表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/90

56.ダンジョン散歩

早速メイドさんたちも連れてそのまま山へ飛ぼうと皆と手を繋ごうとしたらなぜかスルーされ、ニナとリナが素早く前後について外へ誘導される。

あれっと思ったら店の少ない通りの角を曲がってすぐに周囲を確認して「こちらでしたら、周囲に人の気配はありませんわ」と小声で言ってから2人が手を差し出してきた。


「あ。ありがと……」

「俺からもありがとうな。チョーコの能力についてだが、他の人族にはチョーコがエスの祝福を受けててテレパシーやアイテムボックスが使えることも、転送盤や翻訳機を作れて使えることも伝わってるから。『転送盤を使わないテレポート』だけ気を付けて貰えれば大丈夫だ」

「「はいっ」」


返事をしたあと、ニナは改めて周りを再度確認した上で更に声を潜める。

「天人達が使うものとはどこが違うのですか?」

「テレポート自体の能力は同じなんだけど、違う能力と組み合わせてるから、私は天人さんが目的地に選べないところへも飛べるの。大体は転送盤を使ってるって思われてるはずだけど、天人さんなら私は私が作った転送盤を目的地にテレポート出来るはずって思ってると思う」


「つまり……転送盤の製作者であればテレポートも使えるだろうと認知はされている。そして、天人のやり方を前提にするなら自作の転送盤を目的地にしていないとおかしいので、違う所へ行けることは伏せている。という理解で宜しいでしょうか?」

「うん」

「概ね、警戒が必要なのは帝国内だけですね。ご説明ありがとうございました」


いつも通り牛の村に飛んだら、今日はガルドさん夫妻が牛たちの乳しぼりをしながらのんびり笑っていたところで、すぐにこちらに気付いて振り返る。

「おぉ?!お前たち、昨日は不死族に会いにいったんだろう?無事だったかっ!」

「こんにちは。はい、炎人さんが協力してくれたおかげもあって、スムーズに仲良くなれそうなんです」


「あんたたちは本当に無茶をするよねぇ、いつだって驚かされてばっかりだ。今日はどうしたんだい?訓練生たちのお迎えってわけでもないよね」

「お迎え?」

「昨日、夜に訓練生たちの騎乗訓練が一通り終わって。今日の朝からおさらいして、問題なければ国に戻って良いって話だったのさ。

昼くらいかな、卒業の儀代わりに自力で自分の街までワイバーンで飛んで帰ることになったから。それぞれ安全のために天人たちを1人ずつ乗せて無事に飛びだしていったよ」


「あぁぁ、そうだったんだ……入れ違いになっちゃった」

「パリィたちの卒業を見られなかったのは残念だが、もう出発したなら仕方ないな。街に戻っても暫くは次のチームとの引継ぎとか情報のすり合わせとか、今後のワイバーン部隊が受ける予定の任務についてとか、能力確認とか、やることが山積みだからすぐには会えないだろうし。ダンジョンをどれか1つ見に行って、帰ってから祝いに行けばいいさ」

「そうだね。ダンジョンで新しい食材見つけてお土産に持って行ってあげよ!」


「あんた達、今日は未踏ダンジョンの開拓で来たのかい?この近くにも小さいのが3つに中くらいのと大きいのが1つずつあるけど場所を教えようか」

「助かります!じゃあ前に行ったのはあそこの黒い岩の方に向かって一番近くにある小さいダンジョンだったので、他の小さいのに行ってみたいです」

「あぁ、一番小さいのはもう行ったんだね。二番目に近いのはこっちだ、付いてきな。あんたー、ちょいとあたしが送ってくるよ」


いつものようにオクティがチョーコを抱えたので、ナチュラルにラルーダさんはメイドさんたちを両手で片方ずつ小脇に抱えようとしてくる。

慌てたメイドさんたちが2人とも飛行は無理だが浮遊だけなら出来ると主張し。それなら両手に1人ずつ手を引いてあげるから一緒に飛ぼうね。と手を握るラルーダさんには、すっかり飛び始めた小さな子の練習を見守るような顔をされてしまった。


ふぐぐ、と子ども扱いに物申したい顔をしている2人がなんだかすごく可愛く見えたというのは言わない方がいいかな。


ラルーダさんに先導して貰って5分も飛ぶと、絶壁のように切り立った壁面を見せる山の崖部分の中腹に斜めの亀裂が走っているところが見えてきた。

「ほらあそこの山の壁、大きい傷が見えるだろ?あの傷のてっぺんがダンジョンの入口になってるのさ。ハーピーが入口に巣を作ってるからたまに卵を取りに行ってたんだけど、先週くらいに行った時は引っ越しちまったみたいで巣にいなかったんだよね。近くて行きやすかったのに残念だよ」

「なるほど……道案内ありがとうございました。もしハーピーが戻った来てたらお知らせしますね」


メイドさんに手を伸ばしてチョーコの腕に掴まって貰うと、オクティが支える。ラルーダさんは気を付けて行っておいでよー!と子供が遊びに行くのを見送るような雰囲気でそのまま帰っていった。


人目が無くなったのでテレポートで亀裂の近くへ飛んでみても特にハーピーの羽音だとかそういうものは聞こえないみたい。

一応警戒しながら近付いてみると、亀裂から緑や茶色が混ざったようなドロドロが溢れてはどんどん下へ落ちて潰れて自爆している……オクティと出会ったダンジョンに居た強酸体液のスライムそっくりだ。


「ひぃぃ、スライムめっちゃ溢れてる……」

「怖いとかではありませんけれど、あれだけ大量に居ると、気持ち悪いですわねぇ」


下の潰れたスライムだけど、凄い量が溜まったまま蒸発してない……くっついてキングはぐれスライムみたいになろうとしてるんじゃ?


と、急にぐんっと視界が揺れて上へ逃げた。慌ててダンジョンの穴の方を見たら、ダムの放水みたいな勢いで酸性スライムが噴き出してドバドバ落ちていっているのが見える。

「えぇぇ……あれなに」

「今ちょうどダンジョンブレイクが始まったみたいだな。おそらくこのダンジョンにいたハーピーが巣を捨てたのは、スライムが溢れる予兆を感じたんだろう」


「そういうことかぁ。うーん。天人さんたちがダンジョンブレイクするのを待って上空から魔獣を一掃するのが楽って言ってた意味、ちょっとわかったかも。確かにこの穴に入り込んでスライムを倒して回るより、噴き出し終わるのを待って空から倒そうって思うよね」


「特にあのダンジョンは通路が狭そうだしな。まだまだかかりそうだからちょっと待つか」

とオクティが言って、そのまま上の崖の縁まで飛び、崖下が見下ろせる岩の上にチョーコを抱えたまま座る。メイドさんたちも若干高さに顔を引きつらせつつもオクティと同じように縁に座って下を眺めた。


「オクティ?下に溜まったスライムも、あのダンジョンのアンデッドみたいに合体して巨大化したりするのかなぁ」

「共食いはしまくってるけど、変化するかは……どこで決まるんだろうな?そういえば海で見たでかいのも、普通に海で見かける種類とはかなり形が違った気がする。んー、そろそろ全体の半分くらいになるかな、まだまだ続きそうだ」


長いなー、と待っていたら、なんとなく白っぽい光とキラキラしたものが視界の端に写りこんで、そっちを見る。

優美に翼を羽ばたかせながら天人の男性が吹き出しているスライムたちの方へ向かっていた途中、近付いてからチョーコたちに気づいたようですぐに上へ飛び上がってきた。


「あ、こんにちは」

「チョーコさんとオクティさんじゃありませんか。隣の双子のお嬢さんは初めて見ますが可愛らしい方々ですね?私はサニーです、お見知り置きを」

にっこりと文字通り天使の笑みを浮かべるサニーさんに、メイドさんたちは若干はにかんだ表情を浮かべてる気がする。

「まぁお上手、うふふ」

「わたくし達はこちらのおふたりに仕えるメイドになる予定ですの」

「メイド見習いですか、若いのにもう働いているなんて立派ですね。……それでどうしたんです?チョーコさん達が変なところにいらっしゃるので驚きましたよ」


「今日はお休みなので新しいダンジョンの探索でもしようと思って。2番目に近い小さいダンジョンをラルーダさんに教えて貰って来たんですけど、ちょうどダンジョンブレイクが始まるタイミングだったみたいだから、終わるのを待ってました」

「私も周期的にそろそろのはずなので見回りに来たんですよ。……そういえば前回のダンジョン踏破の時、オクティさんは魔獣の核を回収してましたよね。集めるのならなるべく砕かないで倒しますけど、要りますか?」

「手間をかけてすまないが集めたい。新しく不死族と付き合いを始めることになって、今後継続的にかなり大量に核が必要になるから、ダンジョン探索に来る人間の冒険者は皆、核も集めていくようになると思う」


「昨日、炎人にも不死族について聞きに行っていたというお話は噂になってますけど、無事に交渉成立出来たんですね。……それでなぜ核が必要に?」

「えっと、山だと竜人さんの間で不死族は滅びを呼ぶ種族とか呼ばれてますよね?それはーー」


瘴気を上限の制限なく吸い続けて魔獣を湧かなくさせ、ダンジョンを枯らす体質、それでいて周囲に生き物が居なくなってしまえば飢えて暴走し、見境なく襲って共食いもしてしまう問題を抱えていたこと。


しかし、ダンジョンを枯らす体質は既にダンジョンが枯れている地域から出ないことを約束してもらい。魔獣が湧かず核が取れないために植物が育たなくなるのなら、他で集めた核を撒いて人工的に育てればいい。

暴走さえ抑えられば凶悪な種族ではないし、充分手を取り合えると思えたので、凍土復活にも協力して貰うと決まったこと。


「ーーというわけで、皆で沢山魔獣の核を届けようってことになったんです」

「なるほど……私たちの中では風の魔法が一切通じない上に魔力の高いものを好むので、捕まったら二度と逃がして貰えない危険な人々だと聞いて避けていましたが、そういうことでしたか」


「平地に住むなら誘拐とか監禁とか薬で洗脳とかはダメって約束してるし、無理矢理魅了の魔法でとかはもう無いはずですけど。……天人さんが彼らに好まれそうっていうのはかなり本当なので、もし出会ったら熱烈に口説かれるかも?」

「うぅーん、私は近寄らないでおきますね。遊びでお付き合いするのは趣味じゃないですし、お付き合いするなら昼の空を一緒に飛べるような人がいいので。ーーあ、ようやく吐き出し終わったみたいですので、核だけ集めてきちゃいますね」


「あっ。手伝……う必要無さそうかも」

ふわっと高度を下げたと思ったら、竜巻が意志を持ったようにスライムたちを巻き上げて、大きく切り刻みながらサニーさんの方へ一直線、それを煙にならなかったスライムごと、アイテムボックスの袋へザラーッと流し込んで終わり。


手伝うかどうかを迷う間もなく終わって帰ってきたので、こちらも袋を出して受け取った。

真っ二つになっているものとかもけっこうあるけど、撒く時は全部砕くから問題ない。


「ありがとうございます!んー、お礼どうしましょう、希望ありますか?」

「大した手間でもないので構わないですけど、このダンジョンを調べに行くのなら、興味はあるのでついて行っていいですか?」

「それはむしろ護衛が増えるというか、助かります」


「ではこちらのメイドさんたちは私が運びましょうか」

笑顔ではい、と両手を差し出されて、メイドさんたちは揃って一度こちらを見る。

「大丈夫ならお願いしていいと思うよ?」

「どうしました、不安なら抱っこしましょうか?」

「「だっ、いえ……握手でお願いしますわ」」


緊張というか、色々葛藤があるのか。ラルーダさんの時は普通に掴んでいたのに、今はいつもの思い切りのいい態度とも違って2人ともかなり遠慮がちにサニーさんの手にそっと掴まった。


「はは、怖くないですよー?私、子供にはわりと懐かれる方なんですけど。かなり緊張されてますね。見慣れないからですかねぇ?では行きましょうか」

ふわっとメイドさんたちの身体が浮いて、オクティもチョーコを抱えたまま飛んで降りていく。


先程強酸スライムが吹き出していたけれど、入口は既にもう痕跡が蒸発してただの岩穴が開いているだけ。


近付いてみて分かったけれど、入口の下の亀裂は、毎回ダンジョンブレイクの度にスライムが少しずつ岩を溶かしたり削ったりしながら落ちていった跡だったみたい。


これは中もうようよしてる?と思ったら、ダンジョンのタイプにもよるけど、ブレイクした直後は一旦空っぽになるのが普通らしい。本当に何も気配は無い。構造自体は前回とよく似た土のダンジョンだけど、壁のつるが緑一色で、そこに真っ赤な実が並んでいて、バーティーの電飾みたい。


「ここは確か甘くない実ばかり生っているダンジョンだったと思うんですよねぇ……チョーコさんが調べたらまた何か見つかるのでしょうか」

サニーさんはメイドさんたちと両方の手で1人ずつ手を握ったまま誘導していて、2人共ちょっぴり緊張と困惑が混じっている顔のまま黙ってついてきていた。


甘くない赤い実、ということで近付いてみると、すごく覚えのある香りがする。

「これもしかして……あ、やっぱりトマト?!わー、草とつるしかないっていうから、無いかと思ってたぁ!」

形は本当にオーナメントかってくらいまん丸のパンパンに膨らんでいて、大きさだけ普通のサイズまで育ったミニトマトみたいな見た目。


早速台にする木箱を出し、まな板とナイフ、皿、チーズ、塩コショウを出して切って重ねてカプレーゼにした。オリーブオイルも掛けたいけどこれだけでもまぁ、美味しいよね。

トマトの中には種のドロッとした部分がなくて実がみっちりなのでいつもの感覚とは違うけど、少し酸味強めで野性味のある美味しいトマトでチーズにすごく合う。


「んん、組み合わせはサラダのように見えますね」

「カプレーゼっていうの、これにオリーブオイルとかバジルを加えても美味しいよ」

「チーズと合わせる料理か、美味そうだなぁ」

「オクティはチーズ好きだよね、皆食べてみて?」


早速皆に味見をして貰ったら、ちゃんとサニーさんも美味しいと驚いて、なるほど見た目と違って野菜なんですね。チーズや塩と合わせるとこんなに美味しいとは……と驚いていたので、今回はそのまま食べられるものだし半分ずつ山分けにしようとしたら、入口すぐそばでいつでも取りに来られるので、食べたくなった時に来て摘みたてを食べますと、また全部貰ってしまった。


初っ端から欲しいもの見つかって嬉しくなってテンションが上がったまま、お部屋の方は何かなーと中に入ったら、全く見た事のない、いちごみたいに鮮やかに真っ赤な、でも形や大きさはプラムくらいの、1本ぐるりと溝のある丸い形の果実っぽいものだけが床いっぱいにぎっちり並んでいる。


葉はなく茎も地面から実までの短いものしかない。つつくと……軽くて硬い。

「えぇ、軽い、硬い、見た事ない……なんだろう」


手に取ってみると軽くて固くて、簡単に茎からポロッと外れ、乾いた手触りで、振るとシャラシャラ粒状のものが擦れる音がする。

「マラカスみたいな楽器として振って鳴らしたら見た目も可愛いしちょっと楽しいかもしれないけ……え?!『コメの実』ってなに?!」


卵みたいにヒビを入れてパカッと割るらしいので、蓋の厚い鍋を用意して割り入れてみると、ざぁっと白いつぶつぶが流れ出した。ぬか除去済みの米粒そっくり。ご丁寧に実1つが大体米1合相当。

「うわこの香り、本当にお米だぁ……炊くのは時間掛かるから後で試そっと!」


「オコメって何なんだ?」

「主食、うーん魚人さんたちから分けてもらった小麦に近いかな?あっちは一度粉にしてから色々混ぜたりこねたりして焼くか煮るかして食べることが多いけど、こっちは水草みたいに粒そのままで料理して、味の濃いおかずと味付けしてない炊いただけのお米のセットで食べるの」

「水草も煮て柔らかくしただけの粒を味のついた飲み物に入れて飲むから、似たような感じかな?どうなるのか楽しみだ」


割れた赤い殻の方も色がめちゃくちゃ鮮やかだけど、なにかに使えたりする?と調べてみたら、ようは食紅というか、煮溶かすと食べても平気な赤い染料になる味のない殻。

殻は乾燥させておけば保存出来るけど、煮てしまうと数日しか持たないので使う直前に煮て使う。


ニガブドウで色止め可能だけど、もちろん味に影響が出るので食紅としては使えなくなる。

オレンジに続いて赤ゲット!染料としては赤って使いやすくていいよね。


「殻の方も赤い染料が作れちゃいそう!染料は数日しか日持ちしないけど食べ物に混ぜても無害だって」

「あら……食べても無害で、こんな美しい色の染料ですの?それは興味ありますわぁ」

「私が欲しいのは中身の方だから、色々試したいならあとで殻だけまとめて渡すね?殻のままなら乾燥してるから長く保存できるみたいだし」


皆でせっせと回収して、また全部チョーコが貰うことに。


「サニーさんにお礼に何かと思ったのに、貰ってばっかり……」

「私はこんな可愛い子たちに囲まれて両手に花ですし、知らなかった使い方を知れるのでこれで良いんですよ?」

可愛いという表現が、女の子としてではなく子供としての可愛いの意味だなと段々分かってきて、ニナとリナはまたちょっと不満げに見えたが、表情はかなり抑えているというか、頑張って笑顔を保ってるのは分かった。


「サニーさんがそれでいいならいいんですけど。――あ、えっと、メイドさんたちはもう14才で仕事もして一人前だから、あんまり子ども扱いされると嫌われちゃうかもですよ?」

「え……人間族は14でもう大人なんですか?天人も竜人も20年ほどで身体が大人になって、そこから実力を認められてようやく一人前という感じですから、子供扱いというか、見習いとして実地で勉強中の子供だと思っていたのですが。そういう事でしたら失礼でしたね、すみません」

眉を下げて素直に謝られると、メイドさんたちが狼狽え始めた。


「あっ、気にしなくて宜しいですのよ。種族が違えば成長も違いますもの。ですが、人間の中でも14は独り立ちには早い方ですの、わたくし達は優秀だからと早めに出されましたので!」

若干得意げに胸を張るのが可愛い。それはサニーさんも思うけど言わないという顔で再びにっこり笑顔を浮かべている。


1階は3部屋連続コメで、ここは全部これだけなのかなと思ったら、あとの2部屋にはカボチャがあった。


カボチャ、だよね。スイカじゃないよね?と疑うサイズ。

手に持ってみると間違いなくカボチャだとわかる。多分種の所まで実がぎっちりなんだろう、これは割るのに斧が必要ってやつだ、めちゃくちゃ固いし重い!


「これはカボチャで、固いけど火を通すとすっごく柔らかく甘くなるし、けっこう使い道が多い野菜なんですよ」

説明しながらとにかくどんどん集めて先へ進む。


このダンジョンは6階まであり、最下層はかなり広く……コメの実をスイカサイズまで膨らませて色を真緑にしたようなものが、これまたみっしり床一面にひしめいている。


でも今度は軽くない。確実に液体が満タンに詰まっている手応えがあった。

「最下層で液体だとお酒かなって思うけど見た目はこれもスイカーーえっ油?オリーブオイル?!」

「あぁ!それ油だったんですね?通りで飲んでも美味しくなかったわけです」


「炒め物とかの料理に使うのはもちろん、そのまま少量を髪や肌の保湿のために塗ったり、サラダに塩と混ぜてかけても風味と香りが変わるし、さっきのトマトとチーズとも合うし、これだけの量があれば揚げ物なんかもできちゃうかも……アヒージョも良いけど貝はないか、ポテトにトマトにオリーブオイル、ニンニク、チーズ……わぁぁ、そろそろイタリアンなら色々作れそう!こんなに揃っちゃうなんて!」


「今、新しい料理より気になることが聞こえましたわ……」

「「肌や髪の保湿……?!」」

「ん?肌にいいものだと、牛乳から抽出した生クリームも肌に塗ったりお風呂にちょっと入れたりすると良いとかあるよ?あ、オクティ、オリーブオイルは属性あるのかな」

「ん?――いや、この油は最初から無属性だ。うん、クリームとも相性が良さそうだし、確かに髪や肌の保護や回復にもかなり役立つだろう。

あぁチョーコ、これは火の大陸の魔人族がかなり欲しがるんじゃないか?アルコールみたいに魔力回復効果が付いてるわけじゃないから、不死族はそれほど欲しがらないかな」

「「……!!あのっ、このオイルの実を1つと、あとで牛乳を村から少し買えますか?」」

「お嬢さんたちは肌が若々しいから、流石にまだ気にしなくてもいいのでは?」

「「主人の美容を保つ技術と知識は常に最先端でなくてはメイドの沽券に関わりますわ!」」


「そういえば私も……ミラルダさんにクリームとオリーブオイルは定期的にプレゼントしたいなって思ったんだよね。天人さんみたいにアイテムボックスが無いと一週間くらいしかもたないから毎週使う分だけ届けてあげたらいいと思うの」


「牛乳でしたら持ってますけど。チョーコさんが沢山欲しいのなら私から1本差し上げましょうか」

といいつつ出てきたのは業務用の大きい方の缶丸ごと。

「え、サニーさんが使うから手に入れたんじゃないんですか?」

「はは、あの村に長くいるとラルーダさんが時々ご褒美と言ってこのサイズでくれるものですから、使いきれなくて」


「えぇぇ、ありがとうございます。けど、本当に色々貰いすぎかも。うーん……」

缶を受け取ってアイテムボックスへ入れ、オイルの実も端からゴロゴロと回収し、これは最下層まで降りてくるのも面倒だろうから分けると言ったら2つだけサニーさんが受けとってくれた。


なにかお礼かぁ、どうしようかなぁ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ