表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/89

66.顔合わせ

……変装用ローブと、オレンジジャムはサービスで2つを届けて欲しいとメイドさんに預けたら。もう全部、チョーコが出来ることもやるべき事も終わったと思うんだけど、落ち着かなくてそわそわしてしまう。


考えてみればちゃんと罪人が捕まって処断されるような状況って、初めて遭遇したよね。

執行者が竜人さんになってしまった以上は、もう曖昧に流して終わりってことは無いだろう……


あの時家へ帰らず、メイジア国に行けない事にすぐ気付けていたら?

せめて天人さんたちが竜人さんに話を持っていく前に救出に向かっていたら?


色んな考えがぐるぐる頭を回ってしまって止められない。

もちろん誘拐も、技術の強奪も良くないことだけど。

それは、分かってるけど……


「チョーコ。ここしばらく友達と会ってて俺とあんまり一緒に居られなかっただろ?せっかくやること終わったんだし、そろそろ俺のことも構ってくれないか?」

そういってオクティが抱きしめて来るのは、流石にわざと甘えてるなってわかる。でも素直に嬉しい気持ちはあるし、オクティを抱き返しつつギュッと肩に顔を埋めて目を閉じた。


***


ちょっと出かける気にもならなくて、続けて色んな人に会いまくった反動もあって、次の日は丸々一日オクティと寝室に引き篭らせて貰った。


メイドさん達は口を揃えて『今回の件は他人族に対し危害を加えたことが、どのような結果になるかの見せしめの意味もあるので、必要なことでした』と言い聞かせてくれたので、なんとか自分を納得させ。

オクティからも『俺だってチョーコが攫われたら誘拐犯は絶対ただじゃ済まさないし、無傷ならまだしも気絶するほど強く殴られたんだろ?火の大陸送りくらい妥当な報復だと考えていいと思うけどな』と言われ、確かに実際暴力を振るわれたわけだから、他の天人さん達の総意でもあったんだと、一日かけてようやく腑に落ちる。


ーー次の日からは普通に起きて、朝ごはんから食堂に行って話を聞いたところ。

最終的に実刑までいったのは指定されていたメイジア国の王弟と誘拐の実行犯2人だけで済んだ。


一族郎党纏めて大量処刑みたいにならなくて……ホッとした。


ただ、他の関係者は勿論、双方の王族全員、こちらからも皇帝と皇妹。そして双方の国の中で刑の見学を希望するものがいるなら許可すると周知して。

天人へ危害を加えようとしたものへの刑として公開したそうだ。


ワイバーン部隊と天人数名の協力の下、魔人族の交易場へ纏めて移動が行われ、二百名越えの人々が見守る中で3名は炎人さんから炎で出来た首枷のようなものを付けられ、あの門の向こうへ連行されていったという。


人々は天人達の輸送に使った魔法の威力や魔人族の交易場と炎人の迫力に圧倒されていたし、他人族からの報復の恐ろしさについての周知は十二分に出来たと思われた。

ただ、向こうの第一王子を除いた王族達全員とこちらの皇帝と皇妹。

帝国側はその2人だけだったがメイジア国の方は更に重役や関係者の一部も。炎人との対面が始まってしばらくの間に次々と、急にやたらと怯えた状態というか恐怖のあまり錯乱状態に陥りかける事態が連続して発生。


全力で逃げようとするので錯乱した者たちは全員拘束して先に連れ帰って宥めて話を聞いた結果、炎人に敵意というか、いつかこいつらも何とか思い知らせて言うことを聞かせてやるといった攻撃的な思いを抱いた瞬間に怖くなったらしいと分かった。


「あ。炎人さんがっていうか魔人族は『威圧』を持ってるんだって……」


相手に敵意がなければ発動しないものだから気付かなかった。というか……あの炎人さんたちを見て支配や報復や思い知らせるとか敵対的な考えを持てる人なんているんだ?

驚くを通り越して逆に凄い。

皇帝も皇妹も、他の人族を尊重しまず暴力ではなく言葉でって制約はかけたけど。根底の考え方が変わったわけでもないし、いつか必ずって野望はそのままあったのか……


「ハッキリとした恐怖は炎人に対してだけに現れるものの。『天人族などの後ろにはあのようなものが付いている』という考えに囚われ、表舞台に出てうっかり他人族と衝突することをひどく警戒するようになりまして。急遽、メイジア国はまだ12歳の第一王子を表舞台の外交担当者として立たせることに決め、帝国側も魚人族以外の他種族は城に入れるな外にも出ないというので、ただいま外交官の人選を行っております」


「なんか大変なことになってるんだね。炎人さんの威圧の効果がどう出るのかは知らないけど、ワイバーンたちの様子を見てると思ったより影響は長く続くっぽいし……」

「幸いにも我が国は、チョーコ様が炎人に話を通して人間の国同士の同盟の為に誓いの碑文を用意して貰うことが可能だと先に伺っておりましたので。国家間の契約においての文言を吟味して提出し、制作して頂いた碑文を持って皇族の代わりに外交官が国交を行う方向で落ち着く見込みですよ」


「あ、先に言っておいてよかった……!皇妹がなんか言ってたし、本当にオクティを皇太子に推して表舞台に立たせようとか言われるところだったかもしれないよね」

「碑文の存在がなければですね。……ただ、黒髪の場合はお世継ぎ問題がありますので、なるべく避けたいところではございましたが」


「そっか、やっぱり皇太子を狙ってみないかは皇妹の暴走で出てきただけの無理な提案だったんだ?」

「いえ、黒髪でさえなければ実際に皇太子の最有力候補です。側妃や愛妾が生んだ場合であっても、確実に皇族の血を引いていると証明できれば平等に候補者となる権利を持ちますし、全ての素養の中でも魔力の高さはかなり重視されますもの。

そして今の皇帝には正式な皇妃がおりませんし、手あたり次d、失礼しました……全く正式な手続きを踏まずにお手を付けられるため記録を残すことが出来ず、出自を認められない庶子ばかり。記録を取って魔塔の実験体として産ませた子が男子でしたが、比較的初期に魔力の反発からの事故で亡くなって断絶、正式に実子として認められるのは今回の愛妾の妊娠が初めてなのですから」


「皇帝の実子がいない上に皇妹の血筋だとちゃんと証明出来てて正統性があるってことかぁ」

「はい。現皇族2人の子孫として正式に証明出来るのは現状アロニアロ様とオクトエイド様だけ、男性のオクトエイド様が最有力候補ですわ。先代の皇族の血を引き、現皇族を選ぶ際の選に漏れた方々はいらっしゃいますが。本来は皇子皇女として生まれた子供たちは皇族()()として育てられ、現行の皇族が退くタイミングが近付くと2人から3人が選ばれて次期皇族として制約の教育が行われ。皇族の中で年長の男子が次期皇帝として立太子。皇族に選ばれないと決まった時点で候補者は貴族として降嫁致します。再びその中から選び直して皇族に戻した前例はありません。……ですが今回もし碑文のことがなければ、それも検討されていたでしょうね」


「色々複雑なんだね。――うん、碑文のこと、先に話しておいてよかった。文章決まって渡して貰ったら早めに作るね?」

「チョーコ様は仕事が早くて大変やりやすいと宰相家の当主様もお喜びですよ。――それと、コンヴィニ商会の商会長候補1名、副会長候補4名、卸売部門の部長と副部長につく予定のご兄弟が面接を受けたいとお待ちですので、午後にでもお話をされてみますか?」


「うん会ってみようかな。あっ。コンヴィニ商会って名前に決まったんだ?」

「まだ変更可能です。通常は商会長の名前や家名を使いますが。家名は既に親族の方で使われておりますし、おそらくチョーコ様もオクトエイド様もご自身のお名前は使いたがらないだろうと組合長と当主様が考えていたところに、マリアンヌ様とリリアンヌ様から、チョーコ様がコンヴィニ商店という、いつでも開いていて何でもそろうお店をやりたいとお茶会で聞いたというお話が伝わりました。変更されますか?」


「特に名前は決めていなくてどうしたらいいか分からなかったし、どこかと被ってたり、問題もなさそうならそのままお願い」

「ではそのまま進めさせて頂きます。なお、凍土付近の土地に住み込む建築や農耕関連の人員不足に関してですが。誘拐事件は帝国に対する反逆行為とみなし、竜人に指名された3名以外の、第一王子を含む関係者全員の助命嘆願を受け入れる代わりに、メイジア国民から()()()()労働に限定して、妻子親族などの家族も含めて数えて良いが2万人以上、労働者を供出する条件を飲ませましたので。地上における人間用の住居関連設備の建築、広範囲の魔獣の核の散布作業や農業などはかなり効率的に進められる見込みですわ」


「え、2万……そんなに人を出すの了承したんだ。地上に限定したのは?」

「これはあくまで純粋に()()()()()()であって、()()()()()()()()()()()ということを強調するためです。外からの通いの労働者用と定められた、不死族が地上に介入しない地区のみで活動が許可されます。

そしてこちらは説明はしておりませんが、特に凍土周辺の作業は初期ほど厳しい労働環境になりますから。強制労働から不死族を逆恨みしないとも限りません。彼らとは完全に住処を分けておくべきと判断しました。

不死族への信頼を構築出来たと判断出来たものに限り、碑文に誓って定住地区への移動と地下への出入りが許可されることになっておりますわ」


「最初から全員に誓いをさせないのはどうして?」

「今回の事件により、おそらく制約のように思考を強制するものは、本来の考え方を書き換える効力はなく、表面上従っているように見えても潜在的な攻撃性が完全に失われるものではないと予想されたからですわ。

自ら志願してコンヴィニ商会へ所属する者が誓いも重ねて行えばほぼ危険はないと判断しますが。他国からの強制労働者を直接誓いのみで縛ることは事故の元と推測されます」


確かにそうかも、と思いながらオクティを振り返ると、彼も頷く。


「もしあの誓いの碑文を破れば、火の大陸送りと同じ炎人の呪いの首輪が発動して魔力が使えなくなる。無理に誓わせるのは初犯の犯罪者以外やめておいた方がお互いの為にもなるな」

「不死族に確認したところ、碑文の魔力を纏っているかどうかは見てわかるそうなので、誓っていない者には接客以外であまり近付かないように気を付けるとのこと。おかげでかなりの面倒が減りましたわ」

「良かった」

「なら、あとは商店街の客に混じってくる不審者への対処をどうするか……ってところか?」


「単純に一緒に来いとか何かを売って欲しいなどの取引を持ち掛けられても断るだけですわね。

凍土周辺は正式名称は『帝国の不死族保護区』と定められ。地上の警備は帝国軍人の管轄となります。地下通路内、主に商店街内の警備は不死族の管轄ですが、やはり心配なのは過剰防衛。人間相手に毒を使わず怪我をさせずに捕縛する方法について目下検討中ですわ」

「逆に、不死族の人の中にもちょっと悪いこと考える人が出てきたりしないかな?」


「誓いを破ればその罰が下りますし、誓っていない不死族がこちらの地に入り込むことは禁止しておりますから、主に不法入国者が勝手に何かやった場合の罰則となりますが」

「……」

「まず不死族による説得と誓いの勧めを行い、反省と誓いを素直に受け入れれば殺害は1人、誘拐は2人まで初犯無罪です」

「あ、そ、そうなんだ?」

思ったより緩かった。

「ただし殺害や返還できない誘拐の場合、被害者や遺族のメンタルケアまでを強制的な義務とします」

「うん、そこは大事だよね」


「悪質で無罪にならなかった場合ですが、不死族本人が出来るお詫びというとメンタルケアか、本人の核を使った指定薬品の栽培生産といったところになるでしょうけれど、その能力を保持していない個体もいるでしょうし、多数の被害者がいる場合、全ての被害者本人または遺族の希望を満たせるとも限りません」

「うん。どうしたら気が済むかは人それぞれだし……難しいね」


「最初からコンヴィニ商会で保護区に存在している不死族は誓いの有無に関わらず全て雇っていることにしておき。トラブルは商会員の不始末ということで、商会から慰謝料や詫びの品などで補填を行い、本人への罰は商会内での無給金奉仕などで済ませて直接被害者と争わないようにすることを推奨されております」

「……えっと?」

「人間の一般人が、あなたは被害者なので不死族に対してお好きに報復して良いですよと言われても困りますでしょう?それにケアも加害者本人からでは抵抗もあるかもしれません。

最初から加害者本人ではなく商会が納得できる程度の品や金銭で補填することとして、その中に不死族によるメンタルケアや薬剤も含めるということですわ」


「不死族は全員商会で雇ってることにする……うん、確かにその方が、許可なく勝手に入ってきて大暴れする不死族1人のために全不死族の評判が悪くなることなんかも防げるかもね?

うーん、不死族には給与として現金だけじゃなくて純アルコールも払うつもりなんだけど。特に頑張った人はブランデーも追加。悪いことしたり問題行動多い人はアルコール支給減らすみたいな仕組みがあったら頑張ってくれるかなぁ」


「信賞必罰に重要なのはなによりも公平であること。普段の勤務態度といった賞与の基準をそこまで細かく全員把握するのは無理でしょうから。不死族をチームに分け、毎月10人ごとに小さい水差しひとつ程度を配り、頑張った人へのご褒美としてチーム内で配分してもらう、といった形がよろしいのでは」


「それだとチームリーダーがブランデーの独り占めとか、ないかな?」

「集団生活ですもの、多少はあるでしょうね。時折チーム内で不安や不満がないか、聞き取りでもするか……逆に、毎月褒められる人を各チームから1人ずつ選んで貰い、直接1本ずつご褒美として手渡す方法もありますわね。手は掛かりますがモチベーションは上がりますのよ」

「難しいなぁ……何かいい方法があるといいけど」


***


昼から面接ということで、商会組合のいつもより広い会議室っぽい部屋に通されると、ずらっと集められていたのは全員若く見える人達ばかり。


まず商会長候補……青のかなり長い髪を後ろに一つ結びで前髪すら切ったことがなさそうな、服装もサイズがあまり合っていないワイシャツと伸びたズボンという、だらっとした格好の男性だった。

顔立ちはむしろ整ってる方だし、体格も太すぎも細すぎもしなくて良い感じなのに爽やかさがゼロ。

顔中に困惑を浮かべていて全然堂々ともしていない。


「初めまして、ロイド・シラーです。僕に商会長の話が回ってきたと父から聞いて……正直父の知り合いが小さい商会を作って試しにやってみろと任せてくれるくらいの話かと、そのまま受けたんですけど……あの、本当にこの仕事、僕でいいんですか?」

「会長はやる気があって、事務処理が得意で、不死族に偏見がなく、彼らを仕事仲間や友人としてちゃんと尊重しますと誓える人ならいいと思ってますけど……どうですか?」

「事務処理や計算は得意ですし、忙しい方がやりがいがあります。他人族への偏見なんてものもありません。でもその、友人?僕なんかを友達だと思ってもらえるでしょうか……」

「不死族の人たちは長生きなので、すごく落ち着いてて頭がいい人が多いし、こっちが真面目に向き合おうとしてればちゃんと聞いてくれますよ。……えっと、ロイドさんは商会長するなら、もうちょっとそれっぽい格好の方がいいかもです、綺麗な顔なのに勿体ないので……」

「正直おしゃれに気を使うより帳簿を眺めている方が好きでして」

「商店街では服とか靴とか髪結いとかも全部、何でも扱う予定ですし。実際提供しているサービスを把握するのも仕事として必要じゃないですか?お店を選ぶ時とかに色々やって貰ってください」

「あ、商会のテスターで全部揃えられるんですか?!それ凄く良いですね、なんでも揃うって食事やマッサージなどのサービス関係だけかと。食事も服も何でも職場で揃うっていうなら完全に泊まり込んで商店街で生活したいです。しかも昼でも夜でも開いてるんですよね?最高です。常々通勤時間なんて無駄だと思ってました」

「すっごい仕事好きなのはわかりました……」


副会長候補の1人目はスカートだけど骨格は完全に男性っぽく背も高い痩せた人で、短い緑髪で品の良い指輪やネックレスなどを付けてジャケットも羽織っている。

「マユーラ・テレシアと申します。母が服飾関係で帝国内に店を持っていて、そこで仕入れと販売を主に担当していました。妹が店に立てるようになったので、私は修行を兼ねてもっと大きいところに勤められればと思って応募したのですが。

彼が商会長候補……下の者から口を出させて貰ってもいいものですか?」

「上でも下でも意見は自由に出しあっていいと思います」

「では。そもそも会長というのは商会の顔なんですよ?ルックスは大切にして下さい。そんな会長の下で働くとかやる気が下がりますから早急になんとかして頂きたいですね」

「僕はこだわらないので、着せられれば着るし髪型も気になるなら好きにして貰って構わないんですけど……」

「服飾にひとつも楽しみを見いだせないのは人生損してると思います……」

「それが楽しみな人にお任せします。むしろ僕はマユーラさんのそれはファッションなのか女装なのかの方が気になりますが」

「ファッションですよ。私は男物も女物も区別せずに着ているだけですから」


「えぇっとそこまでに、とりあえず服飾関係はマユーラさんが得意って思っておきますね。」


副会長候補2人目は金髪で短く刈っているけどヒヨコよりはちょっと長めくらいの髪型で、すごく普通のシャツと長ズボンにオオトカゲの皮とわかる特徴的な皮模様のめちゃくちゃおしゃれなウエストバッグと靴の小柄な男の子。

「貴族街で髪結いをしていたルイ・レフリーです。可愛い子や綺麗なお姉さんがもっと素敵になるのをお手伝いするのが好きなんで、不死族って美形揃いらしいし、会ってみたくて我慢できなくって応募しました」


「……オオトカゲの皮、良く手に入りましたね?流行とかには強そうだし、お店を運営していくなら小物とか雑貨とかもいけそうですね。髪結いのサービスもあったらいいと思っていたので、そういうところに働いて貰ってもいいかも。ただ、いくら不死族が美人でも仕事中にナンパとかは程々にして欲しいですけど」

「俺こう見えて結構一途なんですよ?あ、髪結いだけじゃなくてマッサージはけっこう自信あります、試しにどうですか」

「あっ、うちのメイドさんが本当にプロなので結構です。……ルイさんは副会長っていうより店員さんとして直接お客さんと接してもらう方が合ってそうですね」


3人目は赤髪短髪のわりと体格のいいにこやかな感じのお兄さん系だった。

「バロック・スロットルだ、よろしくな。ここの組合長の従兄弟の息子にあたるが、三男だし本当に傍流も傍流、貴族の中じゃ底辺だからほぼ平民扱いで構わない。正直座って書類仕事は苦手だが。動き回って話を聞いて情報をまとめたり、交渉を通すのは得意だと思う」


「あ、交渉とか全体の話を聞いて回るのが得意なのは助かりますね!バロックさん、よろしくお願いします」


4人目は真っ白い髪を引っ詰めにしている女性で、若いのにちょっと疲れた顔をしてる感じがする。


「家は出たから家名はないわ。スザンナよ。事務処理や数字は得意、とにかく身入りのいい女性でもできる仕事を探したかったの。何でもやるつもり、よろしくお願いします」

「よろしく!」

なんとなく細かいことをここで聞いたらいけないような気がして、それで終わった。


5人と少し間を空けて並ぶ、お菓子みたいな可愛い薄ピンクのストレートヘアをあご位の長さで切り揃えて、仕立てのいいシャツとベストとズボンを揃えているよく似た男の子2人が会釈してくる。


「ええと、おふたりがマリアンとリリアンの?はじめまして」

「初めましてマイクルーズ・オーダーです、僕がリリアンの婚約者の方で、マイクとお呼び下さい」

「初めまして、リッケンジー・オーダー、マリアンの婚約者です。僕のことはリックと」

「マイクさんとリックさん、よろしくおねがいします」


「僕たちに卸売り関連全てと専属冒険者の取りまとめなんてやりがいのありそうな仕事を任せてくれると聞いて、正直驚いているけれど。彼女たちが素晴らしい友達だと珍しく全面的に褒めていたから、信用したいと思っています」

「チョーコさんは彼女たちも驚くほど活動と交友範囲が広くて仕事も出来る人だと聞いています。彼女たちは少し意地っ張りで中々本当に心を開ける友達というのは貴重だから、是非長く仲良くしてあげて欲しいし、どうかよろしくお願いします」


「ふふ。聞いていた通り、自分のことじゃなくていつも2人のことばっかりなんですね。えぇと、もしかしたら商店街よりこっちの方が忙しいまであるかなって……本当に大変だと思いますけど、よろしくお願いします」

「「頑張ります」」


一通り声をかけ終わったあと、組合長に呼ばれて隣の部屋へ行く。


「どうだった?」

「最初に紹介された商会長候補の人……事務処理しかしたくない感じでしたけど、他のことって出来るんですか?」

「やらせればなんでも出来るし、必要があると思えばなんでもやるんだよなぁ。ただどうにも事務処理以外はやる必要があると判断したものしかやらないし、放っとくと食事も木の粉と自分で出した水だけで済ますから、あんな感じに見えるんだ」


――あ。食事なんて錠剤で良いって人、本当に居た?!


オクティがつまり、と口を開く。

「自分からは事務処理しかしないが、こっちからいきなり思いつきでガンガン仕事を振られてもどうにかは出来るってことか?」

「あぁ、そういうタイプだ」

「あっ、じゃあ『いつでも開いてる、なんでも揃う、貴族でも平民でも入れる商店街』の企画書の叩き台みたいなものをザックリでいいから用意しておいてください、とか言っても平気ですか?」

「よし、じゃあそれを実力の確認の意味でやらせてみよう。他のやつはどうだ?」


ちょっとどのくらい言って良いのか迷ってる間にオクティが口を開く。

「他か。卸売りのふたりは一旦やらせてみたら良さそうだと思ったが。副会長の4人はけっこうクセがあったよな?」

「副会長は公募で、あくまで候補だ。正直に選んでもらっていい。なんなら全員やり直しでも仕方ない」

「んー。私は正直に言うなら、副会長っぽかったのは3人目のバロックさんと、4人目のスザンナさん。先のふたりは店員か店長かなって思いました」

「俺もそうだな、商会全体というよりひとつの店くらいの規模を任せるのが良いように見えた」


「副会長は2人いてもいい。バロックとスザンナを両方選ぶか?落ちた方はそのまま他の商会所属希望者と同じ扱いで、担当したい店や部門の要望を出してもらって働いてもらう予定だよ」

「ひとまず副会長はその2人でお願いします。スザンナさん……彼女は少し心に傷がありそうに見えたので、不死族に顔合わせする時ちょっと診察してみて貰ってもいいかもって思いました」

「あぁまぁ、彼女も色々あったんだ。子供を2人抱えて家を出されてな。ここで事務をやり始めてまだ半月なんだが、もっと稼ぎがいいならとこっちに応募してきた」


「双子を育てなきゃいけないって?その上、家まで追い出されてるのか」

「そうなの?……商会員用のべピーシッターか保育所って作れるのかな」

「おぉ商会でそこを持ってやれるなら喜ぶだろう。今は自力で雇っているから、そのままシッターごと雇ってもいいかもな。商会員が利用できる保育所を店の裏に作るか地上の定住区辺りで預かって貰うか、その辺りは話を付けとく。――よし、では副会長にならない2人には担当したい店舗の業種希望を提出してもらうことにして、結果を伝えに行くか」


また部屋に戻って結果を伝えると、2人は副会長にはなれないと聞いても、商店街内で働き場所は選べると聞いて喜び、考えて書いて提出すると言って退出していった。


残った5人の前に、組合長が大きめの紙を広げる。

「……さて、やるか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ