64.マリアンとリリアンと品評会
「「チョーコ!お茶会にお招き頂きありがとう」」
気軽なお友達との肩肘張らないお茶会というコンセプトの元、示し合わせたように3人ともコルセットではなく全員軽く太帯でドレスのラインを整えるだけの衣装で揃え。
牛の毛から作った純白のヘアバンドに色石を飾ったものも、マリアンは赤系、リリアンはピンク系の石、チョーコはオレンジ系の石でお揃い。
ヘアバンドは二人からのお土産だとメイドさんが教えてくれたので、そこでお礼を言う。
「マリアンとリリアンも来てくれて、ありがとう。えっと、ごめんね、おうちにご招待って初めてだから、おもてなしの仕方とか分かってないの、おかしな所があったら教えてね」
「マナーなんて全然気にしなくっていいわ!」
「新しいダンジョンから見つけたばかりの新食材で作ったお菓子があるんでしょう?」
「昨夜から楽しみでもう、マリアンも私も朝食まで控えてきたくらいなのよ」
「今日のお菓子はメイド長がとっても張り切ってくれたから美味しいと思うの。えっと、どうぞ入って」
食堂に案内すると、大小のトレイやお皿に一口で食べられるサイズに仕上げられたお菓子が並び、水差しはミナの指示で豪華な大きい丸瓶の水差しで何種類か飲み物が用意され、グラスも豪華なグラスとゴブレット、熱いもの用にも完全に貴族向けの彫刻が豪華な木製のものが揃えられていた。
カボチャ、サツマイモ、ジャガイモを使い。細くして揚げたもの3種、チップス3種、スイートカボチャ、スイートポテト、味はじゃがバターなんだけど見た目は同じようにしてあるものの9種類。
そしてドリンクもお茶のほかに風の石を使った炭酸系とフルーツ牛乳も。
オクティについて行ったニナ以外は4人とも揃っているから、それぞれに1人ずつメイドさんが着いて、取りたいものを示すだけで取り皿やカップに取ってくれるし。
空いた皿や減った料理の交換はミナが見守って常に美しく全種類のお菓子が並べられた状態が保たれているスタイル。
「んまぁー!カボチャという作物を使うと聞いていたけど、他の二種類も見たことが無いわ?!」
「このシュワッとしたドリンクはサイダーというものね?気になっていたの、嬉しい!」
マリアンとリリアンは全部やってもらうことに慣れており、素直に机の上の料理や飲み物に歓声を上げ、メイドさんにいちいちお礼を言ったり遠慮する様子は一切ないし、メイドさん側もアルカイックな穏やかな微笑みの表情のまま従っていて、目を見てもむしろ品よく躾けられている貴族のお嬢様の態度としてはこっちが正しいらしい。
こういう時に自分で手を伸ばして取るのはマナー違反らしいので、チョーコも真似をするけど、やっぱり一々あれを取って貰って良い?とメイドさんに確認を取ってしまう。
「あぁカトラリーもテーブルセットも素晴らしいし、本当に凄いお茶会だわ。しかもチョーコ!パパに聞いたけど、マイクとリックへの仕事の斡旋までしてくれるんですって?」
「あ。斡旋っていうか、私はただ新しい事業を始めてみたいなって組合長に相談してみたら、婚約者さん達を誘いたいって紹介されたから受けただけなんだけど……勝手に受けて良かったのかな?ってふたりにも聞いておきたかったんだよね」
「むしろ助かるわ!あの2人、ルックスも頭もいいのに全然度胸がないっていうか、自分から食いついていこうって感じじゃないのよ」
「そうそう、いっつも相手の希望に合わせようって感じで、わたくし達といる時も、全てわたくし達の希望が優先よ」
「優しくって見た目も良いから好きだけど、将来的にも自分で商会長目指していくより、下請けの卸売りで手広くやるほうが絶対合ってる感じなのよね」
「そうなのよ、それに!卸売りで手広く各地の商品をやり取りするなら、最新の作物が1番早く手に入れられるはずでしょう?」
「わたくし達にとっては商会長の肩書きなんかよりずうっと魅力的よねーっ!」
「あ、確かに商店街に持ち込まれるより卸売の業者の方が品は先に手に入るね」
「えぇ!ふたりがその取りまとめの仕事をするって言うならわたくし達は大歓迎だわ」
「それなら良かった……あの、ね。ふたりは多分人気の商品とか流行とか詳しいかなって思うから、商店街で扱った方がいいおすすめ商品とか、そういうのも意見があったら聞いていきたいんだけど、どうかな?」
「まずどんなお店にしたいかよね」
「コンセプトはあるの?」
「コンビニ……えっと昼でも夜でも関係なく、いつ行っても明るく営業してて、なんでも揃うお店。かな?」
「コンヴィニ商店?響きも悪くないわね」
……そもそもコンビニエンスストアなんて言葉自体がこの世界の言語ではないのだし。その響きで違和感を感じないならいっか。と思ったのでそのままスルーすることにする。
「うん。たとえ真夜中でも、そこへ行ったらいつでも明るくて店員さんが出迎えてくれるし、服でも食べ物でも欲しいなって思えば何でもそこで探して買えるようなお店ってどうかなって思いついたんだけど」
「いつでもやってる、なんでも揃う、コンヴィニ商店ね……うん。まぁ夜中開いている必要があるかどうかはともかく、コンセプトとしては面白いわ。やっぱりわたくし達としては、美容と食べものが揃っているといいわねぇ」
「きっと夜中の利用は警備員みたいに夜起きている仕事の平民の食事利用があるんじゃないかしら?平民にターゲットを絞るとわたくし達が行けないから、屋台みたいな食べ歩きのお店だけじゃなくて、ちゃんと座って食べられる個室のある、貴族向けのお店も欲しいわね」
「貴族向けのお店は車止めが必要だから、区画設計の時に忘れず入れておいて?」
「もし止められないなら車まで買ってきて貰うけど……あ、車から直接買い付けてそのまま行けるような仕組みがあれば面白いかもしれないわ?」
「貴族向けのお店としては、リラクゼーションサロンみたいなマッサージやお肌の手入れを受けられるところとか」
「髪や爪のお手入れをしてくれるところも良いわね」
「あれ?お金持ちの人だとアクセサリーとかお洋服とかを買うイメージもあるけど。そういうお店は無くていいものなの?」
「宝石商や家具、衣類、食器や道具の類になると……普通はお店の方を呼び出して家まで届けて貰うから、あまりお店に買いに行くことって無いんじゃないかしら」
「あっ。でもこの前リックにデートで連れて行って貰った宝石商はロマンチックだったわよ。指輪とかイヤリングみたいにその場でつけて帰れるような小さいものを扱うお店だったら、お出かけでも立ち寄れるわ」
「確かにそうね。着るものもドレス本体は届けて貰うけど、ちょっとした小物とか靴なら買って帰れるかも。それに何でもそろうを銘打っているなら、大きいものもサンプルだけ並べておいて、お店で見て気に入ったら、サイズを確認して後で自宅に届けて貰うなんてどうかしら」
メモを取らせてもらいながら話を聞く。
貴族向けの食べ物の販売はドライブスルーかちゃんと駐車場と個室のあるレストランが良くて、美容院にネイルサロン、マッサージ屋さん。デート中にちょっと買える程度のアクセサリーや小物。
本格的なドレスや家具など大物はサンプルを並べて発注受付をするお店はいける。まぁ平民向けに服を直接並べてその場で買えるお店も用意するなら、商店街全体なら何でもそろうの言葉に嘘はないと思う。
となると。商店街の方は徹底してデートや観光で訪れる人がその場で楽しむサービス系、買えるものは荷物にならないような小物や飲食など消えものだけに絞る。
そして、大きな荷物になるような買い物はサンプル展示をするお店はあっても、欲しい品の注文票を持ち帰って貰うだけ。帝国側にその注文を受けて現物を作って家まで届けるようなお店を作ってしまえばいいのかな。
ふんふんなるほどとメモを取っている間に、ふたりは自由にお菓子を少量ずつ全種類楽しみ、メイドさんたちに使っている食材だとか調理法を聞き。
ふと、手にしていたグラスやゴブレットに注目。表から裏からためつすがめつ細部まで真剣な顔で眺め……
チョーコが書き終わって手が止まったところでふたりが妙に神妙な顔でチョーコを見つめていることに気付いた。
「あっ、ほっといちゃってごめん……?」
「ち、チョーコ?このグラスとか水差しって、この透明度と彫刻、ただのクリスタルじゃないわね?一体どこで手に入れたのよ?」
「え?火の大陸に行った時に魔人族の人達がガラスと陶器製品作るのが得意だって言うから、そこで買ってきたんだけど」
「「ーー!」」
「?」
「やっぱりガラス?!このグラス1つで小さい屋敷なら買えるわよ?!」
「美術品よ?こんな無造作に普段使いする?!」
「魔人族の人たちはこういうの作るのが得意で、純アルコールっていう、大量の白砂糖か酔い水草か酒の実から取れるものと交換で普通にたくさん売ってくれるの。この世にふたつと無い貴重な美術品ってわけじゃないから、大丈夫だよ?」
「……取引相場って、聞いちゃってもいいものかしら?」
こそっと丸瓶の小さい方の豪華な水差しと、計量カップみたいな金属カップも出して、机にある大きい水差しと並べる。
「そのグラスとゴブレットは4個セットで売っててね。そのセットか、この水差しの大小どっちでも、これに純アルコール1杯で買えるよ!対価さえ払えれば、百個でも千個でも作ってくれるって言ってたから普段使いしたっていいと思う」
「これに一杯で……なるほどね、砂糖から作る場合は精製に使う魔力を賄うための人件費が高くつくってきいたから、完全に原価で手に入るからこその扱いってことね」
「チョーコの商会の下請けで色々な商品を扱うって、もしかしてとんでもないものを扱うことになるんじゃ……」
「えっと……まずい?」
「「いいえ!チョーコとお友達になれて良かったわ!」」
「そ、そう」
「ね!食べ物とガラスの話の他には?また珍しいもの見つけたんじゃない?」
「……楽器の話、とか」
「あっ!それ、職人の何人かに頼んでるみたいだけど、いまいちいい音にならないらしいのよ。何か新しいものがあったのなら聞かせて?」
「高山の洞窟に住んでる小人族が、合図を鳴らすからくりを作るためにベルっていうすごく綺麗な音の鳴る楽器を作っててね。少しサンプルを貰ってきたから、音楽が好きそうなあのふたりに見せようと思ってて、メイドさんに聞いたらミラルダさんに音楽の品評会を開いてもらうのが良いんじゃないかって言うんだけど、どう思う?」
「あらっ、いいじゃなーい!わたくし達もその新しい楽器のサンプルっていうのを見てみたいわぁ!品評会っていつするの?わたくし達も呼んでよ」
「まだなんにも決めてないし、ミラルダさんに話を振ってもいないんだけど……準備に時間ってどのくらいかかるものなの?」
「楽器のコレクションを見せるだけでしょ?スケジュールさえ空いてたら明日にだって出来るわ」
「早く見たいし、なんなら今度はわたくし達のおうちに集まらない?明日でもいいわ。品評会にその楽器っていうの持ってきてよ」
「ふたりのお家でいいの?明日も別に私は空いてるけど……」
「じゃあ決まりね!皆にも声をかけておくわ」
***
まだ少し喋ってお茶を飲んだりしたけど、明日の準備をするからとあまり遅くないうちにふたりが帰ったあと、先にお風呂は済ませて部屋着に着替え、明日のお土産を何にしようかとミナと相談していたらオクティが帰ってきた。
今日はお茶会で結構食べたし、オクティも商会組合に呼び出されて軽食を出されてきたようなので、軽くサラダとツチノコの照り焼き少々とオコメで夕飯を済ます。
どうやら宰相さんが気合を入れて、ワイバーン部隊まで連れて隣国へ挨拶をしにいき、開拓の人民や冒険者などの人手を大々的に募集をかけた結果。
メイジア国民の中で、帝国民になりたがる人が一挙に増え始めたらしい。
更に、メイジア国へワイバーン部隊が向かう途中、川に沿ってではなく、渡ってもっと先へ進んだところにもう1ヶ所、綺麗に並んだダンジョンに囲まれた安全地帯と思える場所を見つけたんだそう。
どうやらそこは住み着いた人間の数が少なすぎたようで、ダンジョンブレイクを防げなかったらしく、潰された建物の跡が少し残っていただけ、無人だったらしい。
完全無人の新しい安全地帯の発見はすぐに報せが届き。帝国の分地として急遽そこを開拓し、メイジア国から帝国民になりたい人をそちらに集めてそれぞれ建物を作って住まわせようと、新天地の城壁作りも始まるという。
「人間が住める新しい土地が見つかったのはいいね。メイジア国は貧しい人は追い出すほど人が溢れて大変だったんだし、これで皆落ち着いてくれるといいけど」
「そうだな。新しい商店街で働きたい人も、卸売業の事務に運送、冒険者、どれもこれから新しく始まる事業で不死族と仲良く働けることだけが条件だというので、希望者はかなり多いらしい。一応商会に入りたいなら、帝国に転民してからということになっているそうだ」
「既に人を集め始めちゃってるなら後に引けない感じだし、地下商店街は本当に実現したいね」
「それに不死族との打ち合わせに行ったチームのメンバーも、大隊長を除いて商会に参加することに決まったらしいぞ。冒険者は良く組む仲間と一緒に冒険者チームとして、あの隊長や軍人たちは警備関連の人員の取りまとめをやってくれるらしい」
「え。正式な軍部の隊長クラスの人って商会の警備に参加しちゃっていいものなの?」
「軍部から籍を抜くわけじゃないみたいだよ。凍土を復活させて増えた土地は、地下は彼らが住むけど地上はほとんど人間が使わせてもらうことになるから、あそこの警備は帝国軍人が担当しても全くおかしくない土地なんだってさ」
「……ちょっとコンビニ欲しいなって思っただけなのに、国家事業が始まっちゃったってこと?」
「チョーコの夢はいつでもなんでもすぐ手に入る便利な生活ができる街で平和に暮らしたいんだろ?それに賛同した人が国家レベルで多かったってだけだよ」
「話が大きくなりすぎてる気はするけど、うん……楽しみ!あっ、そうだ。音楽の品評会なんだけど、マリアンとリリアンが2人のお家で明日品評会しようよって言ってくれたから行ってこようかなって、連日になっちゃうけど……大丈夫?」
「勿論大丈夫だよ、ついでだからフライヤーとか圧力鍋の納品くらいは済ませておく。それに楽器も早く人に見せて意見貰ってちゃんと使えるように仕上げなきゃ使えないんじゃないか?」
「うん、それはそう」
「俺は見てもよく分からないし、わかるやつに見てもらって、ついでに友達との交流もできるんだから、いい事だろ」
***
ーー自宅でのお茶会に続いて今度はお友達の家での品評会。
メイドさんたちは3人、荷物運びを兼ねて着いてきて、楽器は全部綺麗に包んで持ち運んで来てくれた。
サラとカリナだけではなく、ロレットとミーティアも呼ばれ、今日は全員揃ってウエストを締めないシュミーズドレスのようなものを着ている。
音楽というか歌唱の品評会のドレスコードらしく、呼吸を妨げるコルセットは使わないとか。
何の品評会かによって、決まり事があれこれあったりするらしい。
呼ばれた時のマナーとか挨拶の仕方はロレットやミーティアがどう並んでなんと言うとか説明してくれたので習い、メイドさんたちは楽器を奥に運んで、この家のメイドさんにお土産のカゴを渡したあとは隅に待機で前に出て来なくなった。
挨拶が終わるとサラとカリナが興奮気味に奥の方を気にしながら、楽器を見せてくれるって、楽しみにしてたの!とテンションを上げ。
マリアンとリリアンも、私たちもまだ直接見るのはこれからなのよと、すぐに奥へ。
台の上に置かれたホイッスル、同じ形のシリーズで固めて置いてある鈴や鐘、柔らかい敷物の上に並べてあるチャイム。
「あ、この棒状のは吊るして使いたいから、ハンガーラックみたいな吊るせるものないかな?」
「衣装掛け?ーー持ってきて」
木製で色々なドレスが掛けられるように背の高いハンガーラックは設えたかのように高さも幅もピッタリだった。衣装掛けのフック部分にチャイムの取っ手をひっかけて並べて吊るしていくと、バーに施された彫刻もなかなか豪華なのですごく様になる。
準備が出来たなら実演して欲しいと皆が期待した顔で注目する中。演奏ではないけど、実際に音を鳴らして見せることになった。
ホイッスルと鈴や鐘は吹いたり振ったりするだけと言いながらひとつずつ鳴らし、皆が感想を言い合うのでコメントが落ち着くのを待って次を鳴らす。
鐘や鈴は形が違うと音のタイプが、大きさが違うと高低が大きく変わるようだと興味津々。
そして、吊るしてあるチャイムを小さいハンマーで順に叩いていく。
「ーーこんな感じで。違う楽器を組みあわせたりして一緒に奏でたりして楽しむの」
「「やってみたいわっ!」」
サラとカリナは真っ先にチャイムと鈴の所へ分かれ、こっちにヴィーがあったわ、リーゥはチャイムの二本目がそうでしょ、じゃあこれとこれは順番が逆ね、イーがないからそれを使わない曲から選ぶしかないわとか、恐らく歌の音階にあたると思う言葉で話し合っているが。正直絶対音感とかそういうのはないのでどれのことを言っているのだか全く分からない。
あれこれやった後、鈴と鐘を混ぜて並べた所にサラがマリアンとリリアンとミーティアも呼んで説明を始め。カリナはロレットの所へ行って話してから、ふたりでテーブルなどが何も無い空いた所へ移動。
私だけなにも声を掛けられなくてどうしようかと思った途端、リリアンとマリアンから「さぁチョーコ、今日は楽器を見せて貰ったお礼に一幕披露して差し上げるわ、チョーコは座って見てなさい!」と笑顔で声が飛んできた。
カリナが大きく一呼吸して、サラがまずチャイムのひとつをポーンポーンと叩くと、音を合わせてカリナが高めの声でハミング。
合わせるようにサラが低めにハミングを重ね。響きが合ったところで一旦静まった。
暫くしてもう一度カリナが頷いたのを合図に演奏が始まり、ロレットは両手に細く薄い剣の形の木切れを持ってくるくると色々な素振りの型を繋いで動き出す。
締めつけの少ない長いスカートには深めのスリットがあり、大きく動くと裾が綺麗になびいて本当にダンスみたい。
鈴とチャイムと鐘の音で音質は変わるけれど、多分音階はちゃんと足りているんだろう、歌声と音階はどこも外れてなくて、違和感なく聞ける。
即興とは思えないオペラのような一幕が終わって、ついパチパチと拍手してしまった。
「すごい!初めてなのにそんなに滑らかに演奏できるんだ?!」
「音は一つで叩くか振るだけですもの。これは……とても素敵ね。楽器の演奏、楽しいですわ!」
「ねぇチョーコ、このサンプルの楽器、しばらく借りても宜しくて?お父様にも話を通して、それぞれの種類で音階を揃えてみたいの」
「笛の方も音のなる仕組みさえ分かれば色々できそうですものね。これだけだと音楽ではなく軍部の号令用にしか使えなさそうですけれど」
「う、うん。借りるって言うか、商会組合に丸ごと渡すつもりだったから、マリアンたちから話して貰えるならそれでいいよ?渡す前に皆に実際触ってみてもらおうと思って集まってもらったの」
「じゃあ借りるわね!」
「やーん、開発前にわざわざ私たちを呼んでくれたの?ありがとー!」
「チャイムの響きは本当に素敵よね、この小さい鈴の響きも可憐で好きよ」
サラとカリナは思った通りかなり喜んでくれたみたいで。「シリーズで揃えられるようになったら家で買って貰えないかおねだりしてみるわ!」と嬉しそう。
「音楽に合わせて踊るというのは楽しいな……曲によってどう合わせるか動きを探すのも楽しそうだ」
「ロレットの剣舞は本当に綺麗で凄かったねぇ、カリナの歌も上手だったし!」
「皆、一休みしてお茶にしましょう?チョーコがシナモンというスパイスをお土産に持ってきてくれてね、ミルクの紅茶にこれがすごく合うのよ!」
そこからはまたゆったりとティータイムになり、今度はサラとカリナの恋愛事情の話になった。
「確かに年上ではあるけど、たまに甘えてきてくれて可愛い人なのよ♪」
平民だと7歳差はかなり大きいと言われるけど、貴族は10歳差くらいまでは誤差と言われ、20以上違うとようやく少し年の差があると言われるくらいらしい。
7も違うからまだ近いサラの方を選んだのかと思ったけど、単純に落ち着いたお姉さん気質が好みだったのでカリナは違ったというだけだったと。
むすーっとほっぺたを膨らましているカリナを見るに、確かに大人っぽいお姉さん系が好きなら、甘え系の年下っぽく見えるカリナは好みと違ったんだろうな。
もう来月には結婚宣言のパーティーを開くから、皆にはぜひ来てほしいとサラに言われ。それは参加したいけど。
そもそも結婚宣言って何か決まった形式とか呼ばれたら持っていく物の決まりみたいなものがあるのかと気になって聞いてみた。
平民だと道端や広場などに隣近所で集まって誓って祝いの言葉をかけて終わりだけど。
貴族の場合は両家のどちらかの屋敷を使って開くパーティーで宣言するのが普通。自宅でやる習慣だからか、呼ばれるのは両家親族と本人たちの直接の友人までで思ったよりこじんまりとしたものみたい。
結婚祝いを贈る場合も、お友達は参加する人たち皆で相談して用意するのが普通だけど、二人で使えるお揃いの部屋着やペアの食器など、記念に残るがそれほどお高くないものが普通で。
親族は新居で使える家具などを用意したりするだけらしい。
どちらかといえば結婚準備の為に子供の頃からコツコツ用意して貰った壮麗なレースと髪色に合わせた色糸の刺繍が入ったドレスと、同じく男性が着る髪色に合わせ色糸で刺繍を施されたローブこそが重要なもので。それだけは祖父母や叔父叔母が総出で手伝って仕立てておくそう。
この国は皇帝が白髪のせいで、純白の衣装を着てはいけないというルールがあるけど、婚礼衣装だけは完全に全部白一色にさえしなければ、白の割合が大きくても良いとされているらしい。
……黒髪だけど白いドレスってありなのかな。と思って結婚式のセレモニーの話をすると。
「「「んまぁぁぁぁロマンチック!!」」」
と皆のテンションが爆上がり。
そういう物語性があるのなら、黒髪を隠す白い衣装で最後にそれを外すって素敵だと思う!と大歓迎されたので、髪色に合わせた衣装を着るのが慣例だとしても、白い衣装で通していいかと少しほっとする。
なんか『衣装さえ完成しているなら宣言式は明日にでも出来る』みたいなノリで皆喋っているので、早急にミラルダさんが張り切って衣装を仕上げてしまったら、サラより私の方が先になりそう……と思ったけど。
サラはサラで、絶対結婚宣言のパーティーには音階の揃った楽器が欲しいし、チョーコの式は色々参考にしたいから先に見たい!と乗り気なので、先になってもいいみたい。
――うん、大体のことはミラルダさんにお任せしようっと。




