62.お友達を作ろう
直接家の玄関にテレポートで戻ってきたら。何故か丁度3人共メイドさんたちが外から玄関ホールに入ろうとしているタイミングでちょっとびっくりした。
「「「あっ、おかえりなさいませ!」」」
「わぁっ?」
「出かけてたのか?ただいま」
「警備員の面接から戻ってきたところですぅ」
「ご友人のお嬢様からお手紙が届いておりますよ」
「秘書と打ち合わせに行って参りましたっ」
3人共違う用事だったらしい。
「チョーコ、色々報告ありそうだし、皆も一旦食堂に集まろうか」
「うん。あっミナ、これだけ片付けお願い」
豪華な方だけど小さい角瓶にお酢を一杯まで詰め、シナモンの枝一束と、生姜一箱をミナに渡して片付けを頼んでおく。
ミナが戻って席に着くのを待ってから、まず誓いの碑文を1枚出して、チョーコの炎の印と炎人の呪いが罰則として発動する強い制約の話をしてから、警備員の面談について、雇うと決めたらそれを使おうと話す。
「それでしたらぁ……わざわざその碑文に書くほどでもありませんわねぇ。汚したり破いたりしないように気を付ければ宜しいのでしょう?オクトエイド様とチョーコ様の家に雇われている間に得た情報は全て極秘とする。とだけ紙に書いて頂けたら充分ですわぁ」
契約などに使うらしい、少し厚手の紙を差し出された。
「えっとごめん、それって共通語で書いた方が良いよね。契約用の改まった文章だと思うから一度こっちに書いて貰っていい?」
「あ、わたくしがお手伝いしますわ」
メモ用に貰った薄い紙と万年筆をルナに渡すと、ニナがその隣に来てペンを取り、さらさらっと書いた。
ちゃんと契約書などに使うような言い回しで、この紙に手を置いて誓うと宣言することというところまで書き添えられているのを確認。
まず厚手の紙の方に指を置いて魔力を籠める。
書いて貰った文章をじっと見ながら、その通りに写すつもりで指を滑らせると……ただ転写するのではなく、自分でちゃんと書き順通りに文字を書き込んでいる感覚があった。
あれ、もしかして翻訳機能って書く方も出来たりするの?
書いたものを見比べたら、書かれた字を見たまま写していたつもりだったのに、ニナが書いた字と筆跡が明らかに違う。
ちょっと試しに。ルナが使った薄い紙の方の端に、万年筆でこの言葉で書くことを意識してからチョーコと書こうとしたら、書いたこともない文字がするすると書ける。
「……書けちゃった」
ちょっと情報を読み直したら、概念が精神の完全上位互換なだけに能力が強化されている部分で。ただのテレパシーでは読めるけど書けないらしい。
――まぁ、この世界の文字が読めて書けるだけなら、何か言われても勉強して覚えたと言い張ればいいか。
「とりあえず、これでいいよね?ルナにこの紙を預けておくから、よろしく」
「はぁいっ!これがあるなら、明日からでもすぐに。10人とも働いて貰えると思いますわ。ちょっと行って参りますわねぇ♪」
ぺこっとルナが一礼して、紙を持って部屋を出て行った。
ついでなので、碑文を手に取って他の人族との問題があった時に使うための複写を作ってしまう。渡す分は6枚。不死族の街で動く商会の分と、帝国側で卸売りをして貰う拠点の分で2枚。
――その間に話してて貰って良かったのだけど、全員終わるまで一言もしゃべらないので。書き終わってからお待たせしてごめんと声をかけて6枚はメイドさんたちの方に渡した。
続いてミナがお友達からのお手紙だと、持っていた紙を差し出してくる。リボンで結んだ巻いた紙には、ロレット・ロッドと読める署名。
「ロレット――顔合わせの時に居た6人の中に居たのは覚えてるんだけど、えぇっと……」
「ロレット・ロッド様17歳。冒険者組合長の長女で上に兄が1人、下に弟が2人。現在恋人婚約者共になし。自分に剣で勝てない男に興味はないとおっしゃっており、貴族家の子息は望みが薄いとか。趣味は剣術と筋肉のデッサンでいらして、逞しい殿方を好んでいらっしゃいます。
目と髪は青で水の属性ですが、魔法よりも身体強化を好み、もっぱらご自身が剣を振るわれますね。父親のグレイ・ロッド様が前組合長の養子になる前は平民だったため、お子様たちの育て方はあまり貴族らしくなく。他所属の貴族からは嫌味の種にもされているようですわ」
「あ、剣舞が出来て軍人さんの絵を描きに行きたいって言ってた、青い髪の子!」
リボンを解いて開いてみると。ミーティアの家は、チョーコとロレットが両方付き添うなら外出を許可すると言っているらしい。彼女も楽しみにしているようだから、なるべく早いうちに門の外へデッサンに行きたいというお誘いだった。
「あっ。そのうちミーティアも呼んで一緒にお絵かき行こうねって話、本当に誘ってくれた……いつにしようかな?こういうのってどう答えたら良いんだろう。特に今予定があるわけじゃないから、行こうと思えば明日早速でも行けるんだけど」
「ロレット様は元平民の冒険者組合長のお嬢様、ミーティア様は特に役職のない平の文官のお嬢様で、たまたまロッド家の隣に住まれている幼馴染というご縁ですから、宰相家本家に連なるチョーコ様の方が立場は上ですわ。こういう時はチョーコ様の方からそれぞれに当てて、デッサンの誘いをありがとう、明日の午後なら予定が空きそうなので早速行きましょうと具体的に日付を指定して誘い。もし都合が悪ければ都合のいい日を教えて欲しいと書き添えます」
言われるままに、2枚紙を用意してロレット宛とミーティア宛に返事を書き、巻いたところにちゃんと共通語でチョーコと署名を書く。
リボンを巻いて結ぶと、ミナはすぐに行ってきますとそれを持って出て行った。
ミナが席を立つとすぐ、マナがメモらしい紙を広げる。
「本家の秘書たち曰く『不死族の土地に大規模な商店街を展開する予定と聞いたが、それほどの規模の話ならば流石にこちらに話を通してからにするよう言え』とジュラール様が商会組合長に苦言を述べていたそうです。当初、オクトエイド様は商会組合長には可能かどうかの確認をしただけだったが、思った以上に実現が可能に近いと組合長が判断し、そのまま動き出してしまったという経緯は、わたくしが把握している部分を全て説明済みです。――前もってお伝えせず勝手に説明してしまってすみません」
「ううん、ありがとう!やっぱり勝手に動いちゃまずかった?」
「状況を見れば、結果的にチョーコ様が不死族との間に入って下さることにより、帝国が直接不死族と接触する機会を減らせることは、中枢側としては非常に助かる話であり、多大な利益を見込める話でもあるので、すぐに動いた判断はよしとされたようです。ただ急に報告を受けた話の規模が大きすぎて、驚かされたとだけ」
「あー……立ち上げる商会と卸売り企業の税金関連についてとかも全部丸投げでよろしくってする予定なのに、流石に話も通さないでいきなりは困らせちゃったよね……」
「まぁ先走ったのは商会組合長であるという認識ですから。チョーコ様からは少々お詫びの気持ちになにかお届けするくらいでよろしいでしょう。ご当主は優秀な方ですから、驚きはしてもきちんと対応に取り掛かっておりますよ。早速メイジア国の方にまで声を掛けて、この事業の人員募集に力を注いでいらっしゃるそうですし」
「わ、そんなに動いてくれてるの……?じゃあ、やっぱり大きい方でちゃんと用意させて貰おうかな」
丸瓶の方の大きい豪華な水差しを2つ出し。まず生クリームは自分で抽出したてを詰め、オリーブオイルは自分だとこぼしそうなので実を出してどうしようかと思ったらニナがサッと手を伸ばしてきて詰めた後、実に残った分はキッチンへ持って行ってくれた。
「この2つと、ゴブレットとグラスの4個セットを付けようかな。とりあえず今回は迷惑かけちゃったみたいだから水差しもそのままプレゼントね。来週からクリームとオリーブオイルを毎週送る時は小さい水差しに切り替えで、そっちは使い終わった水差しは次を送る時にでも回収、洗って次を送る時に使うってするつもりだけどそれで良いと思う?」
小さい方の丸瓶の豪華な水差しを4つ出して、牛乳足りなくなったり私が忘れてたら教えてと言っておく。
「……この水差しとか全部、ガラス製ですよね。総モチーフで……ヤバ。――っは!いえ、充分すぎるかと!それでは早速手配いたしますね!」
マナが素早くお盆を持ってきてそれらを持っていった。
「あっ、そうだ」
「「はいっ!」」
気合の入った返事が返って来て一瞬ビクッとした。
「えっ……あの、ただちょっとニガブドウを商会組合で買って来てって頼もうと思ったんだけど、売ってると思う?」
「ニガブドウの在庫は全部開発に回されたので、今すぐにはないと思われますが。天人が付き添い依頼を引き受けるダンジョンのリストに入っておりますわ、冒険者への依頼料も含め、先払いの4金で依頼を掛けられるようですわね」
「折角赤と緑の染料が作れるなら、ニガブドウで布や糸に色を付けたり、ゼラチンも足して赤と緑の文字用のインクとかを作って、スカーフとか色付きのカードとかを作ってお友達に配るのってどうかなと思ったの」
「飾りボタンや色石はともかく、染色した布を身に着けるのはフォーマルになりますので。普段使いでしたら、色付きのインクで書かれたカードか、カバンに入れるようなハンカチーフか、小銭入れのような小物が宜しいですわ」
「わかった。それじゃあニガブドウを発注するなら、一緒にそのダンジョンにあるものを使い道が分からないものも含めて全種類って発注できる?魔獣の核は取りに行ってくれた冒険者に全部あげるけど、それで報酬が足りないくらい大変だったら話を聞いておいて。荷物が多かったら私が直接天人さんから受け取るから、そのままこの家に荷物運び担当の天人さんを呼んで欲しい。それが届くまでにシンプルな小銭入れを5個ね。あと……明日デッサンする時に使いたいから、新しいキャンパスを何枚かと、外で使って良い椅子とイーゼルって3人分用意出来たりする?」
「お任せくださいませ。――今日は、商会への納品の方はいかがいたしましょうか?」
「組合長さん本人が頼んじゃった事の方で忙しいと思うから対応できないと思うし、また今度にする」
「はい。では発注だけ済ませて参りますわね」
ぺこ、とリナも一礼して商会へ向かって行った。
「そういえば……音楽が好きな子たちいたよね。姉妹の……」
さっきと同じようにニナはスラスラと答えてくれる。
「双子ではなく姉妹でチョーコ様に歳の近い宰相派閥のお嬢様ということでしたら、総務部長のお嬢様のサラ様16歳とカリナ様14歳のご姉妹でしょうか?緑の髪に青い目で、確かに歌唱の評判は高いと伺ったことがありますわ。上に兄が1人のみ、確かサラ様は来月頃に7つ上の軍部の方へお輿入れが決まっていて、下のカリナ様は平民と交際を始めたことで親ともめていらっしゃるとか……」
「……そ、そうなんだ?今日ドワーフさんたちから貰って来た楽器のサンプルを見せてあげたら喜ぶかなって思って。何か機会があったら商会に渡す前にちょっと触らせてあげたいんだけど」
「それならミラルダ様にお声を掛けて『音楽』の品評会を開いて頂きましょう」
「えっ!でも私は音楽が出来るわけじゃないよ?」
「主催は必ずしも得意である必要はありません。鳴らし方の説明だけは全てチョーコ様がされる必要がありますけれど。コレクションを見せるだけというのも立派な披露ですわ。おふたりに心行くまで楽しんで頂けば問題ございません。――ただ、明日ロレット様とミーティア様、その後すぐにサラ様とカリナ様をお呼びになられると、マリアンヌ様とリリアンヌ様を後回しにしたと言われかねません。品評会にはおふたりもお誘いになるか、おふたりと先にお茶会などでお会いになって……例えば商店街で扱う品物のご相談などお喋りをされてからの方が宜しいですわね」
「あっ。そういえば2人の婚約者さんを勝手に雇おうかって話をしてたんだった。――早いうちに少し会える機会を作った方がいいかも……」
「あちらから見れば、商会に卸されるチョーコ様からの品々の勢いから考えて、とんでもなく忙しい毎日を送られていると思われておりますから、なかなか誘いづらいのでしょう。それに立場が下の者から誘うのは本来あまりマナーが宜しくありませんから、なるべくチョーコ様の方からお声がけをされるほうが、あちらも動きやすいのですわ」
「えーっと……婚約者さん達がどう反応するかもちょっと分からないんだよね。どういう風に話したらいいのかも、分からないし……どうしたらいいんだろう」
「婚約者様の話は商会組合長が紹介されただけですので。正直に、紹介されたので帝国で出来そうな仕事を斡旋する予定だけれど、おふたりはどう思われるかと直接聞いてしまうのがよろしいかと。
明日のデッサンは前々からの約束だったから先に受けたとして、明後日にでもミナに手伝わせて、そうですね……商会に卸したもので最新のお品、カボチャの焼き菓子などがよろしいのでは?最新の御茶菓子をご用意したとお呼びになって、こちらでお茶を飲みながらお話しては如何でしょう?その時に新しい楽器の話などもして、サラ様達に触って欲しいから品評会を開いて貰おうかと思っていると伝えて、おふたりにもご意見を求めればよろしいですわ」
「明後日、私はいいけど、いきなり呼んじゃって大丈夫かな?」
「例え先約があっても、お会いしたければ明後日は先約はあるがこの日なら空いていると返事がありますから。都合が付かずお会いできない場合は、先に誘われたけど都合が悪くて会えなかっただけで、後回しにされたとは思われません」
「じゃあ――明後日にする。ここで、大丈夫だと思う?」
「この家に踏み入れることを許されている方は少ないですから。むしろお友達を呼んだのは初めてというのは喜ばれるでしょう。わたくしが直接ご伝言を伝えて参りますわ」
「……子供の頃から考えても、もしかしたら初めてかも。人を呼べるようなお家に住んだことないし」
「まぁっ。記憶に残るようなよいお茶会になると宜しいですわね。わたくし達もおもてなしを頑張らせて頂きますわ――では、早速お伝えに行っても宜しいでしょうか」
「う。うん。2人によろしく……」
ニナも伝言に立つと、チョーコとオクティの2人きりになった。
「お疲れ様。――メイドたち、やっぱり5人くらいいて丁度良かったな?」
少し笑って抱き寄せてきたので素直に膝に乗って抱き返し、肩に顔を埋めて目を閉じる。
「ちゃんとした女友達とか、同年代の子とあんまりちゃんと向き合ったことなかったから、凄い、緊張する……なんかすごい変なこと言っちゃったらどうしよう」
「家に来るのはあの商会組合長の娘だよな?……新しい商品にも知らない人族にも興味津々なら、チョーコと仲良くなりたいとは思ってるだろう。それに、明日遊ぶのは冒険者組合長の娘とその幼馴染で絵描き仲間になれそうな感じだろ?音楽の品評会はミラルダさんが付いててくれるなら、大丈夫だと思うし……話題に困ったら結婚式のセレモニーのことでも聞かせたら、勝手に聞きたいことを掘り下げてくれるんじゃないかな」
「そ、そっか、無理に何か喋らなきゃってなると変なこと言っちゃいそうだもんね。相手が聞きたいことを聞いて貰って、答えたらいいんだ、よね」
「新しく会った人族が欲しがっていたものの話とか、エリート獣人たちに翻訳機をねだられて渡したから、直接喋れるようになったとか、そういうのでもいいんだし。逆に、街で今流行っているものとか、もっとこうだったらいいと思うような意見を聞くとかでもいい。冷蔵庫以外に開発されそうなものとかを知って、欲しい道具があったら買っても良いし、開発の支援をしたっていい
――大丈夫だ、なんとかなると思うぞ?」
お友達を家に呼ぶ、と思ったら怖くなってきたけど。抱きしめて撫でられていると少しずつ、なんとかなるような気持ちになってくるから不思議。
考えてみれば、皆あんまり偉そうだったりきつそうだったり、意地悪そうな子はいなかったと思うし。そんなに構えなくたって大丈夫かも……
落ち着きすぎて眠りそうになりハッと顔を上げたら、軽く笑って膝から降ろしてくれた。
「夕飯も食べずに寝たらミナが悲しみそうだよね」
噂をしたからか、元の席に戻った所で丁度ミナがただいま帰りました、と戻ってきてキッチンの方へ。途中でチラチラとこっちを向いて、チョーコも来ないのかを目で確認されたので、さっき渡したお酢とかの説明はしないといけない気がしてキッチンへ向かうことにした。
圧力なべは一番小さいのでいいかと思ったけど、ミナが7人分には小さいといって1番大きいのを確保。小さいのはお出かけ中に使いたくなった時に残しておいて、残りは組合に卸すか商店街で何かのお店で使っても良いかもね。フライヤーも一番小さいのじゃなく、籠が2つセットできる色々作れるのを確保することにした。
――どうやらチョーコがオコメを炊いたのが好きらしいと分かったからか、今日の夕飯用にもミナが自力で初めて炊いたにしては炊き加減が素晴らしいオコメがあった。
それに合わせて用意されているのは、ホロホロになるまでシイタケと共に煮込んだミミズ肉と玉ねぎとニンニクに塩コショウ。これがしょうゆ風味だったら完全に牛丼!これはそうじゃないけど、それが残念と思えないくらいこれはこれで凄く味のバランスが良くて美味しい。
今日取って来た生姜がそこに物凄く合って、増した風味にミナのテンションも増す。
そして今日のサラダはセロリとトマトとチーズを大きめの角切りにして塩コショウで混ぜたものの予定だったけど、これには酢とオリーブオイルも加えてランクアップ。
更にデザートは砂糖とミルクを加えて柔らかくしたカボチャクリームにタピオカ粒を加えて食感をプラスしたもの。飾りに少々ホイップクリームも絞ってある――だったけど。
早速シナモンを使って、洋菓子店のお菓子みたいな味に化けさせていた。
うーーーん。応用力と適応力が凄い!本当に!
ブランデーも香りと風味は本当に良いから、お菓子作りに使いたいよね……魔力が少ない人間だと嗅いだだけで危ないっていうのは凄く残念。人間の街には流さないって約束もしたし、ミナには代わりに今度海へ行って酔い水草を仕入れてきてあげようかな。今日護衛で着いてきたのがミナだったらブランデーもちょっとくらい試しに使ってみたい誘惑に負けてた気がするから、存在自体伏せておくのが正解かも。
ついてきた2人には外で飲ませたから、他の3人にだけジンジャーエールに氷を入れたのも一緒に配って皆で夕飯を食べ。
色々とお使いの報告を聞いた。
明日のお絵描きと明後日のお茶会はどちらも決行。ミラルダさんへの贈り物はかなり本気で喜ばれたそうで、ウェディングドレスは一週間で仕上げて見せるわぁっ!と気合を入れていたそう。
ということは。宣言のお祭りもそれ以降早いうちにって感じになりそうだね。
屋敷の警備の人たちは明日から庭の寮に住み込み開始。一応あの建物20名まで入れるそうで、ルナの判断で増やしてもいいことに。誓いを立てられれば、信用できるかどうかの判断がかなり楽になると思うしね。警備の人の装備品は汎用で殺傷能力のほぼない、捕縛と防御に特化したものを人数分備品として揃えてしまえばあとはメンテナンスだけというので、警備員の武器類と防具を含めた制服は足りるだけ揃えて良いと指示。
そして商会に行ったリナの報告によると。商会直属の卸売業で雇う予定の冒険者チームの候補選びが始まっていて、まずその1チームにニガブドウ採取の依頼を受けて貰った。そして別のチームにはココアパウダーに1チーム、ココアパウダーの所に近いけど全く未探索の中型ダンジョンに2チーム、こちらは商会組合から直接発注の形で向かわせることにしたそうだ。
本来は、採取依頼で1度に注文できるのは1項目だけ、しかも最下層の作物などは渋られるらしい。
中型ダンジョンはダンジョンの中で最低でも一泊はしないと回り切れない規模のもののこと。普段天人は欲しいものだけさっさと取って必要以上に奥へ行かずに日帰りで帰るため。今回のように全種集めきってこいという依頼は、そんなに長く付き合えないと断るか、入り口までは送ってあげるから潜って取ってくるのは自分でやってくれと放置されて帰りだけ迎えに来るかのどちらかになるらしいのだが。
ニガブドウ依頼がチョーコからのもので、他の依頼はチョーコの作る商会の専業冒険者チームの採用試験と聞いたら、そこにいた天人がかなり積極的に首を突っ込んできて。
チョーコのためならとあっさり付き添いを引き受けて貰えたらしい。
「天人の方々はこの仕事で人間が絶対運びきれないくらい沢山作物を集めたらチョーコ様のお家を見に行けるらしいと張り切っておられましたから。それぞれの中型ダンジョンを取り尽くして帰られるかもしれませんわね」
「わ、わぁ。……でもそれで快く受けてくれたなら今回お願いした天人さんたちは全員呼んで貰うしかないね。人間だけで行ってきてって天人さんが入り口に置いて帰っちゃって、出てくる頃に迎えに来るとかそんなことになったらダンジョン内での事故が怖いもん」
「そうですわね。それと、明日使う道具関連は揃えてございます。――念のため当日アイテムボックスを使わず済むよう、インクや筆など使いたいものはこちらでまとめて預かってお持ちしますからね?先に全部出しておいてくださいませ?」
「あ。はぁい……」
お友達と遊びに行く……!とまたガチガチに緊張したのもつかの間。
今度はマナのお風呂でマッサージという強力すぎる技にやられてしまい。
一晩中あれこれ考えていて起きちゃうなんてこともなく、ぐっすり眠ることができた――




