謎のボールたちが並んでた。ちょっと指先でつついてみると水風船のようなむにっとした手触り。
「あっそれ、割れやすいんで強く掴まないように気を付けてくださいね!取る時に青いのを潰しちゃって大変だったんですよ」
「割れやすい……?」
『ペイントボール』蛍光ピンク:ローション(甘い)、蛍光ブルー:ローション(無味)、蛍光グリーン:強粘着(無味)
なんだこれ。
もうちょっと調べると、ローションというのは割れると周囲の床がぬるぬるのつるっつるになって立っていられなくなる。強粘着の方は文字通り、割れると粘着力と弾力が物凄いスライムみたいなものが貼りついて、剥がそうとした手もさらにくっついてどうにもならなくなる。
なお割れて3日ほど経つと勝手に溶けて蒸発して消える。
「……あっこれ、商店街で防犯用に投げて使うには丁度いいかも。別に口に入ったりしても毒じゃないみたいだし。うっかりくっついて動けなくなったまま誰にも発見されなくても数日で解放されるし」
不死族は飛行種族なので、地面が滑って人間は逃げられないけど不死族は追いかけられるから便利だろう。
使い方の説明をして。今のところ帝国内では必要そうじゃないので、使うならまず商店街に回して貰って良いというので納品はせず。
次が、そこのダンジョンの最下層にあったものだそう。
プチトマトサイズのやや長細い、ちょっと白っぽく濁った半透明な実?石?
茎が付いていたと思われる凹みがあるので、まぁオコメのカプセルみたいに生えてるものを回収したんだと思う。
『録音石(使い捨て)』握って魔力を込めている間、周囲の音を記録する。割ると録音された音がそのまま再生される。
割って使う使い捨てかーと思いつつ説明すると。本人が行けないお祝いごとなどに伝言ではなく本人の声でメッセージとして届ける、電報とかボイスメッセージのような使い方などが出来そうだと組合長の興味を引いたようなので、試しに一箱分だけ納品。
次に3番チームが行って来たのは、ココアパウダーのダンジョンの近くにある未探索ダンジョンと言っていたところ。
まず、青りんご。天人さんはダンジョンなのにどうして熟していない実がなっているんだろうと不思議に思っていたらしいのだけど。切ってその場で皆で分けて天人さんにも食べさせたら、青いのに酸っぱくない!とものすごくびっくり。
香りも良いし凄くおいしいと気に入ったっぽかったので、後で天人さんたちのお土産として持ち帰るように一箱、そして納品用に3箱くらい出してもらった。
そして人参、大根、これはもうそのまま野菜で、葉じゃなくて根っこの方を食べるものだと説明。大根は辛くて苦手みたいだけど、人参の方は普通に野菜として美味しく食べられそうなので天人さんはかなり喜んでいるし、人参だけ1箱お土産、そして組合には両方を納品。
次がまた全然分からなかった。白いパキパキした蝋みたいな素材で出来ている棘のないウチワサボテン……?
なにやら肉厚の白い葉っぱが重なったデザインで、謎過ぎるのだが。触ったら『石鹸草』と出た。
特殊効果はない。洗濯や手洗いに使うとスッキリして良い匂いがするほか、ペイントボールの粘着タイプもローションタイプも綺麗に洗い落とせるそうだ。
ハーブのようなスッキリした香りがして、これは是非お風呂で使いたい……自宅用にも欲しい!
ペイントボールが落とせるものが同じタイミングで届くあたり、商店街で一緒に使えってことだよね。
説明したら組合長が凄い欲しそうな顔を我慢しているのが分かったので、1箱だけ卸すことにした。
うん、取れる場所は分かったし、最下層の品じゃないからいつでも注文できるはず。
そしてそのダンジョン最下層の素材は。一見また人参か?と思ったのだが、根が何本かに分かれて絡み合った感じで、触って確認したら『高麗人参』と出た。
ちなみに不死族が栽培できるハーブにも同じものがあるらしい。かなり効果が強い方で、育てるのに魔力をむちゃくちゃ使うので滅多に育てられない。
単体で食べるとただの超強力魔力回復剤だが、組み合わせることによって魔力の枯渇や生産不全、逆に生産しすぎて暴走する魔力過多、そういった症状に良く効く薬草として使うことが出来る。
生まれついてのそういった症状を抱えている人にすら効く。
「あー……それ、魔力回復剤だが強すぎるな。人間が食べたらまずいやつだ」
「これは高麗人参っていって、不死族が生み出すことが出来る薬草の中でもかなり効果が強い方のハーブみたい。これは単体で使うんじゃなくて、他の薬にちょっとだけ混ぜて効果を出すんだって。まず薬として使えるように加工して貰わないと毒だから、全部不死族行きだね」
「それは何に効く薬になるんだ?」
「生まれつきの魔力枯渇や魔力過多症、一時的な魔力枯渇や暴走しちゃってるのにも効くって」
「あ……魔塔でそういう症状が出てる黒髪の子が数人いるから、奥の病院と薬草園の土地が出来たら最初の患者として運ばせて貰ってみるのはありか」
「あ!そうだね。お願いしよう!」
一通り納品物は出したし、解説も終わり。
魔獣の核は冒険者チームに譲ると約束したから渡すと言って、天人さんにも冒険者組合に付いてきて貰って、裏で大箱を出して貰ってそれぞれの天人さんがザラザラと核を箱に積み上げた。
本当に中型ダンジョンを洗いざらい踏破してきたんだなと思うくらい、どちらも大箱にたっぷり積み上がった核がある。どうやら本当にタイミングよくダンジョンブレイクのちょっと前くらいのタイミングだったらしくて、ハーピーたちは逃げて住みついていなかったし、魔獣は大量に湧きまくっていたし、肝が冷えたと冒険者たちは冷や汗をかいていたけど、天人さんが付いていたから大丈夫だったんだろう。
そして。天人さんたちがようやく!チョーコのお家訪問!とわくわくした顔で待っている。
「そんなに凄いおうちってわけじゃないから、期待しないでね?」
「いいんですっ、自分のおうちに呼んでもらえるっていうのは、仲が良いってことなんですよ。チョーコのおうちに呼んで貰えたといえば自慢になります!」
「お友達ってこと?えっと、2人の名前も知らないのは仲がいいお友達って言うのかな」
「「――あっ。」」
「私は新月の夜です、ルーって呼んでください」
「私は赤い花です、フィーって呼んでください」
「良く似てるし兄弟なのかなって思ったけど、名前の付け方は違う感じね?」
「似てます?兄弟じゃないんですけど……うーんと、天人はだいたい同じくらいの歳の子同士で集められて、ずっとお友達と過ごすことが多いんです」
「親が同じかどうかより、歳が近い子の方が一緒に居るので話し方とかも似るかもですね?」
さあさあ早く行きましょうと、冒険者組合の建物を出た途端に2人揃ってメイドさんやこちらを抱えて運ぼうとしてくるので、ちょっと苦笑しながらオクティに抱えて貰っていつものようにメイドさんたちも掴まって浮遊し、家の方へと飛んで運んで貰った。
人間の家は門から入るんだと話すと、面白そうに門の手前に降り立って開けて貰うのを待ち。家の前でメイドさんが先に立ってノックをして、中から開けて貰い。
どうぞ、と中へ促すと。メイドさんたちがいらっしゃいませ天人の皆さま、と一斉に頭を下げた。
「お招きありがとう!わぁ。壁が石で出来ていると思ったら、中は木も使われているんですね……」
「まず、お友達のおうちに呼んで貰った時はお土産を渡すんですよ!」
2人でアイテムボックスの中からそれぞれ探し、マンゴーのような酒の実を10個ほど入れた草を編んだ袋と、白いケサランパサランを同じような袋いっぱいに捕まえたものが出てきた。
「わ……!どっちもありがとう!」
酒の実の方はミナに渡して、ケサランパサランは自分で貰う。後で白絵具がいっぱい作れちゃうなぁ。
くふふ。
食堂へ案内して、今貰った酒の実とオレンジと風の石を使ってスパークリングカクテルを作るのをお願いしてから、それぞれがアイテムボックスからチョーコのアイテムボックスへザラザラと収穫物を移していく。
……本当に取り尽くしてきたんだなと思う。いつもの小型ダンジョンの荷物量とは比べ物にならないくらい時間がかかった。
両方移し終えた頃にはもうドリンクのついでにサツマイモのスイートポテトに軽く生クリームを絞ったお菓子まで作っていて。一段落するのを待ってから風の石と氷をグラスに加えて4人分こちらに持ってきてくれた。
「わぁ……噂の氷と風の石を使った飲み物ですね!」
「それに、これは甘いけど、くだものなんです??なんだかホクホクねっとりしてます?」
不思議そうな顔をしながらも目を輝かせて食べている2人に、洞窟の小人のところで買ったサツマイモから作ったスイートポテトだと説明すると、小人ってハーピーとかを捕まえて丸ごと焼いて食べるだけじゃなかったんですね?!と驚いていた。
そういえば。誘拐事件のことってダンジョンに着いて行っていた2人は知らないのかな?と思って聞いてみる。
「ダンジョンからこっちに移動する途中で皆から聞きました。火の山送りにされちゃった人間が居たって。でも竜人が誘拐した人たちにすぐに謝って返せば許すって言ったのに返そうとしなかったし、捕まるまで謝らなかったんですよね?」
「チョーコとか、ワイバーンに乗りたくて来てた人間たちはいい人ばかりだったのに……」
「うん……色んな人がいるのが人間なんだよね」
「私たちの中にも変な人とか悪い人もたまにはいますし、一緒ですけどね」
「すごく悪い人だとすぐ竜人に見つかって叱られるから悪いことしないだけです」
「あ、もう飲み終わっちゃった……」
「私も……」
お皿もコップも空なのを寂しそうに見て。
また遊びに来てもいいです?と2人で首をちょんと傾げる。
「ん、うん……家にいるかどうか分からないから先に聞いてからね?」
「さっきの建物、いつも荷物を買取ってくれるところと、魔獣の核を届けに行ったところのどっちかに聞いたらいいです?」
「あぁうんあそこに聞いたらいいけど、なるべく当日じゃなくて、明日行きたいとか前もって予告してくれると会いやすいかも!」
「「わかりました」」
「ルーとフィー、荷物届けてくれてありがとう。またダンジョン探すことがあったらよろしくね」
「チョーコの注文だったらまた頑張りますよ!」
「お礼はまた甘いお菓子と飲み物でいいです!」
ひらひらと手を振って、帰りはそのまま玄関から空へ舞い上がって去っていった2人。
お菓子を置いておくとお手伝いしてくれるって、妖精みたいだなと思いながら家の中に戻った。
――と、思ったのもつかの間。
玄関からぽてぽて2階へ上がろうとしたところで、んっ?とオクティが立ち止まって振り返り、ドアの外でコンコンとノックをする音が聞こえた。
「天人だがさっきの2人じゃないな」
メイドさん達が3人ドアの前に集まって開けると、また2人の天人がそこに居た。
今度は1人が女の子で、もうひとりは男の子。
「っあーもー!先越されちゃったようっ!チョーコのおうちに一番に行きたかったのにい!」
「あ、チョーコだっ!冒険者たち送ってたら先越されちゃった」
「荷物運びありがとう!えっと、とりあえず入って?」
玄関先で騒がれても困るのでまた食堂へ案内する。
「「おじゃましまーす」」
「お呼ばれされる前に来ちゃったけど、おみやげ!」
女の子の方はバナナを20本ほどバラバラと直接机の上に積み上げ。
「僕もー!」
こっちは袋に入れてくれてる、メロンが5個も入ってた。
「わ、たくさんありがとう!ちょっとおやつ用意するね」
青リンゴを一箱出すと、机の果物と共にメイドさん達が素早く回収していく。
「いーっぱいとってきたから渡すね!」
「ぼくも!」
ひとりずつじゃないと無理ではと思ったけど、さすが扱い慣れているようで、こちらが開けている入口に一気にまとめて流し込んでいってくれるが零れたりは一切してない。
あれ。魔獣の核とかハーピーの死体とかハーピーの卵とか全部混ざってるな?
そもそも2つのダンジョンの素材混ざっちゃってるから、後でもっかい商会組合に行って冒険者たちに見せてどっちのダンジョンのものか聞かなきゃいけない感じ?
そうこうしてる間に流し込みが終わって。ミナが運んできたカットした青リンゴと氷入りのオレンジサイダーが出されたのを2人が嬉しそうに文字通りパッサパッサと羽を伸ばしながら食べ始めた。
「ココアパウダーいっぱい取ってきてくれて嬉しい、ありがと!え……え?なんか、すごくない?!」
「えへへぇ、ぜーんぶ取ってきたよ!」
「僕もぜーんぶとったもん!つまみ食いだってしなかったよ!」
見える品物のリストが結構とんでもない。1つずつ出してどちらが持ってきたものかを教えて貰って分けていく。
まずはココアパウダーのダンジョン、こちらについて行ったのが女の子の方。
ココアパウダーは量がとんでもないけど、腐るものじゃないのでありがたい。
そして、ココアパウダーと色違いに見える、まっ白いのとややくすんだ薄いオレンジ色っぽいナス型で粉が詰まった実……
これが。白いのは『うどん粉(強力粉)』、もうひとつは『パスタ粉』だという。
水入れてこねて成形したら生麺になるらしい。
小麦粉は落ちものを育ててるけど、あれはどうやら薄力粉でそのまま捏ねてもうどんやパスタにはならないみたい。
パスタはオリーブオイルも塩コショウもニンニク玉ねぎトマト唐辛子とだいたい揃ってるからすっごい嬉しいんだけど。
しょうゆがない!
うどんに醤油がないのは流石にちょっとないというか、せっかくうどんとして食べるなら最初はちゃんとしたのが食べたい。でもうどん粉あったらドーナツとかパン、ピザだって作れちゃうもんね!
後でミナに見せよう。
このダンジョンにあった蔓は実がなくて切り口が黒ずんでて、見た目は綺麗じゃないけど一応全部取って来てくれたといっていっぱい入っていた。調べてみると『コーヒー』らしい。シナモンみたいに粉砕して煎るとお湯に溶かして飲めるという、つまりインスタントコーヒーが出来るわけね?!
そしてそこの最深部にあったのは、けっこう大振りな真っ赤な桃、と思ったらガッツリ酒の実だった。
あっ、桃のリキュール、すっごい甘くていい香りがしてアルコール感もきつくなさそう。これは多分気付いたら既にめちゃくちゃ酔ってる危ないやつだ。
そして同じ桃系だけど丸々とした白桃!こっちは男の子がついて行った方の蔓になっていたらしい。
そこのダンジョンはめちゃくちゃ大量のハーピーが巣を作ってて、可哀想だったけど頑張って全部取ってきたと。
そ、そうか……天人さん達ハーピーを殲滅する気がないから新しい果物を探さないでいるって言ってたもんね。
おかげで白桃こんなに取れたんだもんね、2人に一箱ずつあげよう。
ぱぁっと顔を輝かせて受け取ってくれた。
他には『アロエ』、『細ネギ』それから『髪艶草』文字通りこの草の汁を髪に馴染ませてマッサージすると魔力が表面に補充されてリザレクション直後みたいな艶が出るらしい。
最後に。最深部にあった小玉スイカみたいな形の緑の実は『レジアナ草』という、毒ではないけど食べられない石のように固い実だった。これもやっぱり不死族が作れるけど、やっぱり魔力が必要で育てにくいものらしい。
この実から抽出したり加工することで、マニキュアや、アルコールで拭かないと落ちない口紅とかアイシャドウが作れる原料になるらしい。
ただ作り方を調べてみたけど、保湿や保存のための薬品加工や染料で色付けたりなんかけっこう色々手間がかかるみたいなので……特に化粧品として使うものなら素人がやると怖いし不死族にお任せしたいな?
不死族は火は使わないけど、赤と緑の染料は地上の人間に煮溶かして貰えばいいから、殻も持ってってあげてお願いしちゃおう。
んー髪艶……天人さんたちはむしろ発光してるから使わないな。お化粧も必要ないし、アロエとかネギはそのまま齧るもんでもないしあまり欲しがってないから別のもの。
酒の実分けようかと思ったけど、なんとなく、いや本当になんとなく。さっきの2人よりもっと幼そうなので止めておいた。
代わりにさっき手に入れた青リンゴと人参を1箱ずつあげる。
ハーピーは軍部のワイバーンに時々餌付けをするのに使うとして、卵は新鮮なのだけ残してと思ったら、30個ほどある卵全部、新しいものだけ集めてこれだったみたい。
むしろそれ、ハーピーでダンジョンブレイク起こす寸前だったんじゃない……?
一通り見終わって、天人のふたりにお礼を言う。ちなみに女の子はミィで男の子はククルという名前だそう。
――2人を見送ってようやく落ち着いた。と思ったけど、まだ終われない。
「今の2人、魔獣の核も全部こっちに持ってきちゃってたから、冒険者たちに渡しに行かなきゃ、どこにいるかなぁ」
「採取の依頼受けて帰ったなら一旦冒険者組合かな?」
「冒険者組合ならテレポート出来るから、ちょっと2人で行ってくるね」
メイドさんに声を掛けてからオクティの手を取って、冒険者組合の裏の倉庫へ飛び、コソッと外から回って受付へ向かう。
「はい!どうなさいましたか?」
「えっと……」
「すまない、さっき魔獣の核を受け取った2チームの他に、別の2チームも今日ダンジョンの採取依頼から戻ったはずなんだが、どこに行ったか知らないか?」
と言っていたら、すぐ後ろからバッと顔を上げてこっちへ寄ってくる人影がある。
「あっ、あの依頼ってお前たちからだったのか?受けたのは俺たちと、あいつらなんだけど。ガイドしてくれた天人たちがここまで送ってすぐ飛んでどこかに行っちまって、採取依頼なのに報告出来なくて困ってたんだ」
「あっ、やっぱりそんな感じだったんだ……」
「取れるものの量が凄いことになるだろうから、直接家で受け取るって話はしてたんだけどな。完了報告も説明も無しで置いていかれたのか、中々きついな。とりあえず2チーム分の報酬として魔獣の核を渡す予定なんだが、すまん。混ざってるから同量にさせて貰っていいか」
「おう、山分けで問題ないぜ。ありがとよ!」
裏でまた大箱にどさどさと核を積み上げ、山分けにして貰う。
「えーと、なんか大変だったみたいですし、取ってきた作物の中で気になってて欲しかったものあります?」
やっぱり桃と酒の実があがったので、2チームのメンバー全員にセットで3個ずつ両方配った。他のアイテムは特に興味を引かれなかったし使い道も聞かなくていいと言うのでそのまま解散。
見送られて外に出て、商会組合の方を見る。
終わったと思ったら次、また次、と何度も繰り返して流石にちょっと疲れちゃったな。
「んー」
「作物の詳細説明、べつに今日全部やらなくっても良いんじゃないか?そろそろ疲れて面倒になってきてるだろ。帰って休もうよ」
「……そうだね。せっかく石鹸手に入ったし、のんびりお風呂入って休もうか!」
ふふっと笑って手を繋ぎながら路地裏に隠れて、玄関に直接飛んだ。
「さーて、家で使う分を整理しなきゃね」
ミナを呼んで、さっき青リンゴは渡したから、ココアパウダーとうどん粉とパスタ粉とコーヒーは樽いっぱい、人参と大根と細ネギ、アロエもゼリーとかに使ったりしてた気がするからちょっとだけ試しに、桃と酒の実は使う分だけ、あとハーピーの卵も3つだけ出す。
そこで手を止めたら、ミナ以外のメイドさんたちが全員後ろで待機していた。
「石鹸と録音石と髪艶草を……!!」
まず石鹸1箱は自宅用として出す。
「石鹸は分かるけど、録音石と髪艶草も……?」
「美容の探求と!それから録音石の方は施設と本家にちょっと声を掛けて使い方を研究しようかと思っていますの」
「オクティは何か使う予定ある?石鹸と髪艶草は商店街の美容系のお店で使ってもらおうと思うから家で使う分くらいしか出せないけど、録音石は正直使い道が全く思いつかないから、使うなら渡しちゃおうかなって」
「うーん……俺は使わないかな。使い道っていっても、組合で言われたようなお祝いの言葉を届けるような使い方か、置き手紙か、誰かに伝言を頼んだりする代わりにこれにメッセージ入れて渡すとかそういう使い方しか思いつかない。使い捨てで誰かに盗み聞きされる心配がないのはいいけど、手紙みたいに残したくても残せないからなぁ」
「そうそこです。手紙だと覗き見て元通りに封をされてしまう危険がありますが、これはその心配がないので諜報活動などでは使い道があるかもしれないと思いまして」
「手紙のように読んだ後に文字が残ったりもしませんからね」
「まぁ、使い道ないまま持ってても仕方がないし、預けて好きに調べて貰えば良いんじゃないか?」
「じゃあメイドさんたちが使っていいよ。……全部出すと10箱くらいになりそうだから、とりあえず1箱まず渡して、無くなったら言ってくれたら渡すね」
「「「ありがとうございますっ!」」」




