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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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54/89

54.酒は気持ちを丸くする?

直接自宅の倉庫に帰還して、ようやく一息吐ける……


あぁでも、日暮れまでまだ少し時間があるけど、しっかり寝てしまったら寝過ごしそうな気がするから頑張って起きていようかな……と思ったら。

オクティに顔をじっと見つめられた。


「ねぇチョーコ。流石に今日は日の出からずっと動き回ってるから疲れただろ?折角だから新居の方でひと眠りして、時間になったらメイドさんたちに起こして貰えばいいじゃないか」

「それが宜しいですわ!その碑文はわたくしが軍部までお持ちして使い方の説明などしておきますので!」


「その碑文についてだが『炎人に相談して作った』ってことだけは、関係者に伝えて貰おうか」

「あっ、確かにそう説明しておいて貰えばいいのかも。こっちに直接都合のいい内容で書いてくれって頼みたい人が居ても、炎人さんに書いてくれって直接頼みに行く人はそうそう居ないよね」


「承知いたしましたわ!えぇ、この碑文はかなり有用なものですわね。――国家間の同盟関係も、これで済めばよろしいのにと思ってしまうほど」


「……文面考えて貰えるなら、作ることは出来るけどね?私やオクティが毎回毎回全部の調印に潜り込んで色々するのは面倒くさいなぁって思ってはいたし。一応炎人さんを挟むっていう建前にしたら、あまり欲の突っ張ったことは盛り込まないでちゃんと決めてくれるかも?ほんとに同盟関連がこれだけで済んだらいいよねぇ」


「では、それは本家にも話を持ち込ませて頂きますわねっ!わたくしはそちらへ向かいます。新居の方へは連絡を入れておきますから、いつでもいらしてくださいね!」

素早く一礼をして、碑文を抱きかかえると、メイドさんは通信をしながら姿を消した。


メイドさんの姿が見えなくなると、オクティがぎゅうっと抱きしめて頭を撫でてきた。

「ほんとお疲れ様だったね、チョーコ。ちょっとだけでも寝た方が良いし、すぐ新居の方へ行ってひと眠りしよう?」

気が抜けた所にオクティの魔力に包まれると本当に立ったまま寝落ちそうな気がして、慌ててそのまま一緒にテレポート。

新居の寝室に出ると、ホテルの写真みたいに美しくベッドメイクされた部屋になってる。そこへ2人分の新品のパジャマとスリッパを持ってドアを開けたメイドさんとタイミングよく目が合った。


「まぁ!お帰りなさいませ。今ちょうどニナから連絡を受けたところですのよ。時間までひと眠りされるのですわね?日が暮れる少し前になったらお呼びいたしますので、こちらに着替えてお休みください」


パジャマとスリッパを置いてすぐに一礼して部屋を出ていってくれる。

ありがたく2人で着替え。吸汗性の高そうなふんわりした柔らかいガーゼっぽい布をたっぷり使った、でもフリルなどは極力排してシンプルなネグリジェは凄い着心地が良くて、さらさらとあったかくて早速眠気が増してくる。


オクティに抱えられて横になったのは辛うじて記憶にあるけど、それ以降のことは覚えてない。


***


シャ、シャ、と髪を梳かされている感覚でほんのり意識が戻ってきた。

目を開けた視界に入ってきたのは大きな鏡。前は家具が置いてなかった水場だが、今は宰相さんの家で座らせて貰ったような髪結いの椅子と同じ新しい椅子に座らされていて、メイドさんが満面の笑みでヘアブラシを持って隣に居た。

「あ、お目覚めですか?そろそろお時間ですので、お仕度させて頂いてますっ!」

「おはよう、一応起こしたんだけど良く寝てたから。ギリギリまで寝かせておこうと思ってそのまま支度を頼んだんだ」


オクティも反対側の隣に立って服はローブまで着終わってる。一切途中で意識が戻った記憶がない……


私も既に服装はシンプルなフリルなどのないワンピースになっていた。シンプルだけど布地が物凄くしなやかで、カットの形が凝っていて安物ではないと思う。

チョーカーと腰帯は元のもの。

見えないけどなんとなく感覚で魔石の入る下着とか、服の下にオクティの魔石を付けられるシリーズが一式全部装着されてる気がする……


髪をきゅっと高めに結び、魔石付きのリボンが結ばれた。


更に氷の入った緑茶とわらび餅まで出されて食べてたら流石にしっかり目が覚めて。

「はい、手とお顔はこちらで拭いてくださいね」

「ありがとう」

食べたら濡らして絞った暖かい柔らかいタオルを渡され、素直に顔など拭いたらお盆が差し出されてタオルをそこに置く。


「完了です!うーん、やっぱりチョーコ様は可愛くて綺麗ですっ。なるべくシンプルで飾りのない服を指定されたのでこちらを選びましたが。今度ちゃんと全体コーディネートさせて欲しいですね」


鏡を見るとなんというか、前髪の取り方や高めに結んだ髪の位置のバランスが絵に描いたようにバッチリ決まっている。普通高く結ぶと下の髪がたゆんだりすると思うけどぴっちり平らに揃ってるのに、ひっ詰めてるような引っ張られる感じだとか、そういう違和感が一切ない。


「髪結ぶの上手なんだね。マナ?」

「はいマナです。ありがとうございます!うふふ、お気に入りいただけましたら、いつでもお声がけくださいね!」

「うん。何か大事なお出かけの時はお願いしたいかも。それに今日みたいに寝落ちててお願いすることとかもまたあったりするかな……」


自分で口に出しながら気付いたけど、寝起きが悪くて寝ながら身支度されるってかなり恥ずかしくない?


「本当ですね?!聞きましたからね?!うふふ。髪留めとか色々選んでおかなくっちゃ♪――あ、こちらの靴も磨いておきました。少し底が傷んできておりますし、今度新しいものをご用意致します」

「あ、うん。よろしくね……」

マナは何も気にしてないというか、大歓迎っぽい反応だし。もう今、すでに寝ながら身支度して貰っちゃったわけだし……恥ずかしがるのも今更かなぁ?


「こーら、またおねだりしてましたの?全く……申し訳ありません。そろそろお時間ですわ。ニナは本家に行っておりますので、護衛は私リナと、今回はルナが担当させて頂きますの」


「不死族はシールドの魔法なんかも吸収して無効化しちゃうみたいだけど、ルナのワイヤーはちゃんと効果あったもんね。よろしく」

「お任せくださいませぇ♪」

「その情報がありましたから、今回はわたくしも魔法に頼らず金属の盾をご用意して参りましたわ」

「本当は戦い自体ないのが一番だけど、リナもいざという時はよろしくね」


靴を履いて立ちあがったらローブを渡されて着る。このローブもなんかいつもより軽くてしっかりした布地で、フードとかも首周りにゆとりがあるけど不思議と脱げにくい。

よく見るとオクティのロープも同じ新しいものみたい。


「あ、お揃い」

「そうなんだよ、このローブ着心地良いよね。さ、行こうか」

「うん!……そうだ、ニナに頼んだ碑文って、内容の事とか何か指示あったりしたかな?」

「ないみたいだよ。今回は他の人族が相手で、人間の国じゃないから。関係はあくまで対等な友人として扱うって決まっているし、あれで問題ないってさ」

「そう?それならよかった!」


「人間の国相手にも碑文を利用して調印を済ませる案は、前向きな人がかなり多いけど、流石にすぐには決まらないから暫く返答待ちらしい」

「そっか。少なくともワイバーンの訓練生たちが帰ってくるとか、何かない限りはまだ遠征で他の国が見つかったりはしそうにないし、のんびり構えてて良さそうだね」


夕暮れの空の下。4人乗りの獣人車で軍部の建物の前へ着くと、転送盤が並んでいるところに、宰相さんと秘書さん3人組、大隊長のお爺さん、リオ隊長、軍人さんぽい大剣と長剣持ちが合わせて10人、魔法使い系の冒険者4人、柴犬さん2人が連れた獣人部隊も昼と同じように集まっていた。

お爺さんとリオ隊長は元々ピンク系の赤髪だけど、見回した感じ今回集まってる人たちも全員、獣人さんや宰相さんたち以外、火の魔法が使える人を集めたっぽい。


お爺さんが近付いてきて、チョーコに向けて軍人らしい敬礼の構えをする。

「交渉役の引き受け、感謝する!あの後わざわざ炎人の所まで行って、碑文を作って貰ってきたそうだな。本当にご苦労だった」


碑文の板はリオ隊長が持っていた。

「今回の話し合いに同行するのは君たちと、私と、大隊長、火の魔法使い2名、軍人6名。残りは時間帯から彼らがこちらへ向かうことを警戒して、転送盤の警備に当たる。

ーー話し合いに臨む我々は、まず話し合いを始める前に、全員がこの碑文に誓ってから話を始めようと考えているのだが。君たちはこの誓いをしても問題ないか?」


「はい、私は元々そういう主義なので大丈夫です」

オクティを振り返ると、即座に頷く。メイドさんたちも内容をもう一度読み直して頷く。

「暴力で解決しようとしないという部分だけはご主人様たちの主義で左右されますけれど。この先例え攻撃的な人族に相対しても、負傷は最小限で鎮圧してお話合いしましょうから始めますものね?」

「試みて駄目なら誓いを破ったことにはなりませんし、人族は全て尊重すべき友人として扱うようにというだけ。問題ありませんわ」


***


食料品を詰めた箱やら焼肉の調理台などの大荷物も含めて転送盤3枚と魔力補充でせっせと現地に移動し終えても、まだ薄明るいからか彼らは穴から出てきていないようだ。


軍人さんたちが鉱石ランプやかがり火を設置したり、焚き火と焼肉や酒類や野菜、甘味の準備をしたり、木箱に手書きの地図らしき、でも予想以上にかなり詳細に描かれた凍土周辺にクローズアップした地図を広げたりしているうちにだんだん空が夕暮れから夜に変わってくる。


「本当に魔獣や亜人が周囲に一切居ませんね……」

「森の中がこんなに静かなんてこと、初めてです」

「むっ、羽音が近付いてきました!」


「来たか。火の世話をしているもの以外は並んで出迎えよう」


バーベキュー作りはメイドさんたちが引き受け、残りの皆は穴の方を向いて立って並んで待つ。

オクティとチョーコは大隊長と隊長に連れられて最前列に一緒に並ばされた。


音が聞こえ始めてからはさほど待たず、次々と人を2人ずつ抱えた翼のある影が穴の中から飛び出してきて近くに降り立っていく。


最初に出てきた男性が緑のローブの2人を地上に降ろしてそっと手を離す。

解放された2人は最前列にいるチョーコとオクティを見て、少しバツの悪そうな顔で、申し訳なさそうに小さく会釈したのが分かった。


次々と出てきた人達も同じように解放されるが。皆、少し不安そうにこちらを遠巻きにしている。

ヴァンパイアらしい人は灰色のスーツ、サキュバスの人たちもビキニ水着みたいに露出が多いけど、ちゃんと灰色の生地の服は着てきていた。


「報告にあった人数は揃ったな?えー、わしは今回の集団失踪を調べる責任者として参加した。グラディア・グラス大隊長と申す!

ーーが、先だって調査に当たった彼らの報告により、犯人逮捕ではなく、貴殿らとの友誼を結ぶ目的に変更して話を進めたいと考えてここへ参った。

まずは一献、酒でも飲みつつ、話そうではないか?」


すると最初に出てきた彼がやはり代表者らしく、1人で前に出てきて軽く頭を下げた。皮膚の傷はすっかり治り、かすかに薄赤く光る眼と口を開くと覗く牙は凄みがあるが、表情はかなり神妙に見える。


「我はリシャール、今回集まった9人の中では最も古きもの。我とその男2人が吸血種、残りが吸精種だ。

人間族は多様だが他種族に対しては排他的という認識であったが……彼らからも話を聞いたところ、貴殿らの国は魚人族と交流をして他種族との言語の壁を払った結果、次々と他種族との交流交易の輪を広げていっているそうだな。

ーー我らもそこへ受け入れて貰えるならばありがたいと考えている。

食物は生肉と酒であれば、相伴に預かりたい」


軍人さんたちがメイドさんの方へ向かい、生肉と酒を取り分け配り始める。

メイドさんたちは人質の人たちと話し合いに来た人たちの分の調理済みのものを分けていった。


「乾杯の前に、あー。まず国としては拉致監禁を良しとすることは出来んので、先に彼らを自由にさせるよう要求する予定だったのだが。ーーもう既に解放されておるので省略する!

では、全員食事にするぞ?今後についての話はまず食って落ち着いてからだ。

杯を交わそう!」

「「杯を交わそう!」」


流石に40人越えの団体がワイワイと、かなりキツめのアルコールまで持ってきて飲んだり食べたりしていればすぐに賑やかを通り越して騒がしくなり、緊張感が解けるのは早かった。

不死族は炎人さん達と同じで純アルコールのストレートが好きみたい……


最初こそ近付いた途端に斬られるか焼かれるんじゃないかと警戒していたサキュバスたちや、強制的に連れ戻されるのではと不安になっていた遠征隊たちも、笑顔を浮かべ始め、身の上話などをしたり、囚われていた間のことを話したり。


チョーコが人間として生まれた同族っぽいと聞いてサキュバスの男性が真っ先に仲良くしようぜウェーイみたいなノリで絡みに来たのをオクティがかなり本気で燃やしかけ、チョーコが必死で止めたり。


そのついでで誓いの碑文を出して火の大陸で炎人さんに会ってきた話をしたら、不死族たちは全員2歩くらい後ずさったあと。

恐る恐る寄ってきて誓いの碑文を触りだし、本物だと言ってから。

不死族たちは自主的に誓いを立てた。


そのまま、飲み会の勢いの延長のように人間たちにも全員回り。

「よし全員、誓いは済ませたな?!これでわしらは友人ってことじゃあ!」

「「「よろしくーぅ!」」」

と再び乾杯が始まり、なんか一気に仲良くなった。


彼らの魅了の毒は前段階なしにただ単発接種させて夢を見せている間に吸わせて貰って帰るだけならば、寝て起きれば夢だと思うし後遺症も残らないが。

食料と混ぜるなどして直接接触しないまま継続接種していると、1日もたずに彼らを無意識に渇望するようになり、その状態になってからだと深く囚われて抜け出せなくなるらしい。


遠征隊の人達曰く、記憶も意識もあるしなにか盛られたと理解も出来ているけど。彼らは本当に全く暴力的な真似は一切しなかったし、生きるために致し方なかったと納得もしているので、彼らへの罰はなしで済ませてほしいと口を揃え。


不死族の人達の方は、せっかく仲良くなって傍にいたい気持ちは山々だけど、どうしても人間の街に帰りたいなら、時間は少し掛かるけど後遺症も治療は可能だという。


そこでリオ隊長が凍土の地図を出し、個人の恋愛にまで口を挟む気は無いし。

不死族にはここを使える安全地帯として開墾する事業に協力してもらおうと思っていてーーと。


凍土に魔獣の核を撒きまくって使える土地を増やす計画や、この地図の範囲は土地復活後に不死族の土地として住んでいいとか、逆に他のところに住んでダンジョンが壊れたら困るので範囲から勝手に出るのは禁止させてもらうとか、遠征隊の人たちは地上に居住区を作るからそこに住んで、あとから来る作業員の人たちとも協力してとか。

あれこれ決めていたことを説明しだす。


友人としての付き合いが続くならば、広い安全地帯が使えるメリットはかなり大きいので、人を集めて色んな設備を作ったりしたいし、土地維持のための核集めも協力するという話をしていると。


ちゃんと住むところも仕事も共存も考えてくれるのかと、不死族の何人かが安心したように泣いたりし始めて、遠征隊の人達がそれぞれ仲のいい人だろう所に行って慰める。


ーーそんな光景の中、ふと気付くとリシャールさんの隣には金髪の方の女性1人だけで、オクティのお母さんの方が見当たらなかった。


キョロキョロするとオクティが、彼から見ると後ろに当たるはずなんだけど、肩越しに少し離れた暗いところを指さす。

一人で遠く空を見ながらこちらに背を向けている緑のローブが見えた。


「今なら話せそうじゃない?行こう?」

顔をじっと見ると、オクティも少し不安そうに迷う様子を見せてから。チョーコの手を取って静かにそちらへ向かう。


ローブだから良くは見えないけど、少しだけ振り返りかけて止めたように見えた。


「ーー母さん」

ビクッとしたあと、暫くしてこちらを向いた彼女は泣いていたみたいに目が赤い。

髪の色が白いこと以外は宰相さんにもオクティにも顔立ちが似てて睨んでるみたいに見える目つきだし、目もちょっと濃いめの金。


魔力が高いせいなのか、マギーさんのお母さんとは逆に若すぎて、母子じゃなくて姉弟に見えるけど……あれっ?考えてみたら私、お義母さんとほぼ同じ歳では?

実験が始まって30年ほどって……え、うわ、オクティが10年やそこらは誤差って考える主義でよかった!


「俺は正直、母さんのことは『同じ実験体仲間の先輩』と思ってた部分が強くてさ。八つ当たりされてもいいとまでは言わないけど、仕方なかったのは分かってるから、俺は気にしてないよ。もうここ最近のことは忘れてくれ」


長めの沈黙のあと、宴会の騒ぎにかき消される小声だが、ごめんね、と口が動く。


「俺、本当にさ、本物のエスの導きってやつでチョーコに会えたんだよ。俺はこのままチョーコと結婚して幸せに生きるって決めたから。母さんも自分に正直に、ここで幸せになったらいいと思う」

ずっと横か下を向いていた彼女の目がようやく動いてチョーコをじっと見てきた。


その目は宰相さんやオクティと同じでカラフルに光り。見終えてから、やっと、オクティの顔をまともに見て口を開く。


「とんでもないね……魔力の強いお嫁さんを見つけなさいと小さい頃から教えてたけど、ここまでの子を見つけてくるとは思わなかった」

「いや魔力の強さで選ぶつもりなんかなかったし、それはたまたまだけど。強い方が長生きして長く一緒に居られそうだから、弱いよりは嬉しいよね」

「どこが一番好きなの?」

「え、好きなところを百個言えならすぐ言えるけど、一番は難しいな。……俺をずっと好きでいてくれるところ?」


彼女の顔がチョーコの方を向く。

「初めまして。チョーコさんといったわね、私はアロニアロ。アロゥで構わないわ。この子は小さい頃から人一倍甘えん坊で執着癖の強い子だったけど、私は仕事上でしか関われなかったし、布越しでしかちゃんと抱きしめてあげられもしなかった。初めての恋人なんて、ベッタリ絡みつきっ放しで迷惑かけてるんじゃないかしら?」

「初めましてアロゥさん。私も家族は何年も前に全員亡くしてますし、今は知り合いも仲間も居なくなって、オクティとその周りの人だけだったので……むしろオクティはずっとそばに居てくれるので心強いですよ?」


何故か三度ほど、オクティの胸元とチョーコの胸元を視線が往復したあと。

『指摘……するべきかしら?()()サーチで魔力が繋がったままだって……!』

珍しくきちんと目を見てないのに聞こえるくらい心の叫びが漏れた。


「ん?この魔石にチョーコの力をこめてもらった時、サーチでいつもチョーコの居場所が分かるねって話はしたけど」

「うん、聞いたね。全く知らない人にサーチされてたら普通に気持ち悪いけど、オクティならむしろ嬉しい……」

「チョーコもたまに離れる時とか、俺にもしてくれていいんだからね?」

「必要な時はするけど、私はオクティみたいに無詠唱で使い続けられるわけじゃないもん」

「離れてると俺は寂しいけど、チョーコは違うのか?」

「んー、むしろ居場所確認だけで満足なんて出来ないから、寂しいってなったらテレポートで会いに行っちゃう」


喋ってる2人をアロゥが色々察したようにポカンとしたまま眺めていたけど。

「あ。……本物のエスの導き、そういうこと。そこまで受け止めてくれる子なら、大丈夫そうね」

と小さく呟いて、温かく笑んだ。


「ーーチョーコさん、改めてこの子をよろしくお願いします」

「えぁっ、は、はい!こちらこそよろしくお願いしますっ」

色々と納得した顔で、改まって頭を下げられ、こちらも釣られたように頭を下げてしまう。


結婚宣言に招待したいという話については。喜んで祝福はするけど、立場的に外出許可が降りないし、帝国への入国も拒否されるだろうから。

結婚後や子供が出来た時とかにたまに見せに来るとか、そういうのを楽しみに待っていると言ってくれた。


ーートラブルはあったけど、結果的にお義母さんとの顔合わせは平和に終われたし。

2人の間のぎこちなさもかなり落ち着いたみたい……良かった。

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