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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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55/90

55.ようやく休日

かなり夜遅くまで続いた宴会交流のおかげで、分かったことは多かった。


まず彼らにとって熱い食べ物や火の魔法というのは、ダメージを受けた回復にエネルギーを使うのか空腹を加速させる効果があるため、飢餓状態で炎を浴びたりすると完全に暴走のスイッチが入ってしまう。パワーのある火の種族ならともかく、人間が火の魔法に頼ろうとするのはむしろ危険であるということ。


食べ物はわらび餅や氷が入ったお茶など、加工に火の魔力を使ったものでも冷えていれば大丈夫だし、火の地域で取れる芋類やシイタケも試してみたけど平気、ただスパイスやカレー粉の類は全部ダメだった。


味覚的には別に不味いわけではないけど、食べれば食べるほどお腹が空いていくのが自覚できるほどで、不死族にとっては暴走させる毒薬。火の属性の人間の体液もとても刺激的な味で食欲が進むので、ヴァンパイアの場合はつい吸い過ぎて死なせてしまうことが多いそう。

たまたま遠征隊に居た火属性は魔力が弱めの冒険者2人だけだったので、どちらもサキュバスたちのグループに居て無事だったけど、危なかったのね。


彼らは大体、平均的な人間族であれば不死族の人数の10倍くらいが出入りしていてくれたら、一切触れ合いが無い状態でも暴走はまずない。ということらしいので、2千人全員がこちらに一時避難したとしても、人族が2万人くらいこの地域で働くか出入りすれば暴走の心配はないということになる。


でも2万で済むとなると、人間の場合は数が多いので。逆に人が集まり過ぎて瘴気が増えたらやっぱり魔獣が湧いてしまうのでは?と疑問が出たが。

魔獣と同じく心臓の核は吸えば吸うだけ育っていくため、満足はしても満腹というものは存在しないのだそう。どんなに人が集まり過ぎたとしても、意識して瘴気を吸わないように気を付けない限り、魔獣は湧かないしダンジョンも枯らすし不死族たちが強くなるだけだという。


それは……滅びを呼ぶ種族とかそんな呼ばれ方をしてしまっても仕方が無いような気がしてしまった。


もうだいぶ長いこと出来ていないけど、不死族の核がある程度成長すると、過剰な部分を自由に排出することが出来。魔獣を駆逐する代わりに育ち過ぎた自分の核を弄ってから撒くことで薬効のある植物を自在に生み出せるそうだ。


話を聞いていると、ミントやアロエやラベンダーのような軽い効果のものから強力な麻酔や筋弛緩剤、睡眠薬といった本当に薬剤らしい強い効果のものまで。

おそらくハーブの一種と呼べそうなものは大体なんでも生み出せる?――あぁアロマオイルが取れるような植物はほぼいけるらしい。ラベンダーもそうだけど薔薇とか香りに効果がある花の類がかなり豊富なのね。今は凍土化してしまったということだけど、本来の死の大陸は霧に覆われて常に夜の国の中で、色々な花や薬草やハーブ類が狂ったように育っている世界、だったのかなぁ……


うーん。魅了の毒と安全地帯だけでも狙われる可能性はあると思うけど、別の薬も自在に生み出せるとなったらますます危険だよね……不死族側も誓いの碑文で誓っていない人間を信用しすぎないようにと何度も繰り返し念を押しておいた。

生成したハーブや魅了の毒の譲渡や、指定外の平地への出入りに関しては本当に気を付けて欲しい。


食べ物関連の話から、不死族たちはこれまで人族に会えないので亜人や妖精の生肉などで凌いではいたけど、含まれる魔力が薄すぎて満たされなかったし、酔い水草のような不純物が混ざった酒も摂食は出来るが何も回復や酔いなど全く感じたことはなかったのだけれど。


今回、初めて純アルコールを飲んでみたらとても美味しくて気に入っただけでなく。血などの体液を吸ったのとかなり近い満足感や鎮静効果が得られたというのが最大の発見だった。


分量も人間から吸う時とあまり変わらず、それこそブランデーを飲むような小さなコップに半分くらいで問題なく一日過ごせそうだという。

純アルコールを作るための木材の量などを考えると毎日全員が飲むとなれば結構大変ではあるけど、広い土地を確保できるなら植林場が作れるし。


広大な植林場を作って量産したアルコールを本国に届けて暴走しそうな人たちに配るという、かなり現実的な鎮静方法が見つかったことに不死族の人たちはにわかに色めき立った。

薬関係で使うようで抽出は全員使えるし、地図で指定された範囲には現在森の部分もけっこう含まれているのですぐにでも作り始められる。凍土回復事業で今後は魔獣の核が安定的に輸入出来るようになっていく予定なので材木枯渇も回避できるはず。


吸血は毎日吸われると人間はそこそこ健康被害が出やすいのでヴァンパイアの人にはなるべくアルコールで代替して貰いたいけど、サキュバスたちは合意の上で吸わせて貰うハードルが低いので、何でもかんでも耐えなきゃいけないってわけでもない、残りは本国へ届けられそう。


すぐにでも本国に連絡して皆にも伝えようという話をしているので、大隊長が「お前さんがたに誓いの碑文を預けておくので、本国から不死族が追加で出入りする場合、必ず誓ったものだけ平地に侵入するように徹底して貰えるか」と確認すると。皆、一も二もなく同意して碑文を預かってくれる。


それなら、開拓地に出入りする人間から何か取引を持ち掛けられた時にも、まずお使いの人じゃなくて()()()()()()()にその誓いを立てて貰ってから話を聞くようにと約束して貰う。

日本語の文章はこっちで書ける人が居ないし、碑文本体の製造もドットさん作の最新版で偽造の心配はしなくていいから。これで少しは安心かな?


飲んで食べて騒いで深夜になってくると、流石に酔いもあって寝落ちする人たちが出始めたし。

明日から人員を派遣して人間用の居住区や倉庫などのあれこれを建築する作業と各所からの魔獣の核の調達を始めるということを伝え、残っている人たちの食糧も兼ねて使わなかった食材などやバーベキュー台などはおいて、簡単な掃除だけして帰ることに。


そういえば……アイテムボックスの中に、魔獣の核を沢山詰め込んだままだったな。と思い出した。すっっっかり忘れてたけど!え、いつから出してない?少なくとも私はパリィと一緒に川歩きした辺りから考えても取り出してた覚えはない、めちゃくちゃ溜まってるかも。

オクティにこそっと相談したら。ここで出すとまた目立つから、明日冒険者組合に一緒に行こうと言ってくれた。


魔獣の核集めが活発に必要になってくるなら、未開拓の高山のダンジョン開拓をどんどんやって、新しい作物も核もたくさん稼ごうって動きになるかも。

まだまだトマト、きゅうり、ナス、キャベツ、オリーブ、カボチャとか日常的に使いたいものはまだいっぱいあるし、新しい果物も楽しみだし、ココアはあるけどコーヒーも欲しいし……


ミントが作れるってことは香草関係は不死族の能力で作れるものが多そう。ミントとかの軽い効能のものとかお花関係は輸出品のラインナップに入れて貰っても良いのかもしれない。――あ、『軽い』と彼らが考えているものの中に煙草や大麻も含まれるらしい、効能確認と許可制は必須にしないとヤバいのね。


そういえば豆類ってまだ……ダンジョン作物って種がないから、豆は出てこないの?

――あー。やっぱり落ちものしかないのかぁ。野生で地面に落ちて生えてるものもあるけど、人間の国の中で用途の分からない希少な落ちものとして飾られちゃってるものもあるとか。


ワイバーン部隊が組まれて遠征がもっと本格化するのを楽しみに待つしかないかぁ……


***


あれ?


いつの間にかメイドさんたちが獣人車を操っていて、オクティに抱きかかえられたまま後部座席に座ってた。フードを深く被ってるから、目が開いたのは見えないはずなんだけど、オクティがフード越しにゆっくり頭を撫でてくる。


「起きたんだ、大丈夫?考えごとしてたみたいだから抱えて運ぼうと思ったら、いつの間にか寝ちゃってたんだよね」

「ふぇっ、あ、ごめんっ?」

「今日は大変だったし、そのまま寝てて大丈夫だよ」

撫でられているうちにまた急激に眠気が湧いてきて、目を開けていられなく……


――次に目を開けたら、周りはすっかり明るかった。

いつも以上に明るく見えたのも当然で、鉄格子が嵌っていることだけ違和感がある、綺麗な広い窓が開いて、真昼の外の灯りが差し込んできている。


天蓋も全てカーテン部分がタッセルで括られて開いた状態になっている中。一切気付かず昼まで熟睡していたらしい。

布団の中の自分の恰好を見ると、しっかりパジャマに着替えて髪も顔の横にまとめて結い直されているし、また寝てる間にお世話されてしまったみたいだ。


「あ、チョーコおはよう。ゆうべ遅かったからもうちょっと寝ててもいいけど。お腹空いてる?俺はゆうべ食べ過ぎたみたいでまだいいから、食べるならチョーコの分だけ用意して貰って来るよ?」

入ってきたオクティはローブだけは脱いでるけど足元もスリッパじゃなくて外用の靴、パジャマでもない。


「起きる。おはよう……私もまだいいかなぁ。冒険者組合に魔獣の核を届けに行くついでに、街でなにか珍しいものでもあったら味見するくらいで。オクティはそんな恰好して、どこかに出かけてたの?」

「いや宰相家の秘書たちが来てたから、話を聞いてただけ。

誘拐事件の時に追加で出した転送盤3セットは、今後しばらくは物資輸送で運ぶものが沢山あるから3枚ともそのまま開拓用に使わせて欲しいって話はそのまま許可した。

新しい遠征隊を組む時、今度からは転送盤を持たせて夜は帰らせようかって話があるらしいから、後でチョーコが起きたら話して、何枚か転送盤作ってメイドに渡すって答えておいた。

あと、共通語と天界語の言語学校をやろうって話で天人たちとやり取りしてたら、人間は転送盤への魔力補充に毎回苦労してるみたいだから、1補充1銀とか、お小遣い稼ぎに手伝おうか?って話が出たらしくてね。天人が『転送屋』として転送盤を商売に使うのは製作者的に問題ないか一応確認だって。そこは流石にチョーコに聞かないと分からないから返答保留にしといたよ。勝手に答えちゃったけど、こんな感じで良かった?」


「うん、いろいろありがと。転送屋さんは面白いねぇ。んー?天人さんが自分の食べたい果物のダンジョンと帝国を繋いで人を送りたいから新しく転送盤作って設置して欲しいって話だったら私に話が来るのは分かるけど。ただ設置されてる板の隣で待ってて、1銀で補充手伝ってあげるよって声かけるだけなら、私は関係ない話じゃないかな。あ。……いや天人さんなら大丈夫かぁ」

「うん?」

「行く時飛ぶのを手伝うってことは、帰りも手伝い必要でしょう?でも向こう側の板を充填した後にその板使って帰ったらお客さんは補充し直さないと飛べなくなっちゃうなって思ったんだけど。天人さんだったら帰りは自力でテレポートして戻れるし、何なら人が頻繁に行き来するところは両側に一人ずつ待機しててもいいなって。国外で魔獣が出るようなところでも、別に天人さんなら危なくはないし」


「あぁ。話があったのは転送所、牛の村、海、洞窟の4ヶ所に休憩所みたいなのを作って何人かで座って待ってて、呼ばれたら1銀貰って補充するって感じみたいだよ。今回の開拓地と帝国間とかで大量に物資を運ぶから手伝って欲しいとか、メイジア国と大人数の行き来があるとか、そういう突発的なものは冒険者の個別依頼と一緒で少し小遣い上乗せで直接依頼して、仕事が終わるまで付き合って貰うらしい」

「なるほどぉ……いいんじゃない?同行してアイテムボックスで荷物運びとか、護衛とか、色々追加料金でオプション付けられそうな感じの商売だよね」


段々目が覚めてきたので、もそもそベッドを降りてワンピースに着替え。

「そういえば私。ここの貨幣の価値とか、よく分かってないなぁ」


「うーん、これまでは素材のやり取りが鉄、加工品が銀、高級品は金や宝石くらいの感覚で。ふんわりやってた感じだったのが、最近の商品の流通が激しくなってきて以来、木の粉は変わらず個人で消費するくらいの量ならただ、葛湯とか紅茶に黒砂糖とか拘りはないけど木の粉そのままは嫌って生活がしたければ1日鉄1つ。紅茶ゼリーとか黒蜜わらび餅とか、ちょっと凝ったものや肉が食べたいとかはもう少しかかるけど、それでも鉄3つくらいまでが庶民の1日の食費って感じで落ち着いたかな。果物やクリーム、ウニなんかの輸入物は贅沢品だから最低でも1日銀3つくらいは必要になると思う。

最近貴族街ではもの凄い勢いでお金が動いて色々調整が大変みたいだけど。庶民は違う属性の魔力を近所で手伝い合う習慣もそのままだし、贅沢品に手を出すことはあまりないから、それほど大きくは変わってないかもね」


「お金が動くほど景気が良くなるっていうから、良い傾向かも?私たちはお金の関係宰相さんに丸投げさせて貰えてよかったよね……うーん、天人さんとか観光に来てる人たちは贅沢なデザートとか素敵な洋服とかが欲しいわけだから、人間の街のお金を稼ぐ手段が欲しくなるのは分かる。……あんまり行き過ぎて、詐欺みたいなことをする人が出ないといいんだけど」

「詐欺?」


「例えば……バナナのダンジョンまで道案内と往復のテレポートと荷物運びもひっくるめて、お金は要らないから、取れた作物を10個くらい頂戴ねって約束で行ったとして。バナナと一緒にたまたますごい珍しい酒の実が10個だけ取れたとか。帰り道に報酬はバナナじゃなくて酒の実10個が欲しい。それくれないと帰りのテレポートも荷物の持ち借りも手伝わないとか?」


「あー……あとは思った以上に豊作でめちゃくちゃ稼げたんだからもうちょっと取り分増やしてくれとかもありそうだよな?冒険者の依頼報酬と同じようなルールがあった方がいいかもしれないね」

「荷物運びでアイテムボックスは強すぎるから、どうしても天人さんを頼みにしたい時はあるもんねぇ」


「まだ最初だからお互い手探りな所もあるし、どこまで厳しくするかって問題も――あぁ、あの誓いの碑文を同じ内容で追加で作っておいてさ、訴えられても初犯だけはそれに誓えば解放とか?高山で悪いことしたら火の山送りらしいけど、そんな莫大でもない金銭トラブルに対して一生監禁はやり過ぎだし。何度も繰り返せば誓い破りの罰で炎人の呪いだろ?竜人が知っても罪を見逃したとは思わないはずだ」

「……けっこうありかも?後で秘書さんに返事する時、その話をしてみてもいいかも」


***


秘書さんへの返答はメイドさんが通信石でさくっと伝えてくれて、人族同士のトラブル関連で、初犯だけ誓いの碑文で見逃す案はすぐに通せるが各所に置くので5,6枚作って欲しいという。複製の碑文と転送盤の追加はそこまで急がないので、都合のいいときに作ってメイドに渡して貰いたいということだったので、とりあえず今日はお休み!予定通り冒険者組合へ魔獣の核を納品をしにいこう。

その途端、マナが素早く現れた。庶民街でも浮かないギリギリを攻めたふんわりスカートの可愛いワンピースと新しい靴と髪留めが入った箱を持って、連行する勢いで水場へ連れて行かれ、ふんわりワンピースに合うように髪もシニヨンにしてリボンを結ばれる。


靴は靴底にゴム混の厚い布を使っているとかで、今までの木が使われたただ硬い靴底とは段違い、かなり現代の靴に近いしなやかに足にフィットする感覚にちょっと感動。

「うっわ、ゴムが手に入るようになってからそんなに日も経ってないはずなのに、もうこんなのが開発されてるなんて凄すぎる……」

「靴音がしなくて、飛ばなくても隠密し易いしとっても歩きやすいんですよねぇ。私ももう最近はこれじゃないと歩けません!」


靴はオクティの分も一緒に新調したみたいで、戻ったら玄関の中でスキップみたいな動きをしながら履き心地を確かめているところに遭遇したのでちょっと笑ってしまった。

「めっちゃくちゃ履き心地、いいな!」

「だよねー、今日は獣人車じゃなくて、街まで歩いちゃおうか」

歩いていくといったらでは護衛に、と即座にニナとリナがついてくる。

「よろしくね!」


以前の家の近くを通りかかると、外でシーツをバサバサやっていた奥さんが気付いて手を振った。

「オクティくんとチョーコちゃんじゃないか。昨日は遠征隊がトラブルで帰ってこなかったって聞いたんだけど?!……お母さんは大丈夫だったのかい?」

「あ、こんにちは!」

帰って来てないという話自体はもう広がっているらしい。何をどこまで説明するべきか?と思ったら、ニナの方がそちらを向いてにっこり微笑んで会釈を一つ。


「昨日はこちらのおふたりが捜索に出て、遠征隊は無事に全員発見し、合流して一緒に食事会もして参りましたのでご安心ください!彼らが戻らなかったのは事故ではなく、衰弱したサキュバスの集団と遭遇して、彼らを介抱するためだったのです。見捨てられず、このまま残ってお世話をされるそうですから。おそらく組合のほうで彼らへの支援物資の輸送など人員募集などが出ていると思いますよ」


「サキュバスってあれかい、夢に出てくるって言い伝えの?へぇ、本当にいたんだねぇ!全員無事だったのは良かったけど、病人を連れて森の中で過ごすって、それはそれでお母さんが心配じゃないか?」

「そこは母も特に問題ないと言っていたし、他のメンバーも遠征には慣れているから、物資さえ尽きなければ森の中で過ごすのも支障はないみたいだった。俺も時々は様子を見に行くつもりだ」

「そうかい、物資さえ送れば問題ないなら安心だ。オクティくんもチョーコちゃんもまだしばらくは忙しそうだけど。ちゃんと話が出来たみたいでよかったねぇ、結婚宣言の日取りが決まったら必ず教えておくれよ!」


そのまま歩いて冒険者組合のロビーまで着くと雰囲気は概ねいつも通りに戻っていたが、2人が来たら一斉に視線が集まってきた。

「聞いたぜオクティ、チョーコちゃんがサキュバスの男にちょっかい掛けられそうになってガチギレしたんだって?お前がそんな不安になるほどイイ男だったのかー?」

「不死族ってめちゃくちゃ美人で色っぽいってマジだった?マジなら物資輸送の募集、俺もちょっとだけ参加してみよっかなぁ……」

「サキュバス派の奴らが多いけど、女のヴァンパイアって絶対良いと思うんだよな。今回は来てなかったって聞いたけど、後で仲間も来るかもしれないんだろ?見てみたいな」


サキュバスの男の話が出た途端に、オクティの表情がスンッと不機嫌そうに硬くなる。

「……お前らさ、暇ならダンジョン行って魔獣の核でも集めて来れば?不死族たちが確保した平地も本国もこれから魔獣の核と魔力がとにかく大量に必要なんだ。物資運びとかで会うことになった時、沢山持って行けば、喜んでちょっとはサービスしてくれるかもしれないぞ?」


「「「はっ……!」」」

それだ!みたいな顔をした数人が、なんだかそわそわしながら能力の合うメンバーとチームを組み始めたのを横目に、オクティとチョーコがカウンターに進む。


「はい、本日はどのようなご用件ですか?」

「魔獣の核を集めてきたから納品を。……カウンターには絶対乗り切らないんで、直接倉庫で」


あの謎石ブロックがある裏の倉庫に移動して、大きい空の木箱を置かれた。本当に業務用の物資運搬用らしいサイズで、隣に立つとお腹の辺りに縁が来る。

オクティが袋を出して箱の中にドサドサ核を流し込んでいく音だけが響く……長い。


「この溜まり方だと全部は入りきらないと思う。もう一箱あれば足りるかな」

「は……?はいっ」

2つめも8割ほど埋まった所でようやく止まった。


「た、確かに受け取りました。どうやったらこんなことに?」

「チョーコと高山のダンジョン踏破したり色々してたから、気付いたら溜まってたんだよね。最近のんびり納品に来てる暇がなかったのもあるけど」

「あぁ……そういうことでしたか。換金額を計算するのでちょっとお待ち頂いていいですか?」

「現金は今そんなに必要ないし、後で商会組合に回して貰ってもいいか?」

「承りました。魔獣の核の大量発注が掛かっていて品切れになりそうでしたので、とても助かります」


凍土に送る分もあるけど、この国だって木の栽培だけじゃなく小麦とかオレンジとか水草の栽培に核を使っているのだし、全部送って品切れになったらそれはそれで別の問題が出てきちゃう。いっぱい取って来なきゃなら、私たちも行こうかなぁ?


「チョーコ、今日はまだ時間あるし、高山のダンジョンでも行く?」

「――行きたい!」

「色々片付いたところだし、ちょっと行ってこようか」


そういえば純粋にトラブルが絡まない冒険って、久しぶりかも!

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