57.念願のお絵描き
たっぷり作物も核も手に入ったし、ひたすら回収するだけだったからさほど時間もかかってなくてまだまだ明るい。
調子に乗ってもう一箇所回っちゃうか、他のことをするか……と考えていて思い出した。
「そういえば牛の村の長老さんが戻ってるってリィコさんが言ってたような」
「えぇ、長老なら戻ってきてると思いますけど……彼がどうしました?」
「最初、リィコさんが自分用の転送盤が欲しいと言うので絵の具となら交換するって言ったら、絵具は希少だから商売のために使っちゃだめって断られたんですけど。売るためじゃなくて私が絵を描きたいからって言ったら、長老を紹介するって言われたんですよね」
「おぉ!チョーコさんの描く絵は私も見てみたいですね。……行ってみますか?すぐに集まれるかはわかりませんが、声を掛けてみますよ」
「集まれる?……色付きの絵を描けるのなら描いてみたいです!!」
では戻りましょうと、今回はオクティがチョーコを抱え、そこにメイドさんが掴まって浮遊したところで、サニーさんがまとめてテレポートからまとめて飛行させつつ牛の村へ戻るルートでいく。
「わぁ、何度見ても七色草の青い花の色、綺麗……高山の絵の具はあの花から作るんですよね?他の色の花も見てみたいなぁ……」
「高山ではあの花、各色1輪ずつ集めて花束にしたものをプロポーズに使うんですよ。実は、聖域から直接あの花を摘んでいいのは、その花束を作る時だけなんです。あとは、結界より外にはみ出すほど増えた時に、はみ出した分だけは自由に採っていい事になっていますが、とても成長が遅くてなかなか出てきません。絵の具が売るほどたくさんは作れないというのはその辺りが理由なんですよ」
「花を集めてプロポーズはロマンチックですね……。
えっと、聖域の中では供給される魔力が風の柱由来のものだけで、柱からはあまり漏れ出てこないので成長が遅いみたいです。砕いた魔獣の核を撒くと花は早く増えますけど、なんとなく聖域って言われるとそういうものを勝手に撒いたりしちゃいけないイメージありますよね……
結界のすぐ外に撒いても効果はあるので、たまにはみ出すほど増えるのはそういう時なんだと思います」
「へぇ……そういう事だったんですね。他の子達にも話してみましょう、ありがとうございます」
牛の村に着くと、転送盤や訓練生のキャンプ地に近い、一番大きな家へ向かった。
ノックをすると中からややしわがれた「入りなさい」という返事があり、入ると、ゴザみたいな敷物が敷かれた広いテントの中、顔に深いシワがある、かなり痩せて背の低い男性の天人が白く分厚いクッションに座って、木の枝や布などを材料に、ノートくらいの小さなサイズのキャンパスをたくさん作る作業をしているところだった。
「おやおや……これは、珍しい風を感じるねぇ」
「長老。こちらの黒髪の少女が亜人の暴走を止めてくれた人間族のチョーコさん、男性がその伴侶でオクティさん、後の方はメイドとして着いてこられた方々です」
「うんうん。その話はリィコから聞いておるよ。それにその子が纏う風も感じるだろう?」
「エスの祝福を受けているとは聞いていますが……そんなにですか?」
「なんと……サー坊でも分からんのか?嘆かわしい。よいか、風の民たるもの、エスの息吹を遮ってはならぬ。それは死んだ地にさえ命を吹き込むであろうよ。心の赴くままに進ませなさい」
「精進します。……チョーコさんは絵が好きで、絵の具を使いたいそうなのですが、集められますか?」
「あつめる?」
ポロッと呟くと、サニーさんはにっこり笑ってそうですよ、と説明し始めた。
「先程少し話しましたが、絵の具はいつでも手に入るわけではないので、絵を描きたいなと思って花をつみに行って、手に入った色から順に絵の具を作って、揃ったら描くんですけど。
途中で飽きて描く気が無くなったから人にあげたり、人から譲って貰ったから続きを集めたり、揃えて描きたいものを描き終わったら、残りはまた人にあげたりしてますから。
絵に興味を持つ子たちは大体知り合いだったりしますし、知り合いを集めていけば全色揃えられるものなので。絵が描きたければ人を集めるんですよ」
「定期的に人を集めて描いたりしてるわけじゃないんですか?」
「気まぐれな子が多いですし、誰かが描きたいと言った時だけ集まりますね」
「ちょうど先程な、聖域巡りの子供らがこの村に来たら遊びたいと言うておったから、絵描きの準備をしておいでと声をかけておいたよ」
「……長老さんって予知能力とか、あるんですか?」
「そんなもんはないよ。なんとなくな、今日は絵を描くのにいい風が吹きそうな気がしただけだね」
「えっと、ありがとうございます。皆どんな絵を描くんだろ……人気のモチーフとか、描いて欲しいものとかってあったりしますか?」
「思い思いに好きな物を好きなように描けばよいさ。……うん。そうだな、ここではない場所、ここにはないもの……空想?かのう。わしが見たことのないものが見たい」
「長老、いつにも増して妙なことを言いますね……あまりチョーコさんに変な要求をしては困らせるのではないですか?」
「はは、山から出たこともないわしが見たことのない景色など、それほど難しい要求ではなかろうよ。……ただそう感じたのだ。見たことも無い景色が見られる気がするとな」
「えっと……頑張ってみます」
何を書こうかな……と考えている間に、今度は玄関の方から賑やかな声がして、女性の呼ぶ声がした。
付いていくと外のなだらかな草原の中に岩の椅子とこれも岩でできたイーゼルが置かれ、椅子の上にはもふりとした白いクッション、イーゼルには真新しい大きな白いキャンバスが置かれ。
――30人ほどの小柄な天人達が手に手に大小のカゴや手提げ袋を持って、期待した顔で集まっていた。
「えっ」
思った以上にたくさん集まった子たちは、どの子もかなり年若いように見える。呼びに来てくれた彼女に聞くと、絵描きは大人でもたまーにはやるけど、基本的には幼い子にやらせる遊びだそうだ。
絵具を集めるのが大変なので、職業として大量に描いていくのは難しいし。全色集めて回ることで山にある柱のある聖域とその周囲にあるものの位置関係や目印を覚えたりするのにも役立つし、仲間との繋がりも出来るということで、出来るだけ幼い子供のうちに始めさせるのだと。
思った以上に実益重視だった。
子供たちは人間の絵描きさんが来たって聞いたのと口々に言って。何人かは自分で描いたらしいキャンバスを見せてくれたりする。
上空から見た緑一色の端に牛っぽいものが歩いているだけとか
多分絵具の材料になると思う、カラフルな花が抽象的に並んでいたりとか
にやーっと笑うハーピーのドアップとか
本当に塗りつぶしと線の塊にしか見えない、何を描いたか正直分からないものや
写真みたいに細密な竜人の後ろ姿や……
描きたいものを好きなだけ描き込んだ絵ばかりが並ぶ。
すごい、私も描きたい、と声が出ていた。
子供たちの手にした袋から色々出してきたものが集まってくる
大きさや形がバラバラの蓋つきの金属壺は、中身を確かめながら集められた9つ、海で汲んで来たという水の入った小さい石の桶。自分の抜け羽で作ったという立派な筆、パレットに使いやすいという平たい白い石。
案内されるまま席に引き寄せられかけたところで、オクティも描く?と振り返ると、ちょうどオクティやメイドさんたちも子供たちに囲まれて、キラキラと期待した顔で見られたりしているところだった。
オクティも困った様子だったけど。メイドさんたちは「自分たちは使用人で、皆さんが苦労して集めた希少な色絵の具を無駄に消費したくないので、こちらに回す絵の具があるならチョーコに多く描かせてあげて欲しい」という断り方をしていた。
ちょっとアイテムボックスを探すと、乾くからお絵描き部屋に出さずに入れっぱなしだった、膠入り黒インクの大きめの金属壺と刷毛が入っていたので、それをオクティたちの方に持っていく。
「ほら、こっちならいっぱい使ってもいくらでも追加で作れるから、無駄遣いしても平気だよ?」と渡したら。
天人たちの中で特に子供らしい背の低い子が、さっき長老が作っていた小さいキャンバスを3枚持ってきてオクティ達にくれた。
「絵、絵かー、自信ないけど、チョーコが言うならやってみるか」
とまずオクティが牛たちの方へ歩いていった。
メイドさんたちはだいぶ迷ったけれど、比較的年齢高めの子の方へ歩いていって、書き方を教えて貰えますかと話しているようだ。
私の方は何故か「はやくはやく!」とちゃんと席に座るようにと招かれ、大きいキャンパスが何枚も隣にある。
しかもパレットの準備も子供たちが手伝い、金属壺の中に入った色の粉をスプーンで石の上に全色並べて置いて水を垂らして混ぜてくれる。
はい、と持たされた筆は羽毛の芯の部分を外してしっかり繊維の向きを揃えて束ねられ、元が羽毛とは思えないほどちゃんと筆になっているものだった。
「あ、ありがとう!」
なんでこんなに私だけ至れり尽くせり構われているのか分からないけど、念願のフルカラーお絵描きの喜びを前に細かいことは一旦考えないことにする。
何を描こうか、と並んだ絵具を見つめていると。
ーー色の中で一番美しく深い色に見えたのはやはり青。青に少し黒を混ぜたら記憶にあるあの青い海の深い水の色。
白を混ぜたら光が見えて、波打ち際の白い泡と砂、一気に脳裏に浮かび上がってその光景が止まらなくなる。
――キャンバスに青を広く乗せる。
イルカや亀、クマノミが泳ぐ海の底、遠くに見えるクジラや鮫のシルエット。通り過ぎていく小魚の流れるような群れ。どこまでも青い海に光が差し込んで、白く浮かぶ海底の砂。
底には真珠を持った二枚貝や巻貝、華やかな色とりどりのサンゴ。
そして、その中に胸や髪に貝殻を飾った、金色の髪にピンクの尾びれの人魚を描いた。
魚人のローレライには絶対に居ないカラーリング。青い海や、見たことのない生き物たち。
天人たちには空想の海だと思われているようだけど、本当にこんな海があるみたいに見えるね……という感想が多いみたい。
皆で見せて見せてと回し見されていく。
『チョーコが居た世界の海は、青くて綺麗だったんだね』
ふと振り返ると、オクティがこっちを見つめて微笑んでいた。
『うん……あっちの世界に魚人はいなかったけどね。でもね、子供向けの物語の中に出てくる人魚姫っていうローレライのお姫様は、いつもピンクの尻尾で描かれていたの』
急に色々思い出してきて目頭が熱く感じられてきたら。
オクティが立って歩いてきて、周りに顔が見えないように抱きしめてくれた。
『ありがと』
「あれ?お兄ちゃんたちどうしたのー?」
さっきの一番小さい子が気付いて話しかけて来た。
「んー?俺1人であっちで描いてても寂しいから、チョーコが描き終わったみたいだし構って貰おうと思ってさ」
「そっかぁ、お兄ちゃんはお絵描きよりもお姉ちゃんがだーい好きなんだね!」
「そうだよー」
「ちょ、ちょっとオクティ?!何言ってるの」
涙が吹っ飛んだのと同時に頬が赤くなってしまう。
「しょうがないだろ、これ使って話すと心の中まで正直に伝わっちゃうんだからさ」
「あぁぁっ、オクティだったら余計なことは隠すとか簡単なはずじゃない?!」
「えー、俺は別に隠すことだと思ってないし。余計なこととも思わないね」
「もう、恥ずかしいから!……オクティがどんなの描いたのかも見せてよ!」
ぐいっと押すと、笑って取りに行って持ってきた。
おぉ、すごく……丑年です。
牛の顔のアップが簡略的に筆書きされているところが和風感満載で、端に年号でも書いたらそのまま年賀状として出せそう。
「初めて描いたんだとしたら、すごいセンスあるかも……白黒の略画なのにちゃんと牛って分かる」
「そう?ありがとう。いる?」
「うん!せっかくだから寝室とかに額に入れて掛けとこうかな」
「えー、アイテムボックスでいいよ。飾るならチョーコのにしない?」
「私はこっちが好きだよ?私が描いた方はどうしようかな、サニーさんへのお礼になるならあげようかなとも思ったんだけど」
「え、あげちゃうなら俺もなにか欲しい、もう一枚描いてよ」
「正直この絵は見てると色々思い出すからあんまり手元に残す気がなくて……んー、分かった、何か描いてみるね」
オクティが使い終わった黒のインクと刷毛を持ってきて、新しいキャンパスを眺めてからざっと当たりを付ける。
細い筆で色とりどりの薔薇や蔓草や大小の花々、長かったり丸かったり尖ったりしている葉、尖塔のある石造りの洋館を背景に狂ったように繁茂する草花を描いては黒を足し。地面も空もほぼ全てに黒を載せる。
空には白く、少し大きく見える月。
照らす光は青白く、花々を浮き上がらせる。
サキュバスたちが空を舞いながら仲良く仲間と笑い合い、コウモリと黒猫が目を光らせながら闇に潜み、ヴァンバイアがベールで顔の見えない真っ白な衣装の女性を隣に座らせてワイングラスを傾けて。
「これは、不死族たちの……?」
描きあげた絵は、結構それっぽくなったと思う。
「色々話を聞いてる時に、なんとなく、元々はこんな感じだったのかなって想像してて……」
二枚も大きいのを描いたら、流石にかなり描きたい欲は満足したので、ふぅっと息を吐いて席を立ち、身体を伸ばす。
メイドさんたちはどうなったかな?と見回してみたら、二人で組体操?雑技団?不思議なポーズを取った一人の肩にもう一人が乗って、そこで更に別のポーズを決めているという。
ゆうに子供たちの半分以上の人気を独り占めでモデル役を務めていた。
何分くらいか分からないけどしばらく眺めて気がついたら、いつの間にかイーゼルのある席では3人くらい集まって大きいキャンバスに寄ってたかって別の絵を描き始めており、私の絵は踏まれたりしないようにちゃんと2枚とも石の上へ綺麗に並べて乾かされてる。
たたたっと、駆け寄って来た子がインクで使っていた刷毛を持ってきた。
「これ、私の筆とこうかんしてっ!」
どうやらこの子は太い線が描ける筆を作ろうと挑戦したらしい。習字の太筆よりひと回り太いくらいの筆を持って来られた。とても作りが丁寧で綺麗に穂先が揃っている良い筆だけど。確かにこれでは刷毛のような幅のあるごつい線は引けないだろう。
「いいの?私はこの筆すごい好きだから、それで良いなら交換するよ?」
「わぁいやったあ!」
その子が去ると次の子がインクの壺と一緒に、新しい石のパレットの上に黒以外の8色の粉をそれぞれ数回分は使えそうなくらい盛ってあるものを持って来て。
「わたしも夜の絵かくの!黒いっぱい使いたいの!これとこうかんして!」
わらしべ長者みたいな気分になってくる。
「えっ、え、本当に良いの?花集めるの大変なんでしょ?」
「いーよ!お姉ちゃんの絵すごかったもん、また描いてね!」
「そ、そっかぁ、ありがとう。また描いたら見せに来ようかな」
「うんっ!」
アイテムボックスはそのまま入れてもこぼれたりしないから、本当助かる。
片付けて乾いた絵を手に取ると、そのタイミングでゆったりと歩いてきた長老さんが声を掛けてきた。
「どうだい、満足いく絵は描けたかい?」
「はい、ありがとうございました。これ……今日描いたやつです」
差し出した絵を受け取って、目を細めて微笑んだ。
「おや、不思議な色の海だね……とても深い青に引き込まれそうだ。山から見える海とは違うが……何故だろうね、本当の海はこんな色だと言われたら信じたくなる感覚があるのは。いつか本当にこんな海を見られるかもしれないね。
こちらの夜の絵も、うん……今は亡き在りし日の幸せ、なのかな。死者の思い出のような、皆笑って幸せそうなのに、何か悲しい気分にさせられる。これも……良い絵だねぇ」
かなり長く眺めて、長老は深く満足そうなため息とともに、お礼を言って絵を返し。チョーコも返された絵を改めて見て、一旦アイテムボックスにしまう。
「わしはいつもここにいるわけではないが、サー坊やらリィコやら、あちこちに声を掛けて人を呼べる子らは誰かいるからね、描きたくなったらいつでも遊びに来なさい」
「はい、ありがとうございました」
さすがに結構時間が経っていたみたいで、日はだいぶ傾いてきている。
長老がのんびりと家に戻っていくのと入れ替わるように、サニーさんが様子を見にやってきた。
「おや、もう描き終わったんですか?」
「あ、はい。これだけ描かせてもらったので満足です」
2枚を出して見せると、サニーさんは小さくおぉ、と声を上げて絵を手に取った。
「今日は色々貰いすぎた気がするので、どちらか一枚お好きな方をどうぞ」
「……いいんですか?私は海の方が好きですね。夜の方は、何故か胸が詰まるような気持ちになります」
「ではそっちを今日のお礼ということで」
「ありがとうございます……また次にダンジョンを探索したくなった時も、宜しければ声を掛けてくださいね」
夜の方を返してもらってオクティを見ると、とても分かりやすく一枚目を取られたと顔に書いてあって少しだけ笑ってしまった。
「オクティが描いて欲しい絵もあれば帰ってからじっくり描こうかな、何か好きなモチーフある?」
チョーコが描くならなんでも、という言葉を飲み込んだと判る間の後に出てきたのは「チョーコの自画像」だったので、また少し笑う。
話している間にモデル業が一段落したのか、メイドさんたちが揃ってこちらに来た。
「そろそろ戻られますか?」
「あ、うん。メイドさん達は描かなかったの?」
「好きに描けば良いんだよと言われましても、よく分かりませんので……」
「描いて頂く方が面白かったですわよ?わたくし達を見ながら描いているはずですのに、出てくる物は全部が全部、全く違いますの」
「中には青や緑で塗っている人もいらして、驚いてしまいましたわ?」
「あー、あるある。なんでその色で塗った?!って思うような絵ってあるよね。私は自分で描くけど、確かにそういう楽しみ方もありかぁ」
「チョーコ様たちも満足そうなお顔をされてらっしゃいますわね」
「うん!楽しかった」
「では帰りましょうか。食料庫の改装は済みましたから、そろそろ本格的に新居の方へお移りになりますか?」
「あ、そういえば調理台とか、もう揃ったの?」
「薪を入れられるかまどと排水のできる流し台、広めの調理台は少し前に完成していたのですが、実はもうひとつ最新設備が開発されましたので追加しておりましたのよ。先程、それも届いたと連絡を受けましたわ」
「え、最新設備?!なんだろ、気になるーっ」
「それはお引越し後のお楽しみかと」
「うぅ、それは気になりすぎるし、かまどとかは出来てるなら……オクティ、もう移っちゃおうか?」
「そうだね。チョーコがメイドのいる生活への拒否感を持たないかが心配だったけど、思ったより受け入れやすかったみたいだし、今日から引っ越そうか。前の家の物の見直しは手が空いた時にやろう」
「うん!お絵描き部屋のものは自分でまとめて運んじゃうから、後は倉庫の中だけね」
サニーさん達にも帰ると挨拶をしたあと、転送盤の所で碑文の複製のことを思い出したので、ちょっと洞窟へ寄り道して、どうせ後でまた追加があるだろうから10枚まとめて注文。
オリーブオイルの実を見せて、小人さんも油は必要かと聞くと、芋を熱した油でカラッと揚げて塩を掛けたやつが大好きなのだけど、油単体を集めるのは結構大変で滅多に作れないんだと言うから、皆で使って欲しいとオイルの実を10個あげたら。
タダじゃ貰えねえ!と粘られたので少し考え……
金属加工の技術が得意なドワーフさんなら出来るだろうと『圧力鍋』と『フライヤー』を注文。
どちらももうある、と言って見せて貰ったんだけど。イメージと違ったので紙と万年筆を出してデザイン画を描いて渡した。
揚げ物は単純に鍋で作っていたから、油を熱する四角い鍋の中にセットできるカゴのデザインを見せたらテンションが爆上がり。
圧力鍋も、小人は熱した金属を素手で掴んでも火傷しないらしくて、小さい金属のバルブみたいなのを開け閉めするデザインだったのを、長めのハンドルで取っ手が熱くならず、テコの原理で楽に開閉できるデザインにしたら大興奮。
納得いくものを作りたいと言うし、今日はもう遅いので一旦帰ってまた後日来ると伝え。
改めて、新居への引っ越しをすることになった。




