67.あ、やっぱり作れちゃうんだ?
不死族に具体的にどうすると話を持っていく時に使う、全体的な企画書を作りたいと言って5人の前に大きい紙を組合長が広げて見せたところで。ロイドさんが、部屋の隅の手荷物を置くところからなにやら大きい紙を巻いたものと紙束を一つ持ってきた。
「一応、どういう仕事を任されるのだろうかと大体の予想を纏めていたんですけど……」
不死族に打ちあわせ飲み会をしに行った時にみた地図を書き写したと思われる、手書きの地図の上に、色々自由に書き込んだもの、のようだった。
帝国からの徒歩や獣人車で来る場合の街道予測、そして凍土部分の復興が進んだら向こうへ突き抜けるように敷かれる道の予想、畑などの区分は一つのチームで世話が出来るサイズに区切られ、そこを維持できる人数が居住できる家どうしがなるべく近くに固まるようにした村のような形で規則的に配置され。複数の集落どうしを繋ぐ運搬路が効率よく街道沿いに荷物を集められるように描かれている。
もう一つの巻物を開くと、ほぼ現代の地下プロムナードの見取り図のような。長い通路の周囲複数に地上への出入りを示す記号。
お客さんが出入りする出入り口のトンネルだけではなく、地上の地図の荷物集積場に繋がるように途中で何ヶ所か地上へ出入りできるようになっており、店の裏手に当たる部分に従業員通路のようなものが示されていたり。
そして今後凍土が復興していくにつれて奥へ拡張していくように計画されているのも分かる。
左右に大きい獣人車が余裕で通れる行きの道と帰りの道がそれぞれ敷かれ、その外側に向かって壁を掘って各店舗を作っていくスタイル。
もちろん車止め用の空間も数店舗おきに用意。
店の前に歩道があり、徒歩で歩く場合はそこを通るようだ。
時々車が余裕ですれ違えるほど広いUターン用の通路が掘られていて、引き返したかったり戻り過ぎたときは隣の道へ曲がるようになっている。
そして、中央部分のUターン通路以外の部分は、ジューススタンドのような小さい区画で済む店を揃えていく予定らしい。
こちらも歩道がついていて、イメージ的に徒歩で奥まで行かない平民は入り口付近のひとつかふたつの島にあるスタンドだけを歩いて回って帰る感じみたい。
手前の方は本当にちょっと立ち寄って食事を取りたい人、平民でも頑張れば入れるレストラン、荷物にならない程度の簡単な小物やアクセサリー、ちょっとしたお土産に使えるお菓子、そこに追加で書き足して平民が着るような簡単な服を扱う店、貴族向けは服の注文販売を受け付ける店など、ぶらぶら歩いて帰るだけの目的の店がまとめられる。
徒歩でいくのは難しいくらい奥へ進んだ辺りから、店舗に宿泊施設が追加され、中央の島部分も殆どが車止めや獣人を休ませる厩舎に切り替わった。
そこからは完全に観光地というか、リゾートホテルの設備というか、軽食ではなくちゃんとしたレストラン、マッサージ店や髪結い、ブティック、宝石店、白砂糖茶屋。ちゃんとした家具などの注文販売まで。正になんでもありで書き込まれていく。
特に白砂糖茶屋とホテルは併設して、かなり多めに用意されている。
「不死族側は宿泊客の夢に出ることを不死族の要望と捉えているようですが、こちらの宿泊施設では客側の注文として追加料金を払って夢に出て貰う形式を取ります。勿論料金を取る以上、中毒の危険があるような行為は行わないと保証し、安全に楽しんで頂けると説明しますし。逆に夢で見たサキュバス種を現実で見つけたからと言って付きまとい等を行うことは禁止です。
……白砂糖茶屋の給仕に酔って触れる行為も禁止というのが僕の考えですが、種族的に不死族は接触を特に歓迎するのでしょうか?」
「えぇとね――吸うんじゃないなら触るのも隣に座るのも一緒みたいだから、おさわり禁止で大丈夫だと思うよ。夢に出て欲しいって頼むくらいまで、かな?」
「夢に出て欲しい個体を指定したい場合、当人の許可を得たうえで指名料を追加して頂きましょうか」
カリカリっと追加でメモを書き込んで。
では次は――と、もう、面接の時のおとなしそうな様子は偽物だったんじゃないかと思うくらいスラスラと見事なプレゼンをしてくれるロイドさんは、確かに組合長が『仕事は出来るんだ』と言っていただけあると思う。
そんな説明をしていった最後の方、地図でもかなり奥のところに、急にドドンと広めのスペースを取られているのが病院と薬屋だった。
「不死族の特技が病人の治療と薬草の栽培ということですが、必要な広さであるとかそういった部分が全くの未知数でしたから、今後開拓予定の土地に一番近い、ここから幾らでも拡張できる部分を広めに確保しました」
「あぁ……うん、そうだね。病院や薬草の育成はなるべく静かで邪魔の入らない所が良いと思うから、ちょっと離れて奥の方にあるのは良いと思う」
「現状、使えると判断されている土地で企画できる構造を纏めるとこのような形になりました。予定では手前の方から分割して進めていき、まず基本の食糧や物資の流通が安定してから、本格的な宿泊などの運営に手を付けていきます。ただ、地下道の掘削は不死族が得意としているようですので、先に運営したい設備があれば、そこは優先的に場所を用意して頂いて早めに開店にこぎつけるようにしましょう
なお、各店舗のおおよその必要人員や設備等の例がこちらの資料にあります」
帝国内の店舗の経費などが載っている書類から、似たような規模の店をピックアップしてもってきたらしい、その紙の束はマイクとリック兄弟が借りて目を通し、軽く話し合い。
「帝国内に用意して貰う予定の流通用倉庫ですが、分地の候補の中で一番広い所でお願いします」
と声を揃えた。
「――あ。雇う不死族の人たちに対しての特別ボーナスっていうか、ちょっと特別なお酒を用意していて、それを頑張った人に支給するような賞与の仕組みがあったら考えて欲しいです」
バロックさんがふむ、と腕を組む。
「もっと商店街がしっかり出来上がってそれぞれの働きを評価する基準が見えてきたらしっかりルール化すべきだと思うんだが。それまでは、定期的に働いている不死族だけを集めて、その場で人数の一割くらいを皆に推薦して貰って配るのはどうだろう?」
スザンナも同意を込めて頷く。
「それを何度かやれば、推薦理由、推薦される回数、受け取った特別な賞与をどう使うかである程度中心的な人たちの性質も把握できると思うわ」
定期的。と考えて……そういえば、私は結構するっと一週間くらいとか一ヶ月とか使ってるし、サラの結婚宣言が来月とかって話もあったけど、カレンダーってどうなってるんだろう。
ーーこの世界は太陽暦じゃなくて月の暦を使っていて、新月を基準に4週間28日周期が1月、4月で一期、16月448日が一年らしい。向こうの364日で32歳はこっちだと26歳、あっ30越えてなかった――
てことは平民は50くらいっていうのも向こうでいう65くらいだから、意外とそこまで短命ではないかも。
「チョーコさん?……オーナー?」
ハッと我に返ると、バロックさんがちょっと心配そうに返事を待っていた。
「あっ!ごめんちょっと考え事してて。一週ごとだと多すぎるしやっぱり一月ごとくらいがいいかな?」
「いやー、商店街が軌道に乗るまでは、なるべく全体のチームワークを育てるためにも毎週顔見て集まる機会は作った方が良いんじゃないかと。普通の純アルコールを配って飲む集まりを毎週やって、仕事中の問題点とかそういう話もこまめに聞き出して。月一で特別な賞与を渡すってのはどうです?」
「……不死族の人たちは料理が無くても気にしないから、人数増えてもアルコール配るだけなら結構なんとかなりそうかも。全員集まれる広さって考えると、夜中に地上に出るか、最下層の通路か、薬草園と病院を早めに掘り抜いて貰ってそこに集る感じかな」
組合長がニコニコしながら、資料を眺める。
「これだけの資料があればすぐにでも説明は出来そうだ。現地の不死族との打ち合わせを兼ねて、碑文持って誓いに行くタイミングは嬢ちゃんに任せるつもりだが、どうする?」
「――なるべく早めに全体の話はした方が良いと思うので、このままロイドさんとバロックさんとスザンナさんだけ来て貰って良いですか?」
「「僕たちはいいんですか?」」
「おふたりに直接保護区まで荷物を抱えて通ってもらうわけではないですし。一旦碑文に誓ったら不死族だけじゃなくて今後の天人さんや魚人さんとか別の人族とのやり取りも全部ひっかかるので、卸売業の人たちが誓うとあちこち取引する上で大変だと思うんです。
確定で誓うのは直接不死族と肩を並べて仕事をする人だけにしておいて、何かのトラブルが起きたら改めて誓ってもらうということでお願いします」
組合長も頷く。
「そうだな。『制約』みたいなもんが無くても、ちゃんと話せば信用と取引は成り立つんだ。誓いをする人数を商店街のトップ数人に絞るのは良いと思うぞ」
何でもかんでも誓わせてしまえば問題なしってわけじゃないんだな、とあの事件のおかげで考えさせられたし、まずはこれでやってみてもらおう。
***
数日振りに凍土行きの転送盤を使ってみたら。プレハブ……とは違うか、竹を編んだ軽い板を壁に、柱と屋根を木材でふいた戸建てがズラーっと10軒、それが何列も、まだ建築中のところもあるが相当数建てられる予定らしい。
ロイドさんが地上の地図を見せて、地下トンネルの入り口付近になる予定の脇にある四角く囲まれている部分がこの住宅地の区画に当たると説明してくれる。
トンネル入り口予定地と街道はどう通る予定、と説明しながらロイドさんも地図と周辺の土地の様子を見比べて、差異がないかを確認。
なにやら、その住宅地のすぐ近くから、地下に向かってぐるりと回りながら深く続いている2人くらいギリギリ歩けるくらいの地下通路が出来ているのを見つけて覗いていると、住宅地の方からちょっと見覚えのある金髪に緑ローブの女性が顔を覗かせた。
「あら皆さん。そこはこちらから不死族の皆さんとお会いしたい時に地下通路を訪れるために掘って頂いたもので、そこから地下の個室付近へ出られますよ」
「えぇと、ここに人を呼べるような大きな商店街を作りたいって企画をしていて、不死族の人たちに色々手伝ってもらいたくてお話に来たんですけど。今って降りていっても大丈夫だと思いますか?」
「ご案内しますね」
ランタン代わりに青白い石の玉を持って彼女が先を歩き、後ろを付いてずっと下へ降りていく。下の通路まではそれなりに時間はかかったものの、地下通路に出てみるとすっかり床や壁が簡単な板張りになった明るい個室が何個か見え、木のベッドに白いフカフカしたものまで敷かれてなかなか快適そうな部屋になってそうに見える。
気配に気づいたサキュバスの女の子たち4人と、ヴァンパイアの男性1人がこっちに近寄ってきた。
「あぁルシー、来てくれたのか。一緒に居るのはチョーコ殿とオクトエイド殿と従者に、初見の人間たち?……ここへは誓いをしていない人間は近付かないという話ではなかったか?」
「私がここに人を呼べるような大きなお店を作ってみたいと言ったら、協力してくれるという人が集まってきてくれているんです。こちらの3人はその協力してくれる人間の代表として、不死族の人たちにも直接会ってから誓いを立てて貰って、今後の計画の話をしたいと思って連れて来たんです」
「ほう。なるほど……チョーコ殿に協力してこの地に店を。我はリシャール、現在ここに集まっている不死族達の取りまとめをしている者だ。碑文に誓って貰えるのなら、勿論話は聞かせて貰いたい」
「あ、こちらの商会用にも碑文は用意してきてるので、これに皆で誓いをお願いします」
碑文の板を出して、全員にそれぞれ石を触ってちゃんと読んで貰った。
顔を見てると、これに誓ったら後戻りは出来ないんだな、とわずかに怖気を覚えたが。
リシャールの顔や、周囲のちょっとだけ不安そうなサキュバスたちの顔を見てから、襲ってくるような危険な存在じゃないというのは本当みたいだなとか、想像していたより可愛いなとか、優しそうかもとか、色々な考えが頭を巡った後。信じて良いか、と結論付けたのが分かる。
3人が誓いを終えると、リシャールさんの部屋だと思う個室の方へ案内され、新しく増えた木の机を真ん中に置いて貰って早速ロイドさんがコンヴィニ商会の不死族保護区商店街についてのプレゼンを始めた。
部屋の中にはリシャールさんだけだけど、入り口の外にはわらわらとサキュバス達が集まってきて話を聞いており、説明しているうちにだんだんと外がキャッキャと騒がしくなってきた。
「外の者たち、意見を言うのは彼の話が終わってからにせよ!」
リシャールの一喝にピタッと黙ったので、再び続きが促される。
病院と薬草園を兼ねた薬屋のところと、定期的に不死族を全員集めて飲み会をしつつ、賞与として頑張った人には良いお酒が出るという集まりにも使いたいという話が聞こえると、また外から歓声が聞こえてリシャールが黙らせた。
給与の希望について確認してみると。木からアルコールを作るのはかなり楽に作れることが分かったので、植林場さえ稼働すれば逆に純アルコールは輸出できるほど作れるし別途支給はしなくていい。
必要なのはとにかく魔獣の核。そして現金に関してだが、服と宝石と家具、特に美術品のような美しいものが凄く好きなので、給与を貯めてあれこれ買えるようにしてほしい――など。
商会で各地から集める品物の中に美術品を追加して、社員割引で買えるように値段設定をするとかロイドさんとスザンナさんがメモをガリガリ書いていた。
一通り話した後。説明が一段落したようだからもう喋ってもいいよね!という勢いで外から質問が飛んできた。
アルコールは作れるけれど。さっきチョーコが言っていた美味しいお酒って何?!
人間やお客さんとお酒を一緒に飲んで仲良くなって、夢に出てきて欲しいって言われたらお小遣いまで貰えるってこと?!
お酒だけじゃなくて、普通の食べ物や洋服の店員もやりたい!
マッサージ屋さんやりたい!
添い寝屋さんやりたい!
肌のお手入れやりたい!
お花屋さんやりたい!
かわいい服着てみたい!
わいのわいのと外の大人数が一気に喋りだすと。バロックがあーちょっといいか、と仕切って順番に意見を聞き取り、ロイドさんとスザンナが一心不乱にメモを取った上で答えられる質問には次々と答えていく。
美容品や花といった薬用効果が多少なりともある物は全て、人間に使って良いかどうかのテストが必要なので、許可を取る必要があること。それをクリアしたものなら使ったり売ったりして良いし、職種は自由に選んで貰う。
勧誘行為はその気がない人にしつこくしない。強引すぎると判断されたら厳重注意、あまり何度も注意されたら給料減らしたりなどの罰則もあり得る。など。
最後に美味しいお酒についてはチョーコさんに直接説明をお願いします。とサラっと振られたので。
ちょっと魔力が強いからと――オクティとメイドさんに頼んで不死族以外は離れて貰ってから、小分けにした小さい方の水差しとゴブレットを一つ出して注いで見せたらザワッとした。
今日はヴァンパイアがリシャールさん1人で、サキュバスが15人いるのでだいぶメンバーが入れ替わっているけど。1杯分を4人で分けて味見して良いと声を掛けて、4つに注ぎ分けて配ったら皆で分け合いちびちびと味見をしてゴブレットを返したあと。妙にそわそわした顔になる。
強いお酒ではあるけど、100ミリくらいの小さいカップを4人で分けたから飲み足りないんだろう。
『4分の1じゃなくてせめて半分っ!』と言いたい気持ちがとても伝わってくる。
「……これは何をしたらどのくらい貰えるんだね?」
「たまのご褒美みたいな、商会に協力して働いてくれてる不死族に配るつもりで用意してるので、あまりちゃんと何をやったらとかは決まってないんですが。平等に定期的に配るか、何か頑張った人にまとめて渡してどう飲むかはその人に任せる感じにするかちょっと悩んでるんですよね。今は人数が少ないからいいですけど、人が増えてきたら誰が頑張ってるとかあまりちゃんとは分からないですし……」
話した結果、新月の夜に平等に皆でグラス半分ずつ(1瓶あたり8人)配る。
誓いをせずに侵入してきたり、前回の新月から数えて仕事をした日が半月に達していないもの。厳重注意を3回受けてしまったらその月は飲ませない。
人間には毒であるため、商店街で薬草園から持ち出すのは厳禁。
ということに話が決まった。
毎月チョーコが直接来て人数数えて配ってくれてもいいけど、大変だったりするなら、信用して貰えればだが、纏めて預けておいてくれてもいいと。
商店街へ最終的にどのくらいの人数が参加するか定まってきたら、何月分かまとめて預けてもいいかもしれない。
お酒の匂いが薄れたので皆を呼び戻し、決まったことを伝えると。
ロイドさんとスザンナさんがリシャールさんと出勤のチェックをする方法をすり合わせたり細かいことを話し始めた。
警備関連、病院、薬草園、薬屋、花屋は不死族だけでやるが、それ以外の職種は人間と一緒に運営したいし、早く建築まで進められるように頑張るという。
なお、サキュバスさんがやると言った添い寝屋さんは徒歩圏内の奥の方で、ちょっとした休憩ができるお店らしい。
デートでお店の前を通ったら気まずくなりそうだけどいいのかな、
不死族の人たちには、今月は新月の日までの出勤日数が少なくても参加してくれていれば、お酒はカップ半分ずつ全員に配るので、トンネルの掘削作業をお願いしますねというと。早速完成予想図を見ながら話し合い始め。
本国の方にも声を掛けて人手を集めてくるらしい。
2千全部で来られたとしても大きい瓶50本と小さい瓶50本で全員にいきわたるから大丈夫!
はい、何人来てもちゃんと月末の特別なお酒は全員分用意します!と約束して。
まず大まかにアタリを付けて掘ってみて、実際に通路の幅や天井の高さなどの様子を見ながら調整をして、ちゃんとした通路として使えるように仕上げるらしいのだが。
「一週間ほど時間を貰えるか」
――ん?
ロイドたちも皆、なにに?という顔をして首を傾げるが。ロイドさんはすぐにフリーズから復帰した。
「どこまでの作業で一週間ですか?」
「ざっとこの図の範囲を全体的に掘って広さや奥行きを見てみるまでだな」
また、魔人族の陸橋作りみたいなノリでリシャールさんが軽く言う。
「わ、わかりました。楽しみにしてますね!」
とりあえずチョーコがそう言って。
特別なお酒を手伝ってくれた人全員に飲ませるという約束だし。ここに居ない人も呼ぶのならちょっと見せてみた方がきっと話が早いと思うので。人を呼ぶ時に実物見せたいなら、持って行きますか?と聞くと、先程くらいの試し飲みでも、20本は無いと足りないからな、と迷った顔をされる。
ちゃんと全員に配れるくらい用意できると信用されないのも困るし、試し飲みくらいはしてもらおうか。
大きい豪華な水差しの角瓶に詰めたのを5本出して机に並べる。
これでさっきの20本分です。とゴブレットとグラスも4個ずつ並べて持って行って貰うことにした。
リシャールさんはおぉぉと感動した様子で声を上げた後、じっと水差しを見る。
「この水差しやグラスは言わずもがな。先程のシンプルなものも……美しい。素晴らしいな、正に芸術品のような仕上がりだ。我々にもこの入れ物の入手は可能か?」
「はい、買ってきますよ?何個くらい欲しいんです?」
「この品ならばおそらく全員、個人でアルコールを所持したり飲むのに使いたがるだろう。現状使っているものもあるから、今すぐに買い換えなくともよいのだが。給与などを貯めて順次買ってゆくだろうし、本国にも送りたい。沢山仕入れておいて欲しいのだ」
「分かりました。すぐじゃなくていいなら沢山仕入れておきますね。そしたら、余剰分の売って良いアルコールがあったら買い取りもするので、用意しておいてください」
アルコールで入手できる分は物々交換で商会の倉庫に入れることにして。社員割引でなるべく安く買えるように、ロイドさんに決めておいてもらおうかな。
***
ルシーと呼ばれていた金髪の魔法使いの彼女を居住区へ送り届け、こちらは一旦皆で商会組合まで戻る。
「えっと、皆さんちゃんと誓いを終えて、計画のことを説明したら。かなり乗り気で地下道の掘削の為に仲間を呼んで掘ってくれるということなので、一週間後くらいに経過を見て、微調整の打ち合わせをまたする予定です」
組合長にそう伝えると、ロイドさんがちょっとだけ狐に摘ままれたような顔になりつつ。
「組合長。不死族の口ぶりから、今月の新月までには地下道を仕上げるつもりのようです。早速幾つか興味のある店の建築を優先して店をやってみたいようなので……少々色々と計画を繰り上げる必要がありそうですよ」
「んな?!……いや、お前がそんな冗談を言うはずがねーな。あー、よし、分かった」
「僕は修正案を作ってきますので……いつもの席を借りますね」
スタスタと出ていくロイドを見て、スザンナはバロックと共に組合長に詳しい状況説明をしておこうと声をかけ。
組合長の方がチョーコの方に振り返る。
「嬢ちゃんたち、お疲れ!いやー、やっぱり予想道りなんにもひっかからずに話が通ったみたいだなぁ。流石だぜ!あとはこっちでやっとくから、話が進んだらまたこっちから連絡――」
コンコン!と強いノックがあり、外から声がかかった。
――素材収拾に向かっていた1番と3番のチームと、それに付き添っていた天人が帰還しました!チョーコ様に目通り願いたいそうです。
お願いしてたニガブドウは、1番チームって言ってるところかな?それは話を聞いてみよう!




